(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が長期化し、終息の時期が見えないなかで、急激な円安の進行や資源価格の高騰なども続き、先行き不透明な状況で推移しました。また海外におきましても、ロシアのウクライナ侵攻問題、米国の連邦準備制度理事会(FRB)による金利引き上げと資産縮小などにより、不確実性が高まっております。
当社グループに関連する事業環境におきましては、設備投資においては持ち直しの動きがみられますが、公共投資においては依然高水準であるものの、このところ弱含みとなっております。また、住宅建設関連市場は弱含みとなっており依然として厳しい状況が続いております。
一方で、自動車関連分野では、半導体不足の影響に伴う生産調整の影響や、サプライチェーンの問題から、十分な在庫を準備しておこうとする企業があり、電熱線事業は好調に推移しております。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ439百万円増加し、10,419百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年228百万円増加し、4,248百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ210百万円増加し、6,170百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高につきましては、2016年4月から取り組んできた、汎用品の経営リソースへの投資抑制と高付加価値製品への積極的な投資による改革の成果が実ってきたこともあり、前年同期に比べ増加となりました。
営業利益につきましては、原材料価格や運送費の高騰を受け、電線事業およびポリマテック事業で減益となりましたが、電熱線事業で新工場移転に伴う生産性工場の影響も有り大幅な増益となりましたので、グループ全体で増益となりました。
経常利益につきましては、前年同期に比べ全体で微増となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、投資有価証券売却益と退職給付制度終了益が発生したため、前年同期に比べ増益となりました。
その結果、経済環境が非常に厳しいなかではありましたが、当連結会計年度における売上高は9,187百万円(前年同期比20.3%増)、営業利益は237百万円(前年同期比20.4%増)、経常利益302百万円(前年同期比7.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は281百万円(前年同期比49.2%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
[電線]
電線事業におきましては、主要な市場である建設・電販業界は、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化で半導体の供給不足が続いており、また、電線の主要材料である銅およびその他材料価格が期を通して高騰傾向であったことで、各種投資案件の見直しが発生するなど先行き不透明な状況で推移しました。
このような状況のもとで、水回り関連や高所関連の新分野開拓、新製品開発(9件)、商品説明会の実施、海外販売の強化などを行うとともに、材料価格アップに伴う価格改定を行った結果、売上高は6,353百万円(前年同期比25.4%増)となりました。
利益面におきましては、高付加価値製品の販売強化、継続的な経費削減等に取り組みましたが、他社との競合により価格転嫁が遅れたことで135百万円(前年同期比17.6%減)と前年同期より減少する結果となりました。
一方で、海外子会社では日本向けのゴム電線の生産が好調に業績を伸ばしており、現地販売でのBtoBも大きく利益面で寄与しました。
[ポリマテック]
ポリマテック事業におきましては、当事業に関連性のある新設住宅着工戸数は86万戸(前年同期比5%増)と増加しましたが、76期業績を牽引していました土木工事関連部材の受注減少と、在宅勤務等の業務体制の見直しによるオフィス関連部材の減少の影響を、新規顧客獲得および既存顧客での拡販案件獲得でカバーできず、全体の売上高は1,856百万円(前年同期比3.5%減)となりました。しかし、過去に獲得した新規顧客も業績に貢献し始め、新規顧客先ではリフォーム部材を含む内装建材企業の獲得ができました。
高機能チューブにおきましては、第76期末より徐々に売上が増加し第77期も安定した売上を計上しました。
利益面におきましては、生産性の改善等、コスト削減と製品価格の値上げに取り組みましたが、売上高(生産量)の減少および原材料・副資材・運送費の度重なる値上げの影響を受け、セグメント利益は4百万円(前年同期比72.0%減)となりました。
[電熱線]
電熱線事業におきましては、自動車に関係する産業機器、抵抗器等の部品向けを中心に需要が拡大し、特に産業用ロボット向け抵抗器需要が好調に推移しました。自動車のEV化やカーボンニュートラルの進展を背景に、電気制御に必要な抵抗器の需要は今後も拡大が続くものと予測されます。
一方、需要回復に加え、各社のBCP対策や、在庫水準の見直しなどを背景に様々な材料の調達環境が逼迫し、納期の長期化が常態化しました。
当事業ではスピード感のある営業対応や新工場移転に伴う生産性向上など供給体制の強化を図り、納期の短縮化に取り組むことで、競合他社との差別化を進め、新規開拓につなげました。
また、数年前から取り組んできた自動車関連、産業機器、抵抗器業界への新規開拓が成果として表れてきました。
その結果、売上高は977百万円(前年同期比50.8%増)、セグメント利益は97百万円(前年同期比478.9%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、税金等調整前当期純利益413百万円を計上しましたが、棚卸資産の増加、仕入債務の増加、売上債権の増加等を総合し、当連結会計年度末には1,071百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローでは、352百万円の使用(前連結会計年度は632百万円の獲得)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益413百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純利益283百万円)や仕入債務の増加465百万円(前連結会計年度は110百万円の増加)及び棚卸資産の増加647百万円(前連結会計年度は20百万円の増加)や売上債権の増加533百万円(前連結会計年度は40百万円の減少)があったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、28百万円の収入(前連結会計年度は85百万円の支出)となりました。これは、主に投資有価証券の売却による収入137百万円(前連結会計年度は33百万円の収入)及び有形固定資産の取得による支出96百万円(前連結会計年度は113百万円の支出)によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローでは348百万円の使用(前連結会計年度は224百万円の使用)となりました。これは、主に長期借入金の返済による支出338百万円(前連結会計年度は322百万円の支出)によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電線(千円) |
5,569,993 |
141.1 |
ポリマテック(千円) |
1,209,592 |
100.3 |
電熱線(千円) |
670,385 |
145.6 |
合計(千円) |
7,449,971 |
132.7 |
(注)金額は製造原価によっております。
(2)製品・商品仕入実績
当連結会計年度の製品・商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電線(千円) |
264,767 |
158.6 |
ポリマテック(千円) |
297,481 |
100.7 |
電熱線(千円) |
93,016 |
137.6 |
合計(千円) |
655,266 |
123.7 |
(注)金額は仕入価格によっております。
(3)受注実績
1)電線は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
2)ポリマテック及び電熱線は受注生産を行っておりますが、受注から生産、出荷に至る期間はきわめて短期であり、受注残高も少額のため、受注実績の記載を省略しております。
3)その他につきましては、該当事項はありません。
(4)販売実績
当社グループの商品、製品の販売は、主に問屋、電材店、商社を通じて行うほか、ユーザーに直接販売しております。当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電線(千円) |
6,353,005 |
125.4 |
ポリマテック(千円) |
1,856,476 |
96.5 |
電熱線(千円) |
977,931 |
150.8 |
合計(千円) |
9,187,413 |
120.3 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
総販売実績に対する割合(%) |
金額(千円) |
総販売実績に対する割合(%) |
|
泉州電業株式会社 |
1,419,054 |
18.6 |
1,828,270 |
19.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
(1)財政状態
当連結会計年度末の資産におきましては、流動資産は6,874百万円(前期比560百万円増)となりました。これは主に現金及び預金の減少680百万円、商品及び製品の増加401百万円と売掛金の増加257百万円、電子記録債権の増加231百万円、原材料及び貯蔵品の増加198百万円によるものであります。固定資産は3,545百万円(前期比121百万円減)となりました。これは主に、投資有価証券の減少58百万円と機械装置及び運搬具の減少35百万円、建物及び構築物の減少16百万円によるものであります。この結果、資産合計は10,419百万円(前期比439百万円増)となりました。
負債につきましては、流動負債2,827百万円(前期比445百万円増)となりました。これは主に、電子記録債務の増加459百万円によるものであります。固定負債は1,420百万円(前期比217百万円減)となりました。これは主に、長期借入金の減少232百万円によるものです。この結果、負債合計は4,248百万円(前期比228百万円増)となりました。
純資産につきましては、6,170百万円(前期比210百万円増)となりました。これは主に利益剰余金の増加223百万円によるものであります。
(2)経営成績
当連結会計年度における売上高は9,187百万円(前年同期比20.3%増)、営業利益は237百万円(前年同期比20.4%増)、経常利益302百万円(前年同期比7.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は281百万円(前年同期比49.2%増)となりました。
①売上高
第2[事業の状況] 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 に記載しております。
②営業利益、経常利益
販売費及び一般管理費は前期比85百万円(前期比6.0%)増加しました。主な内容は減価償却費で31百万円、手数料で14百万円増加したこと等によります。
これらにより、営業利益は237百万円となり、前連結会計年度に比べて40百万円の増加となりました。また、経常利益は302百万円となり、前連結会計年度に比べて20百万円の増加となりました。
③親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益には、退職給付制度終了益65百万円や投資有価証券売却益66百万円を計上し、特別損失には株主提案対策費用7百万円や投資有価証券売却損6百万円、事務所移転費用3百万円、固定資産除却損2百万円を計上しました。また、法人税、住民税及び事業税98百万円、法人税等調整額34百万円の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は281百万円となり、前連結会計年度に比べて92百万円の増加となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、第2[事業の状況]の3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。
(4) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、 経営環境の変化に対応し、 収益力を向上させる体制を強化してまいります。 具体的には、
連結自己資本利益率(ROE)8.0%以上、連結売上高経常利益率4.0%以上を中長期的な経営目標としており、そ
の維持向上に努めております。
当社はROEの特徴・留意点を踏まえたうえで、より当社の実態にあった経営指標SDROE『Sustainable
DevelopmentROE(持続可能な成長に繋がる資本利益率)』を算出し、活用しております。
通常、企業が公表しているROEは『当期純利益』をもとに計算しております。しかし、『当期純利益』は、将
来を見据えた設備投資の減価償却費や技術開発に要する経費などが差し引かれた後の金額となります。また、不動
産売却益などの特別利益も含まれており、各期の特殊要因が反映されます。そこで当社は『当期純利益』に『減価
償却費と技術経費』をプラスし、さらに『特別損益』をマイナスした『利益』を計算し、それをもとにSDROE
を算出しております。
当連結会計年度におきましては、SDROEは7.5%(前年同期比0.3ポイント増)となりました。連結売上高経常利益率につきましては、経常利益は増加しましたが、原材料価格の高騰により売上高が増加した影響により、3.3%(前期同期比0.4ポイント減)となりました。今後につきましては、経営戦略の「4S(新)運動」を強力に推進し、目標ペースの維持、向上ができるように取り組んでまいります。
目標指標 |
目標値 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前期比増減 |
連結自己資本利益率(ROE) |
8.0%以上 |
3.2% |
4.6% |
1.4% |
連結売上高経常利益率 |
4.0%以上 |
3.7% |
3.3% |
△0.4% |
EBITDA |
500,000千円以上 |
482,908千円 |
533,569千円 |
50,660千円 |
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業は、日本経済の影響を受けることになります。特に設備投資や住宅建設などの動向は需要量の変動につながり、当社グループの売上高・受注量は影響を受けることになります。
当社が購入している原材料におきましては、銅、ニッケル及び原油価格等の市場価格の動向により、変動リスクを受けます。銅の購入に関しては、当用買いを行う事により市場価格に連動した購入を行っており、ニッケルについては価格変動の影響を軽減するように計画的な購買を行っております。
為替動向におきましては、海外取引や外貨建債権債務の増加による為替換算差額が事業に影響を与える可能性があります。当社としては、為替予約等のリスクヘッジに取り組むことで対応していきます。
繰延税金資産の回収可能性の判断におきましては、綿密なスケジューリングを行っておりますが、連結納税特有の処理や多額の欠損金が発生した場合には経営成績に影響を与える可能性があります。
その他の経営に影響を与える要因につきましては、第2[事業の状況]の2[事業等のリスク]に記載しております。
c.資本の財源及び資金の流動性
資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、機械設備等の新規購入、資本的支出のほかに子会社の工場関連への投資費用であります。
財務政策
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,705百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,071百万円となっております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に際しては、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り等を行わなければなりません。しかし、事前に予測不能な不確実性が存在するため、実際の結果が現時点での予測と異なる場合があります。当社グループにおいて、連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表注記事項 重要な会計上の見積り]」に記載しております。
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