課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社の経営方針は、「ESGを中核に据え、持続的な成長を実現するため、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の充実・強化を図る。特に「ヒト(従業員)」に重点を置き、人材確保と人材育成に努めると共に、働き甲斐のある職場づくりに真摯に取組む。」であります。

 

(2) 経営戦略等

 経営戦略としては、「環境・社会の変化に即応し、持続的な成長を実現する為、①新分野開拓(環境・社会の変化に即応)、②新製品創出(新しいニーズに呼応した技術開発)、③新顧客増強(常に顧客を拡充しネットワーク拡大)、④新グローバル戦略推進(新たな海外市場を開拓)、以上の「4S(新)運動」を展開する。」であります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、 経営環境の変化に対応し、 収益力を向上させる体制を強化してまいります。 具体的には、 連結自己資本利益率(ROE)8.0%以上、連結売上高経常利益率4.0%以上を中長期的な経営目標としており、その維持向上に努めております。

 当社グループはROEの特徴・留意点を踏まえたうえで、より当社グループの実態にあった経営指標SDROE『Sustainable DevelopmentROE(持続可能な成長に繋がる資本利益率)』を算出し、活用しております。

 通常、企業が公表しているROEは『当期純利益』をもとに計算しております。しかし、『当期純利益』は、将来を見据えた設備投資の減価償却費や技術開発に要する経費などが差し引かれた後の金額となります。また、特別損益により各期の特殊要因が反映されます。そこで当社は『当期純利益』に『減価償却費と技術経費』をプラスし、さらに『特別損益』をマイナスした『利益』を計算し、それをもとにSDROEを算出しております。

 

(4) 経営環境

 今後の見通しにおきましては、新型コロナウイルス感染症の終息の目処が未だたたず、また、ロシアのウクライナ侵攻による社会・経済の不安定化が見られるなかで、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等によるリスクによって、厳しい状況で推移するものと思われます。

 このような状況下ではありますが、当社グループはこれまで継続してきた改革「海外マーケット拡大への取り組み」「新製品開発を可能とする技術力向上への取り組み」「電熱線事業への取り組み」「基幹システムへの取り組み」「従業員エンゲージメントへの取り組み」「営業活動における取り組み」「情報発信における取り組み」「社会課題への取り組み」の成果をあげて、持続可能な成長トレンドを目指してまいります。

[電線事業]

 電線事業におきましては、当事業に関連の深い公共事業予算は前年同期から横ばいではありますが、そのなかの「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」では防災・減災について重点化された予算になっております。また、産業別国内生産はグローバル需要と内需の回復により工作機械、自動車産業を中心とした産業機械分野の業績回復に伴う設備投資増加が予測されるため、当社としましては継続した既存得意先の深耕および新規得意先開拓を行い積極的に営業活動を展開してまいります。

 また、2021年12月にPVC(塩化ビニル)素材の優れた特徴を活かして、生活の利便性向上・環境配慮・リサイクル・安全・防災などの社会のニーズに応える商品を公募するコンテスト『PVC Award 2021』(主催:塩ビ工業・環境協会など、後援:経済産業省など)にて準大賞を受賞した当社の「水中機器用フロートケーブル」が2022年1月に国土交通省が運営する『NETIS (New Technology Information System)』に登録されたことで、今後公共事業への積極的な参入が見込めるようになったため、当該製品の更なる販路拡大に努めてまいります。

 新製品の開発としては、近年の建物の高層化に伴い、工事現場で使用される仮設用エレベーターケーブルに対するより高い耐久性・安全性が求められており、この要望に応えるため従来品の導体補強材(アラミド繊維)より約1.2倍の破断強度を有するLCP (Liquid Crystal Polymer)繊維を使用することで耐張力・耐しごき性を向上させた『ウエイトバランス式仮設用エレベーターケーブル(WB-CVCT-HS)』を開発しました。

 さらに新製品創出に向けた産学連携も強化しており、2018年から始めた複数の大学と共同研究も継続して行っています。今後も技術・営業・製造の各部門連携を強化し製品開発・新分野開拓を行い、社会に貢献できる物作りに取り組んでまいります。

[ポリマテック事業]

 ポリマテック事業におきましては、当事業の業績に影響する新設住宅着工戸数は2021年度は86万戸となり、2022年度は84万戸を見込んでいます。新築は価格高騰を背景に低水準で推移するとみられますが、在宅時間やリモートワークの増加等、生活様式の変化に合わせた中古戸建てに住み替えによるリフォームおよびエクステリア部材の増加を見込んでおります。

 高機能チューブにおきましては、材料確保を行うことで海外メーカーへの供給増加に対応し、売上増加を見込んでおります。今後は、原材料の値上げ、副資材、運送費の更なる値上げが予測される環境のなか、値上げによる適正価格での販売と顧客への安定供給を進めてまいります。

 このような市場環境のなか、営業部門では住宅建材業界を含む新規開拓において積極的な訪問活動を行い、また電話やメールも活用し情報収集と案件獲得に努めてまいります。製造部門では効率生産、ロス材料の再利用等、ムリ・ムダ・ムラの排除を徹底し原価低減に努めてまいります。製品開発では廃プラなど環境に配慮した材料を活用した物作りを進めてまいります。また77期より進めてまいりました国内住宅市場の縮小を見据えた海外市場(樹脂製品)の開拓も、国際事業部と連携し強化してまいります。

[電熱線事業]

 電熱線事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の終息時期が見えないことや、ウクライナ情勢の影響によるニッケル価格の高騰や調達難の懸念があり、引き続き厳しい事業環境が続く可能性があります。

 当事業の主要な市場である白物家電分野では、コロナ禍での「巣篭り需要」や「衛生志向」により、外出機会を減らしたいという事を背景に大型かつ高機能の冷蔵庫の販売が好調に推移しております。但し、今後は「巣篭り需要」がピークアウトし、需要の伸びが鈍化する懸念があります。産業機器分野では、自動車の回復や半導体不足解消のための設備投資、カーボンニュートラルを背景としたEV車需要の高まり、世界的な少子高齢化社会による労働人口の減少、今般のパンデミックのような事態が起きた際の生産停止リスクの回避などによる自動化需要の高まりを受け、産業用ロボットなどへの需要が、今後も増していくことが見込まれます。これらの状況を背景にヒーターや抵抗器の需要も増していくものと考えられます。但し、部材、部品の調達難による各社での生産調整の動きや、この状況を背景に各社が実需以上の在庫積み増しや二重・三重の発注を行ってきた反動で供給過剰に陥る事態も懸念されております。

 今後の課題としてコロナ感染問題や緊迫するウクライナ情勢を背景に、当事業のマーケットは混乱し、サプライチェーンの見直しなど大きく変化しようとしています。また近年の世界経済は、カーボンニュートラルに大きく舵を切っており、その動きに沿った事業展開に主軸を移していきます。特に、将来にわたって拡大するであろう抵抗器向け抵抗線・帯の拡充に注力します。

 喫緊の課題としては、原材料の安定調達と製品の安定供給の実現となります。調達枠拡大、調達先の多様化、調達手法の工夫により安定調達の実現に取り組んでまいります。営業基盤拡大においても材料調達力の強化は、必須です。調達力強化により、マーケットにおける優位性の確保に取り組んでまいります。

 また、引き続き産業機器分野、抵抗器分野、海外市場での新規顧客、新規案件の更なる開拓に努めるとともに、既存顧客においても各社の動向や在庫水準について、きめ細かい情報収集に注力し、当社への発注割合増を獲得できるよう、より満足度の高い「品質」「納期」「サービス」の提供や、取扱鋼種の拡大に引き続き注力するとともに生産性向上と原価低減を図り、業績の向上に努めてまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 環境・社会の変化を迅速かつ的確に捉え、その変化に伴うニーズに即応する技術開発を通じて、環境・社会に貢献することで、安定的に収益を確保するとともに持続的成長を可能とすることが、当社グループの重要な課題と考えています。

 この課題を解決するため、 以下の「4S(新)運動」に取り組んでまいります。

①新分野開拓

 社会・環境の変化に即応し高付加価値製品を提供することで、新分野開拓を目指してまいります。

②新製品創出

 社会・環境のニーズを捉え、これに呼応した技術開発を行い、社会・環境に貢献する新製品を開発し、お客様にタイムリーに新製品を提供してまいります。

③新顧客増強

 お客様向け製品説明会の開催、業務課からの電話による営業の補強、ホームページの充実等による情報発信を強化などを通じて、顧客増強を図ってまいります。

④新グローバル戦略推進

 今後の成長が見込まれる海外マーケットを中心に、電線事業・ポリマテック事業・電熱線事業のグループとして新たな海外市場を開拓し、利益向上を目指してまいります。

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