当事業年度における当社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
a. 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、昨秋の新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言全面解除から、企業業績は徐々に回復傾向に転じてきており、持ち直しの兆しがみえてまいりました。しかしながら、年明けからのオミクロン変異株の感染拡大による経済活動の制限、資源価格の高騰など景気の下振れリスクが生じており、加えてウクライナ情勢などの地政学的リスクの高まりもあり、先行きは不透明感を増しています。
当社が属する建築金物市場におきましては、新設住宅着工戸数について全体としては持ち直しが見受けられましたが、分譲マンションの着工戸数は依然として厳しい推移となっております。また、企業収益の改善等を背景に設備投資についても持ち直しがみられました。一方で、主材料である金属材料は価格の上昇が続いており、石油などのエネルギー資源の高騰も相まって、コスト面での厳しい状況が続きました。また、コロナ禍の影響を受けて、工事が遅延するなど販売面においても影響を受けました。
このような中、当社では、WEB商談の活用を継続するとともに、対面での営業活動についても感染症対策を徹底したうえで、慎重に展開してまいりました。また、インターネット広告やホームページの充実を図ることで、アプローチの多様化とお客様への利便性を高めることに努めました。
原材料コストの増大などに対しましては、製造工程や設計などの見直しなどによる原価改善に努めるとともに、一部製品に関しまして、価格改定に踏み切るなどの対応を実施いたしました。
以上の結果、当事業年度の売上高につきましては、海外への販売を伸ばせなかったことや工事の遅延などの影響から前事業年度比2.4%減の9,864百万円となりました。利益面では、営業利益は前事業年度比10.6%減の374百万円、経常利益は前事業年度比10.8%減の389百万円となりました。当期純利益は前事業年度に比べ13.1%減の257百万円となり、自己資本利益率は前事業年度比0.3ポイント減の2.1%となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(セグメント売上高):当事業年度(自 2021年3月1日 至 2022年2月28日)
(建築関連製品)
建築関連製品におきましては、エクステリア関連製品が、インターネットを介した販売拡大に努めるなど、積極的な受注獲得に取り組むことで、比較的堅調に推移いたしました。
一方で、前事業年度の喫煙所の駆け込み需要などから当事業年度における販売に影響が生じました。また、アルミ製現場金物などが新型コロナウイルス感染症の影響による工事物件の延期や遅延により、販売が伸び悩みました。
また、海外への販売につきましても、ホームページのグローバルサイトの充実などに取り組んだものの、諸外国における感染症の拡大に加えて、海上運賃の上昇、ウクライナ情勢による地政学的リスクの高まりなどから、厳しさの増す販売状況となりました。
その結果、売上高は9,702百万円(前事業年度比2.3%減)、セグメント利益(営業利益)は、590百万円(前事業年度比8.8%減)となりました。
(不動産賃貸)
不動産賃貸関連につきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、人の移動そのものが小さくなる中で、収益の主力でありますワンルームマンションでは、学校寮としての需要が一時的に低下したことなどから、入居率が低下いたしました。一方で、法人向けテナントに関しましては、軽微な影響にとどまり、比較的安定した収益を確保いたしました。
経費に関しましては、第3四半期以降に入居率の改善がみられ、入退去時対応の清掃等に関するコストを要したことなどから増加いたしました。
その結果、売上高は162百万円(前事業年度比2.7%減)、セグメント利益(営業利益)は88百万円(前事業年度比2.6%減)となりました。
b. 財政状態
(流動資産)
当事業年度末における流動資産の残高は、前事業年度末に比べ360百万円増加し、10,314百万円となりました。これは、事業年度の後半に売上高が幾分改善したことから、売上債権が35百万円、棚卸資産が41百万円増加し、また現金及び預金が274百万円増加したことが主因であります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産の残高は、前事業年度末に比べ98百万円減少し、5,240百万円となりました。これは、時価評価により投資有価証券が20百万円、システム投資により無形固定資産が52百万円増加した一方で、有形固定資産が168百万円減少したことが主因であります。
なお、有形固定資産の減少は、生産設備等を118百万円取得したものの、減価償却や設備更新に伴う除売却により287百万円減少したことによるものです。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債の残高は、前事業年度末に比べ66百万円増加し、2,742百万円となりました。これは、原材料価格の上昇や事業年度後半にかけての生産量の増加などから仕入債務が128百万円増加したものの、未払費用が18百万円減少したこと及び未払消費税等の減少などからその他流動負債の金額が42百万円減少したことが主因であります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債の残高は、前事業年度末に比べ12百万円増加し、224百万円となりました。これは、役員退職慰労引当金が10百万円増加したことが主因であります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ182百万円増加し、12,587百万円となりました。これは、当期純利益による増加などによって、繰越利益剰余金が170百万円増加したことが主因であります。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ274百万円増加し、4,187百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動により得られた資金は655百万円(前事業年度は802百万円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益389百万円、仕入債務の増加による224百万円及び減価償却費309百万円などの収入とたな卸資産の増加による41百万円、法人税等の支払額129百万円などの支出によるものであります。
投資活動により支出した資金は294百万円(前事業年度は168百万円の支出)となりました。これは主に、事業投資に関する有形固定資産の取得による支出218百万円、及び無形固定資産の取得による支出69百万円などの支出によるものであります。
財務活動により支出した資金は87百万円(前事業年度は144百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額87百万円によるものであります。なお、前事業年度からの支出額の減少は、当事業年度において自己株式を取得していないためであります。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注)1.各指標は、以下の計算式により算出しております。
自己資本比率 :自己資本÷総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー÷利払い
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
4.営業キャッシュ・フロー及び利払いは、キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を使用しております。
5.「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を2020年2月期の期首から適用しており、2019年2月期のキャッシュ・フロー関連指標については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標となっております。
セグメントのうち、建築関連製品において生産活動を行っており、当事業年度における生産実績を示すと次のとおりであります。
(注) 1 金額については、製造原価で記載しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当事業年度より製品の各品目への分類を変更しており、前年同期比は変更後の分類により生産実績を算定して計算しております。
セグメントのうち、建築関連製品の外装用パネルについては、受注生産を行っております。当事業年度におきまして、その重要性が小さくなったため、記載を省略しております。
当事業年度における販売実績をセグメント別に示すと次のとおりであります。
(注) 1 主な相手別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当事業年度より製品の各品目への分類を変更しており、前年同期比は変更後の分類により販売実績を算定して計算しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであります。
a.前事業年度実績との比較
当事業年度の売上高は、前事業年度と比べ237百万円減少し、9,864百万円となりました。これは、集合住宅やホテル、工場などの建築需要の低下によって、外装用建材関連など現場金物製品の販売が低調となったことや新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、海外への販売が不振であったことなどから、建築関連製品事業の売上高が前事業年度比で233百万円減少したことが主因であります。
当事業年度の売上原価は、前事業年度と比べ221百万円減少し、6,693百万円となりました。これは、建築関連製品事業の売上高の減少に伴って、その製品生産量が減少したことが主因であります。なお、原材料価格の高騰などのコスト増加リスクに対して、生産工程の改善等による原価低減や販売価格の適正化の実施により、原価率は前年と同程度に収まっております。
一方で、不動産賃貸事業につきましては、入退去に伴うハウスクリーニング費用等が減少したものの、経年劣化による修繕費や入居率維持のための広告費等が増加したことなどから、不動産賃貸事業の原価率は増加いたしました。
当事業年度の販売費及び一般管理費は、前事業年度と比べ28百万円増加し、2,797百万円となりました。これは、顧客への多様なアプローチを図るため、インターネット広告やホームページを充実させるなど販売拡大のための広告宣伝費等の増加が主因であります。
当事業年度の営業外収益は、前事業年度とほぼ横ばいの41百万円となりました。
当事業年度の営業外費用は、前事業年度とほぼ横ばいの27百万円となりました。
当事業年度におきまして、特別利益及び特別損失は発生しておりません。
当事業年度の経常利益は、前事業年度に比べて47百万円減少し、389百万円となりました。これは、売上高の減少により売上総利益が15百万円減少し、販売拡大のための広告宣伝費等の増加により販売費および一般管理費が28百万円増加したことが主因であります。その結果、売上高経常利益率は、0.4ポイント減少して3.9%となり、当期純利益は38百万円減少して257百万円、自己資本利益率は0.3ポイント減少して2.1%となりました。
b.業績予想との比較
当事業年度におきましては、建築需要は減少を続けるとともに、新型コロナウイルス感染症の影響は限定的な範囲において生じつつも、徐々に経済は回復していくことを想定し、売上高10,400百万円、営業利益450百万円、経常利益450百万円、当期純利益250百万円の業績を見込んでおりました。
当該業績予想との比較・分析は以下のとおりであります。
売上高に関しましては、業績予想を536百万円下回り、9,864百万円となりました。
建築関連製品事業におきまして、国内経済はワクチン接種が進む中、事業年度後半にかけて徐々に景気改善へと向かっていったものの、当社製品の需要が工事の後半に生じることやホームページなどによる販売拡大の効果は未だ限定的なものであったことから、当初の見込み販売量を下回りました。また、海外への販売がコロナ禍による経済活動の制限に加えて、海上運賃の上昇などにより伸び悩んだことから、開示した予想売上高を達成することができませんでした。
不動産賃貸事業におきましても、企業や学校等の寮としての需要を獲得できず、予想売上高を下回りました。
利益面に関しましては、経常利益が業績予想を61百万円下回り389百万円、当期純利益は業績予想を7百万円上回り257百万円となりました。これにより、売上高経常利益率は業績予想4.3%に対して、0.4ポイント減少し3.9%となりました。これは、金属価格など材料費の高騰に関して、生産効率の向上や販売価格の改定によって対応したものの、上記による売上高の減少によって利益金額が減少したことが主因であります。自己資本利益率は業績予想2.0%に対して、0.1ポイント増加し2.1%となりました。
a.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(主な資金の需要及び財源)
当社の運転資金需要のうち主なものは、原材料、商品等の購入や外注加工費等の製造費用のほか販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備投資等の資金需要の主なものは、建築関連製品事業の機械装置や金型などの工具等の生産設備への投資によるものであります。
これらの資金需要につきましては、主に営業キャッシュ・フロー及び自己資金による他、金融機関からの借入を財源として調達する方針であります。当社としましては、強固な財務基盤を有し、また適切な財務情報の開示などを通して金融機関と良好な関係を維持しており、運転資金及び投資資金の調達に関して、問題なく調達することが可能であると判断しております。
(資金の流動性)
当社は、手元資金を売上高の3ヶ月分相当に維持することで運転資金需要に対応しており、流動性リスクを管理しております。また、突発的な資金需要が生じた際には、機動的に調達可能なように、複数の金融機関との間で合計3,050百万円の当座貸越契約を締結しております。
なお、当事業年度末において借入金の残高はありません。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成にあたり、会計方針の選択、資産、負債、収益及び費用の報告額及び開示に影響を及ぼす見積りを行っております。経営者は、これらの見積りが必要な事項について、過去の実績、経験や見積り時点までに入手しうる情報などを総合的に勘案して、合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 (重要な会計方針)」に記載しております。また、財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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