(1) 経営成績等の状況の概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響下で、各国のワクチン接種の進展状況や経済政策にばらつきはあるものの、世界的な景気回復の動きを背景に緩やかな回復基調となりました。しかしながら新型コロナウイルス変異株による感染の再拡大、ウクライナ情勢を起因とした原材料・エネルギーの価格急騰など、年度末に近づくに従い、先行きの不透明感が増す状況となっております。
ステンレス業界におきましては、自動車関連を中心に需要は回復傾向にありますが、半導体の供給制限長期化や国際海上輸送のコンテナ不足によるサプライチェーンの混乱等による景気の下振れリスク懸念や、原材料、副資材、エネルギー、物流などの諸コスト上昇により、厳しい事業環境が継続しております。
このような事業環境のもと、当社グループは、原材料などの諸コスト上昇を反映させた販売価格の是正、徹底したコストダウン、生産効率の改善、品質改善など、全社的な収益改善活動に取り組んだことで、当初は損失予想であった損益面を、利益計上に転ずることが出来ました。
2019年11月に発生した当社板橋工場第三圧延工場火災事故の復旧につきましては、2022年3月には全ての設備の稼働体制を整え、全面復旧をしております。また、2020年4月よりスタートした第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」の2年目として、引き続き新技術・新製品を主力とする事業構造へのシフトに注力しております。
この結果、当連結会計年度の連結業績につきましては、売上高は前期と比べ9,010百万円 (22.5%)増収の49,117百万円となりました。損益面につきましては、営業利益は1,437百万円(前期は2,386百万円の損失)、経常利益は1,337百万円(前期は2,454百万円の損失)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、受取保険金2,448百万円などを特別利益に計上する一方、福島工場の遊休資産に対して減損損失340百万円を特別損失に計上したことなどにより、2,517百万円(前期は277百万円の損失)となりました。
セグメントごとの業績を示すと、次のとおりであります。
a. みがき帯鋼事業
冷間圧延ステンレス鋼帯につきましては、主力製品である自動車関連製品の需要が回復したことに加え、電子部品関連では5Gなど情報通信高速・大容量化に伴うデータセンター向けサーバーや生活様式・働き方の変化に伴うパソコンCPU、ゲーム機向け用途などで板厚厳格、表面厳格などの高精密仕様の製品需要が伸び、医療関連では注射針用途でコロナワクチン追加接種に伴う需要増がありました。第11次経営計画の重点施策である機能強化製品(既存技術を深化する事で機能を充実させ競争力を高めた製品)の拡大では、メタリック感を活かした黒加飾ステンレス鋼(ファインブラック仕上)が国内自動車メーカー高級車の外装モール用材に採用されたほか、ステンレス箔材がフォルダブル携帯端末用途に採用され、販売増となりました。
みがき特殊帯鋼につきましては、欧米市場の住宅関連向け刃物用途や、CASE関連の新需要として環境車向け駆動系部品で採用された熱処理鋼帯が販売増となりました。
以上の結果、みがき帯鋼事業の売上高は、前期と比べ7,006百万円(22.2%)増収の38,578百万円となりました。セグメント損益は、当社板橋工場第三圧延工場火災事故に伴う代替工程での生産に係るコスト増が通期にわたり影響しましたが、歩留改善等の生産性向上によるコスト低減や原材料等のコスト上昇を反映させた販売価格の是正等もあり、営業利益は1,403百万円(前期は1,653百万円の損失)となりました。
b. 加工品事業
福島工場取扱製品につきましては、主力製品である自動車駆動部品用高精度異形鋼は、自動車市場の回復を受け販売増となりました。その他の製品につきましては、耐摩耗性と軽量化に加え、意匠と対滑り性の機能を実現した平鋼製品が生産工場等の径路(キャットウォーク)用材に採用され販売増となりました。また、精密摺動機器のスライドレール用途も中国向けを中心に販売増となりました。
岐阜工場取扱製品につきましては、自動車、建機向け燃料配管等では、品質保証及び供給体制が評価され、販売増となりました。医療、計測機器向けは中国市場が回復し、高水準の需要が継続しました。また、新たに開発したステンレス鋼とPEEK樹脂の複合管であるFINE PEEK-STは、医療、製薬、工業製品分析用途に加えて、バイオ・生体などの次世代分析用途などへの拡大に向け、新規需要の開拓を図りました。
以上の結果、加工品事業の売上高は、前期と比べ2,003百万円(23.5%)増収の10,538百万円となりました。セグメント損益は、増収や生産及び検査設備の自動化による生産性向上などの取り組みにより、営業利益は前期と比べ715百万円(183.9%)増益の1,104百万円となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ8,001百万円増加の72,179百万円となりました。
流動資産は、5,602百万円増加の36,580百万円となりました。これは主に、棚卸資産が2,056百万円増加したこと、売上高の増加等により受取手形及び売掛金と電子記録債権との合計額が1,986百万円増加したこと、特別利益に計上した受取保険金が入金されたこと等により現金及び預金が1,362百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、2,399百万円増加の35,598百万円となりました。これは主に、有形固定資産が2,683百万円増加したこと等によるものであります。
負債合計は、前連結会計年度末と比べ5,162百万円増加の48,865百万円となりました。
流動負債は、6,199百万円増加の31,778百万円となりました。これは主に、原材料購入の増加等により支払手形及び買掛金が2,919百万円増加したこと、その他に含まれる設備支払手形が2,121百万円増加したこと、未払法人税等が547百万円増加したこと、短期借入金が378百万円増加したこと等によるものであります。
固定負債は、1,036百万円減少の17,087百万円となりました。これは主に、長期借入金が622百万円減少したこと、退職給付に係る負債が360百万円減少したこと等によるものであります。
純資産は、前連結会計年度末と比べ2,839百万円増加の23,314百万円となりました。
株主資本は、2,479百万円増加の16,298百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が2,479百万円増加したこと等によるものであります。
その他の包括利益累計額は、359百万円増加の7,015百万円となりました。これは主に、退職給付に係る調整累計額が276百万円増加したこと、土地再評価差額金が57百万円増加したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の31.9%から0.4ポイント上昇し、32.3%となりました。また、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末の3,058.54円から424.12円増加の3,482.66円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による収支と投資活動による収支を合わせると、1,753百万円の収入(前期302百万円の収入)であり、これに、財務活動による収支を加味すると、1,353百万円の収入(前期2,602百万円の収入)となり、前連結会計年度末に比べ資金は1,362百万円(15.7%)の増加となり、当連結会計年度末には10,065百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、4,500百万円の収入(前期2,346百万円の収入)となりました。これは主に、減価償却費が1,680百万円(前期1,676百万円)であり、仕入債務の増加2,898百万円(前期420百万円の減少)による収入があった一方、売上債権の増加1,943百万円(前期295百万円の増加)及び棚卸資産の増加2,015百万円(前期1,391百万円の減少)等の支出があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,747百万円の支出(前期2,043百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が2,674百万円(前期2,382百万円の支出)であったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、399百万円の支出(前期2,299百万円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の純増額が470百万円(前期1,110百万円の収入)、長期借入による収入が5,000百万円(前期6,800百万円の収入)であったのに対し、長期借入金の返済による支出が5,714百万円(前期5,441百万円の支出)であったこと等によるものであります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載しております。
(2) 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比(%) |
みがき帯鋼事業 |
31,183 |
21.4 |
加工品事業 |
8,180 |
23.7 |
合計 |
39,363 |
21.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっております。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高(百万円) |
前期比(%) |
みがき帯鋼事業 |
40,469 |
35.3 |
6,603 |
40.1 |
加工品事業 |
10,508 |
21.9 |
841 |
△3.5 |
合計 |
50,977 |
32.3 |
7,444 |
33.3 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
みがき帯鋼事業 |
38,578 |
22.2 |
加工品事業 |
10,538 |
23.5 |
合計 |
49,117 |
22.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
田島スチール㈱ |
5,441 |
13.6 |
5,981 |
12.2 |
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