課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであり、その実現を保証するものではありません。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは「SOFT(技術)・HARD(機械)・HEART(心)を創ります。人と地球に優しい製品を開発し社会に貢献します」の経営理念のもと、生産性の向上に役立つ切削工具等の開発・製造・販売に携わってまいりました。また、ブランドステートメントとして“「つくる」の先をつくる”を掲げ、お客様や社会のニーズに応える高付加価値製品を生み出し、モノづくりの夢と可能性を切り拓くことを経営の基本方針といたしております。

また、社会と共存しつつ自社の持続的成長を目指す観点から、2021年11月に「サステナビリティ基本方針」を策定し、重要課題(マテリアリティ)と共に公表しております。生産、開発、販売、管理の各部門が「サステナビリティ基本方針」に基づきKPIを設定し、高付加価値製品の創造、提供のための好循環サイクルの確立を目指してまいります。

 

<サステナビリティ基本方針>

日進工具は、経営理念である「SOFT(技術)・HARD(機械)・HEART(心)を創ります。人と地球に優しい製品を開発し、社会に貢献します。」を実践し、精密な小径エンドミルを全世界に向けて提供することにより、企業や技術者のイノベーションを支えております。また、2004年にISO14000を認証取得し、環境配慮の重要性を自覚して様々な取り組みを実践してまいりました。これからも日進工具グループは、人と社会と環境が調和した持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

 

サステナビリティ方針

小径エンドミルのリーディングカンパニーとして、

これまでにない高付加価値製品を提供することにより、

社会と共生し、持続的成長を目指します。

 

マテリアリティ

1.環境問題への対応

人と地球にやさしい製品を、最小限の資源でつくり、環境負荷の低減に努めます。

2.人権の尊重

企業活動において、人権を尊重し、行動します。

3.地域・社会への貢献

小径エンドミルの事業を通じて、地域・社会における公益的な活動を実践します。

4.従業員の働きがい

すべての従業員に働きがいのある職場環境を提供します。

5.取引先とのパートナーシップ

取引先との相互理解を深め、公正な事業活動を通じて持続社会を目指します。

6.災害等の危機管理

いかなる状況でも安定した製品供給が可能な体制を構築します。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、不透明な経営環境の中、社会との共存と自社の持続可能性を同期させた「サステナビリティ基本方針」を新たに策定致しました。自社グループの中長期的課題と向き合い、企業としての持続的成長を継続するため、超硬小径エンドミルを中心に「人と地球にやさしい高付加価値製品を、最小限の資源でつくり、環境負荷の低減に努める」ことで、精密・微細加工用工具分野で圧倒的な№1企業を目指します。目的達成のため、当社各部門とグループ企業体が互いに連携し、製品開発サイクルの好循環をつくり出すことで、高付加価値製品の継続的な創造、提供の実現を図ります。

開発・生産・販売の各部門においては、下記戦略を実施してまいります。

① 開発部門

新製品開発では、現在の加工方法が変わるような他社に出来ない競争力のある製品の開発を目指します。新たな素材を使った工具の開発や、新たな工具の加工方法やコーティング技術の改良を推進するとともに、WebやSNSを活用して社内外における製品開発に関わる情報の収集と共有化を図り、ユーザーに支持される製品を開発してまいります。また、生産技術開発では、次世代加工技術への取り組みによる既存技術の革新を基本方針として、自社開発工具研削盤の更なる機能向上や画像処理技術による自動測定の範囲拡大を図ります。

② 生産部門

自社開発機による自動化ラインの増強、自動化範囲の拡大等により無人化・省力化を引き続き推進し、高性能(高精度、高能率、多機能、長寿命)でバラつきのない、かつ価格競争力のある製品を安定的に供給できる体制を一段と強化します。従来から行っていた小集団改善活動に、「日進工具グループが将来に向けて挑戦する改善活動」という意味を込めて、新たに「オレンジFC活動」(オレンジは当社のコーポレートカラー、FCはFuture Challenge)と名前をつけました。オレンジFC活動を通じ、品質改善のための活動を一段と強化してまいります。また、子会社工場での生産強化等による小径エンドミルのリスク分散体制の構築や、環境に配慮した生産活動を推進するため電力使用量の削減等を引き続き進めてまいります。

③ 販売部門

新規ユーザー開拓や既存ユーザーへの当社製品拡販を図るため、デジタルを活用した営業活動の可視化、情報の共有やデータの分析を進めます。環境変化に対応した営業展開として、WebセミナーやSNSでの発信、使い勝手の良いデジタルカタログの制作等のほか、昨年リリースした「NS Connect(コネクト)」(二次元コードから製品の加工事例や切削条件等のデータ画面にアクセスできるサービス)のようなWebを利用した情報発信やオンラインでの加工相談等をメニューに加えます。多面的なユーザーアプローチの展開により、当社製品の価値をユーザーに正しく伝える活動を行ってまいります。また、海外での精密・微細加工市場の開拓、拡大を目指し活動してまいります。

 

(3)経営環境について

当社グループの主力製品である超硬エンドミルは、切削工具の一種で、工作機械に取り付け、主に金型や各種部品の製作といった金属等の加工に使用されます。それらの金型や部品は様々な工業製品に用いられることから、当社グループの業績はそれら工業製品の生産動向に大きく影響されます。当社は刃径6mm以下の小径エンドミルに特化しており、自動車、半導体、電子部品、光学機器、日用品、医療機器等、多くの産業に製品を供給しております。

一昨年からの新型コロナウイルス感染症の拡大は、サプライチェーンの寸断や外出規制等による需要の縮小等、世界各国の製造業に大きな影響を与えました。次期は世界的に混乱・寸断したサプライチェーンが次第に正常化に向かうものと思われていたところ、ロシアによるウクライナ侵攻により安全保障上の重大な懸念事項が発生し、また長期化する中国でのロックダウンが経済に与える影響など、次期の経済の先行きについては、不透明感が一段と増しており予断を許さない状況となっております。一方で当社にとりまして、原材料となるタングステン価格、電力コストや物流コストの着実な上昇は、次期のコストアップ要因として無視できない状況であります。

このような状況のもと経営環境は厳しい状態が続くものと認識しておりますが、半導体や電子部品を中心に比較的堅調な経済セクターも存在し、円安効果も手伝って製造業は輸出ウェイトの高い業種を中心に底堅く推移するものと思われます。また新型コロナウイルス感染症は徐々に収束に向かい、それにともないサービス産業も含めて景気回復に転じるものと想定しております。

加えて、今回のコロナ禍において、働き方の常識や仕事の進め方が大きく見直され、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展することが考えられます。日本でもサービスが開始された5Gは、テレワークや遠隔医療、遠隔授業をはじめ、今回その必要性がクローズアップされた様々な要素を円滑に行うためのインフラとして、その重要性は確実に高まっています。また5Gの普及と相まってIoTやAIの活用もより積極的に行われるとみられることから、半導体や電子部品等への需要は今後さらに拡大が見込まれ、それに伴い当社製品が強みを発揮する精密・微細加工向けの工具需要も伸びていくことが期待されます。また自動車産業におきましては、100年に1度の変革期を迎えており、電動化、自動化、コネクティッド化が進んでいます。パワートレインがエンジンからモーターへ移行することにより、切削加工が減る部分もありますが、電動化、自動化、コネクティッド化により新たに必要となる部品も多く、センサー、カメラ、通信モジュール等当社が得意とする精密・微細加工が増えてくるものと期待され、微小径工具の使用は増えるものと考えております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

我が国のモノづくりが圧倒的な強みを発揮する精密・微細加工分野を、工具の面から支えていくことが、当社グループの使命であると認識しております。その使命を果たすため、ユーザーが安心して新たな加工にチャレンジできる、高性能で品質の安定した高付加価値製品を、妥当な価格で安定的に供給していくことが当社グループにとって最も大切であると考えております。

当社グループが対処すべき課題につきましては、上記の使命とサステナビリティ基本方針を踏まえた自社グループの中長期的な経営戦略を踏まえ、各部門とグループ会社がKPIを策定し、PDCAを実施しております。なお、KPIのうち主要なものにつきましては「マテリアリティKPI」として公表しております。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、売上よりも利益を優先する経営を実行し、売上高経常利益率20%の確保を中長期的な目標としております。当期の売上高経常利益率は22.6%(前期比1.5ポイント増)となり、目標を達成いたしました。半導体や電子・デバイス関連において半導体や電子部品の旺盛な需要に支えられ、精密・微細加工に適した小径工具の需要が底堅く推移した結果、売上高が増加したことに加え、前期から注力してきた製造現場での強い体質づくりが奏功し原価低減を実現しております。また、展示会出展の再開や3年ぶりとなる総合カタログの刷新といった一部販売費の大幅な増加があったものの、販管費全体では売上高と比較して伸び率が抑えられたことにより、売上高経常利益率の改善につながりました。次期につきましては、ユーザー側において部材や半導体の不足が継続することに加え、ウクライナ情勢の推移、資源価格や中国の動向等、経営環境は一段と不透明感が増すと考えており、販売予想が困難な一方で、原価、費用の一部は着実な値上がりが見込まれることから、売上高経常利益率は当期を0.7ポイント下回る21.9%を予想しております。また、株主資本を効率的に活用する観点から自己資本利益率(ROE)10%の確保も経営指標として重視しておりますが、当期は9.8%となっております。次期におきましては、設備投資と研究開発費を増加させる計画であり、積極的な投資によりROE改善に努めてまいります。

 

(6)経営戦略の現状と見通し

製品につきましては、「中期的な会社の経営戦略」に記載の通り、生産現場での加工技術や測定技術の向上を図るとともに、自動化を推進してコストの低減を進め、製品開発のスピードアップや営業力のレベルアップ等を実現しております。一方で、CBN(立方晶窒化ホウ素)やPCD(多結晶ダイヤモンド)を使用した高付加価値製品の開発とそれらを用いた加工技術提案にも注力しております。CBN製品は、徐々にその有用性が認知され販売を拡大してまいりましたが、引き続き新製品の投入や更なる耐久性や精度の向上等により使用領域を拡げてまいりたいと存じます。PCD製品は、まだ用途が限られておりますが、製品性能の向上を図り、市場の拡大に努めてまいります。

製品の安定供給につきましては、2020年に仙台在庫センターを開設し、東京本社、香港子会社の3拠点に製品在庫を確保する体制とし、近い将来に当期設立した米国現法でも製品在庫を保有する計画であります。

 

(7)気候変動への対応(TCFDに基づく情報開示)

① ガバナンス体制

環境問題は当社グループにとって重要な課題の一つと考えており、気候変動に関する問題につきましても、専門委員会であるサステナビリティ委員会で定期的に検討を行い、取締役会に報告、議案の提出を行っております。取締役会では、同委員会の報告等を踏まえ、気候変動を含むサステナビリティ全般に関する課題を定期的に議論し、議案の審議、決議を行っております。

気候変動を含むサステナビリティに関する方針や決議内容の有効性評価やその実施状況の監視は、内部統制委員会が行っております。

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② リスク管理

当社グループのTCFDへの対応状況は以下の通りです。

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気候変動に関わるリスクの特定・評価につきましては、サステナビリティ委員会でリスクの重要度を評価し、取締役会で議論の上、最終的に認識すべきリスクの内容を確定します。リスクの検討にあたっては、IPCCやIEA等が公表している2℃シナリオ・4℃シナリオを考慮したそれぞれの世界観を参考に、当社グループにとってのリスクと機会とは何かを検討の上、行っております。

気候変動に関するリスク管理につきましては、上記の通り当社グループ内で検討し認識したリスクと機会のほか、サステナビリティ基本方針に基づく中期課題やISOマネジメントシステム規格等を踏まえ、各部門が気候変動対応を含めた「環境」に関わる課題解決の中でKPI※を策定し、他のマテリアリティに関するKPIと併せて社内で展開しております。

気候変動に関するリスク管理のモニタリングにつきましては、サステナビリティ委員会がKPIの進捗についてPDCAを実施し、取締役会に定期的に報告することで評価と監視を行っております。

※KPI=Key Performance Indicator スケジュール化、数値化された重要な事業目標

 

③ シナリオ分析と戦略

当社グループでは、前述の通り、2℃・4℃シナリオをベースとした世界観において、気候変動が自社グループの事業環境へ及ぼす影響の度合を検討するシナリオ分析を行っております。分析に際しては、サステナビリティ委員会において、気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出しとそれらに対する対応策の検討を行い、各部門での「環境」に関するKPI策定の基礎としております。分析範囲としては、当社グループの事業における2030年時点での影響を考察しております。

2℃・4℃シナリオに基づく分析、世界観の構築、これに対する当社グループの戦略につきましては、サステナビリティ委員会での更なる議論を継続中であります。

 

④ 指標について

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当社グループではGHGプロトコルスタンダードに基づいて、サプライチェーンを通じたスコープ1、2の温室効果ガス排出量を算定しており、2020年度のスコープ1排出量は87トン、同スコープ2の排出量は4,785トンとなっております。スコープ3につきましては将来の排出量開示を検討しております。また、温室効果ガス排出量のうち、スコープ1、2の排出量削減目標の開示につきましては、今後検討してまいります。

 

(8)その他、会社の経営上重要な事項

① 内部管理体制の整備・運用状況

当社グループでは、社内規程や稟議制度を整備し、ルールに基づいた業務運営を実施しております。また、内部統制報告制度への対応につきましては、常務取締役を委員長とする「内部統制委員会」を設置し、内部統制の整備・運用の推進及びその評価、また監査法人により実施される内部統制監査への対応を行っております。

② 指名・報酬委員会の設置

当社グループでは、ガバナンス強化の観点から、従来の報酬委員会を改組し、指名・報酬委員会を新たに設置いたしました。指名・報酬委員会は独立社外取締役が過半を構成し、委員長は独立社外取締役から選任される任意の諮問委員会であり、取締役等の候補者の指名(監査等委員である取締役を除きます)や、取締役等の報酬(監査等委員である取締役を除きます)について取締役会より諮問を受け、審議内容を答申することで、取締役会の監督・牽制機能を果たすものであります。

③ その他

その他の取組みといたしましては、監査等委員による各部門長へのヒアリングの実施、内部監査部門による各部門への内部監査の実施等を行っております。コンプライアンスにつきましては、コンプライアンス担当役員を中心に推進を図っており、全社教育のテーマの一つとして役職員向け研修会やメール・マガジンで取り上げることにより、社内での周知に努めております。また「コンプライアンス相談窓口」を設け、内部通報制度の窓口といたしております。

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