1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
一昨年より始まった新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延により航空機向けチタン需要は急激に減退し、更には一般産業向けチタン需要も減退しました。現在、いずれのチタン需要も段階的ながら回復しつつありますが、コロナ禍以前の需要規模には及ばず、本格回復には未だ時間を要することが予想されます。
このような事業環境において、当社事業におきましては低迷する需要に対応するためスポンジチタン生産において低操業度を維持しつつ、業績の回復に向け要員対策をはじめ徹底したコスト削減に取り組んでおります。また、収益構造の強化にも傾注しており、成長が著しい半導体市場において高機能材料事業の製品、殊更、高い収益性が期待できる高純度チタンの拡販などにも取り組んでおります。
しかしながら、コロナ禍により一旦は大きく落ち込んだ世界経済の好転に伴いチタン需要は回復しつつあるものの北米における物流停滞や海上運賃の継続的な上昇等に加え、高騰していたチタン鉱石や燃料価格がロシアによるウクライナ侵攻により更に押し上げられており、先行きは依然として不透明な状況にあります。
現在、高騰する原材料価格等が業績回復の制約になるなかで、チタン事業の収益力の改善に向けてお客様にご理解を求めつつ販売価格適正化を推進しております。また、生産諸元の改善等の合理化、労務費の削減や諸経費の圧縮等にも引き続き全社を挙げて取り組んでおります。
一方、厳しい経営環境にはありますが、中長期経営課題である事業構造の強化に向けて合金TILOPの事業成長の早期化やリチウムイオン電池用SiO負極材の事業化等を推進しております。持続的な成長に資する新たな事業にも限定的ながら経営資源を継続的に投入することで、長期ビジョンを描きながら事業ポートフォリオの変革にも取り組んでまいります。これらの取り組みによってチタン事業における安定的な収益確保と高機能材料事業の成長を加速し、財務体質の早期健全化と安定成長基盤の再構築を図ってまいります。
現在、以下の経営課題に対し基本方針を設定し、鋭意取り組んでおります。
【経営課題】 ・価格適正化及び徹底したコスト削減によるチタン事業の収益力の回復 ・事業構造の強化による収益構造の補強と成長戦略の加速 ・財務体質の早期健全化による安定成長基盤の復元
【基本方針】 ・基幹事業であるチタン事業の収益力を再構築し、回復需要の着実な捕捉による成長軌道への早期復帰 ・事業構造の変革のため高機能材料事業の成長力と収益力の強化 ・事業ポートフォリオの変革の加速に向けた新規事業の萌芽、育成の着実な推進 ・カーボンニュートラル対応をはじめ環境負荷低減に向けた多面的な活動の推進 ・IT技術の積極的な活用(DX対応と業務改革、AI等を活用した生産技術の高度化) |
それぞれの事業セグメントにおける課題は次のとおりであります。
1.チタン事業
①収益基盤の強化
・長期的な事業の継続性を確保できる水準への販売価格及び販売構成の適正化
・革新的な技術開発によるコスト構造の改質と環境負荷低減への貢献
・安定かつ競争力ある原料調達体制の維持と低廉原材料の利用技術の強化
②最適生産体制の追求
・販売数量見合いの最適な生産体制の高度化と採算性最大化のための品種構成の構築
・生産技術の高度化のためのAI等の数理工学的アプローチの積極導入
2.高機能材料事業
①高純度チタンの顧客対応力強化による事業拡大
・技術営業力の強化による顧客対応力の強化と戦略製品によるシェア拡大
・先端ニーズを先取りした特長ある製品の開発と継続的な成長機会の捕捉
・高付加価値品の拡販とロスコスト削減による収益力の更なる強化
②球状チタン合金粉末(合金TILOP)の事業基盤の強化
・合金TILOP専用工場の戦力化による事業基盤の構築
・事業推進体制の強化による提案力の向上と顧客との連携深化
・継続的なプロセス技術開発と差別化製品の市場投入
③リチウムイオン電池用SiO負極材料の事業化加速
・専門組織による顧客ニーズへのきめ細かく迅速な対応で早期事業化を推進
・パイロットプラントによる品質、製造技術の検証と事業基盤の獲得
④高品質メニュー創出に向けた取り組みの継続
・全社横断体制による当社保有技術を活用した新規事業の探索と事業化検討
3.全社的取り組み
①コスト構造の強化
・業務効率化や組織統合による間接人員の削減、経費削減の継続
・事業ポートフォリオ変革に向けた柔軟な組織改革の推進
②技術開発力の強化
・生産プロセス技術の高度化に特化した組織体制の強化と社外研究機関との連携
・新たな製品や事業のための玉だし活動の継続
③人材育成
・次代を担うリーダーの計画的な育成に向けた人事施策の充実
・熟練者の経験やノウハウ等の可視化、共有化による技能伝承と技術スタッフの強化
④DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応推進
・基幹システムの刷新による業務改革の推進
・蓄積データの積極的な活用による更なる品質安定化と生産効率の向上
⑤ESG取り組み
・環境負荷低減への貢献
・安全で健康な職場環境の構築
・人材育成とダイバーシティの推進
・ガバナンスの充実による持続的成長
・先端素材の開発・提供によるサステナビリティ社会への貢献
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