文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「サイエンスとエンジニアリングで21世紀の課題を解決する」ことを企業理念とし、テクノロジーを活用したデジタルマーケティングソリューションで国内トップの座を目指し、企業と消費者のエンゲージメントを高めて幸福な購買体験を実現するための取り組みを進めております。
この方針のもと、「株主」「顧客」「社員」等全てのステークホルダーの視点に立った経営を行い、当社グループの企業価値の最大化を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、適時・適確な判断による事業展開を可能にするため、目標とする経営指標は特に設けておりません。しかしながら、当社グループは、業容を拡大し、経営基盤を安定化させるため、収益率の向上を経営課題と認識しております。
(3) 経営環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の全面解除に伴う行動制限の緩和並びにワクチン接種率の上昇に伴い景気回復の兆しが見えつつありましたが、本年7月以降の感染症の再拡大や世界的な原油価格の高騰が個人消費にも影響を与えるなど、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
一方で当社グループが手掛けるデジタルマーケティングソリューション事業領域は、国内のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進によるデジタル化の加速や、巣ごもり・在宅需要を背景に通販系消費が拡大し、2021年のインターネット広告費は2.7兆円(出典:株式会社電通「2021年日本の広告費」2022年2月24日)と高成長を維持し、2024年度には3.3兆円まで拡大(出典:株式会社矢野経済研究所「インターネット広告市場規模推移と予測」)すると予測されます
ネット広告サービスについては、2021年6月にデクワス株式会社株式を100%取得し完全子会社化し、同社の有する「デクワス」ソリューションや「KANADE」DSPを通じて広告主のブランド認知拡大や潜在顧客の発掘に貢献するデジタル広告配信サービスを行っております。本サービスは広告需要の影響は受けるものの、当社グループにおいては新型コロナウイルス感染症に対応する消費財等の広告需要及び首都圏不動産需要の高まりを受けて広告配信案件が順調に推移したことで、業績は前連結会計年度と比べ大きく伸長しました。
CX改善サービスについては、2021年7月に当社を株式交換完全親会社、ZETA株式会社を株式交換完全子会社とする株式交換を行い、企業結合を行いました。同社が有する「ZETA CX」ソリューションは、顧客が運営する「ECサイト」の検索エンジンの性能を高め、利用するユーザーの購買体験や意欲を高めることに貢献するサービスを行っております。本サービスはライセンス販売を主としており、ソリューション提供後は継続して使用いただく傾向が強いため、安定的な収益が見込まれます。当社グループのうち、「ZETA CX」ソリューションの契約継続率は95%と高水準を維持しており、当連結会計年度から当社グループの連結の範囲に加わったことで、前連結会計年度と比べ業績は大きく伸長しました。
OMO推進サービスは、米国のクラウドプラットフォーム「Yext Knowledge Engine」を使用し、顧客の企業情報(新商品や新規店舗の開店情報等)を正確に管理、最適化してユーザーに発信するDKMサービスを行っております。本サービスはそれを利用するユーザーが新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりによる外出規制により使用割合が減少したため全体として需要は低調に推移しておりますが、新型コロナウイルス感染症の広がりが収束傾向に向かい、ユーザーの行動規制が緩和されれば需要が伸長するものと思われます。当社グループにおいても業績の推移は低調ではありますが、既存の大手顧客からの新規受注もいただき始めたため、業績は前連結会計年度と比べ上回りました。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
既存の「デクワス」ソリューションにおいては、時代のニーズに合わせた機能強化・アップデートを行い、併せて業務の効率化等により、収益力を高め、安定的かつ継続的な収益基盤として強化・発展させてまいります。
また、新たに当社グループに加わったZETA株式会社の「ZETA CX」ソリューションと「デクワス」ソリューションの積極的な連携・融合を進め、デジタルマーケティングソリューション市場におけるプレゼンスの向上を目指すとともに、両ソリューションのシナジーを高めることによる超過収益力の向上に取り組んでまいります。
集客に強みを持つ「デクワス」と、コンバージョン向上に強みを持つ「ZETA」の連携で、今までより成長性の高い事業収益基盤を確立し、当社グループが長年培ってきた人工知能技術に関する研究の成果を活用・実用化した新規事業・サービス開発に積極的に取り組み、法人向けソリューション事業に加えて自社事業の立ち上げと発展を目指してまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが、今後も持続的に成長して企業価値を高めるために対処すべき課題として認識している事項は、以下の通りであります。
① サービスに関する課題
a. 適切な事業領域の選択
Cookie規制等の諸問題の対処としてIDソリューションの対応や、Cookieを使わない広告商品の開発など市場におけるデジタルマーケティングソリューションの需要を正しく把握し、当社グループの強みが活かせる、かつ市場の競合が少ない事業領域の選択を常に追求し続け、また当社グループの各製品・ソリューションのシナジーが最大化できる事業ポートフォリオを持つことが、グループの企業価値の向上のためには必要不可欠です。
b. データの管理と活用
当社グループは、膨大な行動履歴を集積し、これを元に各種パーソナライズの実現及び広告の配信の最適化等のサービスの提供を行っております。また、新しく当社グループに加わったZETA株式会社は膨大な検索履歴やレビューデータを有しております。今後より一層の需要が見込まれるこれらの有用なデータをどう管理し、またどのようなテクノロジーを活用して有用な推論を行い、企業のサービスの向上に貢献できるかが重要となってきます。
c. OMO戦略
今後より一層、消費者に行動におけるオンラインとオフラインという分け方は意味がなくなり、いかにシームレスな体験を提供できるかが、各企業においては重要となってきます。
店舗におけるデジタルマーケティングの活用はまだまだECなどのネットサービスに比較すると遅れている部分が多く、そうしたギャップをいかに埋めるかが重要であり、またそうしたテーマに対する取り組みがいわゆる「OMO(オー・エム・オー=Online Merges with Offline)」と呼ばれる事業領域となります。
OMOはO2O(オー・ツー・オー=Online to Offline 又は Offline to Online)やオムニチャネルをさらに発展させた概念であり、今後の各企業におけるCX(カスタマー・エクスペリエンス=Customer experience)の向上において最重要な分野の一つであると考えております。
d. 検索履歴やレビューデータの活用に関する投資
ECサイト等ではユーザーによるクチコミやスタッフの投稿などのUGCの活用が加速するとともに、単なる購買の場だけでなくメディアとしての役割が高まりつつあり、こうしたUGCデータを集合知として活用していくことは、今後のECサイト等におけるCX向上にとっては必須と考えられています。
またCookie規制の動向などにより今後リターゲティング広告が難しくなることが予測されるため、サイトとしてのオーガニックな流入を高めていくことはこれまで以上に重要な課題となってきます。当社グループでは今後、同分野において更なる技術革新や新規サービスを創出するため、産学官を含む様々な機関と連携する等取り組んでいく方針であります。
② 組織能力等に関する課題
a. マーケティング
デジタルマーケティングソリューションを提供していく上で、重要なのが当社グループ自体のマーケティングです。当社グループ自体のマーケティングを積極的に行うことで収益力を向上させ、それによって得られた超過収益をさらに投資していくことで、正の事業成長のスパイラルを獲得することが、より良いサービス・ソリューションの提供を行う上でも必要不可欠です。
b. 優秀な人材の確保
適切な事業領域の選択、競争力の高い製品・サービスの開発・提供、効率の良いマーケティングの実践等を行う上では、優秀な人材候補を確保し続けることは最重要な経営課題の一つです。
当社の企業風土を固定せず、当社グループにおける社員全員の価値を最大化できるような企業へと、経営陣も含めた企業文化の最適化を追求しつづけ、常により良い組織へと変貌をし続けることが、変化の激しいデジタルマーケティング事業領域においては重要であると考えます。
人材採用においては、採用時点のスキルだけではなく将来獲得するであろうスキルを重視し、当社グループ全体における教育・育成の質を向上していく予定です。
c. 経営管理体制の構築
当社グループが継続的に成長をコントロールし、顧客に対して安定してサービスを提供し続けていくためには、継続的な内部統制の整備、強化に取り組んでいくことも必要と考えております。当社グループは、当社をコーポレート機能に特化し、デクワス株式会社、ZETA株式会社を事業会社として各事業・各サービスに応じて運営することで組織強化・効率化を図っております。
今後も組織が健全かつ有効、効率的に運営されるように内部統制の整備、強化、見直しを行っていく方針であります。
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