業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績等の分析

① 連結経営成績の概況

 


 

(注) 「全社/消去」調整後の数値を記載しているため、各セグメントの金額合計と一致していません。

 

 

米国や欧州ではワクチン接種の進捗とともに経済活動が回復し、人材採用が活発となりました。日本では当上半期に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けたものの、当下半期における影響は限定的なものとなりました。

 

当連結会計年度の売上収益は2兆8,717億円(前連結会計年度比26.5%増)となりました。前連結会計年度の経済産業省中小企業庁より受託した家賃支援給付金事務事業に係る売上収益790億円の影響を控除すると前連結会計年度比31.1%増となりました。これは主にHRテクノロジー事業の売上収益が大幅に増加したことによるものです。また、家賃支援給付金事務事業の影響を控除するとメディア&ソリューション事業は増収となり、人材派遣事業も増収となりました。為替によるプラス影響976億円を控除した売上収益は前連結会計年度比22.2%増となりました。

 

当連結会計年度の営業利益は3,789億円(前連結会計年度比132.7%増)となりました。

 

当連結会計年度の税引前利益は3,827億円(前連結会計年度比127.1%増)となりました。

 

当連結会計年度の当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益はそれぞれ2,977億円(前連結会計年度比126.1%増)、2,968億円(前連結会計年度比125.9%増)となりました。

 

当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは、HRテクノロジー事業のマージン上昇が貢献し16.7%(前連結会計年度は10.6%)、調整後EBITDAは4,793億円(前連結会計年度比98.4%増)、調整後EPSは196.67円(前連結会計年度比138.2%増)となりました。

 

当連結会計年度の研究開発費は850億円となりました。主な内訳は、新プロダクトの開発や新しいテクノロジーを活用した既存プロダクトの改善に係るエンジニア及びテクノロジー開発担当者の人件費であり、その大半はHRテクノロジー事業に関連するものです。

 

 

 

重要な会計方針、見積り及び仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。

 

連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については主に「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しています。重要な見積り及び仮定については主に「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、会計上の見積り及び仮定」に記載しています。なお、のれんの減損テストで用いた主要な仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 のれん及び無形資産」に記載しています。

 

また、見積り及び仮定は、過去の実績や、合理的だと考えられる様々な要因に基づく経営者の最善の判断に基づいています。しかし、これらの見積り及び仮定には不確実性が存在するため、翌期以降の連結財務諸表において認識する金額と異なる場合があります。

 

主な経営施策

・新型コロナウイルス感染症の感染防止に関する当社グループの取組み

 

当社グループは、従業員とその家族、個人ユーザー、企業クライアント及び外部協力パートナー等、当社のステークホルダーの新型コロナウイルス感染症の感染防止を引き続き最優先に考えながら、事業活動に取組んでいます。また、各事業において、多様なステークホルダーの皆様に対する様々な支援・取組みを行っています。

 

詳細は当社ホームページ(https://recruit-holdings.com/ja/covid19/)に掲載しています。

 

・自己株式の公開買付けの終了

 

当社は、複数の当社事業法人株主による当社普通株式の一部売却の意向を確認し、当社の事業法人株主による不規則な当社普通株式の市場売却による市場価格への影響に対する資本市場の懸念を和らげるための1つの方法として、当社のキャピタルアロケーションの方針に則り、2022年1月28日開催の取締役会において、自己株式取得の実施を決議後、2022年1月31日に自己株式の公開買付けを開始し、2022年3月1日に終了しました。本公開買付けによる累計取得自己株式数は26,555,258株、累計取得価額は121,649,636,898円でした。

 

詳細は当社ホームページ(https://recruit-holdings.com/ja/newsroom/20220302_0002/)に掲載しています。

 

・51job, Inc.の非公開化取引に関する契約の締結及び業績への影響

 

当社は、持分法適用会社である51job, Inc. (51job)の非公開化取引に関する契約を、2021年6月21日付けで51job及び複数の投資家と締結し、2022年3月1付けで変更契約を締結していました。本取引は2022年4月27日に51jobの臨時株主総会で承認され、2022年5月10日に完了しました。

 

本取引による2023年3月期連結業績への影響は軽微であるものの、当社個別財務諸表上は約369億円の関係会社株式売却益が計上される見込みです。

 

本取引完了後の、当社の51jobの発行済株式総数に係る持分比率は約39.9%、転換社債を含む完全希薄化ベースの持分比率は約45.4%であり、51jobは引き続き当社の関連会社となる見込みです。

 

詳細は、当社ホームページ(https://recruit-holdings.com/ja/newsroom/20220427_0001/)に掲載しています。

 

 

 

② セグメント業績の概況

HRテクノロジー事業


 

当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度比103.5%増8,614億円となり、米ドルベース売上収益(注)は前連結会計年度比91.6%増となりました。当連結会計年度を通じて、HRテクノロジーが事業展開をする各国において、新型コロナウイルス感染症に関する規制の解除、再導入及び強化が実施され、個人ユーザーの求職活動や企業クライアントの採用活動に影響を及ぼしました。事業の再開や拡大、新たなビジネスを展開するために、企業クライアントの強い採用需要が継続した一方で、新型コロナウイルス感染症への感染懸念、育児、配偶者の収入や金銭的支援といった要因により求職活動の回復は限定的となりました。このような労働市場における需給の乖離が発生した結果、Indeed及びGlassdoorにおける採用競争が過熱し、売上収益拡大の大きな要因となりました。

 

当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは34.0%となり、前連結会計年度の15.8%から上昇し、調整後EBITDAは前連結会計年度比338.9%増2,931億円となりました。当連結会計年度を通じて、HRテクノロジーは新しい商品やテクノロジーの開発に関わる人材採用を継続し、当下半期には採用を加速させることで、新たな革新的な採用ソリューションの開発への投資を実施しました。加えて、短期的には個人ユーザー及び企業クライアントの獲得を促進し、長期的にはIndeed及びGlassdoorのブランド構築に繋がる広告宣伝費や営業部門に係る人件費が、HRテクノロジーの費用において大きな割合を占めています。HRテクノロジーSBUの社員数は前年同期比で約23%増加し、2022年3月31日現在で約13,000人となりました。

 

(注) 当セグメントの現地決算数値であり、当社連結決算数値に含まれる数値とは異なります。

 

 

 

メディア&ソリューション事業

 


 

当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度比2.0%減6,586億円となりました。前連結会計年度の経済産業省中小企業庁より受託した家賃支援給付金事務事業に係る売上収益790億円の影響を控除すると11.1%増となりました。

 

販促領域の売上収益は前連結会計年度比13.0%減となったものの、前連結会計年度の売上収益に含まれていた家賃支援給付金事務事業の影響を除くと5.2%増となりました。合計で同領域の売上収益の50%以上を占める住宅及び美容分野はコロナ禍においても堅調となり増収、結婚分野も前連結会計年度比で増収となりました。一方、旅行分野では日本国内の経済活動は前連結会計年度と比べ改善傾向であったものの、前連結会計年度はGo To キャンペーンのプラス影響があったため前連結会計年度比で同程度となりました。飲食分野では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を引き続き受けたことで減収となりました。

 

Air ビジネスツールズを中心としたSaaSソリューションでは、Airペイを中心にアカウント獲得が進み、2022年3月末時点でAirペイのアカウント数は前連結会計年度末比33.6%増の約28.1万件、そのうちAir ビジネスツールズの他のソリューションを併用しているアカウント数は約17.6万件となりました。

 

人材領域では、日本国内における採用活動が回復傾向となり、売上収益は前連結会計年度比16.5%増となりました。飲食業や販売業の求人広告割合が高いアルバイトやパート向け求人広告サービスは、当上半期は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けたものの、より大きな影響を受けた前連結会計年度と比較すると採用需要が回復し、2021年9月末に解除されたことで回復傾向が強まり増収となりました。人材紹介サービスにおいては、当該サービスを活用する多くの業種で人材需要の高まりが見られ前連結会計年度比増収となりました。

 

当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは、前連結会計年度とほぼ同水準の15.6%、調整後EBITDAは4.0%減1,024億円となりました。将来の成長を見据えた戦略的なマーケティング活動や人材採用を積極的に実施しました。

 

 

 

人材派遣事業


 

当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度比15.0%増となり、為替によるプラス影響を控除した場合の売上収益は前連結会計年度比11.1%増となりました。

 

日本の売上収益は、主に派遣スタッフ数が前連結会計年度の水準を上回ったことで、前連結会計年度比で6.1%増となりました。

 

欧州、米国及び豪州においては、事業の再開や拡大のために派遣需要が増加しました。主に欧州のEコマースに関連する物流分野における人材需要の継続やコロナ禍における一時的な医療分野での需要の増加により、前連結会計年度比で売上収益は23.0%増、また為替によるプラス影響を控除した場合の売上収益は前連結会計年度比15.6%増となりました。

 

当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは6.8%となり、前連結会計年度の6.4%から上昇し、調整後EBITDAは22.3%増931億円となりました。日本においては、当連結会計年度を通じて売上収益が増加したことにより増益となりました。上半期に派遣スタッフの有給休暇取得率の上昇や派遣スタッフ募集費の増加によりコストが上昇したものの、下半期に労働市場の需給を見ながらコスト管理を行った結果、調整後EBITDAマージンは昨年と同水準になりました。欧州、米国及び豪州においては、当連結会計年度を通じて売上収益が増加したことにより増益となり、調整後EBITDAマージンは昨年と比較して増加しました。

 

 

各セグメントに帰属する地域別のれん金額

当連結会計年度末の各セグメントに帰属するのれんの帳簿価額は以下のとおりです。

 

のれん

HRテクノロジー

227.0

メディア&ソリューション

-

 

日本

-

 

海外

-

人材派遣

208.9

 

日本

27.5

 

米国

15.6

 

欧州

158.0

 

豪州

7.6

合計

436.0

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

基本方針

当社は、企業価値向上に繋がる戦略的投資への機動的な対応と円滑な事業活動に必要な流動性の確保のため、資金調達が必要な際には適切な格付及び財務の健全性を維持しつつ、グローバルな金融市場からの負債による資金調達を活用することを基本方針としています。

自己資本は、適切な資本効率を達成した上で、成長投資の機会等に対して機動的に対応できる財務基盤を整えること及び事業活動や資産のリスクと比較して十分な水準を維持します。

 

資金使途

運転資金、法人税の支払い、各セグメントにおけるM&A及び資産取得等による外部資源の獲得や設備投資、借入の返済及び利息の支払い、配当金の支払い、自己株式の取得等に資金を充当しています。

 

資金調達

運転資金及び投資資金については、営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を充当することを基本としていますが、資金需要及び金利動向等の調達環境並びに既存の有利子負債の返済及び償還時期等を考慮の上、調達規模及び調達手段を適宜判断して外部資金調達を実施する場合があります。

 

外部資金調達を行う運転資金のうち、原則として、短期の運転資金については、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパー又はその組み合わせにより調達することとしています。中長期の運転資金については、金融機関からの借入、社債又はその組み合わせにより調達することとしています。なお、当社は、機動的な資金調達を可能とするため、2,000億円(当連結会計年度末における未使用枠2,000億円)を上限とする社債の発行登録を行っています。

 

また、当社は、流動性を確保し、運転資金の効率的な調達を行うため金融機関4社と当座貸越契約を締結しています。なお、当連結会計年度末における当座貸越極度額の合計は1,130億円であり、当該契約に基づく借入実行残高はありません。加えて、当社は総額2,000億円のコミットメントライン契約を締結しています。当連結会計年度末において、当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。これらにより、当社は事業環境の大きな変化の際にも十分な流動性が確保できると考えています。

 

当連結会計年度末の有利子負債の帳簿価額・期日別残高は以下のとおりであり、期日別残高は利息支払額を含んだ割引前のキャッシュ・フローを記載しています。

 

 

帳簿価額

期日別残高

1年内

1年超5年内

5年超

社債

19.9

0.0

20.0

-

借入金

40.6

26.4

13.2

1.3

合計

60.6

26.5

33.2

1.3

 

 

 

格付

当社は、格付機関から長期格付を取得しています。当連結会計年度末における格付は、㈱格付投資情報センター(R&I):AA- 、ムーディーズ・ジャパン㈱:A3、及びS&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱:Aでした。また、当社は、R&Iから短期格付:a-1+を取得しています。

 

 

キャッシュマネジメント

当社は、当社グループ全体の資金効率を最大化するため、法制度上許容され、且つ経済合理性が認められることを前提として、主にキャッシュマネジメントシステムを通じた当社グループ内での資金貸借の実施を外部借入よりも優先しています。

 

当社は、当社及び財務統括子会社に全ての通貨のキャッシュマネジメントを集約することで、当社グループが保有する現金及び現金同等物の機動性を確保しています。

 

資金運用

資金運用は、投機目的で行わず、元本が保証され、安全且つ確実で効率の高い金融商品のみで行うこととしています。

 

政策保有株式に関する方針等

当社は、原則として政策保有株式を縮減していくことを方針としています。当社が保有する政策保有株式について、個別銘柄ごとに経済的価値と資本コストの見合いを定量的に検証するとともに、戦略的な関係性・重要性等の定性的な観点を総合的に勘案し、保有の適否を検証しています。取締役会にて年1回精査し、これらの観点に合致しないと判断された株式は縮減する方針としています。

 

当社及び当社の次に貸借対照表計上額が大きい㈱リクルートが保有する政策保有株式の状況は以下のとおりです。その合計額は、2022年3月末において907億円で、連結資本合計の6.6%です。

 

 

当社

㈱リクルート

非上場株式

非上場株式

以外の株式

非上場株式

非上場株式

以外の株式

銘柄数 (銘柄)

3

12

4

4

貸借対照表計上額の合計額

1.7

66.6

1.4

20.8

株式数が減少した銘柄数 (銘柄)

-

1

-

1

株式数の減少に係る売却価額の合計額

-

0.6

-

0.0

 

 

④ 連結財政状態の概況

 

 

前連結会計年度
( 2021年3月31日 )

当連結会計年度
( 2022年3月31日 )

増減

増減率

 

流動資産合計

927.5

1,182.0

254.5

27.4%

 

非流動資産合計

1,269.0

1,241.4

△27.5

△2.2%

 

  資産合計

2,196.6

2,423.5

226.9

10.3%

 

流動負債合計

603.1

695.5

92.4

15.3%

 

非流動負債合計

492.1

351.6

△140.4

△28.5%

 

  負債合計

1,095.3

1,047.2

△48.0

△4.4%

 

親会社の所有者に帰属する持分合計

1,091.5

1,363.7

272.2

24.9%

 

非支配持分

9.7

12.5

2.8

28.8%

 

  資本合計

1,101.2

1,376.2

275.0

25.0%

 

 

当連結会計年度末時点における現金及び現金同等物の金額は 6,695億円 、社債及び借入金を含み、リース負債を含まない有利子負債の金額は606億円、この差額のネットキャッシュは6,089億円です。ネットキャッシュの金額は、前連結会計年度末と比べ2,206億円増となりました。

 

流動資産は、主に営業キャッシュ・フローの増加に伴い、現金及び現金同等物が増加したことにより、前連結会計年度末と比べ 2,545億円 増となりました。非流動負債は、主に国内オフィスビルにおける会計上のリース期間の見直しに伴い、リース負債が減少したことにより、前連結会計年度末と比べ 1,404億円 減となりました。

 

当連結会計年度末における当座貸越極度額の合計は1,130億円であり、当該契約に基づく借入実行残高はありません。加えて、当連結会計年度末時点における2021年3月31日に締結した総額2,000億円のコミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。

 

なお、当社は2,000億円(当連結会計年度末における未使用枠2,000億円)を上限とする社債の発行登録を行っています。

 

⑤ 連結キャッシュ・フローの概況

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

286.5

439.6

153.0

投資活動によるキャッシュ・フロー

△40.3

△70.7

△30.3

財務活動によるキャッシュ・フロー

△172.7

△254.3

△81.6

現金及び現金同等物に係る換算差額

6.2

54.0

47.7

 現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

79.7

168.5

88.7

現金及び現金同等物の期首残高

421.2

501.0

79.7

 現金及び現金同等物の期末残高

501.0

669.5

168.5

 

 

当連結会計年度の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比で、2022年3月1日に終了した自己株式の取得による支出1,216億円と合わせても 1,685億円増加 6,695億円 となりました。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績及び受注実績

当社グループが提供するサービスの性質上、生産実績及び受注実績の記載に馴染まないため、省略しています。

 

② 販売実績

本項目「(1) 経営成績等の分析」に記載のとおりです。

 

 

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