業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、COVID-19の感染拡大が続く中、経済活動の再開により、米国及び中国経済を中心に全体としては回復基調で推移しましたが、2022年に入りCOVID-19の変異株の拡大、ウクライナ情勢の動向等により回復のペースが鈍化し、景気への影響が懸念されております。

わが国経済は、世界経済の回復に伴う設備投資や生産等の増加を背景に、景気は持ち直しの動きが続きました。一方、COVID-19の感染再拡大、半導体等の部材不足や資源価格上昇の影響等により、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

COVID-19の感染再拡大に対しては、当社グループの経営への影響が懸念されるものと位置づけ、人命の保護を最優先に適切なリスクマネジメントにより、引き続き当社事業へ与える影響の最小化を図っております。

 

当社グループを取り巻く環境としては、当連結会計年度に入り非鉄金属相場は、亜鉛・鉛・インジウム価格が上昇基調で推移しました。ロジウム価格は下落基調で推移したものの、2022年に入り上昇に転じました。また、為替相場は円安基調で推移しました。

主要製品の販売量は、機能材料部門における5G(注)1関連製品の需要が堅調に推移したこと等から、総じて増加しました。

 

このような状況の下、当社グループは2024年のありたい姿である「機能材料、金属、自動車部品の3事業を核に、成長商品・事業を継続的に創出し、価値を拡大し続けている会社」を実現する成長基盤の変革を目指す、2019年を初年度とした3ヵ年の中期経営計画「19中計」の最終年度を迎えました。

当連結会計年度は、各事業部門において「13、16中計の収穫」「19中計での成長戦略の実行」「変革を促す将来への布石」を実現するため、また、2022年を初年度とする3ヵ年の次期中期経営計画「22中計」へ繋ぐ準備期間として、以下の重点施策に取り組みました。

機能材料部門では、5G関連製品や四輪車向け排ガス浄化触媒の拡販、金属部門では、製錬ネットワークの再構築による有価金属の増回収やリサイクル原料の増処理、自動車部品部門では、コスト競争力及び開発力の強化に取り組んでまいりました。また、研究開発と市場共創の機能を持つ「事業創造本部」においては、新たな成長商品・事業及び新市場の創出等の諸施策を実施してまいりました。

当社の連結子会社である三井金属エンジニアリング株式会社については、一体運営による新たな事業機会の創出、経営資源やノウハウの共有等により、同社との連携をより一層強固なものにし、経営資源を集中していくことが企業価値向上に資するとの結論に達したことから、公開買付けにより完全子会社としました。

 

この結果、売上高は、自動車部品部門は減少したものの、その他の部門の増加により、前連結会計年度に比べて1,104億円(21.1%)増加の6,333億円となりました。営業利益は、非鉄金属相場の上昇による好転要因に加え、主要製品の販売量が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて96億円(18.9%)増加の607億円となりました。

経常利益は、営業利益の増加に加え、持分法による投資損益が62億円改善したこと等により、前連結会計年度に比べて147億円(28.8%)増加の659億円となりました。

特別損益においては、過年度関税戻入益11億円、投資有価証券売却益9億円、固定資産除却損28億円等を計上しました。加えて、税金費用及び非支配株主に帰属する当期純利益を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べて73億円(16.4%)増加の520億円となりました。

 

(注)1 5G:大容量、ハイスピード通信が可能となる第5世代の通信方式。

 

当連結会計年度のセグメント別の概況

機能材料セグメント

〔電池材料〕

水素吸蔵合金は、半導体等の部材不足に伴う自動車メーカーの生産調整の影響により販売量は減少しましたが、リチウムイオン電池用のマンガン酸リチウムは、欧米向け需要が堅調であったことから販売量は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

〔排ガス浄化触媒〕

二輪車向け排ガス浄化触媒は、インド向け需要が低調であったものの、中国及び東南アジア向け需要が堅調であったことから販売量は増加しました。四輪車向け排ガス浄化触媒は、前年度のCOVID-19の影響に伴う自動車市場の低迷からの反動により、上半期において需要が回復したことから販売量は増加しました。加えて、主要原料であるロジウムの価格は、通期の平均価格が前連結会計年度に比べ上昇したことから、販売価格は上昇しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

〔機能粉〕

電子材料用金属粉は、下半期に入り主要顧客の生産調整による影響があったものの、上半期においてCOVID-19の影響に伴う巣ごもり消費の拡大により、需要が堅調であったことから販売量は増加しました。高純度酸化タンタルは、中国向けの需要が堅調であったことから販売量は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

〔銅箔〕

キャリア付極薄銅箔は、半導体パッケージ基板向けの需要が堅調であったことから販売量は増加しました。プリント配線板用電解銅箔は、半導体や電子部品向けの需要が堅調であったことから販売量は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

〔スパッタリングターゲット〕

主力のディスプレイ用スパッタリングターゲットは、中国向けの需要が低調であったことから販売量は減少したものの、主要原料であるインジウムの価格が上昇したことから販売価格は上昇しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

以上の結果、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて457億円(22.0%)増加の2,534億円となりました。経常利益は、第2四半期以降のロジウム価格下落による減益要因があったものの、主要製品の販売量が増加したこと等から、前連結会計年度に比べて11億円(4.3%)増加の276億円となりました。

 

金属セグメント

〔亜鉛〕

国内の亜鉛メッキ鋼板向け需要は、前年度のCOVID-19の影響に伴う需要減退から、総じて堅調に回復したことにより販売量は増加しました。加えて、亜鉛のLME(ロンドン金属取引所)価格は上昇基調で推移したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

〔金・銀〕

金・銀ともに国内価格が上昇したこと等から、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

〔鉛〕

国内の鉛蓄電池向け需要は、前年度のCOVID-19の影響に伴う需要減退からの反動により、上半期において需要が回復したことから販売量は増加しました。加えて、鉛のLME価格は上昇基調で推移したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。

 

以上の結果、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて394億円(20.4%)増加の2,330億円となりました。経常利益は、亜鉛原料の買鉱条件の悪化、エネルギーコストの上昇による減益要因があったものの、LME価格の上昇による好転要因に加え、持分法による投資損益が改善したこと等から、前連結会計年度に比べて125億円(55.2%)増加の354億円となりました。

 

自動車部品セグメント

〔自動車用ドアロック〕

世界の自動車販売台数は、半導体をはじめとする部材の供給不足等の影響により減少しました。主要製品であるサイドドアラッチは、国内、中国及び米国における需要が低調であったことから販売量は減少しました

 

以上の結果、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて22億円(2.8%)減少の788億円となりました。経常利益は、主要製品の販売量が減少したことに加え、鋼材・樹脂価格上昇の影響等により、前連結会計年度に比べて13億円(72.2%)減少の5億円となりました。

 

関連セグメント

〔各種産業プラントエンジニアリング〕

国内外プラント工事の受注環境が低調であったことに加え、国内グループ企業及び海外向け大型工事案件の完成計上が減少したことから、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。

 

その他の各種製品は、前連結会計年度のCOVID-19の影響に伴う需要減退から、総じて堅調に回復したことに加え、非鉄金属相場の上昇による影響等により、当部門の売上高は、前連結会計年度に比べて248億円(21.4%)増加の1,407億円となり、経常利益は、持分法による投資損益が改善したこと等から、前連結会計年度に比べて5億円(22.6%)増加の31億円となりました。

 

主要な品目等の生産実績及び受注状況の当連結会計年度の推移は、次のとおりであります。

セグメント

品目

単位

第1

第2

第3

第4

累計

四半期

四半期

四半期

四半期

機能材料

銅箔

生産量

千t

6

6

6

5

25

金属

亜鉛

生産量

千t

56

51

51

58

217

生産量

千t

17

16

17

17

68

自動車部品

自動車部品

生産金額

億円

164

153

175

174

667

 

 * 亜鉛:共同製錬については当社シェア分

 

(2) 財政状態の状況

資産合計は、前連結会計年度末に比べ428億円増加の6,378億円となりました。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ32億円増加の3,878億円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ395億円増加の2,500億円となりました。

 

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ4.2ポイント上昇の37.6%となりました。

なお、財政状態の詳細については、「(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析 ①財政状態の状況」に記載しております。

  

 

(3) キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ331億円収入増加の606億円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ92億円支出増加の255億円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ222億円支出増加の375億円の支出となりました。

 

以上の結果、為替換算差額等を含めた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ7億円減少の296億円となりました。

なお、キャッシュ・フローの詳細については、「(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績及び受注状況

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、セグメントごとの生産実績及び受注状況を正確に把握することは困難なため、主要な品目等についてのみ「(経営成績等の状況の概要)(1) 経営成績の状況」において、各セグメントに関連付けて記載しております。

 

(2) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

機能材料

253,465

22.0

金属

233,016

20.4

自動車部品

78,830

△2.8

関連

140,758

21.4

調整額

△72,723

合計

633,346

21.1

 

   (注) セグメント間の取引については、各セグメントに含めて表示しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。その作成にあたっての重要な会計方針・見積りは、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に記載のとおりであります。

なお、COVID-19の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

(2) 経営成績の分析

① 売上高

当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べて1,104億円(21.1%)増加の6,333億円となりました。なお、各セグメント及び主要製品別の分析については、「(経営成績等の状況の概要)(1)経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② 営業利益

機能材料セグメントの営業利益は、第2四半期以降のロジウム価格下落による減益要因があったものの、主要製品であるキャリア付極薄銅箔やプリント配線板用電解銅箔の販売量が増加したこと等から、前連結会計年度に比べて4億円(1.7%)増加の269億円となりました。

金属セグメントの営業利益は、亜鉛原料の買鉱条件の悪化、エネルギーコストの上昇による減益要因があったものの、LME価格の上昇による好転要因があったこと等から、前連結会計年度に比べて96億円(40.6%)増加の333億円となりました。

自動車部品セグメントの営業損益は、主要製品の販売量が減少したことに加え、鋼材・樹脂価格上昇の影響等により、前連結会計年度に比べて16億円減少の3億円の損失となりました。

関連セグメントの営業利益は、各種産業プラントエンジニアリングにおいて、国内外プラント工事の受注環境が低調であったこと等から、前連結会計年度に比べて5億円(43.3%)減少の7億円となりました。

この結果、セグメントの調整額を加味した営業利益は、前連結会計年度に比べて96億円(18.9%)増加の607億円となりました。

 

③ 経常利益

営業利益の増加に加え、持分法による投資損益が62億円改善したこと等により、前連結会計年度に比べて147億円(28.8%)増加の659億円となりました。

なお、各セグメント別の分析については、「(経営成績等の状況の概要)(1) 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 

(3) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析

① 財政状態の状況

資産合計は、棚卸資産274億円、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度は受取手形及び売掛金)90億円等の増加により、前連結会計年度末に比べ428億円増加の6,378億円となりました。

負債合計は、長・短借入金及びコマーシャル・ペーパー残高228億円等の減少があったものの、支払手形及び買掛金154億円、デリバティブ債務(流動負債)62億円、未払法人税等23億円等の増加により、前連結会計年度末に比べ32億円増加の3,878億円となりました。

純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益520億円、為替換算調整勘定96億円等の増加に加え、繰延ヘッジ損益110億円、剰余金の配当48億円、非支配株主との取引に係る親会社の持分変動による資本剰余金39億円等の減少があり、前連結会計年度末に比べ395億円増加の2,500億円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ4.2ポイント上昇の37.6%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益645億円、減価償却費331億円等の増加要因に対し、棚卸資産の増加218億円、法人税等の支払額91億円等の減少要因を差し引いた結果、前連結会計年度に比べ331億円収入増加の606億円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入24億円等の増加要因に対し、有形固定資産の取得による支出230億円等の減少要因を差し引いた結果、前連結会計年度に比べ92億円支出増加の255億円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長・短借入金、社債及びコマーシャル・ペーパーの減少253億円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出56億円及び配当金の支払48億円等から、前連結会計年度に比べ222億円支出増加の375億円の支出となりました。

以上の結果、為替換算差額等を含めた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ7億円減少の296億円となりました。

 

③ 財政状態及びキャッシュ・フロー指標のトレンド

回次

第93期

第94期

第95期

第96期

第97期

決算年月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

自己資本比率(%)

32.4

32.5

30.7

33.4

37.6

時価ベースの自己資本比率(%)

53.2

31.0

19.2

36.9

30.0

キャッシュ・フロー対有利子負債

比率(年)

4.0

5.3

6.5

9.0

3.7

インタレスト・カバレッジ・レシオ

37.8

25.1

20.5

16.3

32.5

 

(注)自己資本比率           :(純資産-非支配株主持分)/総資産

時価ベースの自己資本比率     :株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/支払利息

※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている長・短期借入金、社債及びコマーシャル・ペーパーを対象としております。

支払利息は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、業績に応じた適正な利益配分を行うことを基本方針としております。

内部留保資金につきましては、市場ニーズに応える研究開発・生産体制を強化し、グローバル戦略の展開を図るために有効な投資を実行してまいります。

当連結会計年度における主な設備投資については、機能材料部門において、主要製品である銅箔製造設備の生産性向上を目的とした投資を行いました。また、その他の部門においては、主に設備の維持・更新を目的とした投資を行っております。この結果、当連結会計年度における有形固定資産の取得による支出は230億円となりました。

また、当社の連結子会社である三井金属エンジニアリング株式会社については、公開買付けにより完全子会社としたことから、当連結会計年度における連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出は56億円となりました。

これらの投資等のための所要資金は、主に自己資金を充当しております。

手元流動性確保の手段としましては、短期社債(電子コマーシャル・ペーパー)発行枠500億円を設定しているほか、250億円を限度とした長期コミットメントライン契約を取引金融機関とシンジケーション形式により締結しております。

なお、キャッシュ・マネジメント・システム等によりグループ全体の資金効率の向上に努めております。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

「2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

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