業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルスのワクチン接種は進んだものの、変異株による感染再拡大等により感染者数は一進一退となり、経済活動の状況は1年間を通じてまだら模様のまま推移しました。また、サプライチェーンの寸断による一部部材の不足や世界的な原材料価格の上昇が続いたことも、景気回復に水を差す結果となりました。

当社グループ製品の主要需要先の状況といたしましては、自動車関連では需要の戻りはあったものの、半導体や部品供給停滞から減産が長期化し、低調な状況が続きました。一方で、電子・デバイス関連では、半導体市場の活況や電子部品の旺盛な需要から、好調を維持しています。また、新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要の高まりから、食品や日用品の容器の金型関連も好調でありました。

このような環境の中、当社グループでは、久しぶりのリアル展示会となる「インターモールド2021」への出展によるユーザーへのアプローチに加え、「総合カタログ」を刷新するなど、様々な営業施策を展開してまいりました。また、2021年11月には精密・微細加工の需要拡大を見込み、今後の販売拡大への足掛かりとして、米国に現地法人である「NS TOOL USA, INC.」を設立いたしました。

製品面では、5軸MC(マシニングセンタ)加工において、より高精度で高能率な加工を可能にすることで、生産性の飛躍的な向上をサポートする3枚刃ボールエンドミル「MSBSH330-5X」を発売しました。本製品では、新たなサービスである「NS Connect(コネクト)」を導入しました。同サービスは、工具ケース裏面に印刷された二次元コードを読み込ませることで、専用サイトにつながり製品の特長や加工条件等の様々な情報を閲覧できるサービスであり、開発部門と営業部門の連携により製品の性能のみならずサービス面でも評価されたことで、「超モノづくり部品大賞(主催:モノづくり日本会議/日刊工業新聞社)機械・ロボット部品賞」の2年連続の受賞につながりました。

生産面では、製品精度や生産性の向上を図る小集団改善活動を継続して推進しており、生産の回復に伴いコストダウンを実現しております。また、中期で対処すべきテーマごとに立ち上げたプロジェクトチームが活動を続けております。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は9,524百万円(前期比17.6%増)、営業利益は2,111百万円(同39.6%増)、経常利益は2,156百万円(同25.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,522百万円(同25.4%増)となりました。

なおKPIとしている売上高経常利益率20%の目標につきましては、22.6%と目標を達成いたしました。コロナ禍からの回復や半導体・電子部品の旺盛な需要による売上の増加に伴い、前期の21.1%からの改善となりました。もう一つの目標であるROE10%につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比25.4%と大きく増加いたしましたが、ROEは9.8%に止まり、前期の8.2%からは改善したものの目標の10%を僅かに下回る結果となりました。

製品区分別の売上高では、「エンドミル(6mm以下)」が7,449百万円(前期比17.5%増)、「エンドミル(6mm超)」が909百万円(同23.0%増)、「エンドミル(その他)」が488百万円(同2.0%増)、「その他」が677百万円(同24.7%増)となりました。

(注)報告セグメントが1つでありますので、製品区分別に記載しております。なお「その他」の事業セグメントは、製品区分別の「その他」に含めております。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度における財政状態は、資産合計が17,874百万円(前期末比937百万円増)、負債合計が1,708百万円(同98百万円増)、純資産合計が16,165百万円(同839百万円増)となりました。各資産・負債の増減要因は以下のとおりであります。

<流動資産>

当連結会計年度末における流動資産の残高は11,807百万円で、前期比912百万円、8.4%の増加となりました。これは主に、業績回復に伴う現金及び預金の増加及び在庫の積み増しから生じた棚卸資産の増加によるものであります。

<固定資産>

当連結会計年度末における固定資産の残高は6,066百万円で、前期比25百万円、0.4%の増加となりました。これは主に、減価償却費を僅かに上回る設備投資によるものであります。

<資産合計>

上記により、資産合計は前期に比べ937百万円、5.5%増加し17,874百万円となりました。

<負債合計>

当連結会計年度末における負債の残高は、1,708百万円と前期に比べ98百万円、6.1%の増加となりました。これは主に、未払法人税等の増加等によるものであります。

<純資産合計>

当連結会計年度末における純資産の残高は16,165百万円と前期に比べ839百万円、5.5%の増加となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当社は足元の業績に左右されず、今後の成長に必要な投資を継続的に行うこととしており、毎期5%程度の売上高の増加に対応できる設備投資を基本としております。具体的には、工具研削盤等の機械設備を中心に実施いたしておりますが、その計画において設置スペースのキャパシティーが不足すると判断された場合に、工場建設等大がかりな投資を行っております。資金の調達につきましては、無借金を前提としておりますことから、基本的には自己資金の範囲内とし、通常は営業活動により得られた資金を上回ることはありません。しかしながら、今後は製品開発や技術開発、生産設備増強の必要があると認識しており、従来に比べ投資活動による資金の使用は増える見込みであります。

また運転資本につきましては、販売、仕入れともに原則翌月決済とさせていただいており、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.7ヶ月となっております。

手許資金につきましては、不測の事態に陥った場合でも雇用や設備を維持し、企業活動を継続できる資金を蓄えておく必要があると考えており、その額は現時点で40~50億円程度と想定しております。

株主還元につきましては、安定的な経営基盤の確保並びに事業展開のための内部留保を勘案しながら、業績に応じた利益還元策を実施していくことを基本方針としておりますが、安定性・継続性にも配慮しつつ、業績動向や配当性向等を総合的に勘案して実施いたしております。

なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。連結ベースでの現金及び現金同等物(以下(資金)という)は、前連結会計年度末に比較し、1,169百万円増加し8,443百万円(前期比16.1%増)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は2,261百万円(前期比10.5%減)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益2,147百万円による資金の増加と、法人税等の支払いによる資金の流出などを反映したものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は348百万円(同86.3%増)となりました。これは主に設備投資の増加と定期預金の払い戻しによる収入を反映したものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は763百万円(同74.1%増)となりました。これは主に配当金の支払及び自己株式の取得によるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、報告セグメントが1つでありますので、製品区分別に記載しております。なお「その他」の事業セグメントは、製品区分の「その他」に含めております。

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

製品別の名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

エンドミル(6mm以下)

8,556,497

37.8

エンドミル(6mm超)

1,011,430

54.1

エンドミル(その他)

270,166

29.0

その他

611,069

53.6

合計

10,449,164

39.8

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

製品別の名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

エンドミル(6mm以下)

7,516,271

16.6

518,778

14.8

エンドミル(6mm超)

922,194

22.4

107,047

13.0

エンドミル(その他)

526,312

13.6

159,705

31.2

その他

655,999

14.2

34,495

△38.3

合計

9,620,778

16.8

820,026

13.2

(注)金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

製品別の名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

エンドミル(6mm以下)

7,449,317

17.5

エンドミル(6mm超)

909,853

23.0

エンドミル(その他)

488,363

2.0

その他

677,401

24.7

合計

9,524,936

17.6

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社サカイ

1,227,941

15.2

1,434,125

15.1

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討の内容

 当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

●経営成績等

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高が前期比17.6%増加の9,524百万円、営業利益は同39.6%増加の2,111百万円となりました。新型コロナウイルスの変異株による感染再拡大やサプライチェーンの寸断による一部部材の不足等により、経済活動の状況は1年間を通じてまだら模様のまま推移し、景気回復は緩やかなものとなりました。当社グループの主要需要先においては、自動車関連では半導体や部品供給停滞から低調な状況が続きましたが、電子・デバイス関連では、半導体市場の活況や電子部品の旺盛な需要から好調を維持しております。また、新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要の高まりから、食品や日用品の容器の金型関連も好調でありました。

 

●重要な影響を与える要因

当社グループの製品はそれ自体が人々の暮らしを支えるものではなく、人々の暮らしを支える様々な工業製品を作る際に必要となるものです。従いまして、その需要動向は精密・微細加工を必要とする製品群にリンクしています。例えば、スマートフォンのようにこれまでになかった新たな製品が登場し、それを世界中の非常に多くの人が持つようになると、大きな需要が生まれます。また景気が上向き、人々の所得が増えると自動車が売れるようになったり、より高い機能を持った高級品が売れるようになったりすることによって需要が膨らみます。このように当社の製品需要は世界の景気動向や新たな製品の登場等によって大きく影響を受けています。

当連結会計年度における状況は、第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)に記載のとおりでありますが、経済の先行きについては、不透明感が一段と増しており予断を許さない状況となっております。

その一方、半導体や電子部品等への需要は今後さらに拡大が見込まれるものと想定され、当社グループでは、それら最先端の需要をいかにして取りこぼすことなく対応できるかが重要であると考えており、引き続き高精度、高能率、多機能、長寿命を実現する高機能・高付加価値製品の普及を図るとともに、CBNやPCDを用いた製品など、ユーザー様の多様なニーズに応え得る製品をご提供できるよう努めてまいります。

 

●資本の財源及び資金の流動性

当社グループでは、運転資金及び設備資金につきましては、原則内部留保で賄うこととしております。運転資金につきましては、売上に係る決済を原則締め日の翌月応当日とさせていただいており、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.7ヶ月となっています。また今期は増産により棚卸資産が82百万円増加しましたが、販売規模に見合った対応であり、棚卸資産回転期間は4.7ヶ月となりました。当社グループにおいては、標準品の販売比率が高く欠品するとユーザー様にご迷惑をおかけしてしまうほか、失注に結び付く可能性もあるため、一定水準の製品在庫を揃えておく必要があります。設備資金につきましては、機械設備の継続的な投資を行いつつ、必要に応じて工場建設等の大きな投資を行っており、通常は営業活動により得られた資金を上回ることはありません。なお、当連結会計年度における設備投資は、生産設備を中心に659百万円と、前期に比べ197百万円増加いたしました。

 

●経営上の目標の達成状況

当社グループでは売上高よりも利益水準や効率性を重視しており、売上高経常利益率20%以上、自己資本利益率(ROE)10%以上を維持することを目標としております。なお、当連結会計年度における売上高経常利益率は22.6%(前期比1.5ポイント増加)、ROEは9.8%(同1.6ポイント増加)となっております。次期につきましては、工具需要は半導体や電子部品関連で引続き堅調に推移するものと想定されますが、原材料となるタングステン価格、電力コストや物流コストの着実な上昇は、次期のコストアップ要因として無視できない状況であります。そのため、売上高経常利益率は21.9%と当期に比べ0.7ポイント減少を想定しております。また、自己資本利益率(ROE)10%の確保につきましては、次期におきましても達成は厳しい状況であると考えておりますが、資本の有効活用を進め、改善のための努力を行ってまいります。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、当社経営陣は資産、負債及び収益・費用の各報告数値に影響を与える見積りの仮定を過去の実績や状況に応じて合理的に設定し、算定しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。

当社グループは、今回のコロナウイルス感染症の影響やロシアによるウクライナ侵攻等今後の見通しを含め、重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に重要な影響を及ぼす事項であるかを検討いたしましたが、合理的な見積り及びその影響額等を勘案した結果、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす事項は無いと判断いたしました。

 

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