文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「売場を元気に、日本を元気に、そして世界を元気に!」を事業コンセプトに掲げ、店舗店頭に特化したフィールドマーケティング(※注)領域に軸足をおき、事業を創造していくことを経営の基本方針としております。当社グループのパーパス(経営理念)である「社会性ある事業の創造」のもと企業活動を行い、会社・従業員ともに持続的な成長を行うことで、「従業員の幸せを追求すること(社会貢献を実感し、自己成長を続けつつ、対価としての報酬を得ること)」、「世の中の役に立つ仕事をすること(顧客の期待を超える感動サービスを提供し、社会に活力を与えること)」を実現してまいります。
※注 フィールドマーケティングとは、フィールド(店頭)を重視したマーケティングのことを指します。店頭など消費者の生活により 近いところでのマーケティング展開は、商品陳列、POP類、顧客動線などすべての要素が対象となるため販売促進効果も大きく、販売に直結したマーケティング。ラウンダー、推奨販売、デジタルサイネージ、覆面調査など、こうしたソリューションを個別、あるいは組み合わせることでブランドが構築され、その実行中にブランドオーナーに対して明確で実質的な投資回収率(ROI)を提示することになります。収益支出の中で特定の利益を上げることが主な目的であり利点でもあります。
当社グループの経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による店頭での販売促進活動自粛の影響を受け、HRソリューション事業では、店頭での試飲試食販売員の派遣サービスが大幅に落ち込んだ一方で、コロナ対策「第三者認証制度」の波及に伴い店舗・施設の認証審査代行のニーズが高まりました。IoTソリューション事業では、デジタルサイネージによる販売促進が販売員派遣の代替策として大幅に需要が高まりました。またMRソリューション事業では、主力クライアントである飲食・サービス業における営業自粛が長引いた影響で覆面調査サービスが落ち込んだ一方で、非接触型調査であるホームユーステストや郵送調査の需要が高まりました。
環境の変化を受け、グループ内で需要が高い事業へ経営資源(人・モノ・資金)を集中させたことで、グループ全体での販管費圧縮やコロナ禍での事業成長を促進いたしました。
ウィズコロナ時代において、どのような店頭販売促進施策がスタンダードになるか、という課題への対応を当社グループとして求められる中ではありますが、各店舗のニーズに応じた店頭活性化施策を提案することで、更なる受注の拡大が見込まれます。
(2)目標とする経営指標
当社グループが重視する経営指標は、①売上高、②営業利益、③営業利益率の3指標であります。当社グループの事業は、HRソリューション事業、IoTソリューション事業、MRソリューション事業の3セグメントで構成されており、HRソリューション事業を主軸とした売上高拡大、IoTソリューション事業で高付加価値サービスを提供することで、収益性の向上を目指しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、ラウンダー事業やセールスプロモーション事業、デジタルサイネージ事業を中心とした高収益な販促プロモーションビジネスの総合企業となるべく、店舗DBを基軸にしたSDGs販促の推進、シナジー営業(既存顧客へのクロスセル)の強化、新規事業の開発・M&A等による新たな収益源の創出等により、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に取り組んでまいります。
上記の経営の基本方針、中長期的な会社の経営戦略を踏まえて、目標指標を達成するために、次のとおり取り組んでまいります。
① HRソリューション事業
これまで当社グループがフィールドマーケティング事業を通じて積み重ねてきた800万件を超える売場・販促活動に関するデータ「店舗DB」を武器として、最適な販促対象店舗を選定し、効果的な販促手法をコンサルティングが出来るようになることで、さらに競合他社との差別化を図ってまいります。
また、店舗店頭以外の領域への人材インフラ提供も拡大しております。2020年にM&Aで、コールセンターやバックオフィスのBPOセンター事業を展開するジェイエムエス・ユナイテッド株式会社、オフィスやコールセンター、工場向けに人材派遣・人材紹介事業を展開するジェイ・ネクスト株式会社が当社グループへ参画しいたしました。当社グループと経営、業務、意識などの企業統合を推進するともに、さらに当社グループ内での事業シナジーの創出及び利益率の改善を図り、事業を成長させてまいります。
② IoTソリューション事業
HRソリューション事業同様、店舗DBを付加価値にし、単なるデジタルサイネージ端末の製造・販売だけでなく、デジタルサイネージの設置店舗の選定も含めたコンサルティングを行うことことにより、単価アップ及び利益率の向上に努めてまいります。
2020年よりオンライン版店頭用デジタルサイネージ(※注)の販売をさらに拡大させております。これにより従来のハード端末の売上に加えて、オンラインASPサービス利用料によるストック型収益の積上げが可能となり、利益率が伸長し、今後も継続的な成長が見込めます。
また、これまで培った小型デジタルサイネージ事業のノウハウを基に、開発スピード・コスト・低ロット対応等にさらに磨きをかけ、飲食店向けテーブルトップオーダー端末やエレベーター内・美容室座席前・その他施設などを使って広告インフラを敷設する企業向けに業務用オリジナルデジタルサイネージを開発・提供していきます。こちらもオンライン版店頭用デジタルサイネージと同様、オンラインASPサービス利用料によるストック収益が見込めます。
※注 店頭用デジタルサイネージとは、主に売場の棚に設置されている3.5~19インチの小型デジタルサイネージのことを指します。
③ MRソリューション事業
当社の祖業である覆面調査は、リアル店舗が大手ECサービス企業に負けない売場作り・接客を行うための中核を担うサービスと言えます。今後はよりリアルだからこそのきめ細やかな接客サービスが求められます。さらに、接客同様重要視されるのは「オリジナル商品開発」だと認識しております。従来の顧客である飲食・小売・サービス業以外に消費財メーカー等でのマーケティングニーズに対応すべく、今後はホームユーステスト、会場調査、インタビュー調査などの商品開発支援型マーケティングリサーチやコンサルティングが出来る体制強化を重点的に取り組んでまいります。
(4)会社の対処すべき課題
当社グループが認識する主な対処すべき経営課題は下記のとおりです。
① 店舗DBを活用した販促の効率化・ムダの削減
昨今の日本における流通業界は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による客層・客質・客数の変化、オーバーストア(店舗過剰)、ECの台頭、店舗のショールーム化、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から販促の非効率やムダが多い等、店頭販促活動の変革が求められております。
当社グループでは、創業期よりサービスを提供してきたラウンダー・推奨販売・店頭調査による人的支援サービスを活用した「アナログ」ビッグデータに加え、オンライン型店頭用デジタルサイネージPISTAを活用した「デジタル」ビッグデータを店舗店頭から収集し、売場・販促活動に関するデータベース「店舗DB」として一元管理しております。また、地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」や政府統計ポータルサイト「e-Stat(イースタット)」等のオープンデータとの連携、企業のホームページ等に掲載されている店舗情報を自動クローリングすることで最新の店舗情報を整備し、日本全国の主要流通店舗をデータベース化しております。
この店舗DBを活用することで、売場の状況や棚前の状況を捕捉でき、消費財メーカーは最適な売場かつ予算で、最適な販促施策を実施することが可能になります。既に多数の店頭販促ソリューションを展開している当社グループが、単なる受託請負ではなく、販促プロモーションの上流工程から関わり、顧客と共創しながら課題に並走する販促プロモーションパートナーとして多面的・長期的に支援することで、販促の効率化・ムダの削減を行い、サスティナブルな視点を取り入れたSDGs販促を推進してまいります。
② シナジー営業(既存顧客へのクロスセル)の強化
当社グループでは、グループ全体での取引口座数が1,500社超、年間フィールド業務数が100万件超と強固な顧客資産を保有しております。しかし店舗店頭の販促・マーケティング領域では、当社グループが主力サービスとして展開するラウンダー、推奨販売、デジタルサイネージ、販促ツール製作、ノベルティ製作、店頭調査、BPO等、様々な企業が様々なソリューションを展開しております。
新規顧客書獲得に加え、さらにグループ会社間の連携を強化し、グループとしての総合力を活かした既存顧客へのクロスセルを推進し、店頭実現ビジネスパートナーとしての地位を確たるものにしてまいります。
③ 新規事業の開発・M&A等による新たな収益基盤の確立
既存の労働集約型・受託型のビジネス領域に留まらない新規事業の開発に取り組むことで、新たな収益源を確立していくことが「企業のサスティナビリティ」には不可欠であると考えております。
当社グループにおいてはSDGsに関する様々な社会テーマに向けた多角的な取り組みを行っていく中で、当社グループの成長と社会課題の解決を両立する事業の創出を目指し、新規事業の開発に取り組んでまいります。
また、持株会社体制に移行し、迅速な経営判断及び経営資源(人・モノ・資金)の投下が効率的になったことで、M&A、新会社設立、パートナー企業の開拓等による新規事業の開発を積極的に推進してまいります。
④ 経営理念のさらなる浸透強化
事業環境に左右されず事業基盤を拡大、成長させていくためには経営理念の浸透を軸とした人材育成・教育が必要であると考えております。
当社グループでは、「経営理念」「インパクトホールディングスメッセージ」、行動指針である「インパクトホールディングスウェイ」「インパクトホールディングスリーダーシップ」等を纏めて解説した冊子「HEART OF Impact HD」を作成・配布しております。また、日々の朝礼ではグループ会社も合同で理念に基づいた経験談の発表を行い、全従業員が参加する会議の場で理念に基づいた講話を代表取締役社長自らが実施する等、徹底した理念の浸透を図っております。これにより、離職率の低下による既存従業員の安定化や、業務ミスの発生を削減し、品質の向上に繋がる等の効果が得られております。
またメディアクルーに対しても、「メディアクルーへの約束」を定め、「理念共有型のフィールドスタッフネットワーク」(※注)の構築に注力しております。今後についても、経営理念浸透を最重要課題ととらえ、全従業員の方向性の統一を図るための経営理念浸透につながる取り組みを実施してまいります。
※注 理念共有型フィールドスタッフネットワークとは、当社グループの理念に基づき、当社グループに蓄積した流通現場の知 識、考え方を十分に理解し、現場の重要性を熟知したメディアクルーを増やしていく活動のことを指します。
⑤ 経営者人材・メディアクルーの確保と育成
当社グループは、今後さらなる事業拡大を目指す上で、優秀な経営者人材・メディアクルーの確保及び理念浸透を軸とした教育による人材育成が重要な経営課題であると認識しております。人材確保については、新卒採用及び中途採用を積極的に実施し、当社グループの経営理念・方針に共感を持った人材の確保と、様々なOJT・社内教育等による従業員のレベルアップを進めてまいります。
また、HRソリューション事業及びMRソリューション事業の業務を支えるメディアクルーの更なる増加については、当社グループの認知度・信用力・露出度の向上を図ることで登録者数の増加を進めてまいります。メディアクルーの教育方針については、店舗の自社運営や流通チェーン出身従業員による流通業界の経験と知識、店舗販促ノウハウを最大限に活かした教育を行います。加えて、当社グループの理念に基づいた考え方を理解することで流通現場の重要性を十分に理解し、単なる登録者に留まることなく流通現場を熟知した理念共有型フィールドスタッフネットワークを構築してまいります。また全国に約1,200名を超えるフラッグクルー (※注)を配置し、業務に関連性の高い資格保有者や難易度の高い店頭業務の経験者に対し、最優先で業務を案内する制度を運用しております。今後につきましては、フラッグクルーをよりきめ細やかに全国展開し、高付加価値サービス提供による高利益体質を目指し、幅広い属性の方々へ労働機会を提供してまいります。
※注 フラッグクルーとは、全国28万人のメディアクルーの中から一定の審査基準をクリアし、当社グループの理念や考え方に理解・共感頂き、当社グループと共に社会性ある事業の創造を担って頂く特別なクルーのことを指します。
⑥ インドでの事業展開
新型コロナウイルス感染拡大により、インドコンビニエンスストア事業を取り巻く経営環境は非常に厳しい状況となりました。その影響により、コンビニエンスストア各店舗の販売不振が続いており、一部の店舗が閉店に追い込まれ、今後も販売不振により閉店が発生する可能性も生じております。
このため、現在のパートナー企業であるCoffee Day Enterprises Limitedに代わる新たな現地パートナー企業を見つけ、新規出店に必要な資金の確保ならびに新事業スキームを構築し、コンビニエンスストア事業の収益改善、拡大を図る所存です。
また、インドの経済成長に後れを取ることなく現地環境の情報収集を円滑に行い、代表取締役社長をはじめ多数のリテール出身者が在籍し、かつインドでの実業経験値と現地有力企業とのパートナーシップを持つという当社グループの強みをいかんなく発揮し、今後の新事業セグメント創出も見据えて引き続き取り組んでまいります。
⑦ コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、会社の永続的な発展のために、経営透明性、効率性及び健全性を確保するとともに経営責任の明確化を進めております。グループ会社が増加し、新しいサービス分野も含め、その事業領域を急速に広げながら成長しております。M&Aなども行いながら、積極的に事業体制の強化を進めており、それらの新しい事業リソースを当社グループの経営管理体制に効率的に統合するとともに、その運営においても新しい事業分野や事業領域で法令やルールを遵守するための体制整備が重要であると認識しております。
その実現のために、事業規模拡大に対応した効率的な経営管理の整備を進め、法令及び社内諸規程を遵守した業務執行の定着を推進するとともに、内部監査を継続的に実施し、会社業務の適正な運営ならびに財産の保全を図り、さらにその実効性を高めていくための経営効率化に取り組んでまいります。
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