(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)の影響による規制等は徐々に緩和され、企業収益等は持ち直しておりますが、感染症の影響で一部は弱含んでおり、また、ウクライナ情勢の緊迫化に伴って不確実性は高まり、やや力強さを欠いた推移となりました。
海外経済については、経済正常化へ向けた景気刺激策及びワクチン接種の進展等もあり、雇用・所得環境等は持ち直しの動きは見られた一方で、感染症再拡大懸念、米中間の通商政策を巡る動向、金融資本市場の変動及びウクライナ情勢の緊迫化による影響等により、先行き不透明な状況で推移しました。
このような状況のもと、当社グループの売上高並びに損益の大半を占めるニッケル事業の主需要先であるステンレス鋼業界は、感染症の動向及び中国の電力規制問題等による影響には不透明感を残すものの、経済活動の正常化へ向けた動きに伴い需要は持ち直しており、生産設備等の稼働は概ね堅調に推移しました。
このため、フェロニッケル需要は、一定の回復が見られた推移となりました。
フェロニッケル製品の主原料であるニッケル鉱石の調達は、鉱山会社の操業・出荷状況は概ね安定しており、当社生産・販売数量に見合う調達は維持しました。また、ニッケル鉱石の価格に関しては、インドネシア未加工鉱石禁輸政策による影響及び堅調なステンレス需要等を背景に高水準で推移しており、生産コスト高へ影響しました。
ロンドン金属取引所(LME)におけるニッケル価格は、金融資本市場の変動の影響及び不透明な原油商品市況等は継続しており、中国の不動産大手債務問題及び電力不足懸念等も影響して、一時調整局面は見せたものの、感染症の影響で制限された経済活動は再開の動きが拡大しており、また、ワクチン接種加速の期待感等も背景に、上昇基調となりました。しかしながら、第4四半期にウクライナ情勢の緊迫化を契機としたニッケル供給懸念等に伴ってニッケル価格は急騰し、市場が混乱を見せたことで取引は一時停止され、期末へ向けて取引は再開したものの、不透明感が残る推移となりました。
その中で、当社のフェロニッケル販売数量は、海外ステンレス生産者の原料調達が比較的価格優位性の見られるニッケル銑鉄等へ一部シフトしておりますが、前述したステンレス鋼業界の環境を背景に、前連結会計年度と比べ国内外向けともに増加し、全体では前年度比30.1%の増加となりました。
フェロニッケル生産数量は、販売数量と概ね同様の傾向で増加しました。
フェロニッケル製品の販売価格は、不透明感の増す事業環境への対応等は継続している中で、当社適用LMEニッケル価格は前年度比33.8%上昇及び当社適用平均為替レートは前年度比6.1%の円安となり、価格高となりました。
このように、不透明感の継続する経営環境のもと、当社グループは、感染症に対して、「感染拡大防止に関する行動指針」を策定し、感染予防等に努めており、販売先及び調達先の各国と適時適切なコミュニケーションを取りながら、事業活動等に与える感染症の影響について低減を図っております。また、感染症の影響は、今後も継続するものと考えられますが、このような事業環境等への対応施策は継続的に進めており、収益基盤をより一層強化させるため、省エネ・低コスト生産等によるトータルコスト削減の推進、最適生産体制構築のための設備強化及び鉱石の長期安定調達へ向けた取り組み並びに採算性重視の受注を徹底し、臨機応変な生産販売体制の構築等に努めております。さらには、海外事業展開・新規鉱山開発等の早期実現及びコストミニマムを追求するための業務効率改善策の強化等、業績の底上げ及び収益安定化に向けた取り組みを継続しております。
年度末直前に発生したフェロニッケル製造設備の電気炉溶融物漏出事故については、当連結会計年度の販売数量に影響はなく、生産数量及び業績に与える影響は軽微であります。一方、対象の生産設備1基の復旧については、昨今のサプライチェーンの混乱等に伴い部材等の納期が長期間に亘るため、翌連結会計年度第3四半期を予定しております。
その結果、当連結会計年度の連結経営成績は、連結売上高が57,129百万円、前年度比では77.3%の増収となりました。損益面では、営業利益は4,806百万円(前連結会計年度営業損失493百万円)、営業外収益において持分法による投資利益6,483百万円の計上等を含めた経常利益は12,999百万円、前年度比では288.6%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は11,368百万円、前年度比では877.8%の増益となりました
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(ニッケル事業)
ニッケル事業についての経営成績は、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
その結果、当部門の売上高は56,338百万円、前年度比85.2%の増収、営業利益は4,950百万円(前連結会計年度営業損失567百万円)となりました。
(ガス事業)
ガス事業についての経営成績は、安定した操業ではありましたが、設備修繕に伴う費用増等もあり、当部門は損失計上となりました。
その結果、当部門の売上高は576百万円、前年度比6.6%の減収、営業損失は10百万円(前連結会計年度営業利益21百万円)となりました。
(その他)
その他の事業部門につきましては、不動産事業は土地の販売はありましたが一部にとどまり、廃棄物リサイクル事業は受注低迷等で、当部門は損失計上となりました。
その結果、当部門の売上高は324百万円、前年度比74.7%の減収、営業損失は142百万円(前連結会計年度営業利益43百万円)となりました。
当連結会計年度末における当社グループの資産、負債及び純資産については、次のとおりであります。
資産合計は、前連結会計年度末に比べ14,368百万円増加し、89,852百万円となりました。
流動資産では、原材料及び貯蔵品の減少に加え、その他に含まれる前渡金の減少等はありましたが、売掛金において、販売価格の上昇及び決済時期の影響に伴う増加等があり、その他の要因も含め前連結会計年度末に比べ10,028百万円の増加となりました。
固定資産では、設備投資による有形固定資産の増加及び持分法による投資利益の増加に伴う投資有価証券の増加等により、その他の要因も含め前連結会計年度末に比べ4,339百万円の増加となりました。なお、当社の投資有価証券23,903百万円の主な内訳は、持分法適用による連結額13,390百万円、関連会社株式2,378百万円、フィリピンの株式市場へ上場している当社持分法適用関連会社のホールディングカンパニーNickel Asia Corporation株式7,047百万円であります。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,228百万円増加し、9,699百万円となりました。
流動負債では、決済時期の影響による支払手形及び買掛金の減少に加えて、その他に含まれる未払金の減少等はありましたが、利益増加に伴う未払法人税等の増加等もあり、その他の要因も含め前連結会計年度末に比べ979百万円の増加となりました。
固定負債では、退職給付に係る負債の減少等はありましたが、一部保有株式の市場価格上昇に伴う繰延税金負債の増加等があり、その他の要因も含め前連結会計年度末に比べ248百万円の増加となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ13,139百万円増加し、80,153百万円となりました。
株主資本は、利益計上及び配当金の支払い等を加減算し10,638百万円の増加、その他の包括利益累計額はその他有価証券評価差額金及び為替換算調整勘定の増加等により2,490百万円の増加及び非支配株主持分は10百万円の増加となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主な増加要因である税金等調整前当期純利益12,795百万円、利息及び配当金の受取額6,744百万円等に、主な減少要因である持分法による投資損益6,483百万円、売上債権等の増減額6,114百万円等を加減算し7,857百万円の収入で、前連結会計年度に比べ2,027百万円の増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主な増加要因である投資有価証券の売却による収入225百万円等に、主な減少要因である投資有価証券の取得による支出1,126百万円及び有形固定資産の取得による支出1,427百万円等を加減算し、2,909百万円の支出で、前連結会計年度に比べ1,128百万円の支出増となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額等785百万円の支出で、前連結会計年度に比べ682百万円の支出増となりました。
現金及び現金同等物の増減額は、前連結会計年度に比べ373百万円の増加となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は26,631百万円となり前連結会計年度に比べ4,345百万円の増加となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注) 1 金額は、販売価格により算出したものであります。
2 セグメントをまたがる取引のための生産実績は、各セグメントに含めて表示しております。
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 「収益認識基準に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用に伴い、販売実績の相手先を最終需要家に変更しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたる重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。また、この連結財務諸表の作成にあたる見積りにつきましては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で行われている部分があります。これらの見積りにつきましては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a 経営成績等の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりであります。
(売上高及び営業利益)
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比べ24,912百万円の増収で57,129百万円となりました。また、営業損益は、前連結会計年度と比べ5,300百万円の改善で、営業利益4,806百万円となりました。
これは、主に、ニッケル事業の主需要先であるステンレス鋼業界は、新型コロナウイルス感染症の動向及び中国の電力規制問題等による影響には不透明感を残すものの、経済活動の正常化へ向けた動きに伴い需要は持ち直しており、生産設備等の稼働は概ね堅調に推移し、また、当社適用LMEニッケル価格は高水準で推移したことにより、営業利益となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度と比べ9,654百万円の増益で12,999百万円となりました。
これは、主に、売上高及び営業利益の増収増益要因に加え、営業外収益において、持分法による投資利益6,483百万円及び為替差益1,311百万円を計上したことにより、経常利益となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べ10,206百万円の増益で11,368百万円となりました。
これは、経常利益が増益となったことに伴い収益へ大きな影響を与えたものです。
b 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
c 資本の財源及び資金の流動性について
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループは、事業活動のための適切な資金を維持するため、足許の環境下では、営業活動で得られた資金によって設備投資資金を賄うことを基本方針としており、また、短期流動性確保の手段として、コミットメントライン契約を締結しております。
資金の流動性に関しては、金融情勢等を勘案しながら、現金及び現金同等物の残高が適正になるように努めており、収益性向上を通じた営業活動によるキャッシュ・フローの改善を財政政策の最重要課題として位置付けております。
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