文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループの経営理念及び経営方針
① グループ経営理念
郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。
② グループ経営方針
・ お客さまの生活を最優先し、創造性を発揮しお客さまの人生のあらゆるステージで必要とされる商品・サービスを全国ネットワークで提供します。
・ 企業としてのガバナンス、監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します。
・ 適切な情報開示、グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します。
・ グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
・ 働く人、事業を支えるパートナー、社会と地域の人々、みんながお互い協力し、社員一人ひとりが成長できる機会を創出します。
(2) 経営環境
当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況により一部弱さが残るものの、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直しの動きが見られました。しかし、2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、景気の下振れリスクが急速に高まりました。
世界経済においても、ワクチン接種の進捗等により、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中、先進国経済の回復が海外経済の改善を牽引し、国・地域ごとにばらつきがあるものの、全体的には回復が見られました。しかし、2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、エネルギーのロシア依存度が高い欧州経済への悪影響が強く懸念されるほか、資源価格高騰やサプライチェーンの混乱により、世界的に景気の不透明感が強まりました。
金融資本市場では、国内の10年国債利回りは、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策のもと、ゼロ%付近で概ね安定的に推移しておりましたが、2022年1月以降欧米の長期金利が上昇するにつれて上昇しました。日経平均株価は、米国金利低下に伴う円高進行や新型コロナウイルス感染症の拡大への懸念から下落傾向にありましたが、2021年8月下旬からの感染拡大ピークアウトの兆しや米国株高を受けて上昇に転じ、9月には一時30,000円台まで回復しました。その後は、新型コロナウイルス感染症の新たな変異株への懸念等により下落傾向が続き、2022年3月にはロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、一時24,000円台まで落ち込みました。
物流業界においては、eコマース市場の拡大が継続している中、各社が商品・サービスの向上を通じたシェア獲得に取り組むなど、厳しい競争下にあります。郵便事業においては、デジタル化の進展等により、郵便物の減少が継続しております。また、最低賃金の改定等を背景に、人件費単価の上昇等も続いております。
銀行業界においては、当連結会計年度は、全国銀行における預金は23年連続で増加し、貸出金も11年連続で増加しました。金融システムは、新型コロナウイルス感染症の拡大が引き続き国内外の経済・金融面に大きな影響を及ぼしているものの、全体として安定性を維持しております。
生命保険業界においては、超高齢社会の進展、ライフスタイルの変化等を背景としたお客さまニーズの多様化や選別志向の高まりが見られます。
当社グループは、「郵便・物流」「貯金」「保険」の生活に必要な基礎的サービスや物販、提携金融サービス等を全国約2万4,000カ所の郵便局ネットワークを通じて提供するほか、不動産事業など多数のサービスを展開しております。郵便・物流事業においては1日に約3,100万カ所への郵便配達箇所数、銀行業においては約1億2,000万口座の通常貯金口座数、生命保険業においては2,105万人のお客さま数(契約者さま及び被保険者さまを合わせた人数(個人保険及び個人年金保険を含み、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みます。))など、毎日の生活の中で多くのお客さまにご利用頂いており、お客さまとの接点の多さは当社グループの強みとなっております。
(3) 当社グループの経営戦略等
① 中期経営計画等について
当社グループは、2021年5月に、中期経営計画「JPビジョン2025」(2021年度~2025年度)を発表しました。当社グループは、少子高齢化やデジタル化の進展等、グループを取り巻く社会環境の変化を踏まえ、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指し、DX ※ の推進により、リアルの郵便局ネットワークとデジタルの融合に取り組んでおります。また、ユニバーサルサービスを含むコアビジネス(郵便・物流事業、銀行業、生命保険業)の充実強化に加え、不動産事業の拡大や、新規ビジネス等の推進により、ビジネスポートフォリオを転換させることで、グループの新たな成長の実現に取り組んでおります。
※ DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。
〔日本郵政グループが目指す姿〕
当社は、収益性を明確にお示しする指標として、連結当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益及びROEを採用しております。また、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置付けております。
② 経営者の問題意識と今後の方針
当社グループは、中期経営計画「JPビジョン2025」において、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を、当社グループが目指す姿として掲げております。当社グループの最大の強みである郵便局ネットワークにより、グループ内で一体的なサービスを提供していくとともに、これまでになかったグループ外の多様な企業等との連携を行うことで、地域において生活するお客さまが、安全・安心で、快適で、豊かな生活・人生を実現することを支えてまいります。
当社グループが抱える経営課題については、持株会社として、グループ各社と連携を深めながら、必要な支援を行い、その解消に努めます。
まずは、業務の適正を確保するため、コーポレートガバナンスのさらなる強化に向け、引き続き、グループ全体の内部統制の強化を推進し、コンプライアンス水準の向上を重点課題として、グループ各社に必要となる支援・指導を行います。特に、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受けた業務改善計画の実行に、引き続き着実に取り組んでまいります。
また、当連結会計年度において、郵便物等の放棄・隠匿、郵便局長等による資金横領等の不祥事案が発覚・発生するとともに、業務用カレンダーの配布に当たり、郵便局長が会社の活動と業務外の活動をしゅん別せず、また、お客さま情報を目的外に使用した等の不適切な取扱いがあった事案が発覚しました。これを踏まえ、お客さまからの信頼確保に向け、これらの事案の再発防止策を徹底してまいります。併せて、部内犯罪や社員の不正、不適正営業の防止、個人情報保護、マネー・ローンダリング対策等の取組みを継続・強化してまいります。
そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。
「持続可能な開発目標(SDGs)」を踏まえ、ESGに関する取組みをグループ全体として推進し、企業価値の向上につなげてまいります。具体的には、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた動きを踏まえ、CO2の排出量削減に向けたグループ全体のEV車両の導入拡大、カーボン排出係数の低い電力への段階的な切り替え等により、事業サービスを通じた環境負荷軽減等にも積極的に取り組みます。
そのほか、人的依存度の高いサービスを提供する当社グループにとって、人材は最も重要な経営資源との認識に立ち、お客さまへの総合的なコンサルティングサービス向上に向けた研修等の人材育成、女性管理職の登用拡大に向けた計画的な女性社員の育成、仕事と生活の両立ができる職場風土づくりなど、社員の多様な能力・個性を活かすダイバーシティ・マネジメントの推進に取り組んでまいります。
また、自然災害の発生や感染症の大流行等の危機に備え、危機管理態勢を整備するとともに、危機発生時には迅速かつ的確な対応を行い、業務継続の確保に努めます。特に、新型コロナウイルス感染症の流行下において、当社グループは、公益性が強いグループとしての社会的使命を果たすため、感染防止・感染拡大防止対策を行い、社員の安全確保と事業運営の継続に取り組んでまいります。
当社は、必要に応じ、自己株式の取得を行うことにより資本効率の維持・向上を図ることとしており、2021年6月10日付の取締役会決議に基づき、2021年6月11日付で自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により、当社普通株式276,090,500株を取得し、2021年6月18日付の取締役会決議に基づき、2021年6月30日付で保有自己株式のうち732,129,771株を消却いたしました。
また、2021年10月6日付の取締役会決議に基づき、2021年11月1日から2022年4月7日の間、取引一任契約に基づく市場買付により当社普通株式110,072,500株を取得し、2022年4月25日付の取締役会決議に基づき、2022年5月20日付で保有自己株式のうち110,072,529株を消却いたしました。その結果、2022年5月20日時点における発行済株式総数は3,657,797,700株となりました。
なお、日本国政府は、2021年10月に公表した当社株式の国内売出し及び海外売出しにより当社株式1,027,477,400株を処分しており、その時点において、日本国政府による当社株式の保有割合は発行済株式の約33.3%(自己株式を除く議決権保有割合は約33.3%)となりました
さらに、2022年5月13日付の取締役会決議に基づき、2022年5月16日から2023年3月31日までを取得期間とし、当社普通株式278,000,000株、取得価額の総額2,000億円をそれぞれ上限として、取引一任契約に基づく市場買付による当社自株式の取得を実施することを決議しております。同決議に基づき、2022年5月16日から2022年5月31日までの間に、15,430,700株を取得いたしました。これにより、2022年5月末日現在における発行済株式総数に対する政府が保有する株式の保有割合は34.3%(議決権保有割合は34.5%)となっております。
(4) 対処すべき課題
① 当社グループの「お客さまの信頼回復に向けた約束」について
2019年度に発覚したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題など金融商品販売に係る不祥事等を受け、当社グループが真にお客さま本位の企業グループに生まれ変わる決意を幅広く公表するために、外部専門家で構成されるJP改革実行委員会の助言も受けながら、「お客さまの信頼回復に向けた約束」を2020年9月に策定いたしました。
2021年9月のJP改革実行委員会において、「日本郵政グループが一丸となり取り組んできた信頼回復に向けた活動は、この1年間で一定の成果があげられたものと評価できる」との評価をいただきました。また、「これからは、本格的に顧客との信頼を構築していくために次のフェーズの活動に移行していくべき。真に顧客本位の事業運営を徹底することで、顧客との信頼構築に向けて取り組んでいくことが必要」との提言をいただきました。
今後は、経営理念や行動憲章の実践、お客さま本位の事業運営に継続的に取り組むとともに、お客さまから更なる信頼を得られるように取り組んでまいります。
お客さまの信頼回復に向けた約束
「目指す姿の約束」
一人ひとりのお客さまに寄り添い、お客さまの満足と安心に最優先で取り組み、信頼していただける会社になることを約束します。
「活動の約束」
〇 お客さま本位の事業運営を徹底し、お客さまにご満足いただける丁寧な対応を行います。
〇 お客さまの声をサービス向上に反映するため、お客さまの声に誠実に耳を傾けます。
〇 社員の専門性を高め、お客さまにご納得いただけるよう正確にわかりやすく説明します。
〇 法令・ルールを遵守し、お客さまが安心してご利用いただける高品質のサービスを提供します。
〇 お客さまのニーズを踏まえ、お客さまに喜んでいただける商品・サービスを提供します。
② かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について
2019年度において、かんぽ生命保険及び日本郵便では、お客さまのご意向に沿わず不利益が生じた契約乗換等に係る事案及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案(募集品質問題)が判明いたしました。
これにより、2019年12月27日、当社は、総務大臣より日本郵政株式会社法第13条第2項に基づく業務改善命令、金融庁より保険業法第271条の29第1項に基づく業務改善命令を、日本郵便は、総務大臣より日本郵便株式会社法第15条第2項に基づく業務停止命令及び業務改善命令、金融庁より保険業法第307条第1項及び第306条に基づく業務停止命令及び業務改善命令を、かんぽ生命保険は、金融庁より保険業法第132条第1項に基づく業務停止命令及び業務改善命令を受けました。2019年7月以降、郵便局及びかんぽ生命保険の支店からの積極的なかんぽ生命保険商品のご提案を控えてまいりましたが、当該業務停止命令により、2020年1月1日から同年3月31日までの間、お客さまの自発的な意思表示を受けて行う保険募集及び保険契約の締結を除き、かんぽ生命保険商品に係る保険募集及び保険契約の締結を停止いたしました。また、当該業務改善命令を受けて、2020年1月31日付で、当社及び日本郵便は業務改善計画を総務大臣及び金融庁に、かんぽ生命保険は業務改善計画を金融庁に提出いたしましたが、その後も当該業務改善計画の進捗状況等について報告し協議を行っております。
業務改善計画に掲げたお客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性が特定可能な類型のご契約の調査について、具体的にお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかをご確認する特定事案調査及びお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかを全てのご契約について確認する全ご契約調査は、お客さま都合によるもの等を除き、お客さま対応を完了しました。また、全ご契約調査の更なる深掘調査(多数回にわたって契約の消滅・新規契約が繰り返され、お客さまのご意向に沿ったものではない可能性がある事例を確認する多数契約調査等)に係るお客さま対応も、お客さま都合によるもの等を除き、完了しました。
また、募集人調査について、特定事案調査における募集人調査は、2020年4月末までに、病休等で調査ができない事案を除き概ね完了しております。さらに、多数契約調査のうち一昨年より実施している事案における募集人調査は、病休等で調査ができない事案を除き2020年10月末までに完了しております。加えて、深掘調査等の優先的に調査を行っている募集人調査は、2021年3月末までに、退職者等を除いて概ね完了しております。なお、特定事案調査及び多数契約調査のうち一昨年より実施している事案の募集人資格に係る処分、募集人及び管理者等に対する人事上の処分、日本郵便及びかんぽ生命保険の本社・支社・エリア本部等の責任者の人事処分については、2021年3月末までに、病休等で調査ができない事案を除き概ね完了しております。2021年3月からは、お客さまの申出内容などから問題があると考えられる募集人に対して募集人調査を実施しているほか、その他の募集人については、書面による募集実態調査を実施しております。これらに対する人事処分についても、順次実施しております。
かんぽ生命保険商品の販売については、2019年7月以降、2020年1月から同年3月までの業務停止命令期間を含め、郵便局及びかんぽ生命保険支店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えておりましたが、JP改革実行委員会より、当社、日本郵便及びかんぽ生命保険にて設定した営業再開条件について概ね充足したとの評価を受けるとともに、信頼回復に向けた業務運営の趣旨が、社員へ共有・徹底されていること等が確認できたことから、2020年10月5日より、お客さまへのお詫びを第一とした信頼回復に向けた業務運営を行っておりました。
これらの信頼回復に向けた業務運営の活動やかんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応が進捗し、お客さまからこれらの活動に対する理解を得られてきたこと等を踏まえ、2021年4月より、郵便局及びかんぽ生命保険支店において、お客さまのニーズに応じた保険商品やサービスの情報提供やご提案を全てのお客さまに対し実施することとし、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しました。
また、毎年10月に一斉に発送していた「ご契約内容のお知らせ」を、2021年5月より、ご契約者さまの誕生月の前月に合わせて送付することとしております。引き続き、「ご契約内容のお知らせ」を受領したご契約者さまへの確認・説明等、ご契約内容確認活動を進めてまいります。
さらに、2022年4月1日から、新しいかんぽ営業体制の構築として、お客さま担当制を導入します。日本郵便の訪問営業を行う社員はかんぽ生命保険商品およびがん保険商品の提案とアフターフォローに専念し、貯金業務・投資信託および一部の提携金融商品は郵便局の窓口が担当することとなります。多様化するお客さまニーズにきめ細やかに対応するため、お客さまへの専門性を持った対応を充実してまいります。そして、同年4月1日から、新契約と契約継続の両面を評価する保有契約の純増を観点とした目標を導入するとともに、アフターフォローや募集品質の維持などの活動を評価する目標をバランスよく設定し、結果に至るまでのプロセスも重視してまいります。
今後とも、業務改善計画に掲げる各種施策については、定期的に外部のモニタリングを受けながら着実に進捗管理を実施し、当社グループの全役職員が一丸となって推進してまいります。
③ かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応について
かんぽ生命保険商品と投資信託にまたがるお客さまの苦情を受け、お客さま本位でない営業による苦情のお客さま及び同苦情の懸念のある取引に係るお客さまに対するご意向確認、及び関連社員へのヒアリングを実施し、契約無効措置等のご要望を頂いたお客さまには、順次必要な対応を実施してまいりました。
2021年度以降も引き続き、お客さま本位の業務運営の観点から改善に向け、お客さま本位でない営業を防止するために、社内ルールの徹底及び金融商品間の横断的な取引についてモニタリングによる取引内容の精査等を行っております。
④ ESG経営
近年、関心が高まっているESGやSDGsについては、当社グループにおいても経営における重要課題として認識しており、トップレベルで関与していることが求められる事項と認識しております。
当社グループは、当社グループの強みである郵便局ネットワークを活用し、事業を通じて、地域社会への貢献、社会的な課題に取り組むことにより、当社グループの持続可能な成長と中長期的な企業価値の創出を図ってまいります。また、新たな中期経営計画において、「人生100年時代の『一生』を支え、日本全国の『地域社会』の発展・活性化に貢献し、持続可能な社会の構築を目指すこと」をESG目標として設定し、各種の取組を推進していくこととしています。
環境面においては、「2050年カーボンニュートラルの実現」という超長期の目標と、それを着実に達成するためのマイルストーンとして、2030年度目標(対2019年度比46%削減)を設定し、当面の取組として、EV車両の導入拡大、郵便局等における照明器具等のLED化及び再エネ率の高い電力会社への切替等を積極的に行うほか、当社グループの持つリソースを活用し、再生可能エネルギーの利用拡大など国内外のカーボンニュートラル化を後押しする投資等も展開していく予定です。
また、2019年4月には気候関連財務情報開示タスクフォースの提言に賛同を表明し、気候変動が当社グループの安定した事業運営に影響を及ぼしうる重要な課題の一つであるとの認識のもと、気候変動への対応を経営戦略における重要課題として位置付け、取組強化に努めています。
今後は、気候変動が当社グループの事業に与える影響の定量化と対応策の検討を進め、更なる情報開示に取り組んでまいります。
社会面では、地方の人口減少局面の中でも地域社会を支えるインフラ機能を果たすため、JR・地方銀行等他企業や地方公共団体との連携・協業を推進しているほか、地域活性化ファンドへの参加により地域社会の発展・活性化に貢献しています。
人権・労働関連では、多様な人材が活躍できるよう、ダイバーシティの推進に取り組んでいきます。女性管理者比率の向上に関しては、2030年度に本社における女性管理者比率30%を目指すほか、本社以外においても、管理者・役職者を目指す社員を増やすための環境整備・人材育成等を進めます。また、健康経営、労働時間の適正化等、社員視点に立った働き方改革の推進にも取り組んでまいります。
企業統治面では、金融2社商品・サービスに係る不祥事等により大きく毀損した信頼の回復に向け、「お客さまの信頼回復に向けた約束」を実行するとともに、グループの持株会社として、グループCxO制の導入、日本郵政・日本郵便の一体的運営を図り、グループガバナンスを強化します。また、「コンダクト・リスク」を早期に探知し対応する態勢を構築し、グループ一体となったリスク管理を行います。
今後も当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献するための活動を、グループ一体となり取り組んでまいります。
各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。
⑤ 郵便・物流事業
日本郵便の郵便・物流事業において、郵便物の減少や荷物需要の増加に対応するため、以下の取組みを行います。
(a) 商品・サービス・オペレーション体系の一体的見直しとサービスの高付加価値化
引き続き、年賀状を始めとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便利用の維持に取り組んでまいります。また、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、差出・受取利便性の高いサービスを提供するとともに、営業倉庫を活用した物流ソリューションの拡大、企業間物流の強化等により、収益の拡大を図ってまいります。
なお、過去5事業年度の郵便、ゆうメール、ゆうパック及びゆうパケットの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。
(b) 先端技術の積極的な活用による利便性・生産性向上
郵便物の減少傾向が継続する中、成長市場である荷物分野へのリソースシフトを進めるとともに、業務量に応じたコストコントロールの取組の深化やDXの推進等を通じて、生産性の向上に努めてまいります。
あわせて、テレマティクス技術(移動体通信システムを利用したサービス)を用いて取得するデータを、社員の安全確保や配達の相互応援、郵便物の配達順路や配達エリアの見直しにも活用していくほか、AIによる配送ルートの自動作成等によるゆうパック等の集配業務の効率化や、AGV(無人搬送車)の導入等による局内作業の省人化・スリム化も進めてまいります。
また、他企業との連携により、効率の良い配送システムの構築や利便性の高い受け取りサービスの提供等を実現する新たな物流プラットフォームの構築に取り組むとともに、将来的な実用化に向けて、ロボティクス(ピッキング用ロボット等)や配送の高度化(ドローンや配送ロボット等)についても試行・実験を重ねてまいります。
⑥ 郵便局窓口事業
日本郵便の郵便局窓口事業において、地域やお客さまニーズに応じたサービスを提供するため、以下の取組みを行います。
(a) 総合的なコンサルティングサービスの実現に向けた体制への変革
2022年4月より、新しいかんぽ営業体制を開始し、日本郵便からかんぽ生命保険に兼務出向した、高い機動性と専門性をもったコンサルタントと、多様なお客さまニーズに応える窓口社員が、それぞれの能力を最大限に発揮することで、専門性と幅広さを兼ね備えた「総合的なコンサルティングサービス」をグループ一体で実現してまいります。窓口社員については、窓口における積極的なお声かけや幅広い金融商品の提案を行っていくほか、郵便局窓口、電話及び郵送を中心としたアフターフォローに従事してまいります。
(b) リアルな存在としての郵便局を活かした、郵便局ネットワークの価値向上
地域金融機関との連携強化により、郵便局内へのATMコーナー設置や銀行手続事務の受託等を進めるほか、幅広い地方公共団体事務の受託や駅と郵便局の一体的な運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局を展開することにより、郵便局ネットワークの価値を向上させてまいります。また、郵便局窓口業務運営のデジタル化を進め、業務を効率化するとともに、それによって創出した経営資源を活かし、リアルならではのサービスを展開してまいります。
(c) 不動産事業の拡大に向けた取組み
JPタワー等の賃貸事業を行うとともに、住宅地に所在する土地の有効活用事業として、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を行います。また、新たな収益機会の拡大や保有不動産の有効活用の観点から、広島駅南口計画、虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業及び大阪駅前不動産開発等を推進し、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう取り組んでまいります。
⑦ 国際物流事業
日本郵便において、トール社に対する経営管理を強化・徹底してまいります。
同社の業績不振の主要因となっていたエクスプレス事業※1について、2021年8月に譲渡が完了しました。今後は、人員配置の合理化等により、残るロジスティクス事業・フォワーディング事業の採算性を向上させるとともに、シンガポール・ベトナムなど、アジア域内で特に成長が見込まれる数か国と小売業界・工業界といったトール社の得意とする業種にフォーカスした事業展開を行うこと等により、豪州に依存した事業構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長へ向けた取り組みを加速させてまいります。
さらに、海外のBtoB事業※2を中心に事業展開するトール社と、国内に顧客基盤を有する日本郵便のシナジーを強化し、コントラクトロジスティクス※3を中心に国内のBtoB事業の拡大を進め、国内外での総合物流事業展開による一貫したソリューションの提供を推進してまいります。具体的には、トール社が持つノウハウを用いて、2018年10月に発足したJPトールロジスティクス株式会社を通じたコントラクトロジスティクスサービスを提供し、一貫性をもった物流サービスの提供を推進します。
また、トール社を親会社とする連結グループの債務超過の金額は2022年3月末時点で881億円であります。トール社の経営環境が非常に厳しい中、資金繰り安定化を企図し、トール社の借入等に対して、日本郵便による債務保証を付しております。
※1 エクスプレス事業とは豪州及びニュージーランド国内におけるネットワークを活用して道路、鉄道、海上及び航空貨物輸送サービスを提供する事業のことです。
※2 BtoB 事業とは、Business-to-Businessの略語で、企業間の商取引、企業が企業向けに行う事業のことです。
※3 コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことです。
⑧ 銀行業
ゆうちょ銀行は中期経営計画のもとで、急激に変化する社会環境に対応したサステナブルな経営の実現を目指すべく、ESG経営を推進しています。2021年度は、5つの重点戦略を着実に推進し、その基盤を固めました。2022年度は、各重点戦略の取組みを加速し、目指す姿の実現に向けた道筋をつけてまいります。
(a) リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革
安心・安全を最優先に、デジタル人材を強化しつつ、すべてのお客さまが利用しやすいデジタルサービスを拡充してまいります。
具体的には、通帳アプリ等のデジタルサービスについて、機能や使いやすさの継続的な改善に取り組むとともに、「家計簿・家計相談アプリ」の構築に取り組んでまいります。また、全国の郵便局ネットワークを活用し、各種デジタルサービスの積極的なご案内・身近なサポートを進めてまいります。さらに、通帳アプリ、家計簿・家計相談アプリを起点として、多様な事業者との連携を通じて最適なサービスを提供する、オープンな「共創プラットフォーム」の構築に注力してまいります。
また、資産形成サポートビジネスにおいては、お客さま本位の業務運営推進の下、対面チャネルとデジタルチャネルの相互補完により、お客さまニーズに応じ、最適な商品・チャネルを提案いたします。
対面チャネルにおいては、2022年4月から窓口の投資信託商品ラインアップをお客さまに理解いただきやすい商品に厳選するとともに、投資初心者には主に積立投資を提案してまいります。また、2022年5月からは「投資一任サービス※(ゆうちょファンドラップ)」を開始しました。加えて、オンラインでの相談環境の一層の充実を図るとともに、デジタルチャネルにおいて、投資信託Webページやアプリのさらなる充実に取り組み、よりお客さまに利用いただきやすいチャネルに見直してまいります。
さらに、キャッシュカード一体型のブランドデビットカード「ゆうちょデビット」の取扱いを2022年5月から開始しております。また、「信託・相続サービス」等、新たなサービスの開始に向けて、準備してまいります。
※ 投資一任サービスとは、投資一任契約に基づき、投資運用業者がお客さまから投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づきお客さまのための投資を行うのに必要な売買・管理等までを行うサービスのことです。
(b) デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上
窓口タブレットをゆうちょ銀行全直営店に導入するほか、新規口座開設をスマートフォン上で行う「口座開設アプリ」のサービスを開始する等、お客さまの取引チャネルの選択肢を拡充しながら、窓口業務の効率化を進めてまいります。また、貯金事務センターにおいては、BPMS※の機能・拠点の拡大に向けた準備や相続関連業務のシステム化を進める等、今後ともデジタル技術を組み合わせた総合的な事務の自動化を推進してまいります。
これらの取組みを通じ、引き続き窓口等の業務量削減を図る一方、強化分野への人員シフトを継続しつつ、育成の強化を図ることで、より一層、生産性の向上を図ってまいります。
また、引き続き、戦略的なIT投資等、重点分野への投資を強化しつつ、既定経費の削減により、経営の効率性改善を目指してまいります。
※ BPMSとは、Business Process Management Systemの略。
RPAを自動で起動し、人による確認作業等を要求するなど、業務フローをシステム的に制御し、自動的に工程管理を行うシステムのことです。
(c) 多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化
お客さまからお預かりした大切な資金を、地域へと循環するために、特にエクイティ性資金の供給を拡充し、地域活性化への貢献に努めてまいります。
具体的には、「地域活性化ファンド」や「投資・事業経営会社」への出資を推進するとともに、「JPインベストメント地域・インパクト1号ファンド」に出資する等、地域経済発展に貢献してまいります。
また、地域金融機関と連携し、「地域の金融プラットフォーム」として、ATM連携や税公金取りまとめ事務共同化等について取り組むなど、全国の地方創生を多面的に支援してまいります。
(d) ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化
ウクライナ情勢、インフレ懸念を背景とした米国等の金融政策の転換等によるマーケット変動に十分留意しつつ、リスク対比リターンやストレス耐性の強化等を意識したポートフォリオ運営を実施します。
具体的には、リスク性資産については、投資適格領域のクレジット資産(国内外の社債等)を中心に残高を積み上げていくほか、リスク性資産のうち、戦略投資領域※については、中長期的な視点で、優良ファンドへの選別的な投資を継続してまいります。
加えて、ストレステスト高度化、モニタリング充実、外貨流動性リスク低減等、リスク管理高度化の取組みを推進してまいります。
※ 戦略投資領域とは、プライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等からなる戦略的な投資領域のことです。
(e) 一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化
引き続き、組織風土改革に取り組むとともに、内部管理体制の強化においては、日本郵便及び当社と連携し、部内犯罪防止やお客さま情報の漏洩・紛失の防止等、コンプライアンス態勢のさらなる強化に努めてまいります。
また、上記5つの重点戦略に加え、ESG経営の推進として、「環境の負荷低減」と「働き方改革・ガバナンス高度化の推進」に引き続き取り組んでまいります。具体的には、引き続き使用電力の再生可能エネルギーへの切り替えを推進するとともに、ESGテーマ型投資※の2025年度の残高目標を従来の2兆円から4兆円に引き上げ、資金運用業務を通じた社会全体の環境負荷低減に努めてまいります。また、強化分野の人材確保・育成、多様な人材を活かす環境整備や健康経営の積極的な推進等の人材投資の強化に加え、社員のキャリア形成支援・人材の見える化実現による人的資本の最大化を目指してまいります。
※ ESG債(グリーン債、ソーシャル債(パンデミック債含む。)、サステナビリティ債)、再生可能エネルギーセクター向け与信、地域活性化ファンド等のことです。
⑨ 生命保険業
かんぽ生命保険は、2021年5月に中期経営計画を公表しており、お客さまから真に信頼される企業へと再生し、お客さまに感動いただける保険サービスのご提供を通じて、持続的な成長を目指してまいります。
(a) 再生に向けた取組み
2022年4月より、専門性と幅広さを兼ね備えた新しいかんぽ営業体制を構築し、日本郵政グループ一体での総合的なコンサルティングサービスを実施してまいります。
リテール領域では、かんぽ生命保険内にかんぽサービス部を新設し、日本郵便から同部に出向したコンサルタント(主にお客さまのお宅を訪問して活動する社員)は、かんぽ生命保険商品及びがん保険商品のご提案・アフターフォローに専念するとともに、かんぽ生命保険が直接責任をもってマネジメントする体制とします。加えて、お客さま担当制を導入することで、お客さまのライフステージの変化等によるニーズの変化に適切に対応するための定期的なコンタクトを充実させ、お客さまに寄り添った質の高いアフターフォローを実施してまいります。
これらの施策を実施するにあたり、2022年3月に、「かんぽ営業(リテール領域)の目指す世界観」を定めております。ここでは「お客さまの信頼・満足を起点としてお客さま数を拡大していく」、「フロントラインに寄り添った仕組み・制度の運用を通じ、適正なマネジメントを定着させ、社員の成長を支える」及び「社会・経営環境を敏感に捉え、進化し続ける」ことを掲げており、この世界観を全社員で共有し、実行していくことで「マーケットも人材も成長させる文化」への転換を図ってまいります。その実現に向けては、土台であるマネジメントの成長を促すために、全社一体となってフロントラインのマネジメントに寄り添い、フロントラインの課題の解決に取り組んでまいります。また、営業目標、評価、手当等の諸制度について世界観と同期を図った形へ大きく見直し、2022年度の営業目標については、新契約と契約継続の両面を評価する保有契約の純増を観点とした目標を導入するとともに、アフターフォローや募集品質の維持などの活動を評価する目標をバランスよく設定し、結果に至るまでのプロセスも重視してまいります。これらの制度の仕組み・運用については、お客さまのためにできることを最優先に考えるとともに、変化し続ける社会環境や経営環境に適切に対応しながら、不断の見直しを図ってまいります。
法人営業領域でも同様に、2020年度に定めた法人営業ビジョン「社員一人ひとりがお客さまや地域社会とともに進化することに挑戦し続けます」に基づき、引き続き、経営者に寄り添い、より幅広く、より質の高いサービスをご意向に合わせてご提供することにより、お客さまとの真の信頼関係を構築、拡大してまいります。
事業基盤の強化については、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」、「事業運営の効率化・高度化」に取り組んでまいります。
「保険サービスの充実」においては、人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えする保険サービスの開発を進めてまいります。
昨今、医療の進展により入院日数は短期化傾向にあるとともに、外来での手術も定着しております。他方で、病気によっては長期の入院が必要となり、経済的に不安を抱えているお客さまも多く、公的医療保険制度の対象外となる費用負担などに対応した医療保障へのニーズは高いと考えております。このようなニーズに対応するため、2022年4月より、新しい医療特約「もっとその日からプラス」の取扱いを開始しております。「もっとその日からプラス」では、従来の医療特約より、入院一時金の金額・回数を充実させ、短期・長期のいずれの入院にも対応するとともに、外来又は入院中の手術のどちらでも同じ手術保険金額をお受け取りいただける、手厚い医療保障をご提供しております。
このほか、2022年4月より、お客さまの利便性向上を図るため、生命保険商品の受託販売範囲を広げるとともに、法人向け商品の受託販売等について、経営者向け定期保険に付加できる特約の種類を拡大しております。
今後も、青壮年層のお客さまニーズに応える低廉な保険料でバランスのとれた保障の提供や、人生100年時代を踏まえた高齢・中高年層の保障等のニーズに応える商品の拡充のほか、お客さまの健康づくりをサポートする商品の研究に取り組んでまいります。
資産運用においては、ERM ※1 のフレームワークの下、ALM運用を基本として、安定的な資産運用収益の確保を目指すとともに、2025年予定の経済価値ベースの新資本規制導入の動きに適切に対処しつつ、オルタナティブ投資等投資領域ごととポートフォリオ構築の両面から資産運用を深化・高度化してまいります。
収益追求資産への投資については、中期経営計画期間(2021年度~2025年度)において、総資産に占める同資産の比率を18~20%程度まで引き上げることを見込んでおります。特にオルタナティブ投資 ※2 については、プライベートエクイティ、不動産ファンド、インフラエクイティ、ヘッジファンドの4分野で戦略分散・地域分散を図りながら、リスク許容量と投資機会に応じて段階的に投資残高を積み上げてまいります。
ESG投資については、温室効果ガス削減目標達成に向けた投資先に対するエンゲージメントの強化、中期経営計画期間中のKPIに設定した投融資先再生可能エネルギー施設の総発電出力 ※3 の目標達成に向けた投融資の積極化、社会課題解決に向けたインパクト投資 ※4 の推進を進めてまいります。
また、デジタル化の推進により、お客さまサービス向上と業務の効率化及び経費の削減に取り組んでいくほか、更なる事業費管理の高度化に向け、自律的にコストコントロールの役割を担う予算管理者を本社各部に設置する等の新たな事業費管理の仕組みを導入し、経費削減を進めてまいります。これにより生じた経営資源は、お客さまサポート領域、DXの推進等の強化領域にシフトするなど、事業運営の効率化・高度化に取り組んでまいります。
※1 ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。
※2 オルタナティブ投資とは、債券や上場株式などの相対的に歴史の長い金融商品(伝統的資産)以外の新しい投資対象や投資手法の総称です。
※3 投融資先再生可能エネルギー施設から出力される電力に限ります。かんぽ生命保険持ち分換算後です。
※4 インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指します。
(b) 持続的成長に向けた取組み
お客さま体験価値(CX)の向上の観点から、保険サービスを抜本的に見直し、お客さまの利便性や募集品質を向上させることで、「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただけるよう取り組みます。また、その体験価値をご評価いただいたお客さまから、そのご家族や知人、さらには地域・社会全体へかんぽ生命をお勧めいただくことで、お客さまを広げてまいります。
具体的には、「お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案」、「その場で完結する簡便な手続きの提供」、「チーム一体でのきめ細やかなサポート」、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォローの充実」に取り組んでまいります。
「お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案」を行うため、お客さまのニーズや必要な保障内容などについてデジタルを活用したツールにより可視化するとともに、遠方にお住いのご家族等にも同席いただけるシステムを導入し、お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案を実現してまいります。また、「その場で完結する簡便な手続きの提供」を行うため、デジタル技術の活用により、お客さまのニーズに応じて、オンライン、対面等様々なお申込み・ご請求形態を選択できるようにしてまいります。具体的には、お客さま自身のスマートフォン等の端末から被保険者同意及び告知を可能とするため、アジャイル開発 ※ 手法を用い、一部地域から段階的に試行実施してまいります。このほか、インターネット上での入院・手術保険金請求の拡大等に取り組むとともに、マイページからの入院・手術保険金請求に対して、専門スタッフ(カスタマーセンター)がリアルタイムにサポートするチャット機能を実装する等、その場での諸手続き等の完了を可能にしてまいります。さらに、「チーム一体でのきめ細やかなサポート」を行うため、お客さまのご契約情報やお問合せ情報等をお客さま単位で集約したお客さまデータベースを構築し、コンサルタント、郵便局窓口、専門スタッフなど、お客さまにご対応する全ての社員がチーム一体で、きめ細やかなあたたかみのあるサポートを提供できる環境を整備してまいります。
そして、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォローの充実」のため、訪問による対面対応に加えて、オンライン会議など様々な方法による手厚いアフターフォローや、メール・SNS等によるお客さまごとに最適なタイミングでのアフターフォローを行い、お客さまのニーズに幅広くお応えし、お客さまの周囲の方々も含めた信頼の獲得を目指してまいります。
※ アジャイル開発とは、システムを開発する手法のひとつです。短期間に設計やテストを繰り返しながら開発を進めることで、サービス開始までの開発期間を短縮するとともに、開発途中の仕様・要件変更にも柔軟に対応することを目指します。
(参考)
過去の新契約、保有契約の件数の推移は下記のようになります。
(注) 2007年10月1日の民営化時の簡易生命保険契約は5,517万件でした。
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