課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営の基本方針

当社グループは、『グローバルな市場で選ばれる電解銅箔メーカーとして、永続的な発展を目指します。』を経営理念とし、経営ビジョンには以下の事項を掲げております。


 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、生産数量(㌧数)及びEBITDAによる評価を行っております。生産数量(㌧数)は、当社グループの生産販売活動の進捗状況を、銅価格の騰落による影響額を除外して把握するために活用しております。また当社グループは生産設備を多数保有しているため、減価償却費や金利負担等の影響を補正した利益指標としてEBITDAを重視しております。EBITDAは、以下の計算式により算定しております。

● EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + のれん償却費

 

(3) 経営環境

(主要製品の内容)

当社グループは、硫酸銅を主成分とする電解液から電気分解により析出した金属銅を、薄膜状の銅箔に生成加工する電解銅箔製造事業を営んでおります。

当社の製品には、車載電池用銅箔と回路基板用銅箔があり、車載電池用銅箔は、主としてEVやHVに搭載されるLIBの素材に、回路基板用銅箔は、携帯電話等の電子機器に実装する回路基板の素材等に使用されております。

 

(市場の状況)

車載電池用銅箔については、主要各国におけるCO₂排出規制の導入・強化の動きが後押しとなり、xEV(EV、HV、PHV、マイルドHV、FCV等の総称)と呼ばれる、電動モーターを動力源とする電動自動車の市場は今後も拡大が見込まれます。またLIBの技術進化に対応した、より高品質の銅箔製品が求められると予測されます。

回路基板市場については、第5世代移動通信システム(5G)の商用サービス開始に伴い、今後、電子機器の高性能化、通信機器の5Gへのシフトが急速に進むとともに、5Gや高周波HDI(High Density Interconnection:高密度相互接続)等のニーズに適合する銅箔製品が求められると予測されます。さらに5Gの普及に応じて、自動運転技術や遠隔医療等の社会インフラや、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)等の領域への需要の広がりも想定されます。

 

 

(競合他社との競争優位性)

当社の車載電池用銅箔、回路基板用銅箔ともに、国内外の銅箔メーカーの製品と競合する場面がありますが、当社では、品質や性能の高さを最大の差別化要因として製品の競合を回避しております。今後も高品質の製品を提案していくことにより製品の競争力を確保する方針です。

 

(4) 中長期的な経営戦略

当社グループでは、今後の更なる成長を実現するため、今後の事業方針として①高付加価値分野へのシフト、②技術力の更なる強化、③連結子会社との事業シナジー拡大を掲げております。

①の高付加価値分野へのシフトについては、当社の技術優位性と品質・信頼性が活かせる高性能車載電池用銅箔や5G等をターゲットにした高周波基板用銅箔に注力し、収益性の高い製品の販売比率向上を目指します。

②の技術力の更なる強化については、プロセス技術開発の推進を通じ、製品の更なる品質向上や生産効率改善によるコスト競争力確保に努めてまいります。また、並行して、今後の市場ニーズに適合する製品の開発も推進します。車載電池用銅箔においては、先進LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した薄箔製品や高強度電池用銅箔等の開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、5GやHDI領域をターゲットとした製品の開発及び市場投入を継続的に進めます。

③の連結子会社との事業シナジー拡大については、昨今、自動車産業界において電動車シフトが急速に進み、車載用LIB向けの銅箔需要が世界的に高まっている状況を受け、連結子会社にて車載電池用銅箔の生産開始に向けた体制の整備を進め、当社及び連結子会社より車載電池用銅箔が供給できる体制を整備します。また需要に応じた更なる生産能力の増強についても検討を進めます。連結子会社は、米国唯一の電解銅箔メーカーであるとともに、競合他社の生産拠点が米国内に存在しない状況であることから、その立地条件を活かして、米国市場への製品供給を目指します。

このほか、当社が製造する回路基板用銅箔について、連結子会社が有する顧客基盤を通じた輸出販売を促進すること、連結子会社が製造する汎用箔の品質向上のため当社より技術支援を行うこと等に取り組みます。

 

またESGへの取り組みとして、当社の事業活動を通じて、脱炭素社会・循環型社会の実現に取り組みます。

当社においては、銅材料の100%再利用及び車載電池用銅箔によるxEV普及への寄与を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。

● 地球温暖化対策は喫緊の課題であり、脱炭素社会の実現が求められています。当社グループでは、車載電池用銅箔の供給及び高品質化による電気自動車の更なる普及に寄与することを通じて、脱炭素社会の実現に貢献します。

● 当社グループでは、銅箔の原材料となる銅材料はすべてリサイクル品を使用しており、また製造過程で発生する銅箔屑もリサイクルし、限りある資源を有効活用する、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(コスト競争力の確保)

車載電池用銅箔の分野においては今後、他社製品との価格競争が厳しさを増すことが予測されます。従来製品においては日米の生産拠点における全体最適化による生産能力最大化、顧客所在地に近い生産拠点で製造が行える体制を整備するとともに、当社グループ全体での原価管理の強化や生産効率の更なる改善に努め、コスト競争力を高めてまいります。

 

 

(連結子会社との連結経営の深耕)

当社グループは、経営の健全性、実効性及び透明性を確保し、企業価値の持続的な向上を通じて社会から信頼される企業となるため、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組みます。特に、グループ全体のリスク管理機能強化を重要課題として捉え、多面的な施策を適時実施いたします。

生産活動においては、当社をマザー工場と位置づけ、連結子会社Denkai America Inc.への技術支援を行いつつ、連結子会社において車載電池用銅箔の生産開始に向けた生産設備への投資を進めるとともに、需要に応じた更なる生産能力の拡大についても検討いたします。

また連結子会社を米国における銅箔製品の生産販売活動の拠点と位置づけ、グループ全体での生産能力の最適化や、在外顧客への製品供給体制を構築いたします。

 

(販路の拡大)

車載電池用銅箔の分野においては、国内外、とりわけ日本と米国市場の電動自動車関連の需要を取り込むべく、既存顧客との取引深耕を図りつつ、新規顧客の開拓により製品供給量の拡大に取り組んでまいります。

回路基板用銅箔の分野においては、国内市場における需要を取り込みつつ、連結子会社が有する顧客基盤を通じて、当社の回路基板用銅箔の輸出販売を促進し、米国及び東アジアにおける新規顧客の開拓により、先端分野向け需要の獲得に取り組んでまいります。

 

(新製品開発)

当社グループでは、将来の市場ニーズに適合する新製品の開発を推進いたします。

車載電池用銅箔においては、先進LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した薄箔製品や高強度電池用銅箔等の開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、5GやHDI領域をターゲットとした製品の開発及び市場投入を各々継続的に進めてまいります。

車載電池用銅箔においては、主としてxEVに搭載されるLIBにおけるエネルギー密度向上・コバルトフリー等の技術進化に対応した新製品の開発を進めてまいります。

回路基板用銅箔の分野においては、5GやHDI領域の需要を取り込むべく、より高品質な高機能回路基板用銅箔の開発を推進いたします。

 

(新型コロナウイルス感染症への対応)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に対し、当社グループでは、取引先、役員及び社員とその家族をはじめ、当社グループを取り巻くステークホルダーの方々の安全と健康を最優先した施策を継続的に実施しております。具体的には、時差出勤や在宅勤務(テレワーク)を実施するとともに、ワクチン接種時や感染懸念時に特別休暇を付与する制度を導入しております。

また生産拠点においては、感染防止策を徹底して生産体制を維持するとともに、サプライチェーン全体の需給状況等を注視し、機動的に対応できる体制としております。

 

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