業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 当期の経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で一部に弱さがみられます。また、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスク、感染症による影響を十分注意する必要があります。

 当社グループの業績に大きな影響を及ぼす不動産業については土地取引件数に持ち直しの傾向がみられ、建設業については住宅建設は弱含んで推移し、設備投資に伴う建築工事は持ち直しの動きが見られます。

 子会社を展開する中国では環境規制の強化が土壌汚染対策の追い風となっていますが、景気の回復テンポが鈍化し、固定資産投資の伸びも低下しており、経営環境は予断を許さない状況が続いております。

 このような背景のもと、土壌汚染対策事業を中心にグループの総合力を活かして、ブラウンフィールド活用事業や自然エネルギー事業を積極的に展開いたしました。

 土壌汚染対策事業においては、昨年受注した大型案件の工事が完了したことに加えて原価率の改善が進んだことから増収増益となりました。ブラウンフィールド活用事業においては、販売件数の増加に加えて株式会社土地再生投資の大型物件の売却が完了したことから増収増益となりました。自然エネルギー事業においては、所有・管理している各発電所からは安定した売電収入が得られました。

 当連結会計年度の売上高は8,987,865千円(前年同期比31.4%増)となりました。期初から不動産市況が活況であることが追い風となり、各セグメントにおいて大幅な増収となりました。

 経常利益は1,197,971千円(同102.2%増)となりました。増益の主な要因は売上高の増加に加えて、土壌汚染対策事業において、原価率改善の取り組みが奏功したことによるものであります。

 親会社株主に帰属する当期純利益654,055千円(同115.1%増)となりました。

 以下に各事業セグメントの状況を報告いたします。

 

(土壌汚染対策事業)

 土壌汚染対策工事の案件数は不動産市場が活況のため減少しておりませんが、用地仕入の競争が厳しくなっていることから、開発事業者が土壌汚染の対策に関連する予算を縮小化する傾向が見られます。そのような市場の変化に対応した結果、完全浄化ではなく土壌汚染の管理を目的とした対策手法(以下「リスク管理型手法」という。)の受注が増えました。前連結会計年度と比べて高原価率案件の割合が減り、施工効率改善の効果もあったことから、増収かつ大幅な増益となりました。

 リスク管理型手法は、脱炭素を目指す社会的な環境側面からも推奨されるものであり、将来的には主流になると期待され、今後リスク管理型手法の割合は増加すると見込んでおります。リスク管理型手法では汚染が一部残置されるため、事業主・周辺住民・金融機関等の利害関係者間の調整のためのコンサルティング力が不可欠であります。今後は、そのような案件にも対応できるコンサルティング力の高い人材の育成に注力し、受注の拡大を図ります。

 また、現業から派生したインフラ分野でのサービスの中で将来性が高い分野に投資し、環境サービスの範囲を拡大することにより、将来的な増収を目指してまいります。

 中国では日系企業の工場移転、事業撤退に伴う土壌汚染対策の動きが増え、修復工事を受注いたしました。新型コロナウイルス感染症再拡大への警戒が続き不安定な要素はありますが、当面は日系企業への営業に注力してまいります。

 その結果、売上高は4,600,497千円(前年同期比40.6%増)となり、セグメント利益は607,619千円(同957.1%増)となりました。

 

(ブラウンフィールド活用事業)

 株式会社エンバイオ・リアルエステートでは、大手仲介業者や銀行系仲介業者を中心に相対で進められる案件の情報収集を行い、13物件を仕入れました。購入した物件の中には、土壌汚染が検出された金属加工工場跡地や印刷工場跡地の物件もあります。販売に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響に関係なく上半期に大半の物件を売却する事ができ、12物件の販売を行いました。販売した物件の中には、浄化後に一般法人に売却した物件や工場の改修工事とリーシングを行った後に売却した物件もあります。

 大規模な土壌汚染地を扱う株式会社土地再生投資では、解体・土壌浄化工事を実施した白井市内の案件を売却しました。仕入に関しては不調に終わったため、営業活動方法を再構築して取り組んでまいります。また、デベロッパー等への土壌汚染コンサルティング業務を7件受託いたしました。

 その結果、売上高は3,082,672千円(同33.5%増)となり、セグメント利益は422,533千円(同14.8%増)となりました。

(自然エネルギー事業)

 当連結会計年度末における国内外の再生可能エネルギー発電所は開発中含め40か所、総発電量45MW(うち稼働中は約39.5MW)となっております。

 新たに北海道において太陽光発電所(約2,000kW)の開発を開始(2022年7月完成予定)しました。また草加市(693kW)と八潮市(561kW)のセカンダリー太陽光発電所を新たに取得しました。ヨルダンにて、第4号案件(2022年4月完成)とドバイにて、第1号案件(2022年11月完成予定)の開発に着手しました。また、株式会社シーアールイー(以下「CRE」という。)との共同出資により、株式会社エンバイオC・エナジーを設立いたしました。CREが開発する物流施設「ロジスクエア」の屋根を活用したグリーン電力供給を主な事業としており、積極的に展開してまいります。

 FIT価格低下に伴い、国内太陽光案件を取り巻く状況が厳しくなっており、海外を含む新規案件の情報収集及びセカンダリー案件の検討に注力しております。

 なお、2021年5月に宮城県沖、9月に石川県能登地方、10月に千葉県北西部、2022年3月に宮城県沖を震源とする地震がありましたが、本地震による当社(グループ会社含む)発電所への影響はありませんでした。

 その結果、売上高は1,304,695千円(同3.6%増)となり、セグメント利益は236,189千円(同5.6%減)となりました。

 

② 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における資産につきましては、総資産は16,370,283千円となり、前連結会計年度末に比べ671,703千円増加いたしました。これは主に棚卸資産が1,270,299千円減少したものの、現金及び預金が356,324千円、受取手形、売掛金及び契約資産が630,112千円、その他流動資産が111,674千円及び有形固定資産が582,054千円増加したこと等によるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債につきましては、10,396,288千円と前連結会計年度末に比べ14,887千円増加いたしました。これは主に短期借入金が310,300千円、長期借入金が335,319千円及びその他流動負債が280,676千円減少したものの、買掛金が78,093千円、1年内返済予定の長期借入金が226,491千円、未払法人税等が294,267千円及び契約負債が345,539千円増加したこと等によるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産につきましては、5,973,994千円と前連結会計年度末に比べ656,815千円増加いたしました。これは主に資本金が2,825千円、資本剰余金が3,481千円及び利益剰余金が609,030千円増加したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フロー状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ356,324千円増加し、2,341,616千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動の結果、獲得した資金は2,413,152千円(前連結会計年度は297,156千円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,099,319千円、棚卸資産の減少額1,495,521千円及び減価償却費333,866千円があったものの、利息の支払額123,476千円及び法人税等の支払額98,168千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は1,481,400千円(前連結会計年度は2,159,510千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,164,847千円、投資有価証券の取得による支出119,413千円及び貸付けによる支出97,190千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動の結果、使用した資金は534,925千円(前連結会計年度は928,537千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,540,424千円があったものの、長期借入金の返済による支出1,649,252千円、短期借入金の純減少額310,300千円、社債の償還による支出35,000千円及び自己株式の取得による支出43,873千円等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

(a) 生産実績

 生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

(b) 受注状況

 当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

土壌汚染対策事業

3,480,853

85.3

1,513,635

57.5

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。

2.ブラウンフィールド活用事業、自然エネルギー事業につきましては、受注に該当する事項がないため、記載すべき事項はありません。

 

(c) 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

土壌汚染対策事業 (千円)

4,600,497

140.6

ブラウンフィールド活用事業 (千円)

3,082,672

133.5

自然エネルギー事業 (千円)

1,304,695

103.6

合計 (千円)

8,987,865

131.4

(注) 1.セグメント間内部取引振替後の数値によっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

 至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社山王インベストメント

802,067

11.7

株式会社シーアールイー

1,876,771

20.9

 

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、本文の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作られております。

 当社グループは、この連結財務諸表の作成にあたって、貸倒引当金、固定資産の減損、減価償却資産の耐用年数の設定、繰延税金資産の計上、偶発債務の認識等の重要な会計方針に関する見積り及び判断を行っております。

 当社経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき判断しておりますが、記載した予想、見通し等の将来に関する事項につきましては、不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。

 当社グループの連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 経営成績の分析

 経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)当期の経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照下さい。

 

② キャッシュ・フロー状況の分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況につきましては「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)当期の経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー状況」に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

(a) 財務戦略の基本的な考え方

 当社グループは、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。

 厳格な財務規律のもとで負債の活用を積極的に進めるとともに、適切な情報開示・IR活動を通じて株主資本コストの低減に努めることにより、資本コストの低減および資本効率の向上を図ります。

 新規事業投資については、積極的に取り組む方針ですが、企業価値の向上の期待値のみならず、当社グループが当該事業へ投資することの意義を慎重に検討してまいります。

 

(b) 経営資源の配分に関する考え方

 当社グループは、適正な手元現金の水準について常に検証を実施しております。安定的な経営に必要な手元現預金水準を設定し、それを超える分については、「追加的に配分可能な経営資源」と認識し、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。

 同時に、手元現預金及び今後創出するフリーキャッシュ・フローから、株主還元についても検討してまいります。

 

(c) 資金需要の主な内容

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、販売用不動産の購入費用及び、各事業の販売拡大に伴う運転資本の増加であります。また、投資を目的とした資金需要は、自然エネルギー発電所への設備投資及び、新規事業参入のための出資等によるものであります。

 

(d) 資金調達

 短期運転資金は、主に営業活動により得られたキャッシュフローを財源としておりますが、増加運転資本に対応するために必要な資金については、金融機関からのコミットメントライン等の融資枠による短期借入によって流動性を保持しております。

 設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。また、設備投資の一部はリース取引によっております。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は8,617,613千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,341,616千円となっております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

 

⑤ 経営戦略の現状と見通し

 当社グループは、環境保全に役立つサービスや製品の提供を通して、環境問題の解決と健やかな環境づくりを推進し、持続可能な社会の構築に貢献することを経営の基本理念とし、「地盤の環境・エネルギーに関わる問題解決を担うグローバルな専門企業集団」となることを目指しております。それに向けた当社グループの経営戦略の基本は、土壌汚染調査や土壌汚染浄化工事といった単品のサービスではなく、それらに付随する顧客の幅広いニーズを掘り起こし、包括的に応える「ワンストップのパッケージ・ソリューション」を提供することとしております。

 当社グループの属する土壌汚染関連業界の国内市場は、土壌汚染対策法の一部改正により土壌汚染調査の契機が拡大し、年間の調査件数は増加傾向が続いております。しかしながら浄化工事を伴わない措置の増加や競合企業間の競争激化により工事単価の低価格化が進行し、市場規模は減少傾向にあります。また中国では、土壌浄化を事業機会と捉えた大手企業の新規参入が相次いでおります。

 当社グループでは、土壌汚染問題の黎明期にいち早く導入した汚染土壌を掘削・場外搬出せずに場内で浄化ができる経済性の高い「原位置浄化・オンサイト浄化」に関する技術力を核心的競争力として他社を圧倒する実績を蓄積することを目指してまいりました。その結果、土壌汚染地の調査から幅広い選択肢での浄化工事を提供できる体制を整えることができました。さらに多数の土壌浄化実績に裏付けられたリスク評価を背景に土壌汚染地を現状有姿で購入し、浄化工事によってバリューアップさせた後に再販する事業を展開することで、土壌汚染地の調査・対策から有効活用までの一貫した独自のサービスを提供しております。また、鉱研工業株式会社との資本業務提携を梃子に土壌汚染対策事業を地盤環境事業の方面に土壌汚染から事業領域を拡大してまいります。

 さらに国内で培った「原位置浄化・オンサイト浄化」のノウハウと実績を環境規制が急速に強化されている中国などアジア諸国の土壌汚染問題解決に積極展開し、グローバル企業としての成長を目指します。

 また、土地の有効活用策としてスタートさせた自然エネルギー事業では、既に国内で38.1MWの太陽光発電所を建設し、順調に事業拡大を進めております。安定的な収益を上げ、当社グループの成長戦略を財務的に支える事業として育ってまいりました。自然エネルギー事業については、国内の電力固定買取価格の低下に伴い新規案件の収益性が悪化することを勘案し、自然エネルギー需要の増加が見込まれる海外での新規案件の発掘と開発にも力を注いでまいります。

 これらの事業活動を通して土壌汚染問題に直面した国内の顧客の幅広いニーズに一貫して応えること、ならびに海外への技術提供による継続的な事業の発展、収益の向上を進めてまいり、土壌汚染関連業界内でのリーディングカンパニーを目指します。

 

⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について

 経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

⑦ 新型コロナウイルス感染症による経営成績等への影響について

 新型コロナウイルス感染症の影響については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載したとおりでありますが、顧客先への訪問規制や在宅勤務などにより、直接訪問ができない中、メールやリモート会議により通常とは異なる営業活動を行ってまいりました結果、当連結会計年度の業績への影響は軽微でありました。

 新型コロナウイルス感染症拡大による影響は未だ不透明な状況ではあるものの、現状では、当社グループの収益等に与える影響は限定的であると判断しており、これにもとづき必要とされる会計上の見積りなどを行っております。

 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の今後の状況次第では、会計上の見積りなどに重要な影響を及ぼすことも考えられ、この場合、当連結会計年度以降の当社グループの業績に影響を及ぼすおそれがあります。

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