文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「創造と前進を旨とし、価値ある商品によって社会に貢献し、社業の永続的発展成長を期す」を経営理念とし、「マテリアルの知恵を活かす」というコーポレートスローガンの下、「社会の持続的な成長」と「中長期的な企業価値の向上」に努めることを経営の基本方針としております。
(2) 中期経営計画「19中計」の振り返り
当社グループは、19中計において「機能材料、金属、自動車部品の3事業を核に、成長商品・事業を継続的に創出し、価値を拡大し続けている会社」を2024年のありたい姿とし、成長基盤の変革に取り組んでまいりました。
その結果、各本部で“自律自走”が浸透し、中計最終年度(2021年度)の全社利益は目標を大きく上回りましたが、財務指標については一部で未達でした。
また、世の中の環境が大きく変化する中、金属価格や為替相場の変動によるリスクを減らし、新たな成長商品・事業及び新市場を創出するため、経営資源配分の議論を更に深め、グループ全体としての企業価値向上への取り組みが必要であるとの認識に至りました。
注:経常利益については、億円以下を切り捨て表示しております。
主な前提諸元
(3) 「パーパス」及び「全社ビジョン」の設定
当社グループを取り巻く事業環境は、先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態であり、これまでの事業運営が通用せず、常に変化に対して柔軟かつ迅速に対応することが求められる状況にあります。そのような中、当社グループは「経済的価値」と「社会的価値」を両立した統合思考経営を実践することで、持続的な企業価値向上の仕組みを構築し、成長し続けるため、判断基軸となる「パーパス(存在意義)」と2030年のありたい姿として「全社ビジョン」を設定いたしました。
変化に対して柔軟かつ迅速な対応をするためには、如何なる変化に直面しても、決して変わることのない判断基軸が必要となります。当社グループとして2050年の世界を想定の上、「人類への貢献」と「環境への貢献」を両立することが存在意義であるとの認識の下、「探索精神と多様な技術の融合で、地球を笑顔にする。」を「パーパス(存在意義)」として設定いたしました。
また、当社グループでは、「マテリアルの知恵を活かす」ことを通じて、循環型社会に必要な新しい素材・サービスを創造し続け、人類発展と地球環境の両面で、なくてはならない企業となることを「2030年のありたい姿」として、現状の延長線上ではなく、パーパスからバックキャストした2030年の「全社ビジョン(2030年のありたい姿)」を「マテリアルの知恵で“未来”に貢献する、事業創発カンパニー。」と設定いたしました。
(4) 中期経営計画「22中計」の策定
このような状況の下、2022年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「22中計」をスタートいたしました。パーパスを基軸とした全社ビジョンを実現するため、社会的価値向上と経済的価値向上の両立を目指す統合思考経営を本格的に導入することで、持続可能な会社へと変革を図ってまいります。
「社会的価値の向上」については環境影響、社会関係資本、人的資本、ビジネスモデル・イノベーション、リーダーシップ・ガバナンスの5つの観点で各事業の機会・リスクを評価し、事業の持続可能性を経営判断に活かしてまいります。
「経済的価値の向上」については両利きの経営(注)1を実現するべく、事業ポートフォリオの動的管理、社内外シナジーの追求、成長戦略を加速するためのM&Aの活用、研究開発と市場共創の機能を持つ事業創造本部への積極的資源投入に重点的に取り組んでまいります。
また、統合思考を支える仕組みとして、魅力的な市場に常に価値提供できる組織とするため、事業部門を「機能材料部門」「金属部門」「モビリティ部門」の3事業体に組み替え、本社部門にはシナジー創出活動のための「事業開発室」、単独事業としての事業価値向上の取り組み、並びに社内外のベストオーナー探索のための「事業室」を設置いたしました。人材戦略については、ビジネスパートナー(注)2機能の全社展開を推進し、戦略的な人材アロケーションの実行を強化いたします。デジタル集団へ進化するためのデジタルトランスフォーメーション(DX)(注)3については、「研究開発」「ものづくり」「業務革新」の3施策を推進し、競争力を強化いたします。
機能材料部門では、事業機会拡大による成長加速とその仕組みづくり、社会的価値創造に向けた環境貢献製品の上市に取り組んでまいります。
金属部門では、持続可能な社会の実現に必須の無二の存在になるためのリサイクルネットワークの確立、新たな金属・再生可能エネルギー資源の開発という中長期的な目標に向け、銅・貴金属採収率の改善や副産物の増回収に取り組むとともに再生可能エネルギー開発可能性の検討を進めてまいります。
モビリティ部門では、選ばれる価値を見極め、創り続けるモビリティ社会の開拓者となるべく、技製販全てにおける深化(商権維持)とともに新規開拓(新しい製品・事業創出)を推進してまいります。
事業創造本部では、新たな事業を「持続的」に創造できるようになるために、事業機会の探索力、研究開発力の強化を図り、事業化推進テーマについては環境の変化に応じてタイムリーに投資と人材の投入を行ってまいります。
以上の取り組みを実行するとともに、低炭素社会に向けたCO2排出量削減等の諸施策を講じてまいります。
それにより、創業150年を迎える22中計最終年度である2024年度は、売上高7,250億円、経常利益600億円、フリーキャッシュ・フロー370億円、ROE14.0%、自己資本比率50%、Net D/Eレシオ(注)40.42倍の達成を実現し、ステークホルダーと共に地球を笑顔にすることを目指してまいります。
(主な前提諸元:亜鉛LME価格3,000$/t、銅LME価格381¢/lb、為替120円/US$)
(注)1 両利きの経営:「主力事業の絶え間ない改善(知の深化)」と「新規事業に向けた実験と行動(知の探索)」を両立させていく考え方。
2 ビジネスパートナー:各部門の目標達成や更なる成長と戦略の実行を、人材・組織の面からサポートする経営者や各事業責任者のパートナー。
3 デジタルトランスフォーメーション(DX):デジタルテクノロジーを駆使して、経営のあり方やビジネスプロセスを再構築すること。
4 Net D/Eレシオ:有利子負債から現金及び預金を差し引いて、それを自己資本で割ったもの。
上記の業績予想につきましては、2022年5月20日現在において入手可能な情報に基づき算出したものであり、今後様々な要因により実際の業績が記載の予想数値と異なる場合があります。
中期経営計画「22中計」の詳細につきましては、当社コーポレートサイト(https://www.mitsui-kinzoku.com/)のIR・投資家情報に、2022年5月20日付で掲載されております「中期経営計画「22中計」策定のお知らせ」をご参照下さい。
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