課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、以下の「経営理念」、「行動指針」及び「グループビジョン」を経営の基本方針としております。

<経営理念>

中山製鋼所グループは、公正な競争を通じて付加価値を創出し経済社会の発展を担うとともに、社会にとって有用な存在であり続けます。

<行動指針>

① 法令や社会的規範を守り、高い倫理観を持って行動します。

② 安全・防災・環境問題は企業の存在の基本条件と位置づけ、生産活動に優先して取り組みます。

③ 社会的に有用な商品・サービスを開発、提供し、顧客の満足度と豊かさを実現します。

④ 従業員の人格・個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現します。

⑤ 社会および株主とのコミュニケーションを大切にし、企業情報を積極的かつ公正に開示します。

⑥ 良き企業市民として積極的に社会貢献活動に取り組みます。

<グループビジョン>

中山製鋼所グループは、鉄鋼事業を中核に発展してきた企業集団であり、今後ともお客様と将来の夢を共有し、社会にとって有用な付加価値の高い製品を開発、商品化し、お客様に安定的に提供していく努力を継続してまいります。

 

(2) 経営環境

今後の見通しにつきましては、わが国経済は、まん延防止等重点措置の解除など活動制約の緩和を受け、鉄鋼業界においては工場や物流施設などの建築需要の回復や社会インフラの老朽更新などの国内需要が期待されますが、感染症の再拡大、中国経済の減速やウクライナ情勢に伴う世界経済への影響など、依然として先行き不透明な状況が続くと想定されます。

中長期的には、わが国では高齢化や人口減少に伴い、鋼材需要は減少することが予想されます。一方、政府が公表したエネルギー基本計画に国内各企業が賛同していることを背景に、カーボンニュートラルに向けた取り組みが加速し、高炉に比べてCO2排出量が少なく資源循環プロセスである電気炉鋼片を使用した鋼材需要については増加するものと思われます。

 

(3) 対処すべき課題

このような厳しい経営環境のもと、短期的には、主原料価格の高騰に対し鋼材販売価格を引き上げ、鋼材スプレッドの改善を図るとともに、鋼材需要状況に応じた鉄源のフレキシブルな調達、生産能率の改善によるコストミニマム操業や固定費の圧縮などが課題となります。中長期的には、「(4) 中期経営計画における取り組み」に記載の長期ビジョンのもとで新たに策定した2022年度からの3ヵ年の中期経営計画に取り組んでまいります。2022年4月1日に完全子会社の中山三星建材株式会社を合併するなど、加工ビジネスの強化によりグループ一体での付加価値向上による連結収益最大化を図ります。また、カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて、環境負荷が小さい電気炉鋼材の普及拡大を図るべく、電気炉メーカーである強み・優位性を活かした成長戦略を推進するとともに、新たに設置されたサステナビリティ委員会の推進体制のもとでサステナビリティへの取り組みを一層強化いたします。当該中期経営計画の達成のためには、原料面で自家電気炉鉄源の比率アップと外部鉄源の安定調達が課題となります。鋼材生産に必要な鉄源の大半を外部からの購入で賄っておりますが、鉄スクラップを原料とした自社の電気炉鉄源能力の拡大が収益向上に繋がると考えております。販売面では高付加価値製品へのシフト・販売品種構成の最適化、グループ会社における加工ビジネス強化などが課題であります。財務面においては、中期経営計画の重点施策の実施や成長戦略投資の実行によりグループ連結収益目標を達成することで、株主還元の改善や財務体質の健全性を確保していくことが課題であると認識しております。

さらに、当社は将来的な国内鉄鋼需要の減少や国際的な競争激化に対応していくために、中部鋼鈑株式会社と包括的業務提携契約を締結し、地球温暖化対策の観点から将来的に拡大が予想される電気炉鉄源での連携などに取り組んでおります。具体的には、当社が電気炉特性を活かした厚板の製造の一部を中部鋼鈑に委託することや現在中部鋼鈑に製造委託しているスラブの鋼種や数量の拡大を図ります。そのほか、原材料調達や製品物流面での相互協力など多岐に亘って提携検討を行います。さらに、電気炉メーカーとして「脱炭素社会」『循環型社会』に貢献すべく、両社の重点課題に取り組むための協働関係の構築につき合意し、中部鋼鈑の電気炉更新計画への当社の協力やカーボンニュートラルに向けた協働など環境面でのSDGsへの取り組みを両社で進めてまいります。

 

(4) 中期経営計画における取り組み

上記のような課題に対し、当社グループは2030年のありたい姿・目指す企業像として「中山製鋼所グループ2030長期ビジョン」を定め、その実現に向けて新たに2024年度を最終年度とする3ヵ年の「中山製鋼所グループ中期経営計画」を策定しました。長期ビジョン及び中期経営計画の概要につきましては以下の通りです。

1.中山製鋼所グループ2030長期ビジョン

 当社は、2019年に創業100周年を迎えましたが、さらに100年先も躍動し続けるグループを目指し、長期ビジョンとして2030年のありたい姿・目指す企業像を策定しました。当社グループの経営理念やグループビジョンを踏まえ、電気炉メーカーである強みや優位性を活かした成長戦略を推進するとともに、持続可能な社会の実現に貢献することを目指します。

 

中山製鋼所グループ2030長期ビジョン~ありたい姿・目指す企業像

ありたい姿・目指す企業像

・カーボンニュートラル実現に向けて尽力する企業

・従業員のモチベーションをアップさせ、家族の幸せを追求する企業

・社会に貢献し地域と協調・共生する企業

・お客様に中山製鋼所グループを選んでいただき、喜んでいただける企業

・ステークホルダーに安心していただき、喜んでいただける企業

 

 

経営理念、行動指針、グループビジョンは、上記「(1) 経営方針」に記載の通りです。

 

 カーボンニュートラル社会・循環型社会への対応として、2050年のCO2排出量実質ゼロに向け、2030年度のCO2排出量を2013年度対比46%削減するよう取り組みます。CO2排出量が高炉に比べて少なく、鉄スクラップを製品に再生する資源循環プロセスである電気炉鋼のニーズが高まっており、電気炉の生産量拡大やエコでグリーンな購入鉄源へのシフトを進めます。前中期経営計画期間(2019~2021年度)では、電気炉の生産性向上・省エネ・環境改善を目的とした合理化投資の実施や操業時間の延長を図るとともに、電気炉新設を含めた抜本的な電気炉生産能力の増強策を検討しました。本中期経営計画期間(2022~2024年度)では、長期の成長戦略としてより詳細な検討を重ね具体化します。

 

2.中期経営計画(2022~2024年度)の概要

 中山製鋼所グループ2030長期ビジョンの実現に向けて、そのスタートとなる3年間の中期経営計画を策定しました。その概要は以下の通りです。

 1) 重点方針

  ① ”中山らしさ”の追求、グループ一体での付加価値向上による連結収益最大化

当社は、2022年4月1日に完全子会社の中山三星建材株式会社を合併しました。加工ビジネスへの取り組みを一段と加速させ、当社グループのシナジーを拡大させるとともに、その実現を通じて当社グループの総合力強化を図ります。母材となるホットコイルから加工製品までの一貫メーカーとして強みをさらに発揮し、コスト・品質・デリバリー面での競争優位性をさらに高めます。同日付けで製品開発本部を創設し、技術開発・商品開発も推進します。

また、縞鋼板の切断や2次加工能力の増強のため、完全子会社の三泉シヤー株式会社の第2工場を当社構内に建設し、2023年度から営業生産を開始する予定です。

グループ全体で加工分野を強化するとともに、サプライチェーンの拡大により高付加価値品の拡販に努めます。

 

  ② カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けた取り組み強化

月間5万トンの電気炉生産体制を確立し、上級スクラップ使用比率の低減や原単位の向上に一層取り組み、コスト競争力を高め、電気炉鋼材の普及拡大に注力します。長期的な視点に立ち、鉄スクラップの集荷対策も講じてまいります。

長期成長戦略の検討については、2022年2月1日に設置した「製鋼プロセス改革検討グループ」にて、電気炉新設を含めた抜本的な電気炉生産能力増強策の詳細検討を進めます。

また、気候変動対策をはじめとしたサステナビリティへの取り組みを推進すべく、サステナビリティ委員会を設置し、CO2削減への取り組みを強化するとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言などに沿った情報開示に取り組みます。

 

  ③ 中部鋼鈑株式会社との業務提携の推進

2021年4月に中部鋼鈑株式会社と包括的業務提携契約を締結し、同社からのスラブ供給や同社への厚板生産委託などを推進しております。同社の新電気炉完成後の2023年下期以降では提携内容の拡充を図ります。相互にメリットを享受しながら、カーボンニュートラル・循環型社会の実現に貢献してまいります。

 

  ④ 経営基盤の強化

鉄鋼事業の競争力維持・強化のため、生産設備の新陳代謝を促進します。将来を見据えた計画的な更新投資により次期中期経営計画(2025~2027年度)以降での投資負担の軽減も図ります。また、安全性向上のための投資については別枠を設け、安全・安定操業への取り組みを一層強化します。

また、遊休設備の解体撤去も促進します。当社船町工場での遊休設備解体後の跡地活用に向けた準備を進めます。

DXへの取り組みとして、前中期経営計画期間から進めている電子契約、ワークフローシステム導入やRPA活用による業務効率化の対象範囲を拡大します。また、グループシステム共通の基盤を構築するとともに、業務のあり方を見直しつつデータ活用の基盤づくりを検討し、2024年度には当社の基幹システムを更新することにより、業務の改善を推進します。

 

  ⑤ ステークホルダーに貢献する取り組み強化

ガバナンス体制の強化として、当社は、2022年2月28日の取締役会において、同年6月28日開催予定の定時株主総会にて関連する定款変更議案が承認されることを条件に、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行することを決議しました。経営の意思決定の迅速化を図り、取締役会における経営の基本方針等の議論をより充実させるとともに、取締役会による業務執行への監督機能を強化してまいります。

また、コンプライアンスの徹底を図り、安全・防災を最優先し無事故・無災害の実現を目指すとともに、健康経営の一層の強化を推進します。働き方改革を進めワークライフバランスの充実を図っていきます。

 

 以上のように経営基盤の強化や収益力向上により企業価値を高め、業績に見合った安定的な株主還元を行うことを目指すとともに、株主・投資家に向けて非財務情報を含めた情報開示の充実や建設的な対話の促進に努めます。

 

2) 経営目標

  本中期経営計画の最終年度である2024年度の定量目標・KPIは以下の通りです。

経常利益

100億円

投資額

190億円/3年間

ネットD/Eレシオ

0.1倍程度

ROE

7.0%

配当性向

30%

 

 

 

(5) サステナビリティ経営の推進

① 気候変動への対応

世界全体で気候変動対策を進めることは喫緊の課題となっております。わが国は、脱炭素社会への挑戦が産業構造や経済社会の発展につながり、環境と経済の好循環を生み出すという発想の下、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すと2020年10月に宣言し、日本鉄鋼連盟においても、「わが国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を2021年2月に打ち出しました。

当社はこのようなわが国や日本鉄鋼連盟の取り組みの趣旨に賛同し、一度寿命を全うした鉄スクラップを主原料として、再度新たな鉄鋼製品によみがえらせる資源循環型の事業を通じて脱炭素社会の構築に貢献してまいります。

当社では自社電気炉を用いた鋼材製品の製造以外に他社鉄鋼メーカーから素材を調達した鋼材製品も製造しております。自社のCO2排出量(スコープ1、スコープ2)削減は重要な課題であり、加えてライフサイクル全体を考えた場合、他社メーカーから調達した素材の製造段階のCO2排出量(スコープ3の一部)は大きな比重を占めており、それらを合計したCO2排出量を削減することが重要と考えております。

2020年には電気炉の生産性向上および省エネ設備を導入するなどしてCO2排出量およびCO2排出量原単位の削減を進めました。

現在も継続的にCO2排出量削減に取り組んでおり、「カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」という国および鉄鋼連盟の方針に則って、今後2030年までにCO2排出量を2013年比で46%削減し、2050年にはゼロにする取り組みを推進してまいります。当社は、カーボンニュートラルの実現に向けて、GXリーグの基本構想に賛同・参画を表明し、脱炭素社会に向けた経済社会システム全体の変革に取り組んでまいります。

また、当社は、持続可能な成長と社会的課題の解決に向け、サステナビリティへの取り組みの推進と中長期的な企業価値の一層の向上のため、取締役会の下に社長を委員長とし、経営会議メンバーで構成される「サステナビリティ委員会」を設置しました。本委員会では、「中山製鋼所グループ2030長期ビジョン」のもとで特定されたマテリアリティとその推進方針に従い、必要な戦略の立案・評価を行うとともに、サステナビリティへの取り組み状況の確認や審議を行い、その内容を取締役会へ報告し、取締役会からの提言を受け、活動への反映を行います。また、本委員会の下部組織として、「環境マネジメント委員会」、「品質マネジメント委員会」、「カーボンニュートラル推進委員会」、「情報開示委員会」をそれぞれ設置しました。これらの組織を中心にサステナビリティに関する取り組みを推進し、気候変動への対応としては、そのリスク及び機会を明確にした上で、気候変動の緩和や適応に向けた活動に取り組んでまいります。

 

多様な人材の確保と育成への取り組み

当社は、急激に変化する外部環境を適切にとらえ次の時代を見据えた抜本的な変革を実現するために、企業理念の浸透、戦略人事の展開を図り、加えて人材育成の強化、人材のダイバーシティ推進という2つの観点からの取り組みを実施いたします。

人材育成に向けては、自律的キャリア開発を土台に一人一人のポテンシャルを最大化させる「多様なキャリア形成」の実現と次世代経営層、リーダーの早期育成を図ってまいります。

ダイバーシティ推進としては、成長戦略をけん引する強みや個性を持つ人材採用に加え、性や価値観等によらず多様な人材が活躍できる環境を整備してまいります。

具体的には、当社はジェンダー・中途採用を問わず、管理職への登用を行う方針としております。2022年3月末時点での女性の管理職が全管理職に占める割合は7%にとどまっておりますが、今後は初級管理職である係長(マネージャー)候補者が育ってまいりますので、2026年3月末におけるマネージャー職に占める女性の割合を25%以上とする計画としております。

また、当社はワークライフ・バランスの充実を図るべく、働き方の多様化にも対応しております。育児・介護休業、在宅勤務、時短勤務、半日有給等の制度の整備、リモート環境や更衣室及びトイレ等の設備の整備を行っております。今後も引き続き、男性育児休業の取得推進やシニア人材の活用など、多様な人材が活躍できる制度の充実や環境の整備を進めてまいります。

 

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