課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

1.全社課題

 当社グループは、次のとおり、2030年から2050年にかけての中長期的な当社グループの目標である「会社の目指す姿」及び2020年度から2022年度までを対象とした中期経営戦略(以下「22中経」といいます。)を策定しており、これらに基づき、企業価値の向上に向けた諸施策を実施してまいります。

 なお、当社は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による事業環境の変化や中長期的な業績見通しへの影響を含む事業環境や業績の動向を踏まえ、2021年5月14日付で、財務計画を中心に22中経の内容の一部見直しを行っており、本項では、見直し後の内容を基に記載しております。

 

(1) 会社の目指す姿

 当社グループは、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」をビジョンとしております。

 22中経の策定にあたっては、「社会的価値と経済的価値の両立を図る」という観点から、当社グループの企業理念、ビジョンの実現に向けた2030年から2050年にかけての中長期的な当社グループの目標として、以下のとおり、新たに「会社の目指す姿」を策定いたしました。

・銅を中心とした非鉄金属素材及び付加価値の高い機能材料・製品の提供を通じて豊かな社会の構築に貢献する。

・リサイクル可能な製品の提供、高度なリサイクル技術による廃棄物の再資源化を通じて循環型社会の構築に貢献する。

・地熱等再生可能エネルギーの開発・利用促進、環境負荷低減を考慮したものづくりの徹底により脱炭素社会の構築に貢献する。

 

(2) 価値創造の姿(価値創造プロセス)の全体像

 当社グループは、「社会的価値と経済的価値の両立を図る」という考え方を基軸とし、社会課題の解決による社会的価値の創造を、当社グループの事業を通じて行うことで、経済的価値の創造を実現してまいります。このような観点から、ステークホルダーに伝えるべき情報(経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等)を体系的・統合的に整理し、次のとおり〔価値創造プロセス〕としてまとめております。

 

〔価値創造プロセス〕

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 左側に、当社グループとして解決する社会課題と関連するSDGs(a・b)、及び当社グループとして認識している重要課題(c)を挙げ、中心のピンク色の円は、当社グループの事業活動そのものを表しています。中心の円の左側にある4項目は、これまで培ってきた当社グループの強み(d)を示しています。こうした強みを投入し、中央上部にある全社方針(e)のもと、それぞれの事業の長期目標・長期戦略(f)、或いは中期経営戦略(g)を支えにして、右側にある「アウトプット」につなげてまいります。「アウトプット」は、こうした事業活動を通して、当社グループが生み出し、社会に提供していく製品・サービスであり、それが、当社グループの提供する価値につながり、更に、会社の目指す姿につながっていくという、当社グループの価値創造の姿全体を示しています。

 なお、(a)~(g)の個別要素の詳細については、後掲(3)、(5)のとおりです。

 

(3) 価値創造プロセスの個別要素

<当社グループが解決する社会課題(a)>

 解決すべき社会課題は非常に幅広く、様々な提案がなされております。そのなかで、当社グループの事業と関連が深く、解決に貢献し得る社会課題として、以下を選定いたしました。

・モビリティの高度化

・デジタルデバイスの高度化・多様化

・生産・業務プロセス自動化

・人・建造物の長寿命化

・災害に対する有効な対策

・都市廃棄物の効率的処理

・鉱物資源の効率的な活用と代替物質

・エネルギー資源の効率的な活用

・再生可能エネルギー・未活用エネルギー開発

・CO2排出量削減

 

<SDGs(b)>

 2015年9月に国際連合が採択した、SDGs(Sustainable Development Goals)も、解決すべき社会課題と捉えることができます。当社グループの事業を通じて貢献し得る主な項目として、7、8、9、11、12、13を選定いたしました。

・1 (貧困)貧困をなくそう

・2 (飢餓)飢餓をゼロに

・3 (保健)すべての人に健康と福祉を

・4 (教育)質の高い教育をみんなに

・5 (ジェンダー)ジェンダー平等を実現しよう

・6 (水・衛生)安全な水とトイレを世界中に

・7 (エネルギー)エネルギーをみんなにそしてクリーンに

・8 (成長・雇用)働きがいも経済成長も

・9 (イノベーション)産業と技術革新の基盤をつくろう

・10 (不平等)人や国の不平等をなくそう

・11 (都市)住み続けられるまちづくりを

・12 (生産・消費)つくる責任、つかう責任

・13 (気候変動)気候変動に具体的な対策を

・14 (海洋資源)海の豊かさを守ろう

・15 (陸上資源)陸の豊かさも守ろう

・16 (平和)平和と公正をすべての人に

・17 (実施手段)パートナーシップで目標を達成しよう

 

<重要課題(c)>

 当社グループでは、当社グループが解決すべき社会課題及び関連するSDGsを、ステークホルダー(株主・投資家、従業員、取引先、債権者、地域社会等)と当社グループの双方にとって重要度の高い4つの課題としてまとめ、これに、当社グループの経営基盤・基軸強化にとっての課題を併せて、重要課題としております。

 <社会的課題>

 ・素材・製品の安定供給

 ・循環型社会の実現

 ・気候変動への対応

 ・環境保全と環境技術

 <経営基盤・基軸強化>

 ・労働安全衛生

 ・ガバナンス

 ・多様な人材の育成と活用

 ・バリューチェーンにおける責任

 ・ステークホルダーコミュニケーション

 ・デジタルトランスフォーメーション(DX)

 

<投入する強み(d)>

・高度なリサイクル技術と事業基盤

 金属、環境リサイクル事業を中心に蓄積した、多様で高度なリサイクル技術と、幅広い事業経験、独自の廃棄物収集ネットワーク・事業基盤により、リサイクル事業を推進することができます。

・原料から製品までの価値連鎖と安定供給能力

 原料資源の安定調達から製品までの一貫した製造体制により、良質な製品を安定的に市場に供給することができます。

・独自の素材開発・製造技術力

 無酸素銅及び銅合金(銅加工事業)、異種材料接合(電子材料事業)、超硬原料、コーティング(加工事業)に代表されるように、原子レベルでの分析力・シミュレーション技術に裏付けられた素材開発・製造技術力は、当社の競争力の源泉です。

・課題解決に向け結束できるチーム

 多様な個性と価値観を尊重し、誠実さを重んずることで、課題解決に向けて、個人の力を結束して取り組むことができます。

 

<全社方針(e)>

・事業ポートフォリオの最適化

 当社がオーナーシップを取るべき事業を、ビジョン・会社の目指す姿と整合性のある事業、自社としてガバナンスできる事業、世界または特定の地域でリーダーの地位を得られる事業、及び中長期的に資本コストを上回るリターンを継続できる事業として集中を図り、その上で、収益性と成長性の2つの軸で事業ポートフォリオを構築し、各事業の方向性を定め、ポートフォリオの最適化を目指してまいります。

・事業競争力の徹底追求

 ものづくり戦略、品質管理戦略、デジタル化戦略により、事業競争力の徹底追求を図ってまいります。ものづくり戦略では、それぞれの製造拠点が、事業戦略に基づくビジョンを描き、生産プロセス高度化等により、ものづくり力別格化の実現を目指します。品質管理戦略では、製品・工程設計、設備保全計画の最適化により、規格外品を発生させない、「攻めの品質」を目指してまいります。デジタル化戦略では、「三菱マテリアル デジタル・ビジネストランスフォーメーション(MMDX)」として、顧客接点の強化やデータの共有等を進め、ビジネス付加価値、オペレーション競争力等を向上させてまいります。2020年度から2025年度までの6年間で400億円超を投資するとともに、100人規模のデジタル専門人材を投入する計画としております。

・新製品・新事業の創出

 将来の収益基盤となる新しいビジネス創出のため、当社グループが捉えるべき重要な社会のニーズを「次世代自動車」、「IoT・AI」、「都市鉱山」及び「クリーンエネルギー・脱炭素化」とし、持続可能性の核となる新製品・新事業を創出・育成してまいります。

 

(4) 22中経の財務計画

・財務指標及び目標

 22中経では、中長期的な収益性と成長性を重視し、事業毎に収益性は主にROIC、成長性はEBITDA成長率等で評価いたします。プロセス型事業ではROAを補完的に採用し、全社の財務指標には、ROIC・ROE・ROAを併用いたします。22中経期間最終年度である2022年度の全社の財務目標は、ROIC 4.0%、ROA 2.0%、ROE 6.0%、連結営業利益290億円、連結経常利益380億円、ネットD/Eレシオ1.0倍以下といたします。

・投資方針

 22中経期間の投資総額は、成長戦略投資が1,950億円、維持更新投資が1,600億円の合計3,550億円を見込んでおり、営業キャッシュ・フロー、事業再編及び資産売却収入を源泉として投資を実行いたします。新型コロナウイルス感染症の影響により、営業キャッシュ・フローが減少する見通しの中、需要拡大が想定より遅れる事業への22中経期間中の成長投資は絞り、高水準な銅価により好収益が期待できる鉱山投資及びM&Aに係る投資は積極的に実行いたします。加えて、老朽化設備のトラブルによる機会損失の極小化のための更新投資も確実に行うことにより、収益力の基盤を確保し、将来の成長に繋げてまいります。

・株主還元方針

 当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の最重要目的の一つとして認識し、安定的かつ継続的に実施していくことを基本方針としながら、期間収益、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、決定する方針としております。配当の額については、全社方針として掲げる「事業ポートフォリオの最適化」、「事業競争力の徹底追求」、「新製品・新事業の創出」に向けた投資等に必要な資金、先行きの業績見通し、連結及び単独の財務体質等を勘案して判断いたします。自己株式取得については、機動的な追加的株主還元として実施し、資本効率の向上を図ってまいります。

 なお、22中経期間中の配当金額については、1株当たり年間80円とする方針としておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により同期間中の営業キャッシュ・フローや資産売却等の特殊要因調整後の純利益が当初の予想を大きく下回る見通しであります。このような状況のもと、配当については安定性・継続性を重視し、安定的に創出可能と判断した営業キャッシュ・フローの水準に基づき、22中経期間中の年間配当金額の下限を1株当たり50円に変更いたしました。その上で、資産の売却等を加速させ自己株式取得や追加配当等の機動的な資金配分を行うことにより、22中経期間中において当初見込んでいた配当総額並みの株主還元の実施を目指してまいります。

・政策保有株式

 当社は、事業戦略上必要である場合を除き、純投資目的以外の株式(政策保有株式)を取得・保有しない方針といたします。

 

 

(5) 各事業における長期目標・長期戦略(f)/22中期経営戦略(g)

●高機能製品

長期目標

グローバル・ファースト・サプライヤー

長期戦略

・コアコンピタンス(無酸素銅・合金の開発及び製造技術、機能材料開発、接合技術等)を磨き、組合せ、新製品・新事業を創出

・マーケット起点で、勝ちパターンを追求

22中経戦略の

具体的施策

・事業部間を横断したキーアカウント責任者の設置

・AI・IoTの活用による情報分析(デジタルマーケティング等)

・製品ロードマップの顧客との共有(共創力)

・中央研究所(現イノベーションセンター)との連携による製品開発

・ものづくり力の強化(量産技術、生産効率の向上等)

・M&A、アライアンスの検討

 

●加工事業

長期目標

戦略市場でのトップ3サプライヤー

長期戦略

・クリーンなものづくりの推進

・先端技術を活用した高効率製品の提供

・高機能粉末事業の展開

22中経戦略の

具体的施策

・超硬リサイクルの拡大と再生可能エネルギーの活用

・高効率工具とデジタルソリューションの提供

・スマートファクトリー化と物流・供給の効率化

・電池市場向け高機能粉末事業の拡大

 

●金属事業

長期目標

環境親和型製錬ビジネスのリーダー

長期戦略

銅を中心とした非鉄金属の安定供給と循環

・クリーンな銅精鉱とE-Scrapからなる持続可能な原料ポートフォリオの形成

・リサイクルの推進

・気候変動への対応

22中経戦略の

具体的施策

・新規鉱山投資によるクリーンな銅精鉱の確保

・銅精鉱中不純物除去技術の開発

・有価金属マテリアルフロー最適化

・化石燃料の削減

 

●環境・エネルギー事業

長期目標

(環境リサイクル)資源循環システムの牽引者

(再生可能エネルギー)地熱開発のリーディングカンパニー

長期戦略

・トレーサビリティの徹底等による安心できるリサイクルシステムの提供

・再生可能エネルギー事業の拡大による脱炭素化

22中経戦略の

具体的施策

・家電リサイクル事業の拡大、自動化推進、回収物高付加価値化

・リチウムイオン電池リサイクル技術の実証、太陽光パネルリサイクル技術の実証

・焼却飛灰リサイクル事業とバイオガス化事業の安定操業

・小又川新水力発電所の完成、安比地熱発電所建設、新規地熱地域の調査、新規小水力の調査

 

 

●コーポレート戦略

 22中経における、各事業戦略をサポートするための主なコーポレート戦略は以下のとおりです。

研究開発・

マーケティング戦略

メガトレンド等の外部環境変化を注視しつつ、22中経では、IoT・AI、次世代自動車、都市鉱山、クリーンエネルギー・脱炭素化の分野を中心に、当社グループの有する機能複合化技術、材料複合化技術、基盤・量産化技術、リサイクル技術等をベースに、顧客ニーズに即した高付加価値な製品・サービスを創出

ものづくり戦略

事業戦略に基づく工場ビジョン策定と実現、生産プロセス高度化及び外部の知見の積極的な活用により、ものづくり力別格化を実現

品質管理戦略

製品・工程設計、設備保全計画の最適化により、規格外品を発生させない、「攻めの品質」を実施

デジタル化戦略

DXにより、ビジネス付加価値向上とオペレーション競争力向上、経営スピード向上の3本柱を推進。2020年度から2025年度までの6年間で400億円超を投資するとともに、100人規模のデジタル専門人材を投入

 

●ガバナンス

 22中経における、当社グループのガバナンスに対する主要施策は以下のとおりです。

コーポレート・

ガバナンスの強化

2019年6月に指名委員会等設置会社へ移行したことに加え、以下の施策の取り組み

・取締役会の継続的改善

・コーポレート・ガバナンス基本方針制定(2020年4月1日付)

・CEOの選解任・後継者育成計画の立案・実行

・役員報酬制度の見直し

・子会社ガバナンスの充実

グループ

ガバナンスの強化

親・子会社間、本社・拠点間及び各拠点・各グループ会社内で円滑かつ自律的にコミュニケーションが行われるガバナンスの姿を目指し、以下の施策の取り組み

・グループ会社取締役会の実効性評価と改善

・グループ会社役員研修

・ガバナンス監査の充実

・権限委譲と監督機能強化によるスピーディな意思決定

・研究開発、ものづくり、人材交流におけるビジネス形態の相違を意識した運営

・DX推進本部による戦略実行の加速

人事・人材戦略

変化に適応する人材の確保・育成と、健全な組織風土の形成

・(人)人材の確保と育成

・(組織風土)やる気向上、グループ会社の経営力強化

・(社会的価値向上)多様な人材活用、健康経営の取り組み

組織変更

(事業部門)

・環境・エネルギー事業のカンパニー化

(コーポレート部門)

・マーケティング担当部署新設

・コーポレートコミュニケーション担当部署新設

(全社横断組織)

・DX推進本部新設

・サステナブル経営推進本部新設

 

(6) 目標とする経営指標

 当社グループは、中長期的な収益性と成長性を重視し、全社の財務指標にはROIC・ROE・ROAを併用いたします。事業毎には、収益性は主にROIC、成長性はEBITDA成長率等を使用するほか、プロセス型事業ではROAを補完的に使用いたします。

 

2.事業別課題

 今後の世界経済につきましては、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和されるなか、景気の持ち直しの動きが続くことが期待される一方で、ウクライナ情勢の動向、原材料価格の上昇、金融資本市場の変動や新型コロナウイルス感染症の感染再拡大等の影響を受け、景気が下振れする恐れがあります。

 今後のわが国経済につきましても、経済社会活動が正常化に向かうなか、景気の持ち直しが続くことが期待される一方で、世界経済と同様の理由から、景気の下振れも懸念されます。

 今後の当社グループを取り巻く事業環境につきましては、自動車関連・半導体関連の堅調な需要が継続することが期待される一方で、エネルギー価格の高騰等によるコストの上昇、為替及び金属価格の変動等が当社グループの各事業に影響を与えることが懸念されます。

 

●高機能製品

 高機能製品の主要市場である自動車・半導体関連の需要は、次世代自動車や大容量通信の普及により、中長期的に増加することが期待されます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に端を発した世界的なサプライチェーンの混乱やウクライナ情勢の動向等により、主要顧客の生産活動の低迷等が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。

 このような状況のもと、銅加工品は、次世代自動車、半導体などの成長市場を中心に高性能な製品を提供してまいりましたが、更なる需要の増加に応えるべく、生産能力を現行から約3割増強させる総額約300億円の設備投資を進めております。今後は、投資計画を着実に実行するとともに、マーケティングや研究開発、販売体制の強化を進め、開発・製造・販売が一体となって高付加価値製品を提供することにより、収益力を強化してまいります。

 電子材料は、次世代自動車、半導体などの成長市場を中心に、材料技術により付加価値を高めた製品を提供することで、持続的に成長する高収益事業体となることを目指してまいります。また、多結晶シリコンについては、厳しい事業環境が続くことが見込まれますが、安全・安定操業と品質向上に加え、徹底したコスト削減により収益力を強化してまいります。

 更に、気候変動への対応として、銅加工品・電子材料ともに、環境負荷を考慮したものづくりを徹底し、温室効果ガスの排出削減に努めてまいります。

 

●加工事業

 超硬製品の市場環境は、各国における経済活動の再開や経済対策等により、緩やかな回復基調にあるものの、半導体不足による自動車や工作機械の減産、主原料であるタングステン価格や物流コストの高騰、新型コロナウイルス感染症の流行に端を発する世界的なサプライチェーンの混乱、ウクライナ情勢の動向等により、顧客の生産活動の低迷や原料調達リスク等が懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。

 このような状況のもと、戦略市場として位置付けている自動車、航空宇宙、医療、金型の各市場への営業活動強化に取り組むとともに、デジタルトランスフォーメーションの各施策を確実に実行することにより、デジタル技術を活用したソリューション提案力の強化に取り組んでまいります。

 原料調達については、引き続き、タングステンリサイクル量の増加に取り組むことに加えて、マサン・ハイテック・マテリアルズ社との提携等、原料調達ソースの多様化を進めることにより、調達リスク及び調達コストの低減を図るとともに、鉱物資源の効率的活用による循環型社会の構築に貢献してまいります。

 更に、気候変動への対応として、温室効果ガスの排出削減に向け、省エネを推進するとともに、2030年度までに、使用する電力の全てを実質的な再生可能エネルギーとするべく取り組みを進めてまいります。

 これらにより、循環型社会や脱炭素社会の構築に貢献し、トップ3サプライヤーとなることを目指してまいります。

 

 

●金属事業

 主要製品である銅地金は、中長期的には電気自動車の普及や脱炭素化向け投資等に下支えされた底堅い需要が見込まれます。また、主要原料である銅精鉱の調達は、中国における製錬能力の拡大ペースの鈍化と、複数の新規大型鉱山の生産開始・拡張の影響に加えて、稼働中の鉱山においても増産が予定されていることから、需給バランスは緩和に向かうことが期待されます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行に端を発する世界的なサプライチェーンの混乱、南米地域における地政学リスクの高まりやウクライナ情勢等が需給バランスや相場に大きな影響を与える懸念があることから、今後の動向を注視してまいります。

 このような状況のもと、資源事業部門では、カッパーマウンテン銅鉱山の操業最適化や新規案件の開拓に取り組み、不純物の少ないクリーンな銅精鉱を製錬所へ安定的に供給することで事業の基盤を支えます。2022年度は従来のプロジェクトに加え、マントベルデ銅鉱山の拡張プロジェクトの推進、サフラナル銅鉱山の環境許認可取得を目指すほか、鉱業技術研究所における銅精鉱中の不純物の除去等に向けた研究にも引き続き注力してまいります。また、2021年2月にチリに新設した子会社を通じて、南米地域における情報収集力を強化し、鉱山投資事業の効率化を図ります。

 製錬事業部門では、世界トップクラスのE-Scrap処理能力を最大限活かすべく、プロセス改善によりE-Scrapに含まれる有価金属を効率よく回収し再資源化するためのマテリアルフローを2022年度中に構築するべく取り組むことなどにより、循環型社会の構築に貢献してまいります。また、気候変動への対応として、当社独自の三菱プロセスの環境的優位性を最大限に活かしつつ、化石燃料の削減やエネルギー変換効率・使用効率の向上、再生可能エネルギーの活用等により、脱炭素社会を見据えた製錬プロセス改革に取り組んでまいります。

 

●環境・エネルギー事業

 環境・エネルギー関連の事業環境は、中長期的な社会課題として、都市型廃棄物の効率的処理やエネルギー資源の効率的な活用、温室効果ガスの排出削減要請といった環境問題への対応を強化することが強く求められております。

 このような状況のもと、エネルギー関連は、再生可能エネルギー事業を拡大し、脱炭素社会の構築に貢献してまいります。小又川新水力発電所(2022年12月に運転開始予定)及び安比地熱発電所(2024年4月に運転開始予定)の建設をスケジュール通りに進めるとともに、東北地方を中心に新規の地熱地域及び小水力の調査を進め、新規事業の開拓を目指します。更に、人材育成にも注力するほか、地熱・水力以外の分野への参入や海外展開についても検討を深めてまいります。

 環境リサイクル関連は、最終処分場に依拠することのないリサイクル事業の展開に努め、循環型社会の構築に貢献してまいります。家電リサイクル事業については、自動化及びデジタルトランスフォーメーションの推進並びに回収物の高付加価値化等を通じて事業の拡大を図るとともに、太陽光パネルリサイクル技術の実証において、より効率的なリサイクルが可能となるよう技術の改善を進めてまいります。自動車リサイクル事業については、リチウムイオン電池のリサイクル技術の実証をより一層積極的に進めてまいります。また、焼却飛灰リサイクル事業及び食品廃棄物のバイオガス化事業において、自治体との連携をより密にして、集荷量の確保に努めつつ、安定操業に注力してまいります。更に、食品廃棄物のバイオガス化事業については、拠点の拡大についても検討を進めてまいります。

 

 以上の当社グループの総力を結集した諸施策の実施により、価値創造を推進してまいる所存であります。

 

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