課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

(1)経営方針

 当社は、創立の精神である『高級特殊鋼を製造し、産業界に貢献する』に基づき、特殊鋼素材開発、製造、精密部品加工、熱処理、表面処理から成るバリューチェーンを活かした特徴ある商品をお客様に提供しております。また、お客様とのコラボレーションによる新たな商品開発も含め、多方面で新しい技術開発に取組んでおります。さらに、海外での生産活動も積極的に進め、タイとインドの生産拠点と連携し、グローバルに広がるお客様の多様なニーズに応えております。

 2022年度は、前年度の流れを継続し、「チームで成長、止めるな進化」をスローガンに掲げました。これまでの活動を強化するとともに、多様化するお客様のニーズを先取りした開発商品を市場に提供することで、これからも産業界の発展ならびに人々の豊かな暮らしに貢献できるよう挑戦し続けてまいります。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 新型コロナウイルス感染症については、一部で感染拡大が続いているものの、感染対策が進み世界的に経済活動は正常化に向かっています。一方で、ロシアのウクライナ侵攻の影響も含め、原材料価格高騰や部品不足が深刻化しており、世界経済の先行きは不透明さが増しています。

 当社の主要顧客先である自動車産業は、電動化が加速する中、素材メーカーに対するニーズも大きく変わってきています。自動車産業に次ぐ顧客先である半導体産業では、需要が変動する中で柔軟な生産対応が求められております。また、半導体商品の世代交代が頻繁であるため、常に新しい商品の開発が要求されております。さらに、産業の垣根を越えた世界的なカーボンニュートラル実現に向け、ものづくりの方法を見直すとともに、環境に配慮した商品開発が求められています。

 このような状況下、当社では新型コロナウイルスの感染防止に努めながら、2021年5月に策定した中期経営計画に沿って活動を進めてきました。

 

①特殊鋼事業

a.特殊鋼事業全般

2021年度から原材料やエネルギー等のコストが上昇しており、製造原価の低減と販売価格の適正化が課題と認識しております。これまで同様、製造工程や各種副資材の見直しによる原価低減活動は継続いたしますが、その活動効果を上回るコスト上昇については、お客様が納得できるよう丁寧に説明しながら、販売価格に適正に反映できるよう協議を進めてまいります。

また、自動車の電動化によりエンジン用商品の市場は縮小すると見込んでおり、新たな市場開拓も課題であります。2021年度は、弊社の主力商品の一つである電磁ステンレス鋼を含めた機能材料の市場を深掘りしてきました。その結果、新たに電動車の部品や半導体製造装置などの需要が見えてきたことから、生産能力増強や新技術獲得のための設備投資計画の検討を開始しました。2022年度は各々の投資計画を確実に実行してまいります。

 

b.新事業・新商品

世界的なカーボンニュートラル実現に向け、当社は素材メーカーとして積極的に新事業の創出と新商品の開発を進めてまいります。

日立製作所グループや大同特殊鋼と共同で取組んでいる次世代モーターの開発が、新エネルギー・産業技術総合開発機構のグリーンイノベーション基金事業「次世代蓄電池・次世代モーターの開発」プロジェクトとして採択されました。その開発活動の中で、当社はモーター用素材の開発を担います。

また、2021年度に「麒麟磁」として商標登録した磁歪クラッド材を活用した商品開発を継続してまいります。新たに農業分野での活用が見えてきており、早期の商品化と販売ルートの確保を目指します。

新事業・新商品開発のためにはより一層の開発機能の強化が必要となります。2021年度は従業員2名を東北大学博士課程へ入学させ、高度な知識や技術の習得を図っております。今後も継続して博士課程へ従業員を派遣してまいります。併せて、社内の開発体制を見直し、新商品の開発に注力できる環境を整えてまいります。

 

c.海外事業

タイの加工事業については、単体での黒字化を達成しておりますが、その維持が課題と認識しております。今後も安定して収益を生み出せるよう、既存商品の安定生産と新規商品の受注活動に注力いたします。

インドの鋼材事業については、量産稼働後間もなく新型コロナウイルス感染症が拡大したことで、事業基盤が不安定な状態が続いておりました。2022年度は日本国内とのコミュニケーションをこれまで以上に深め、早期の事業安定化を目指します。

 

d.事業基盤

これらの取組みの下支えとして、企業風土改革とデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)による事業基盤の強化が課題です。

企業風土改革では、当社企業グループ内でのコミュニケーション活性化のための各種取組や階層別の教育を充実させてきました。その取組みとして、全社横断的なプロジェクトを立ち上げましたが、上述の新市場開拓や新商品の開発として成果が上がりつつあります。

DXについては、工場の基幹システムの刷新や設備のIoT化を進めております。直接的にDXを実現するものではありませんが、データを活用した経営や、事業構造の転換に資するものと考えております。

 

②不動産賃貸事業

 旧長町工場用地に建設した商業施設である「ザ・モール仙台長町」を中心とした不動産価値の最大化が課題です。インターネット通信販売の普及や人口減少により、実店舗での販売は減少傾向が見られますが、これからも「安全・安心・快適」な施設作りとビルメンテナンスの提供を行い、集客力の維持・向上を図ります。また、地域や近隣店舗との連携を強化し、仙台市長町エリアの活性化を目指します。

 特殊鋼事業同様、不動産賃貸事業でも事業基盤の強化が課題となりますが、2022年度は従業員の待遇の見直しや職場環境の改善に取組みます。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、産業のグローバル化を背景に厳しい価格競争を強いられる事業環境のなか、さらなる経営基盤の強化・持続的発展に向けた戦略投資に向けて積極的に資源配分しつつ、収益確保を目指しております。

 直近策定の中期計画では、最終年度の2024年3月期において連結売上高210億円、連結経常利益21億円を目標としております。

 

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