文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「情報を世界中の人に最適に届ける」を企業理念に掲げ、インターネット上に存在する膨大な量の情報の中から、ユーザーの興味・関心にあわせてパーソナライズ化された情報を配信する情報キュレーションサービスその他メディアの運営と、これらのメディアを通じたメディア事業を展開しております。今後も、既存サービスの逐次改善と新規サービスの開発によりユーザーの利便性を向上させることを通じて、企業価値並びに株主価値の向上を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、アクティブユーザー数と継続率の拡大による全社売上高の拡大を経営上の重要な指標と位置づけ、企業価値のさらなる増大を目指してまいります。また、営業上の指標として、各サービスにおけるMAU(注)、1ユーザーあたりの収益性等を重視しております。
メディア事業の成長に向けて、当社はメディア価値と広告商品価値の向上に取り組んでおります。各メディアにおけるメディア価値の指標として主にMAUなどのアクティブユーザー数と継続率を重視し、メディア価値・広告商品価値の共通指標として1ユーザーあたりの収益性を重視しております。
(注)MAU(Monthly Active User)とは、月間あたりのアクティブユーザー数をいいます。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、創業以来、情報キュレーションサービス「グノシー」、「ニュースパス」及び「LUCRA(ルクラ)」を始めとしたメディアサービスの開発・運営を行ってまいりました。情報の収集・整理を、人の手ではなく、アルゴリズムを含む人工知能のテクノロジーで代替することで、収益性と中立性の高いメディアづくりを行っております。2012年11月の当社設立以降、広告宣伝活動を積極的に行い、ユーザー獲得を推進し、蓄積されたユーザーデータを基に、日々ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンスの改善を行っております。2013年11月からは広告配信を開始して収益化に踏み切り、継続的な広告宣伝活動への資金投下が可能な事業環境を構築してまいりました。当社グループは現在、「グノシー」、「ニュースパス」、「auサービスToday」及び「LUCRA(ルクラ)」、総合ゲーム攻略情報メディア「game8.jp(ゲームエイト)」の運営に加え、動画/音声コンテンツの制作・配信やクーポン情報の配信など配信する情報領域を拡張し、更なるユーザーの獲得、広告収益の増加と新たな収益基盤の構築に取り組んでおります。
2022年5月期を通じて、当社は新型コロナウイルス感染症の感染拡大による当社事業に及ぼす影響や、その他マクロ環境、ユーザーの継続率、広告収益の状況を慎重に見極めながら、「グノシー」への広告宣伝投資の金額を決定してまいりました。2023年5月期においては、スマートフォンの普及拡大は継続が見込まれる一方で、新たな変異株による新型コロナウイルス感染症の再拡大や、地政学リスクの高まり、それらを要因とする金融市場の変化など、マクロ環境は依然不透明であると考え、当社は投資対効果が高いと判断される中で慎重に広告宣伝投資を行っていく方針としております。
これらの環境を踏まえ、当社グループは、2022年5月期以降の3年間を中期経営計画年度として、メディア事業・ゲームエイトグループ・投資事業を中長期の成長を牽引する柱と位置付け、長期目線の価値創りにフォーカスした成長の実現をめざしております。「グノシー」については、ユーザーの継続率や、ユーザーあたり収益性の向上を進めながら、慎重に広告宣伝投資を決定してまいります。また、KDDI株式会社との協業アプリである「ニュースパス」及び「auサービスToday」については、auユーザーの利用率向上に向けたプロダクト改善に注力してまいります。連結子会社である株式会社ゲームエイトにおいては、ゲーム攻略メディア「game8.jp(ゲームエイト)」について安定的な利益貢献を目指すと共に、海外事業を含む新規事業の開発による成長ドライバーの創出に取り組んでまいります。当社の投資先であるGaragePreneurs Internet Pvt. Ltd.(以下、GaragePreneurs)については、当社の持分法適用関連会社として、取締役派遣などを通じた同社の企業価値最大化及び当社との連携強化に務めてまいります。その他、非連続的な成長に向け、社外の有望なスタートアップ企業に対する投資やM&Aに引き続き積極的に取り組むとともに、D2Cブランド「YOU IN」のほか、既存事業で培った強みを活かした新規事業の創造を進めてまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
インターネット市場は、技術進歩が非常に速く、また市場が拡大する中でサービスも多様化が求められます。その中でも、当社は、情報キュレーションサービスの可能性に早くから注目し、普及の一端を担ってまいりましたが、インターネットメディア市場は、依然として発展途上であり、そのマーケティング手法やサービス形態が日々進化している段階であります。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、依然として経済や企業活動に広範な影響を与えており、今後の情勢の変化に伴うインターネット広告市場や当社サービスのユーザー動向への影響等については引き続き注視をしていく必要があります。
当社は、上記の環境を踏まえ、以下の事項を主要な課題として認識し、事業展開を図る方針であります。
① メディア事業における収益性の改善
当社グループの主要事業であるメディア事業においては、収益性の改善が最大の課題であると認識をしており、当社は、収益性の改善に向けて、当社メディアの価値向上及び広告商品の価値向上に向けた各種の取り組みを推進してまいります。具体的には、ユーザー目線でのプロダクトの作りこみ、徹底的な広告効果可視化等を通じた精度の高いマーケティングの推進、収益性の高い新規ユーザーの獲得による収益性改善により、メディア価値・広告商品価値の向上に注力してまいりました。今後も引き続きサービス改善をしていくと同時に、費用対効果を考慮した上での広告宣伝投資・積極的な広報活動を推進することにより、ブランド力、認知度を向上させる方針であります。
② 新たな収益の柱を創出するための成長機会への積極的投資
情報キュレーションサービス以外のサービスにおける収益の柱を創出するため、当社の強みであるIT分野における技術力と知見を活かした新規領域への事業進出の推進、自社技術の外部提供及び成長分野への社外投資に積極的に取り組んでまいります。
③ 社外投資の推進による高成長分野の取り込み
成長分野の発掘を通じた社外の高成長分野の取り込みが、当社グループの非連続的な成長のための重要な課題であると認識しております。今後も厳格な投資基準に基づき、メディア・広告領域にとどまらない国内外の有望な成長機会に向けた純投資・戦略投資を実行するとともに、投資先の状況に応じた適切なモニタリング・支援を実行することで、投資先の価値向上支援及びポートフォリオの健全性担保を推進してまいります。
④ 広告商品の拡充、顧客基盤の強化
インターネット広告市場は今後も更なる発展が見込まれ、広告商品の多様化が進んでおります。このような中、他社との競合優位性の確立のためには広告商品の拡充と顧客基盤の強化が不可欠であります。また、ユーザー保護及び広告掲載面の品質向上のため、関係法令を遵守した適正な広告掲載基準を継続的に整備し、基準に則った適切な広告審査を行う必要があります。このような認識の下、当社グループでは、広告掲載基準の継続的な見直し、広告審査体制の強化とともに、既存事業における新たな広告商品の開発・販売拡充及び新規事業における顧客基盤の強化を推進することにより、競合優位性の向上を図ってまいります。
⑤ 開発体制の構築
インターネット業界における技術革新のスピードは非常に速く、当社の属する情報キュレーションサービス及びインターネットメディア業界においても、新たなサービスや競合他社が続々と現れております。このような中、他社とのサービスの差別化、競合優位性の確立のためには迅速な開発体制の構築が不可欠であります。
このような認識の下、当社では、最先端の技術動向の把握と技術力の向上のための勉強会等を開催し、また、定期的に社外のエンジニアも参加する勉強会を開催し、引き続き優秀なエンジニアの採用を図ってまいります。
⑥ 営業力の強化
当社の営業部門は、蓄積されたノウハウを活かした提案及び企画により、営業活動を推進しておりますが、事業規模拡大や新規サービスの拡充に伴い、受注の獲得機会が増加することが予想されることから、営業力の強化、営業人員の早期育成に注力する方針であります。具体的には、教育研修制度の充実、営業ツールやマニュアル等の整備、外部ノウハウの活用、また、既存営業人員の育成と同時に、即戦力となる営業人員の採用を行い、営業力の強化を図ってまいります。
⑦ 内部統制及びコンプライアンス体制を重視した組織体制の強化
当社グループは、既存事業の継続的な成長と新規事業の展開及び新規サービスの拡充にあたっては、顧客及びユーザーからの信頼を得ることが不可欠であると考えております。このような認識の下、従業員に対する継続的な研修活動によって、全社でコンプライアンスに対する共通の認識を持つとともに、新規事業に潜在する各種リスク群を踏まえた、専門性や豊富な経験を有する優秀な人材の採用・育成に取り組むことで、内部統制及びコンプライアンス体制の充実・強化に努めてまいります。
⑧ コーポレート・ガバナンスの強化
当社が提供する情報キュレーションサービスは、ユーザーからの信頼性と利便性を広く認知していただくことが事業上の重要な基盤であり、したがいまして、運営母体である当社の信頼性の維持向上は当社の最も重要な経営課題のひとつであります。また、当社の中長期的な企業価値最大化を達成するためには、メディア・広告事業にとどまらない新規事業の創造や社外の高成長分野の取り込みに向けた社外投資を健全性・透明性高く推進していくことが重要であり、当社グループのコーポレート・ガバナンスの強化の重要性が高まっております。
このような認識の下、当社取締役会において、取締役会の運用状況及び実効性を定期的に分析・評価するとともに、独立性が高く多様な専門性を有する取締役による、職務執行に対する監督及び助言機能の一層の充実を図っており、また取締役会の任意の諮問機関として指名報酬委員会を設置することにより、取締役の指名や報酬などに関する評価・決定プロセスにおける公平性、客観性、透明性を強化するなど、引き続き、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでまいります。
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