本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項(事業等のリスク)には次のようなものがあります。これらのリスク発生の可能性を的確に認識し、リスクの軽減と発生の回避、リスクが顕在化した際の迅速な対応にグループの総力を挙げて取り組んでいきます(リスクマネジメント体制については、「第4、4、(1)、②、『3 リスク管理体制の整備状況』」のとおりです)。
なお、文中における将来の事項については、有価証券報告書提出日(2022年6月27日)現在において判断したものです。
(1) 日本製鉄株式会社との関係について
本書提出日現在、日本製鉄株式会社は当社発行済株式の25.8%(当社議決権比率では26.7%)を保有する当社の筆頭株主であり、当社は同社の持分法適用関連会社であります。しかしながら、当社は自ら経営責任を負い、独立した事業経営を行っており、今後もかかる経営を継続していく方針であります。ただし、同社は当社に対して相応の株式を保有していることから、当社の筆頭株主として議決権行使等により当社の経営等に影響を及ぼし得る立場にあり、同社の利益は当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。
(2) 原材料・副資材およびエネルギーの価格上昇ならびに調達制約について
当社グループが使用する原材料(鉄スクラップ)、副資材(電極、合金鉄等)やエネルギー資源(石油、液化天然ガス等)は、グローバルな需給要因による価格変動リスクにさらされています。特に副資材やエネルギー資源は、原産地が世界的に遍在しており、各国ともに輸入に大きく依存している状況にあります。グリーンフレーションや地政学的要因等により、これらについて価格上昇や供給不足が生じた場合、製造工程におけるコストの他、輸送コストが増加し、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、世界3極(日本・ベトナム・北米)に事業展開する強みを活かし、世界各地の最新のマーケット情報を収集しながら、調達価格・時期等について的確な判断を行うとともに、安定的な原材料、副資材調達のため、信頼できる調達先の複数確保に取り組んでいます。また、電力原単位の低減を中心とした生産性の向上等、コスト削減に取り組むとともに、営業力強化、製品品質の向上や付加価値製品の開発等、競争力の向上のための具体的取り組みにより、コスト上昇の影響を吸収するよう努めています。
(3) 競争に伴う販売価格下落および出荷量減少について
当社グループの中核事業である国内鉄鋼事業は、競合する電炉メーカーが多数存在し、構造的な供給能力過剰問題を抱えています。よって、営業戦略の強化や新製品の開発など競合メーカーの動向次第では販売量確保のための競争が生じ、販売価格の下落および出荷量の減少により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社では、競合メーカーに対抗しうる営業力強化と製造コスト削減、製品品質の向上や付加価値製品の開発といった取り組みを通じ、競争力の向上を図っています。
(4) 国内建設需要の減少について
人口減少が進む成熟した日本経済の下、長期的に見て、国内の公共事業、民間建設需要が大きく伸長することは考えにくく、当社グループの主力製品である異形棒鋼の需要もそれに伴い減少することが考えられます。減少する需要を当社グループで捕捉できない場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、人口増加や経済発展により建設需要の見込まれる海外へ積極的に進出しています。現在、世界3極体制(日本・ベトナム・北米)を盤石とするため、グローカル・ニッチ戦略のもと、各エリアにおいて事業投資を進めるとともに、積極的な設備投資を行い、グループ全体で業績の最大化・安定化に取り組んでいます。
(5) 気候変動に係るリスクについて
当社グループは日本、ベトナム、米国、カナダに製造、販売等の拠点を設け事業を展開しています。これらの国あるいは地域において、温室効果ガス排出規制の強化、カーボンプライシングの導入、情報開示義務の拡大、脱炭素化に向けた技術開発や設備投資負担など、カーボンニュートラル社会へ移行する過程で生じる「移行リスク」や、地球温暖化などの気候変動に伴う台風、洪水、猛暑など異常気象の深刻化による当社グループの工場操業停止、また仕入れ先企業などの事業活動の停滞による原材料調達の困難化、加えて、従業員の安全・健康への悪影響などの「物理的リスク」により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、製造工程で排出するCO₂の排出量削減のため、エネルギー原単位の低減や燃料転換、太陽光パネルの設置による自家発電などに取り組んでいます。また、夏場の暑熱対策や省人化・自動化に向けた設備投資等により、気候変動に伴い過酷化する職場環境の整備を進めるとともに、事業継続計画(BCP)を策定して、有事の際に従業員の安全と製品の安定供給を確保するための手順等を定めています。さらに、リスクマネジメント体制を見直し、「リスクマネジメント委員会」および「気候変動部会」を立ち上げ、気候変動が当社の事業活動に与える影響についてTCFDの枠組みに基づいてシナリオ分析したうえで、リスクおよび収益機会に関する情報を開示しています。
(6) 自然災害、感染症、戦争・テロ行為等の発生について
当社グループは日本、ベトナム、米国、カナダに製造、販売等の拠点を設け事業を展開しています。これらの国あるいは地域において、地震、火災、台風および洪水等の自然災害、新型コロナウィルス感染症、戦争・テロ行為やそれらによる軍事的緊張等が発生した場合、当社グループの事業活動そのものの停滞、または仕入れ先企業等の事業活動の停滞による原材料調達の困難化等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、これら自然災害等にかかるリスクに備え、事業継続計画(BCP)の策定・訓練の実施、耐震対策、在庫の確保、製品や設備予備品等の拠点間融通など、従業員の安全確保、製品の安定供給のための体制を整備するとともに、損害保険への加入等を通じてリスクの低減に努めています。
(7) 為替および金利の変動について
当社グループのカナダやベトナムの海外子会社は、主に米ドル建ての鉄鋼製品の輸出や原材料(鉄スクラップ)等の輸入取引を行っています。また、海外子会社の財政状態や経営成績は連結財務諸表上で日本円に換算されます。よって、想定を超えた為替相場の変動が生じた場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、為替予約の締結や同一外貨建ての債権債務ポジションの保有により、一定の為替変動リスクの低減を図っています。
当社グループは、事業資金の一部を金融機関からの借入、社債の発行等により調達しています。金利が急激に上昇した場合、資金調達コストの増加により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、固定金利借入による資金調達や金利スワップ導入による金利の固定化により、金利変動リスクの低減に努めています。
(8) 人権に関するリスクについて
当社グループにおいて、労働災害、長時間労働およびハラスメントその他の人権問題が生じた場合、従業員の心身両面における健康が毀損され、ひいては生産性や従業員エンゲージメントが低下することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、安全衛生監査、従業員意識調査や相談窓口の運用を通じて、上記諸問題の端緒を早期に把握することに努めるとともに、省人化・自動化に向けた設備投資や教育機会の充実等を通じて、安全・安心な職場環境の整備、適正な企業風土の醸成に取り組んでいます。
当社グループの事業活動にかかわるサプライチェーンにおいて生じ得る種々の人権問題に対して関心を払わず、あるいは放置した場合、レピュテーションの低下、訴訟対応等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、経営方針として人権尊重に取り組むことを人権ポリシーとして明文化して社内外に公表しています。当該方針に基づき、当社の事業活動における人権への影響評価と、影響評価を基礎とした適切な予防・是正措置の実施およびモニタリングを行い、これら一連の活動については適切に情報公開を行っていきます。
(9) 多様な人材の確保について
当社グループは、事業の運営・成長に必要な人材の確保に努めていますが、事業運営には、各種の資格や技能・専門知識を有する人材の確保が必要であり、これらの人材育成には相応の期間を要することから、今後、少子化等による労働市場の需給逼迫や人材流動化の進展等により、人材の確保が想定どおりに進まない場合、中長期的には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、新卒採用と併せ、中途採用も積極的に活用しながら、性別・国籍を問わず、専門人材、海外人材、障がい者など多様な人材の確保に向けた採用活動を行うとともに、従業員がより活躍できる職場環境を整備すべく、事務所棟・厚生棟の新築、人事・福利厚生諸制度の改定や健康経営に取り組むなど、魅力ある企業づくりに努めています。
(10) コンプライアンスに反する事象の発生について
当社グループが展開する事業に関しては、製品の品質・取引関係・環境・労務・安全衛生・会計基準・税務等の多岐にわたる法規制や、種々の社会的要請が存在することから、コンプライアンス関連のリスクを完全に回避することは困難です。そのため、法規制や社会的要請に反する事象が発生した場合、許認可その他の事業資格の喪失や、レピュテーションの低下、訴訟対応等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、行動指針に高い倫理観を持ち、公正・誠実を旨として行動すべきことを謳い、リスクマネジメント委員会およびリスク・コンプライアンス部会における議論や役員・従業員に対する啓蒙・教育の実施等を通じてコンプライアンス体制を構築するとともに、事業拠点毎にコンプライアンス推進計画を策定・実践するなど、自主的・自律的なコンプライアンス活動の推進に努めています。
(11) 情報システム障害および情報セキュリティリスクについて
当社グループが展開する事業に関しては、情報技術を広範囲に活用しており、情報システムやネットワークに障害が発生した場合、業務や操業の停止等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、システム稼働状況の監視、ネットワーク回線の複数化、障害発生時の復旧手段の標準化等、障害発生の未然防止と速やかな復旧体制の確保に努めています。
また、サイバー攻撃等により、情報システムが正常に作動しなくなった場合、業務や操業の停止等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、ネットワーク境界線の防御、定期的なデータのバックアップ、機器の脆弱性検知等、セキュリティインフラ基盤の整備を図るとともに、リスクマネジメント委員会の下部組織として設置した情報セキュリティ部会において、リスクの特定や対応方法の検討等、情報セキュリティマネジメントを進め、機器強化と運用強化の両面で情報セキュリティリスクの回避、低減に努めています。
(12) 海外事業固有のリスクについて
当社は、ベトナム、米国およびカナダに子会社を所有していますが、各国、特にベトナムでの予期し得ない政治または法令・規制・社会制度等の変化等により事業活動が停滞する等の事態に陥った場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、現地経営陣から定期的に現地の経済状況・鋼材市況や業績の報告を求めるとともに、進出先の国あるいは地域の法令・税制やその変更点等について、外部専門家を活用しながら対応に努めています。
当該子会社が外国資本との合弁会社である場合、意思決定や事業運営に一定の制約が生じます。この結果、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、子会社の合弁相手先との意思決定の方法や事業運営の役割分担について、当社グループに不利益のないよう合弁契約等において明確に定め運用するとともに、合弁相手先と定期的に子会社の経営に関する情報交換を行う等、連携強化を図り円滑な事業運営に努めています。
(13) 環境リサイクル事業固有のリスクについて
環境リサイクル事業の事業活動においては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃掃法)により定められた許可を要しますが、法規制や社会的要請に反する事象が発生した場合、許認可その他の事業資格の喪失等により事業が継続できないことで、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、廃掃法を遵守するよう役員・従業員に対する啓蒙・教育の場を設けるとともに、法令等に関する最新の情報を社内で共有するなど管理体制強化を図っており、廃棄物処理の実務における法令遵守状況の管理強化に努めています。
顧客である排出事業者からより高度なリサイクル方法が求められる中、新しいリサイクル技術の開発とその設備導入が必要であり、それらにかかる費用の増加、また技術開発・設備導入遅延による顧客の減少などにより、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、排出事業者の企業活動領域のグローバル化に伴い、特に国内外の環境規制の情報収集を行い、早期に対応を行うことで顧客確保を図るとともに、外部と共同して廃棄物処理に関する研究及び技術開発を行い、更なるリサイクル技術の向上に向けて注力します。
(14) 品質に関する問題の発生について
当社グループの製品に関する品質については、産業標準化法に基づくJISや建築基準法、評定等の公的規準並びに取引先との契約等によって規定されています。また、近年各業界において、品質違反、品質偽装等の問題が発生して社会的な耳目を集める状況下、当社グループの製品は、不特定多数の生命・財産に影響を及ぼす建設物や工作物に関連するものが多く、その品質には社会的にも強い関心が寄せられているものと認識しています。そのため、品質に関する問題が発生した場合、公的認証や取引の喪失、レピュテーションの低下等により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、品質管理室においてグループ横断的な品質統括管理を行い、計画的に品質監査を実施するとともに、中央品質管理委員会において、品質監査で把握された品質管理に関する重要課題に改善指示を行うなど、品質管理体制を強化しています。また、各生産拠点においては、検査・試験工程において、手介入によるデータ改竄・誤入力のリスクを低減する目的で自動測定機器や自動伝送システムの導入など、ハード面においても品質管理上の問題発生を抑制するための対応を進めています。
(15) 環境に関する問題の発生について
当社グループが展開する鉄鋼事業および環境リサイクル事業(廃棄物処理業)は、操業に伴い煤煙や煤塵、残渣が不可避的に発生するという性質上、各種環境法令の規制を受ける他、当社グループの実施する環境保全施策については、生産拠点の所在する近隣住民をはじめ、高い社会的関心が寄せられているものと認識しています。そのため、特に規制等が変更された場合には、設備の導入や人員の確保等、相応の追加投資が必要となり、規制等変更に対する対応の巧拙によっては、行政処分等に基づく事業停止やレピュテーションの低下等により、当社 グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、法令に基づく環境データ測定を定期的に実施するとともに、環境監査においてその実施状況を確認しています。また複数の拠点において環境マネジメントシステムISO14001 を取得し、環境保全のための体制整備を行っています。さらに排ガス集塵機といった環境設備の維持更新、排水量の総量削減のための工場で使用する冷却水のクローズドシステムの構築など、環境保全に資するハード面の整備にも取り組んでいます。さらに、鉄鋼生産および廃棄物処理時に発生する副産物を有効利用するために外部研究機関や技術保有企業と連携を行い、ゼロエミッションの実現に取り組んでいます。
(16) 電気炉設備の故障や事故等の発生について
当社グループが展開する鉄鋼事業は、高電圧の電力使用による電気炉操業が製造の中核であり、その心臓部である電炉トランスが故障した場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、日頃から綿密な設備管理を行うとともに、工場設備の定期的な保全および計画的な更新に取り組んでいます。
また、水分を含んだスクラップや密閉容器の混入などにより、電気炉操業時に水蒸気爆発が発生し、設備の破壊、操業の停止に至った場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、収集業者への指導と受入れ検査の徹底により異材混入の排除に努めるなど、鉄スクラップ受入れ時のチェック体制を強化しています。
(17) 企業買収や資本提携等に係るリスクについて
当社グループは、今後の事業拡大に向けて企業買収や資本提携等が重要かつ有効であると認識していますが、買収後に偶発債務の発生等、未認識の債務が判明し損失が発生する可能性も否定できません。また、買収後の事業環境や競合状況の変化等により買収当初の事業計画遂行に支障が生じ、計画どおりに進まない場合は、のれん等の減損損失等の損失が発生する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、企業買収や資本提携等を検討する場合、対象会社の事業・財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行うとともに、コストアプローチ法、インカムアプローチ法などにより、買収対象たる企業や事業等の価値を多角的に検証・精査することで、極力リスクを回避するように努めています。なお、企業買収にかかるのれんの当連結会計年度末の連結貸借対照表計上額は9億円です。
(18) 固定資産の減損リスクについて
当社グループは、国内鉄鋼事業、海外鉄鋼事業を中心に生産設備や土地等の固定資産を有していますが、設備投資による効果が得られないこと等により、保有資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用による減損損失が発生し、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、事業の成長に必要な設備投資を行う中で、特に大規模な設備投資については投資効果・採算性の検証を綿密に行い、極力減損リスクを回避するように努めています。また、設備の稼働後も、予実管理を継続的に実施しています。
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