当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が繰り返し流行するなか、実体経済は一定の回復が見られましたが、年度後半に顕在化した世界的な半導体や部品・原材料の供給不足の影響により、先行き不透明な状況が継続しております。
また、海外経済についても同様に、新型コロナウイルス感染症の再流行や世界的な半導体不足に加え、各種資源価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、先行き不透明な状況が続いております。
このような状況下、当社グループは、特殊精密機器事業の耐摩工具関連分野においては自動車関連産業の回復が遅れたことにより厳しい受注環境となったものの、産業機械向け実装機用ノズルの売上は好調に推移した結果、前期を上回る売上となり、化学繊維用紡糸ノズル事業においても、昨年度から続く不織布製造装置や不織布関連ノズル等の売上が引き続き好調に推移いたしました。一方、当連結会計年度において、マテリアルサイエンス事業で進めているナノサイズゼオライトのパイロットプラントに係る減損損失として416百万円を計上いたしました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は4,038百万円(前年同期比6.1%増)、営業利益は311百万円(前年同期比85.9%増)、経常利益は338百万円(前年同期比85.9%増)、親会社株主に帰属する当期純損失は257百万円(前年同期は7百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
① 特殊精密機器事業
特殊精密機器事業においては、耐摩工具関連分野については自動車関連産業の回復が遅れたことにより厳しい受注環境となったものの、産業機械向け実装機用ノズルの売上は好調に推移いたしました。
これらの結果、売上高は922百万円(前年同期比20.0%増)、セグメント利益は115百万円(前年同期比173.3%増)となりました。
② 化学繊維用紡糸ノズル事業
化学繊維用紡糸ノズル事業においては、前期から継続するマスク需要の高まりにより不織布製造装置や不織布関連ノズル等の売上が引き続き堅調に推移いたしました。
これらの結果、売上高は3,003百万円(前年同期比0.7%減)、セグメント利益は678百万円(前年同期比5.3%増)となりました。
③ 電子材料スライス周辺事業
電子材料スライス周辺事業においては、半導体向けダイヤモンドワイヤは一部顧客においてサンプル提供から量産採用に進んだものの、売上高は少額に留まっております。また、新型ダイヤモンドワイヤ製造装置の販売については、中国大手ダイヤモンドワイヤメーカーと成約に至り、その対価の一部を当連結会計年度において計上することができました。
これらの結果、売上高は69百万円(前年同期は5百万円の売上高)、セグメント損失は383百万円(前年同期は410百万円のセグメント損失)となりました。
なお、江蘇三超社に対するダイヤモンドワイヤ生産設備の譲渡等の案件については、2021年11月17日付で同社よりSIACに対し仲裁の申立てが行われ、当社としても同年12月1日付で同社に対し残対価の支払いを求める申立てを行っております。今後、SIACでの仲裁において当社の正当性を主張してまいります。
④ マテリアルサイエンス事業
新規事業として取り組んでいるナノサイズゼオライトについて、一部顧客において開発ステージからエンドユーザでの評価ステージへ移行したものの、売上高はサンプル提供に留まりました。また、パイロットプラントについては、 2022 年 3 月末までに設置を完了しており、これに係る山全社からの受託収入を計上しております。
これらの結果、売上高は42百万円(前年同期比412.6%増)、セグメント損失は142百万円(前年同期は155百万円のセグメント損失)となりました。
総資産は前連結会計年度末に比べ147百万円減少し5,874百万円となりました。これは、当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用したこと等により契約資産が303百万円増加し、受取手形及び売掛金が212百万円減少したことに加え、現金及び預金が95百万円減少、仕掛品が167百万円減少したこと等によるものであります。
負債は前連結会計年度末に比べ471百万円減少し5,034百万円となりました。これは、当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用したこと等により契約負債が559百万円増加し、前受金が683百万円減少したことに加え、短期借入金が48百万円減少、1年内返済予定の長期借入金が949百万円減少、長期借入金が665百万円増加したこと等によるものであります。
純資産は前連結会計年度末に比べ324百万円増加し840百万円となりました。これは資本金、資本剰余金がそれぞれ299百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は14.1%(前連結会計年度末は8.3%)となりました。
セグメントごとの資産は次のとおりであります。
特殊精密機器事業におけるセグメント資産は634百万円となり、前連結会計年度末から19百万円減少しております。これは,建物の減価償却が主な要因となります。
化学繊維用紡糸ノズル事業におけるセグメント資産は3,675百万円となり、前連結会計年度末から10百万円増加しております。これは、前連結会計年度から継続するマスク需要の高まりにより不織布製造装置や不織布関連ノズル等の売上が引き続き堅調に推移したことによる、現金及び預金、売上債権の増加が主な要因となります。
電子材料スライス周辺事業におけるセグメント資産は87百万円となり、前連結会計年度末から13百万円増加しております。これは、売上債権及び棚卸資産の増加が主な要因となります。
④ マテリアルサイエンス事業
マテリアルサイエンス事業におけるセグメント資産は34百万円となり、前連結会計年度末から33百万円増加しております。これは売上債権の増加が主な要因となります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ95百万円減少し、2,931百万円となりました。
当連結会計年度における連結キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によって得られた資金は、175百万円(前年同期は530百万円の増加)となりました。当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用したことにより、契約資産の増加額303百万円及び売上債権の減少額が214百万円、契約負債の増加額が559百万円、前受金の減少額が683百万円発生しております。また、減損損失449百万円等の増加要因が、法人税等の支払額141百万円等の減少要因を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、520百万円(前年同期は161百万円の増加)となりました。
これは、有形固定資産の取得による支出491百万円、有形固定資産の売却による支出21百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって得られた資金は、228百万円(前年同期は1,466百万円の減少)となりました。
これは、株式発行による収入590百万円の増加要因が、長期借入金の返済による支出283百万円等の減少要因を上回ったことによるものであります。
当連結会計年度においては、特殊精密機器事業における産業機械向け実装機用ノズルや化学繊維用紡糸ノズル事業における不織布製造装置や不織布関連ノズル等の売上が好調に推移したことにより、営業活動によるキャッシュ・フローは増加しております。一方で、第9回新株予約権の行使により資金を調達いたしましたが、マテリアルサイエンス事業で取り組んでいるナノサイズゼオライトのパイロットプラントの設備投資や取引金融機関に対する約定返済に加え内入れ弁済を行ったことにより、当連結会計年度末の資金は前連結会計年度末から95百万円減少する結果となっております。
当社グループの主な資金需要は、各事業における原材料の仕入、製造経費、販売費及び一般管理費の営業費用などの運転資金や借入金の返済及び利息の支払い等であり、自己資金により充当いたします。当連結会計年度末における現金及び現金同等物は2,931百万円であり、当社グループの事業規模における事業継続に必要な資金が確保できていることから、短期的な資本の財源及び資金の流動性については問題ないと考えておりますが、事業基盤が確立されている特殊精密機器事業ならびに化学繊維用紡糸ノズル事業での目標数値を達成することにより、営業キャッシュ・フローの最大化を図ってまいります。
また、2023年3月期においては、子会社日本ノズル株式会社において新工場を建設し、大型メルトブローン不織布用ノズル等の製造設備を導入するとともに、事務所棟の建設に関する投資を予定しており、金融機関からの借入及び経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業補助金(2次公募)」の活用により調達してまいります。
今後も資金の残高及び各キャッシュ・フローの状況を常にモニタリングしつつ、資本の財源及び資金の流動性の確保・向上に努めてまいります。
(4) 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 上記の生産高合計額は各セグメントの第52期連結会計年度における当期製品製造原価の合計額であり、製品棚卸高の増減が反映されておりませんので、連結損益計算書の売上原価とは一致しておりません。
3 電子材料スライス周辺事業については半導体向けダイヤモンドワイヤが一部顧客において量産採用に進んだため、前年同期に比べて生産高が増加しております。マテリアルサイエンス事業についてはパイロットプラントの立上げに係る受託業務のため、前年同期に比べて生産高が増加しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 電子材料スライス周辺事業については新型ダイヤモンドワイヤ製造装置の販売が成約したため、前年同期に比べて受注高が増加しております。マテリアルサイエンス事業についてはパイロットプラントの立上げに係る受託業務のため、前年同期に比べて受注高が増加しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
3 伊藤忠システック株式会社は2022年4月1日に伊藤忠マシンテクノス株式会社と合併し、伊藤忠マシンテクノス株式会社に社名変更しております。
4 電子材料スライス周辺事業については新型ダイヤモンドワイヤ製造装置の技術供与が完了したため、前年同期に比べて販売高が増加しております。マテリアルサイエンス事業についてはパイロットプラントの立上げに係る受託業務のため、前年同期に比べて販売高が増加しております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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