文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、1917年の創業以来100年以上にわたり、金属・プラスチック・紙・ガラス等、それぞれが持つ特性を活かし、人々のライフスタイルや社会の変化に応じて、さまざまな素材の容器を世の中に送り出してまいりました。
当社グループは、2016年4月に制定した東洋製罐グループの経営思想のもと、次の100年に向けて、素材の開発と加工の技術を軸に、人々の暮らしをより豊かにし、環境にやさしいしくみを拡げ、さらなる発展と進化を目指しております。
〔東洋製罐グループの経営思想〕
経営理念
常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します。
信条
・品格を重んじ、あらゆる事に日々公明正大に努めます。
・一人ひとりの力を最大限に発揮し、自己の成長と共に社会の繁栄に努めます。
ビジョン
・世界中の人に必要とされる斬新で革新的な技術と商品を提供するグループを目指します。
(2)目標とする経営指標
2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」では、最終年度である2025年度に、売上高8,500億円、営業利益500億円、EBITDA1,100億円、ROE5%の達成等を数値目標として掲げております。
< 進捗状況 >
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や資源・エネルギー価格の高騰などの影響により、厳しい環境ではありましたが、当社グループの業績は過去最高水準となりました。特にStolle Machinery Company,LLCを中心としたエンジニアリング事業やタイ・中国における飲料充填事業など、海外事業の業績が大きく伸長したほか、鋼板関連事業における車載用二次電池材の販売数量が増加したことにより、売上高は過去最高の8,215億65百万円となりました。
営業利益は、鋼板や包装容器などの販売数量が増加したほか、原材料価格の高騰に対して一部の製品で価格転嫁に努めたこと等により、341億14百万円となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として政策保有株式の売却益を184億26百万円計上したこともあり、創業以来の最高益となる444憶22百万円となりました。
この結果、EBITDAは854億円、ROEは7.0%となりました。中期経営計画2025の初年度ではありますが、中期経営計画2025で掲げたROE 5.0%の目標を達成しております。
現在、新型コロナウイルス感染症の感染状況は改善傾向にありますが、世界情勢における、想定を超える資源・エネルギー価格の高騰や急激な円安は、当社グループの事業に大きな影響を与える懸念があります。当社グループにとって大変厳しい状況が想定されますが、成長分野や将来に向けた新たな市場へのチャレンジは、今後も注力してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
当社グループは、創業以来100年以上にわたり、包装容器を中心として、人びとの生活に欠かせない製品・サービスを提供し、社会に貢献してまいりました。
現在、当社グループを取り巻く事業環境は想定を超えて変化し、解決すべき様々な社会課題が顕在化しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、人びとの生活様式も大きく変容しております。
このような事業環境下において、当社グループは、2021年5月に、社会や地球環境について長期的な視点で考え、すべてのステークホルダーの皆様に提供する価値の最大化を図るべく、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定し、その実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定いたしました。当社グループは、「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランとして、2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」を策定いたしました。
概要は次のとおりです。
①長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」
当社グループの目指す姿・ありたい姿を「世界中のあらゆる人びとを安心・安全・豊かさでつつむ『くらしのプラットフォーム』」と位置づけ、「多様性が受け入れられ、一人ひとりがより自分らしく生活できる社会の実現」「地球環境に負荷を与えずに、人々の幸せなくらしがずっと未来へ受け継がれる社会の実現」を目指します。
そのために「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の3つの分野で、グループが一体となって、これまで培ってきた素材開発、成形加工、エンジニアリング等の技術・ノウハウを活用し、オープンイノベーション、IoT・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するとともに、お客様やお取引先等をはじめとした志を同じくするパートナーと連携し、包装容器メーカーの枠を超え、社会を変える新たな価値を創造してまいります。
②中長期経営目標2030
「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」の実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標として設定した「中長期経営目標2030」の概要は次のとおりです。
(注)国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の新基準「1.5℃目標」の認定取得を目指すため、2021年11月に、Eco Action Plan 2030の主要目標を以下のとおり上方修正しております。
・事業活動でのCO2排出量(Scope1・2)35%削減 ⇒ 50%削減
・サプライチェーンでのCO2排出量(Scope3)20%削減 ⇒ 30%削減
※ SBTイニシアチブ…企業のGHG(温室効果ガス)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
③中期経営計画2025
「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランである2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」(以下、「本中期経営計画」といいます。)は、2年目を迎えます。
本中期経営計画の概要およびその進捗状況は次のとおりです。
<基本方針>
本中期経営計画では、“「くらしのプラットフォーム」へ向けた持続的な成長”を基本方針とし、「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」で掲げた目指す社会の実現に向け、3つの主要課題に取り組みます。
<3つの主要課題と施策>
a)既存事業領域の持続的成長
「多様性への対応」と「持続可能な社会の実現」の2つの軸と持続的成長の観点から、これまでの事業構造にとらわれず、果断に事業ポートフォリオの見直しを行うことで、既存事業領域の持続的な成長を目指します。
< 進捗状況 >
・脱プラスチックに向けた取り組みとして、海外を中心にアルミ缶製造設備を拡販しております。
・充填事業を拡大するため、国内において2020年11月に新設したTOYO PACK KIYAMA株式会社が、2022年3月より稼働したほか、中国の東洋飲料(常熟)有限公司において生産能力増強を進めております。
・脱炭素社会への貢献として、EV・ハイブリッド車向けの車載用二次電池材(ニッケルめっき鋼板)の生産能力増強を進めております。
b)新たな成長領域の探索・事業化・収益化
人びとのライフスタイルの変化や環境負荷の低減など、社会の多様なニーズや新たな課題を捉え、当社グループが培ってきた「素材開発」「成形加工」「エンジニアリング」などの保有技術をもとに、「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の領域において、新規事業を創出することで、新たな社会基盤を創造します。
< 進捗状況 >
■次世代のコアとなる事業を創出するため、新規事業を展開しております。
・ガラス容器の製造で培った技術を応用し、医療用カテーテル向けの屈折率分布型マイクロレンズSiGRIN(シリカグリン)を開発しております。ライフサイエンス分野でグローバルに展開し、人々の健康の維持・増進に貢献することを目指します。
■スタートアップ企業との資本・業務提携により、社会課題解決のための事業機会の探索を行っております。
・DAIZ株式会社との提携
当社グループは、包装容器事業で長年にわたり培った食品の充填・包装・運搬の技術を保有しております。発芽大豆由来の植物肉を開発・生産するDAIZ株式会社と提携し、当社グループの充填・包装・運搬の技術を提供することで、社会課題である環境負荷の低減や食糧危機の解決などを目指します。
・株式会社Agnaviとの提携
当社グループは、小容量缶の充填設備レンタルサービス「詰太郎」を開発しております。一合缶に入った日本酒ブランドを展開する株式会社Agnaviと提携し、酒蔵に対して当社グループの容器と充填サービスを提供することで、社会の多様化するニーズに応えるとともに、地域創生に貢献することを目指します。
・株式会社セルージョンとの提携
当社グループは、包装容器事業で長年にわたり培った技術を活かし、世界初の閉鎖系スフェロイド形成用バッグ「ウェルバッグ」を開発しております。iPS細胞を利用した角膜内皮再生医療の社会実装に向けた研究開発を行う株式会社セルージョンと提携し、当社グループの開発した容器を提供することで、再生医療分野の発展に貢献することを目指します。
c)成長を支える経営基盤の強化
持続的成長のための経営資源の充実とガバナンスの強化を行います。
ⅰ)技術・開発
パートナーとの共創や新技術の探索を通じ、事業創出のための研究開発を推進
ⅱ)IoT・DX
デジタル技術の活用を通じたバリューチェーンの変革と事業領域の拡大
ⅲ)人材
新たな価値創造につながる人材プラットフォームの整備
ⅳ)組織
社会からの信頼に応えるためのコーポレート・ガバナンスの強化
< 進捗状況 >
・気候変動がもたらすリスクと機会が当社グループに与える影響についての検討を深めるため、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同表明を行い、シナリオ分析等の取り組みを進めております。
・情報発信・情報開示体制を強化し、当社グループが持続的に成長してくための施策をステークホルダーの皆さまにお伝えするため、2022年3月に当社グループ初となる統合報告書「統合報告書 2021」を発行しました。「統合報告書 2021」は当社ホームページよりご覧いただけます。
URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/5901/ir_material_for_fiscal_ym7/115579/00.pdf
・既存のCSRおよび環境活動について、より高次元の括りで統合し、一貫性を持った形で活動することを目的として、CSR部および環境部を廃止し、2022年4月1日付でサステナビリティ推進部を新設しております。
<持続的成長のためのロードマップ>
包装容器領域を基盤として、エンジニアリング・充填・物流領域におけるバリューチェーンの拡大と、鋼板関連事業・機能材料関連事業における光学用・電池向け部材等での成長を図るとともに、新規事業領域において社会課題解決の新しい仕組みを創出し、2030年度に売上高1兆円を目指します。
<投資・財務方針>
事業活動と資産圧縮で創出したキャッシュを原資として、将来の成長や基盤強化等の投資を実施いたします。
a)投資
「くらしのプラットフォーム」へ向け、3,300億円規模の投資(M&A含む)を実施
目的 |
目安額 (億円) |
備考 |
|
新たな成長分野・ 領域の拡大 |
主な投資目的 ■環境負荷低減・環境価値拡大のための投資 ■包装容器製造の枠を超えたバリューチェーン全体でのシステム構築 ■「食と健康」・「快適な生活」・「環境・資源・エネルギー」領域を中心とするビジネスパートナーやスタートアップ企業との共創による事業創出と育成 |
1,600 |
- |
既存事業領域 の持続的成長 |
注力すべき既存事業領域における基盤強化 |
1,500 |
設備更新において、環境負荷低減や省人化・省力化を伴う形で極力行う |
経営基盤強化 |
IoT・DXの推進、新技術開発、人材開発など |
200 |
- |
合計 |
3,300 |
- |
※上記は計画時の目安であり、進捗状況・事業機会タイミング等の要因により、内訳を随時見直し、投資判断・実施
b)原資
・本中期経営計画期間において営業キャッシュ・フロー約3,800億円を創出
・政策保有株式を400億円規模売却し、成長分野への投資に活用
<株主還元方針>
本中期経営計画期間中は、総還元性向80%を目安に株主還元を行います。
a)配当金
連結配当性向50%以上を目安とする
1株当たり46円を下限とし、段階的に引き上げる
b)自己株式取得
機動的に実施する
※資産売却等による特別損益は、原則として、連結配当性向および総還元性向を算定するうえでは考慮いたしません
< 進捗状況 >
2021年度は年間配当金88円(中間配当金23円、期末配当金65円)とし、加えて92億円分(6,500,000株)の自己株式を取得いたしました。2021年度における投資有価証券売却益を除いた、みなし総還元性向は79.2%、みなし連結配当性向は50.3%となります。
当社グループを取り巻く事業環境は、より一層厳しさを増すことが想定されますが、本中期経営計画の諸施策を着実に遂行することで、持続的な成長を目指してまいります。
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