(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナワクチンの普及による経済活動正常化の進展や世界経済の回復による輸出の増加などにより、製造業を中心に好調に推移しておりましたが、後半は、部品不足による自動車生産の落ち込みや、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けた海外の景気減速の影響を受け不安定な状況となりました。世界経済においても、感染力の強い変異型コロナウイルスの影響、インフレ懸念、中国における不動産市場の停滞など、先行き不透明な状況となっております。
このような経営環境において、当社グループは、2021年度経営方針「高い目標の達成を、高い志で目指す企業集団になろう」のもと、過去最高業績の達成を目標に掲げ、新たな事業を含む事業領域の拡充に取り組むと同時に、デジタル技術の活用による生産性・コスト効率性の向上に努めました。また、環境社会の実現に向けた環境対応製品の創出と拡大、社会の変化に対応するためのダイバーシティ経営に積極的に取り組むなど、企業価値の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ4,701百万円増加し、50,924百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,857百万円増加し、18,221百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,844百万円増加し、32,702百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は405億1千8百万円(前年同期比23.1%増)、営業利益は32億4千9百万円(前年同期比149.3%増)、経常利益は34億8千7百万円(前年同期比145.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は22億円(前年同期比187.7%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、「メディカル事業」を追加したことに伴い、報告セグメントを従来の「ファスナー事業」、「産機事業」及び「制御事業」の3区分から、「ファスナー事業」、「産機事業」、「制御事業」及び「メディカル事業」の4区分に変更しております。以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
<ファスナー事業>
当事業につきましては、主な需要先である自動車関連業界を中心に半導体不足による生産調整の影響で需要が減少するものの、コロナ禍における自粛生活やテレワークを背景としたゲーム機・パソコン向け精密ねじの需要や、電子制御の進化に伴う車載用ECU向け一般ねじの需要が好調に推移しました。また、新しい生活様式として注目される自転車や、家で過ごす時間で利用される電動工具向けの需要も増加しました。
このような状況のもと、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け需要の増加が見込まれる自動車関連業界や電池業界を中心に、強固な異種金属接合を可能にし、軽量化・資源の効率化に貢献する「AKROSE」や「AKROSE HYBRID」の他、新製品「新型クリンチングスタッドボルト」や「ギヤ部品」など、多彩な締結部品を組み合わせ、コストと環境の両面でのソリューション提案を実践しました。また、海外拠点や関係会社との協業による新たな市場の開拓に努めました。
この結果、売上高は278億9千6百万円(前年同期比19.4%増)、営業利益は15億4千5百万円(前年同期比177.1%増)となりました。
<産機事業>
当事業につきましては、国内外ともに半導体不足に伴う需要先工場の一部稼働停止により設備投資が抑制される一方、標準機は、自動車のCASEに関わる設備や、省人化を目的とした住宅関連設備の需要が好調に推移しました。自動組立ラインは、住宅関連設備や照明器具製造設備を中心とする需要の増加に加え、米国市場の回復に支えられ伸長しました。
このような状況のもと、ウィズコロナ・アフターコロナ時代における安全・安心な生産現場の実現に向け、リモートメンテナンスを可能にする単軸ねじ締めユニットⅠoT対応モデルや、生産現場の省人化に貢献する協働ロボット専用のねじ締めユニット「PD400UR」をバーチャル展示会やホームページで動画を配信し、幅広い業界の需要喚起に努めました。併せて、製造工程における検査体制の強化、経費削減など、低重心経営に取り組みました。
この結果、売上高は71億8千2百万円(前年同期比31.7%増)、営業利益は16億8百万円(前年同期比76.4%増)となりました。
<制御事業>
当事業につきましては、流量計は、コロナ禍における消毒液や巣ごもり食品の需要増加を背景に、医薬品業界や食品業界で堅調に推移しました。システム製品は、ものづくり補助金を利用した省人化設備の需要が増加する一方、後半は半導体不足を背景に需要が減少しました。地盤調査機「ジオカルテ」は、ウッドショックによる材料価格の高騰など、住宅着工への影響があるものの、昨年市場へ投入した「ジオカルテⅣ」への活発な買い替え需要により好調に推移しました。
このような状況のもと、地盤調査機「ジオカルテ」のスマートフォン用通信アプリや、繊細な部品の検査過程における傷付きを防止する小物部品専用検査選別装置「ミストル ロボタイプ」、子会社においては、水分測定と電位差滴定など、同時に複数の分析を可能にする自動滴定装置「GT-310」、微量窒素・硫黄・塩素分析装置「NSX-5000Vシリーズ」などを市場に投入し、新たな需要の拡大に努めました。併せて、持続可能な原価の低減など、複層的な利益改善施策を展開しました。
この結果、売上高は54億1千6百万円(前年同期比35.0%増)、営業利益は1億5千6百万円(前年同期は営業損失1億6千4百万円)となりました。
<メディカル事業>
当事業につきましては、長期化するコロナ禍において、医療機関の経営状態の改善や、医療機関への訪問自粛の緩和はなく、事業環境は引き続き厳しい状況となりました。
このような状況のもと、医療機器販売会社を通じた販路拡大に取り組み、臨床試用の拡大に努めるとともに、医療用照明器「フリーレッド」の原価低減に向けた検証を推進しました。また、「医療用生体内溶解性高純度マグネシウム」の製品開発を加速するための組織の変革、上市に向け医療機関を含めたコンソーシアムの編成および製造体制の構築など、早期の製品化に向けた取り組みを推進しました。
この結果、売上高は2千3百万円(前年同期比67.5%減)、営業損失は6千1百万円(前年同期は営業損失1百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ21億3千6百万円増加し、104億3千5百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、36億5千万円の収入(前期は33億6千8百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益36億6百万円に加え、減価償却費12億9千4百万円や仕入債務の増加12億9千8百万円による資金の増加があった一方、売上債権の増加13億2千5百万円や法人税等の支払額6億1千9百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、9億9千3百万円の支出(前期は31億6千4百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入6億7千1百万円に加え、投資有価証券の償還による収入2億円による資金の増加があった一方、有形固定資産の取得による支出9億2千2百万円や定期預金の預入による支出6億4千万円による資金の減少があったことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、7億4百万円の支出(前期は8億7千1百万円の支出)となりました。これは主に、自己株式の売却による収入2億6千3百万円や長期借入れによる収入1億1千8百万円による資金の増加があった一方、長期借入金の返済による支出2億6千5百万円や配当金の支払4億4千6百万円による資金の減少があったことなどによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(注)1 「(a)生産実績」及び「(b)受注実績」における金額は販売価格によっております。
2 下記金額には、消費税等は含まれておりません。
(a)生産実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
ファスナー |
21,582,600 |
126.2 |
産機 |
6,463,168 |
160.2 |
制御 |
6,496,048 |
144.3 |
メディカル |
13,783 |
- |
合計 |
34,555,601 |
134.8 |
(b)受注実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
|||
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
ファスナー |
28,147,481 |
118.2 |
3,063,436 |
80.1 |
産機 |
7,167,388 |
128.8 |
1,513,486 |
99.0 |
制御 |
5,913,778 |
143.1 |
1,190,128 |
171.8 |
メディカル |
23,828 |
32.5 |
- |
- |
合計 |
41,252,476 |
122.8 |
5,767,050 |
95.4 |
(C)販売実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
ファスナー |
27,896,709 |
119.4 |
産機 |
7,182,078 |
131.7 |
制御 |
5,416,200 |
135.0 |
メディカル |
23,828 |
32.5 |
合計 |
40,518,817 |
123.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、現金及び預金が21億2千8百万円、電子記録債権が9億9千1百万円増加した一方、建設仮勘定が7億2千4百万円減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ47億1百万円増加し、509億2千4百万円(前年同期比10.2%増)となりました。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、電子記録債務が10億2千8百万円、未払法人税等が4億5千9百万円増加した一方、短期借入金が2億3千6百万円、長期借入金が1億3千9百万円減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ18億5千7百万円増加し、182億2千1百万円(前年同期比11.4%増)となりました。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金の増加17億5千4百万円などにより前連結会計年度末に比べ28億4千4百万円増加し、327億2百万円(前年同期比9.5%増)となりました。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、次のとおりであります。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、自動車、電機・電子部品をはじめ大半の業種で伸長し、インドネシアや台湾・中国など海外子会社の売上も好調に推移したことから、405億1千8百万円(前年同期比23.1%増)と過去最高額を計上しました。
(営業利益)
原材料コストの増加はあったものの、売上が増加したことや原価低減や生産性向上による収益の確保に努めたことにより、32億4千9百万円(前年同期比149.3%増)となりました。
(経常利益)
前連結会計年度は為替差損が8千万円発生したのに対し、当連結会計年度は円安の進展により4千5百万円の為替差益になったことや、受取利息2千8百万円及び受取賃貸料9千2百万円の計上などにより、34億8千7百万円(前年同期比145.9%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
子会社の株式売却による投資有価証券売却益が1億2千1百万円発生した一方で、法人税、住民税及び事業税10億6千9百万円を計上したことなどにより、22億円(前年同期比187.7%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
a.資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料及び部品の購入費や製造経費のほか、販売費及び一般管理費等であります。また、設備投資需要としては建物や機械装置等の生産設備の投資等があります。
b.財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金または借入により資金調達することにしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備など長期資金につきましては、長期借入金で調達しております。
当連結会計年度末において、取引銀行4行との間で合計26億円の貸出コミットメントライン契約(借入実行残高17億円、借入未実行残高9億円)を、また、取引銀行12行との間で合計37億5千5百万円の当座貸越契約(借入実行残高6億7千万円、借入未実行残高30億8千4百万円)を締結しております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
2021年2月12日に公表いたしました当連結会計年度の当初業績予想に対しては、売上高は6.6%増、営業利益は35.4%増、営業利益率は8.0%(業績予想は6.3%)となりました。
今後も、新型コロナウイルスの収束の時期や影響が見通せない中で、先行き不透明な状況が続くと予想されますが、2022年度経営方針「勝つ集団で社会に必要とされる持続可能な企業になろう」のもと、当該中期経営計画の目標達成を目指してまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行い、提出日現在において判断したものであり、将来に関しては不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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