(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、遡及処理後の数値で前連結会計年度との比較分析を行っております。
①経営成績
a.ドラム事業の状況
経営環境について
当連結会計年度における我が国経済は、繰り返される感染拡大の中でも政府の緊急経済対策やワクチン接種の拡がりにより、一進一退しながら回復に向かっていましたが、2022年に入ってオミクロン株の蔓延やロシアのウクライナ侵攻等で先行きに不透明感が拡大しています。こうした中でも国内ドラム缶の需要は為替円安による化学製品の輸出好調に加え、自動車生産回復を睨んだ中間在庫の積み増しという背景も推定されて引続き堅調で、コロナ禍前の2019年度も上回り、産業用容器業界の全国200ℓ新缶ドラム缶の販売実績は、14,257千缶(前期比+11.2%)となっています。
当社グループが国内と並んで事業展開している中国においては、政府のゼロコロナ政策による消費停滞、経済活動全般の停滞や電力供給不足問題もあって経済成長は鈍化し、ドラム缶需要は国内と異なりコロナ禍の前の2019年度の同時期には届かないレベルで、事業環境は日本に比べても厳しいものとなっています。
一方、2020年末からの需給逼迫による鋼材価格高騰は近年例のないレベルに達しました。この鋼材価格高騰についてはお客様のご理解を頂き販売価格に転嫁して参りましたが、鋼材価格アップに対して販売価格アップのタイミングが一定程度遅れることは避け得ず、大幅な減益要因となりました。
売上数量及び売上高について
当社グループの国内、中国を合わせた販売数量は前述のドラム缶需要の回復を受けて9,352千缶(前期比6.1%増)となり、売上高は数量増に加えて鋼材価格アップの販売価格への反映もあり、351億39百万円(同79億5百万円増、29.0%増)となりました。
経常利益について
鋼材価格高騰に関してはお客様のご理解を頂き概ね販売価格に反映させて頂くことができ、コロナ禍前を上回る国内ドラム缶需要の回復、品種構成改善やコストダウンの一層の徹底で収益改善を図りましたが、前述のようなタイミングのずれによる損益悪化が大きく、経常利益は21億75百万円(前期比3億64百万円減、14.4%減)となりました。
b.高圧ガス容器事業の状況
当社が取り組んでいる事業分野の内、在宅医療用酸素容器については、呼吸器系疾患の患者が入院から在宅治療にまわる傾向が続いていること、ワクチン接種の拡がりにより外出機会が増加したことから需要は堅調に推移しています。但し蓄圧器用水素容器で大型案件の翌期への出荷のずれ込み等があり、高圧ガス容器事業全体としての経常損失は1億45百万円(前期は1億87百万円の赤字)、売上高は3億57百万円(前期比1億63百万円増、84.0%増)となりました。
c.連結の状況
以上の各セグメントを合わせた当連結会計年度の当社グループの連結業績は売上高が354億97百万円(前期比80億69百万円増、29.4%増)、経常利益は21億50百万円(同2億86百万円減、11.8%減)となりました。
尚、2022年1月19日開催の取締役会において、連結子会社である中華人民共和国の杰富意金属容器(上海)有限公司を解散することを決議し、これに伴い、固定資産の減損及び従業員に対する経済補償金等により8億12百万円の特別損失を計上しております。他に保有株式の売却による特別利益も計上しており、親会社株主に帰属する当期純利益は12億55百万円(前期比5億75百万円減、31.4%減)となりました。
②財政状態及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローが3億73百万円の支出(前期は26億77百万円の収入)、投資キャッシュ・フローが10億13百万円の支出(前期比5億7百万円増)、財務キャッシュ・フローが47百万円の収入(前期は6億12百万円の支出)となり、現金及び現金同等物は12億62百万円の減少となりました。
当連結会計年度末の総資産は448億35百万円(前連結会計年度末比48億70百万円増)、負債128億17百万円(同34億3百万円増)、純資産320億17百万円(同14億66百万円増)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
ドラム缶 |
34,721,480 |
128.7 |
高圧ガス容器 |
334,984 |
188.8 |
合計 |
35,056,465 |
129.1 |
(注)1 金額は販売価格で表示しております。
b.受注実績
当社グループは大部分の製品につき、受注生産方式をとっておりますが、大部分が受注から納品までの期間が2日~5日程度であり、したがって、受注残高は僅少ですので、販売実績を受注実績とみて大差ありません。
c.販売実績
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
ドラム缶 |
35,139,771 |
129.0 |
高圧ガス容器 |
357,974 |
184.0 |
合計 |
35,497,745 |
129.4 |
(注)1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
日新容器株式会社 |
3,459,652 |
12.6 |
4,363,723 |
12.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討は次のとおりであります。尚、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績
当社グループは2021~2024年度を対象として第7次中期経営計画を立案し、2024年度の経常利益目標を27.0億円としています。初年度にあたる当連結会計年度は、鋼材価格高騰やコロナ禍による中国の伸び悩みで厳しいスタートとなりましたが、今後、中期経営課題の着実な実行により目標達成に向け取り組んで参ります。
|
2021年度実績 |
第7次中期経営計画 (2024年度) |
ドラム缶販売数量 |
9,352千缶 |
10,000千缶 |
売上高 |
354億円 |
300億円 |
経常利益 |
21.5億円 |
27.0億円 |
a.ドラム事業
国内については近年例のないレベルの鋼材価格高騰に対して、粘り強い営業活動により、最終的には概ね販売価格への転嫁を実現しました。タイミングのずれによる損益悪化は避け得ませんでしたが、コロナ禍前を上回る国内ドラム缶需要の回復、品種構成改善やコストダウンの一層の徹底等により、収益悪化を最小限に留めるべく努めて一定の成果をあげたと考えています。また中期的な課題である老朽化の著しい川崎工場の大規模リフレッシュについても検討を開始しています。
他方、中国ではゼロコロナ政策による生産停止、経済停滞、電力供給制限等もあって需要がコロナ禍前を下回って極めて厳しい経営環境となり、当連結会計年度の損益は大幅に落込みました。当社は2021年5月に発表しました第7次中期経営計画において「華東地区事業の選択と集中による再構築」を掲げ検討を進めてまいりましたが、この厳しい経営環境の中で、前述のように杰富意金属容器(上海)有限公司の解散を決定いたしました。同公司は同業他社との競争激化や設備老朽化により収益力が低下しており、工場周辺地域で再開発計画が進展していることも踏まえ、華東地区におけるドラム缶事業の生産集約により収益の抜本的な改善を進めるため、決断いたしました。同公司は既に稼働を停止しており、同公司が供給していた製品は、杰富意金属容器(浙江)有限公司、杰富意金属容器(江蘇)有限公司にて製造、供給を継続しています。工場集約による固定費削減と老朽化が進んだ上海から新しい浙江、江蘇への生産移管によるコストダウンで収益力を抜本的に向上させ、品質や生産性の向上と積極的な営業活動で中期的には増加が見込まれる需要を確実に捉えていきます。
ロシアによるウクライナ侵攻は世界に衝撃を与え、コロナ禍で始まった資源等の価格高騰は大幅に拡大しています。2020年末から始まった鋼材価格の高騰も、これを受けてもう一段進みつつあり、副資材、物流費を含むコストアップもあわせてドラム缶事業の収益を大幅に圧迫し始めています。これについては2021年度と同様お客様のご理解を頂き販売価格に反映させて頂かざるを得ないと考えております。
b.高圧ガス容器事業
在宅医療用酸素容器については前述のように需要が堅調でしたが、蓄圧器用水素容器で大型案件の翌期への出荷のずれ込み等があり、前連結会計年度より縮小したとはいえ当連結会計年度も赤字に留まりました。今後は蓄圧器用水素容器については多様な品揃えでステーション毎の個別のニーズに応えることで建設コストの低減にも寄与しながら受注を拡大し、成長分野である水素燃料電池向け容器については軽量で長寿命な水素燃料電池の優れた特性を活かして、積極的な需要開拓・拡販活動を行い、中期経営計画で目標としている高圧ガス容器事業全体としての早期の黒字化実現を目指すと共に、水素ステーションの増加による水素燃料電池自動車の普及や水素燃料電池の活用拡大を通じて脱炭素・水素社会、環境に優しい持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えております。
②財政状態及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度は経常利益が前期比2億86百万円減益の21億50百万円となり、鋼材価格高騰の転嫁により売掛金が増加したことや鋼材需給逼迫で落ち込んでいた鋼材在庫の適正化を図ったこともあり営業キャッシュ・フローは前期の26億77百万円の収入に対して3億73百万円の支出となりました。
国内ドラム事業での基盤整備投資や中国ドラム事業での華東地区事業の再構築のための投資もあり、投資キャッシュ・フローは前期を5億7百万円上回る10億13百万円の支出となる一方、中国における借入金増加で財務キャッシュ・フローは47百万円の収入となりました。
その結果、現金及び現金同等物は12億62百万円の減少(前期は15億68百万円の増加)となりました。
杰富意金属容器(上海)有限公司の解散に伴う特別損失を計上したため純資産の増加は14億66百万円に留まりましたが、当連結会計年度末で自己資本比率は68.1%で引き続き安定した財務体質であり、これをコロナ禍やウクライナ危機による業績悪化リスク、資金流失リスクの備えとするとともに継続的成長のための設備投資や人、技術に対する投資として活かしていきたいと考えております。
③重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
また、新型コロナウイルス感染症拡大が当社グループの会計上の見積りに与える影響は「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、低コストかつ安定的な資金の確保を重視して取り組んでおります。また、営業債権の流動化等、調達手段の多様化も継続して推進しております。
運転資金及び設備投資につきましては、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入を基本としております。
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