「有価証券報告書」に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に最大限の努力をいたす所存であります。なお、本文中における将来に関する事項は、「有価証券報告書」提出日(2022年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 新型コロナウイルス感染症等の影響について
今般の新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックの発生により、従業員が感染した場合や建物が封鎖された場合には、製品在庫の出荷が出来ず市場への製品供給が停滞する可能性や、生産体制に影響が出る可能性があります。
当社グループでは、新型コロナウイルス感染症への対応として、社員と家族の安全確保及び製品の安定供給継続の観点から、社内規程を整備しチーム分けによる分散勤務体制や在宅勤務体制を導入し、併せて本社・工場・各事業所に抗原検査キットを常備して社内クラスターの発生防止に努める一方、仙台在庫センターの開設により、製品在庫を仙台・東京・一部は海外現法に分散保有し、また新潟工場の生産能力増強により、仙台・新潟での分散生産体制を推進するなど、複合的な対策を講じております。
(2) 生産・開発拠点の集中について
これまで当社グループでは、生産・開発拠点を宮城県の仙台北部中核工業団地内に集約することで、効率的な生産・開発体制を構築し、製品の品質、精度、価格競争力等を高める一方で、生産・開発拠点における震災対策の強化・徹底にも注力してまいりました。また、前述の通り在庫の複数拠点での保有や新潟工場での生産拡充など、リスク分散のための対策も並行して行ってまいりました。しかしながら、当該地域にて大地震等の災害が発生した場合には当社グループの生産・開発体制全体が影響を受ける可能性があるほか、場合によっては市場への製品供給が滞る可能性があります。
当社グループでは特に仙台工場での地震対策に重点を置いて取り組んでおり、現場における日頃の対策の一段の工夫、徹底に加えて、新開発センターで採用した「オールラウンド免震®」機構など、新たな技術を取り込むことで、より高度な地震対策が可能となっております。この結果、2021年2月、2022年3月に東北地方で発生した震度6強の地震に際しては、いずれも1両日で完全に生産復旧できており、一定の成果を生んでいると考えております。引き続き仙台地区での地震対策の充実と、在庫、生産拠点の分散による複合的な取り組みを推進してまいります。
(3) 小径エンドミルへの集中について
当社グループは超硬小径エンドミルの製造販売に経営資源を集中しております。超硬小径エンドミルは、主に電子機器、民生機器、自動車部品等の精密金型製作や部品の精密・微細加工に広く使用されており、今後も様々な分野で精密・微細加工技術を使った部材や金型の需要が大きく増加すると考えております。精密・微細加工の方法としては、超硬小径エンドミルを使った切削加工が一般的ですが、将来は他の素材を使った製品や新たな加工方法に代替される可能性があり、この場合当社の事業に影響が出ることが予想されます。
素材につきましては、現時点で超硬素材に全面的に取って代わる素材の出現の可能性は低いと考えておりますが、今後他の素材に代替される可能性はございます。
当社グループでは以前より、CBN(立方晶窒化ホウ素)やPCD(多結晶ダイヤモンド)といった超硬合金以外の素材を使用した製品の開発・製造等も行っており、他の素材についても鋭意研究を進めております。
加工方法につきましては、ここ数年3Dプリンターの普及が進み、金属の積層焼結成形が可能な製品も出てきており、またレーザー加工等、技術革新によりエンドミルを全く使用しない新たな精密・微細加工技術が開発される可能性もございます。
当社グループでは、高性能(高精度、高能率、多機能、長寿命)でバラつきのない、環境にやさしい小径エンドミルを合理的な価格で提供してゆくことにより、エンドミルを使った精密・微細加工の優位性をアピールしてまいります。
(4) 競合について
当社グループが事業展開している小径エンドミル市場では、国内大手の工具メーカーや超硬メーカーがその成長性に着目して生産・販売体制を強化しており、また中国市場などでも、中国国内で製造された製品が徐々に出回ってきていることから、今後ますます競争が激化していくものと考えられます。
当社グループでは、小径エンドミルに経営資源を集中し、専用加工機の自社開発をはじめ、小径エンドミルに特化した開発・生産・販売体制を強化、充実することにより、高付加価値製品を低コストで創造、提供する事業モデルを構築できていると考えており、一段の体制強化を図ってまいります。
(5) 原材料の調達及び資源価格の上昇について
当社グループの主要製品である超硬エンドミルの主要素材は超硬合金であり、その主要成分となるタングステンは国際市況商品で、供給量の8割強を中国が占めていることから、その価格は世界的な需給関係や産出国の思惑等によって大きく影響を受けます。また超硬合金で結合剤として使用されるコバルトはスマートフォンや電気自動車(EV)の電池にも使用されており、その需要拡大により需給逼迫が懸念されております。加えてタングステン、コバルトとも「紛争鉱物」として、以前より一部の生産地域において、その採掘過程での若年者労働や過酷労働による人権蹂躙が問題となっている経緯があります。
当社グループにおきましては、まず原材料のトレーサビリティーを徹底し、調達先から証明書の提出や原料調達方法の説明を受けるなどの方法により紛争鉱物の混入を排除しつつ、長期安定調達が可能な取引先を選んで材料の調達を行っております。また昨今の資源価格上昇に伴う材料価格や電気代、運賃等の上昇に関しましては、主力製品である小径製品においては材料費が製品原価に占める割合が比較的小さいことから、生産工程の効率化追求や製造経費の削減等、原価低減活動によりある程度までは吸収可能であると考えております。
(6) 特定の仕入先・協力会社への依存について
当社グループは、超硬エンドミルの主要素材である超硬合金の大半を特定の仕入先より仕入れております。また、超硬エンドミル生産の主要工程の一つであるコーティングにおきましては、内製化を進めているものの一部を特定の協力会社に委託しております。これは、増産時の対応又は万が一のためのリスク対応等を狙いとするものであります。
当社グループと当該仕入先・協力会社とは、長年にわたり極めて緊密な関係にあり、今後ともこれまでの取引関係を維持発展していく方針でありますが、災害や不測の事態によるサプライチェーンの混乱等に備えるため、安全在庫の積み増しや、設備の増強による内製化比率の引き上げ等、製品の安定供給の観点から対策を講じております。
(7) 製品の品質確保について
当社グループは、製造工程に自社開発専用機を投入し、独自の製造プロセスを創りあげることにより、当社特有の生産体制を構築し、この結果高性能でバラツキのない高付加価値製品を安定生産しておりますが、製造ラインが自社独自のものであり、市販の製造設備等での代替ができません。従って、製品の品質維持・確保のためには外部に頼らず自社のみで対応する必要があります。
当社グループは、ISO9001及び14001等の世界的に認められている品質管理及び環境管理基準に従って製品を製造することに加え、当社独自の「ものづくり行動指針」に基づき、社員自らが社内で不断に自社開発機や製造プロセスの見直しと改善を行うことで、高い品質確保のため盤石の体制を維持、発展させてまいります。
(8) 環境問題について
当社グループでは、ISOの環境管理基準や「サステナビリティ基本方針」に従って、「人と地球にやさしい製品を、最小限の資源でつくり、環境負荷の低減に努めます」を目標に掲げ活動しております。一方で、環境に対する配慮を求める社会の要請は日々高まっており、GHGの排出削減、資源の3Rや再生可能エネルギーの利用など、販売先、仕入先や株主等の様々なステークホルダーから、より高い目線での対応が求められております。ステークホルダーからの様々な要請、期待に応えられない場合、企業としての社会的信用や事業の成長に影響が出る可能性があります。
当社グループでは、サステナビリティ委員会を設置して当社グループの環境問題について定期的に討議して報告を作成し、これを取締役会で審議することといたしました。また、各部門のKPIを「サステナビリティ基本方針」に基づき策定することで、環境についても経営目標に織り込んで対応することとしております。気候変動への対応につきましては、今期よりTCFDに基づく情報開示を開始し、将来的にはこの中で2℃シナリオを中心に対応策を検討し公表してゆく予定です。
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