当社グループは、「発想力と技術力で社会にダイナミズムをもたらすユニークな事業開発会社になる」という経営理念を掲げており、ビッグデータ(注1)処理、人工知能、金融工学の3つのコアテクノロジーを源泉とした、アドテクノロジーのDSP(注2)「Logicad(ロジカド)」を中心とする「マーケティングテクノロジー事業」の単一セグメントを提供しております。主要なサービスは、1.アドテクノロジー、2.マーケティングソリューション、3.デジタルソリューション、4.その他の4つに大別され、2022年3月31日現在、当社ならびに連結子会社10社で構成されております。
1.アドテクノロジー
DSPは、Demand Side Platformの略で、RTB(注3)を活用した広告主の広告配信効果を最適化するための広告買付プラットフォームであります。RTBは、広告枠をリアルタイムに売買する広告配信の入札手法で、欧米にて2009年頃から、日本では2011年頃から急激に普及した比較的新しい広告配信テクノロジーです。これまでのインターネット広告は、一定期間単位で広告枠を売買する「純広告」が主流でしたが、RTBの出現により、広告主と媒体社は「インプレッション」(注4)ごとに「オークション形式」で取引を行うことができるようになりました。具体的には、広告主はDSPを通じて「広告を配信するユーザー」、「広告を配信する媒体」、「広告を配信するタイミング」、「広告の配信量」、「広告枠の購入単価」をインプレッション単位で適切にコントロールすることで広告枠買付の投資効果を改善できるほか、広告効果の仮説検証を短期間に繰り返し行うことが可能となりました。
[RTBによる広告配信の流れ]
① ユーザーによる媒体の閲覧
まず、ユーザーがパソコンやスマートフォンで、広告枠のある媒体(WEBサイトやスマートフォンアプリ等)を閲覧します。
② 媒体からSSP等への広告リクエスト
ユーザーがWEBサイト等を訪問すると、対象の広告枠を管理するSSP(注5)・アドネットワーク(注6)・アドエクスチェンジ(注7)等の事業者に対して広告を表示するようにリクエストが発生します。
③ SSP等からDSPへの入札リクエスト送信
広告枠を管理するSSP等から、SSP等が接続している複数のDSP事業者に対して、対象の広告枠や来訪ユーザー等の情報と入札リクエストが送信されます。
④ DSPによる広告キャンペーン(注8)の選択
各DSPはSSP等から送られた情報をもとに、自社のデータベースを解析し、最適な広告キャンペーンの選定を行います。
⑤ DSPによるオークションへの入札の実施
広告キャンペーンの予算、広告に対するユーザーの予測される反応、他DSPの予想入札価格等を総合的に判断した上で、最適な入札価格を決定し、オークション取引への入札を実行します。
⑥ 広告の配信
各DSPによるオークションの結果、競り勝ったDSPは広告の配信を行うことができます。当社では、オークションが成立した瞬間にSSP等から広告枠を仕入れ、広告枠の入札価格に一定のマージンを加算して販売価格を決定し、広告の配信を行います。
当社は、内製開発したDSP「Logicad」を広告主及び広告代理店に提供しております。当社では、広告主のさらなる顧客満足度の向上の為、「広告効果の改善」や「広告効果の見える化」に積極的に取り組んでおり、以下の特徴と競争力を有しております。
[リアルタイムでのビッグデータ処理技術]
DSPは、SSPを経由して届く大量の入札リクエストと広告主及び広告代理店から受注した多数の広告キャンペーンによる膨大な組み合わせの取引情報をリアルタイムに処理する必要があります。RTBの広告配信は、ユーザーの媒体閲覧から広告配信までの一連の処理を100~150ミリセカンド(注9)以内に行う必要があります。そのため、DSPの処理速度が遅いとオークション取引に間に合わず、広告出稿機会を逃すタイムアウト(注10)という現象が起きてしまいます。当社のDSP「Logicad」の場合、2022年3月末現在、月間約6,400億件を超える入札リクエストに対して、5,100件を超える広告キャンペーンを運用していますが、各広告キャンペーンにおいて最適と予測した価格を瞬時に判断して応札しております。秒間最大10万件を超える膨大なオークション情報を平均数ミリセカンドでリアルタイムに処理するビッグデータ処理技術により、タイムアウトの発生を抑制している点が強みであります。
[人工知能と金融工学による入札の最適化]
DSPは、SSPからの入札リクエストに対し、広告キャンペーンごとに適切なユーザーへの適切な入札額を算出する必要があり、この「入札額算出のためのロジック」がDSPの特徴であり競争力の源泉と言えます。RTBのオークション取引における価格決定は一般的に、1,000回表示あたりの広告コストで行われます。そのため、予測精度が悪いと広告効果の低い広告を割高で購入したり、広告効果の期待値を実際の効果よりも低く予測すると広告の表示機会を失ってしまうリスクが生じます。当社のDSP「Logicad」の強みのひとつは、内製開発した人工知能「VALIS-Engine(ヴァリス・エンジン)」であり、金融工学により導き出された入札戦略と「VALIS-Engine」の高精度な行動予測により、広告キャンペーン毎に、各ユーザーに応じた最適な入札価格を決定することで広告キャンペーンの投資効果向上に貢献しております。
[広告効果を改善するデータ群と人工知能「VALIS-Engine」]
DSPによる広告配信は、一般的に、広告主が保有するユーザー情報(属性情報、WEB閲覧履歴等)、SSPから得られる行動履歴データ、第三者のデータプロバイダー(注11)から得られる各種データを横断的に分析・活用することで、広告の投資対効果の改善が期待できます。当社のDSP「Logicad」の場合、2022年3月末現在、自社において約2.7億ユニークブラウザー(注12)を超えるユーザー情報(属性情報、WEB閲覧履歴等)を保有し、月間約6,400億を超える膨大なリクエスト情報を処理しておりますが、これらのビッグデータを基に、広告主やデータプロバイダー等の保有する様々なデータを組み合わせて、ユーザーの各種行動を人工知能「VALIS-Engine」により分析、広告主の広告効果改善を支援している点が特徴です。
[広告効果の見える化]
DSPは主に媒体を閲覧しているユーザーに着目して広告配信を行いますが、広告配信面である媒体に関しても、媒体毎の特性に応じた広告効果の差異や広告主のブランディングへの影響を把握して選別することが重要になります。
当社のDSP「Logicad」の場合、日々増加するRTBのオークション取引に係るビッグデータに対して拡張性の高いシステムを構築しており、媒体への広告配信状況をドメイン単位で細かく参照して調整できる点が特徴です。具体的には、ドメイン単位で広告効果の高い媒体を厳選した広告配信設定が可能であり、広告主に対してドメイン単位での配信状況を網羅した透明性の高いレポートを提供しております。また、専任の訓練された運用人員が広告キャンペーン毎に広告配信設定を調整しており、DSP以外での広告施策や外部環境の影響を考慮する等、システムだけでは対応が難しいきめ細かな運用ができる点も当社の特徴です。
[ダイレクト・レスポンス広告(注13)を中心とした積み上げ型のビジネスモデル]
広告事業は一般的に、季節変動による広告主の広告支出需要の増減の影響を受けやすい面があります。当社のDSP「Logicad」の場合、通信販売等のダイレクト・レスポンス広告ニーズに対応したリターゲティング広告(注14)を中心に提供しておりますが、広告主の売上に直接的に結び付きやすいダイレクト・レスポンス広告はブランディング広告(注15)と比較して、広告効果が高い限りは一年を通して継続的に利用される傾向にあります。
なお、当社のDSPは、広告主及び広告代理店から受注した広告キャンペーン数と広告キャンペーン単価の積により売上が構成されておりますが、ダイレクト・レスポンス広告の特徴である広告キャンペーンの継続性、上述の「広告効果改善プロセス」及び「広告効果の見える化」により、広告キャンペーンを積み上げております。
2.マーケティングソリューション
連結子会社のSMT株式会社はクローズド型アフィリエイトサービス「SCAN(スキャン)」を提供しております。アフィリエイトサービスとは、インターネット上で商品やサービスを販売している広告主の広告を、WEBサイトやスマートフォンアプリ等の媒体に掲載し、広告掲載の成果(商品購入、会員登録の実績等)に応じて報酬を得るサービスです。当社のクローズド型アフィリエイトサービス「SCAN」の特徴は、当社の独自の審査により厳選した媒体に限定した広告出稿を行っており、広告主の投資効果の最大化を支援している点にあります。
3.デジタルソリューション
連結子会社の株式会社ASAはWebサイト、モバイル(Webアプリケーションなど)をはじめとするデジタルコンテンツの制作および開発を行っています。
連結子会社のルビー・グループ株式会社では、ラグジュアリーブランド向けEコマースの構築・運営・コンサルティングを提供しております。
当社においては「Web行動履歴」と実店舗での「購買/位置/時間/データ」を融合させ、実店舗の収益最大化に向けた販売施策を支援する、マーケティングプラットフォーム「Marketing Touch」を提供しております。
連結子会社の株式会社ゼータ・ブリッジは音声、画像認識技術を持ち、全国各地のテレビCMデータの販売などプロモーション関連領域でサービスを提供しております。
4.その他
親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が保有するポータルサイト「So-net(ソネット)」の広告枠の企画及び仕入販売を行っております。「So-net」は、天気、ニュース、テレビ番組、健康・医療等の生活関連情報、占い、カラオケ、動画等のエンタテインメント情報等様々なカテゴリーのコンテンツサービスを提供しております。当社はこれらのコンテンツに沿って、掲載される広告を最適化することにより、「So-net」の広告収益の最大化を支援しております。
4.用語
注1. |
ビッグデータ |
従来のデータベース管理システムなどでは処理することが困難なほど巨大で複雑なデータ集合の集積物。 |
2. |
DSP (Demand Side Platform) |
広告主の広告配信効果を最適化するための広告買付プラットフォーム。媒体側の広告収益の最大化を支援するプラットフォームであるSSP(Supply Side Platform)と対になる仕組みであり、両者はRTB(Real Time Bidding)を通して、広告枠の売買をリアルタイムに行っている。「Logicad(ロジカド)」の場合、2022年3月末現在、複数のSSPと接続しており、月間約6,400億を超えるリクエストを処理している。 |
3. |
RTB (Real Time Bidding) |
媒体を閲覧したユーザーの1インプレッション毎にインターネット広告枠の売買がリアルタイムにオークション形式で行われる仕組み。 |
4. |
インプレッション |
媒体に掲載される広告の効果を計る指標の一つで、広告の掲載回数のこと。媒体にユーザーが訪れ、広告が1回表示されることを1インプレッションという。 |
5. |
SSP (Supply Side Platform) |
媒体社側から見た広告収益の最大化を支援するプラットフォーム。RTBの技術を活用して、DSPに対してユーザーの1インプレッション毎に広告枠のオークションを行うことで媒体の広告収益最大化を支援する。 |
6. |
アドネットワーク |
複数の媒体の広告枠を束ねて広告配信ネットワークを形成し、これらの媒体に広告をまとめて配信することにより、広告配信を効率化させる仕組み。 |
7. |
アドエクスチェンジ |
複数のアドネットワークをさらにまとめてネットワーク化したもの。広告枠のオープンなマーケットプレイスとして機能しており、RTBにも対応している場合、広告主はこのマーケットプレイスを通して、DSPを利用した広告配信を行うことができる。 |
8. |
広告キャンペーン |
広告主から受託した広告を管理するための単位で、商品やサービス毎に広告キャンペーンを作成しており、広告キャンペーン毎に予算やターゲットユーザー、地域などを設定。「Logicad」の場合、同一商材であっても、PC向けとスマートフォン向けの広告で別の広告キャンペーンとしてカウントしている。 |
9. |
ミリセカンド |
時間の単位のひとつで、1,000分の1秒のこと。 |
10. |
タイムアウト |
SSPが受け付ける各DSPによるオークションの入札期限のこと。「Logicad」の場合、2022年3月末現在、平均数ミリセカンドでの入札を実現することで、タイムアウトによる広告出稿機会のロスを防いでいる。 |
11. |
データプロバイダー |
インターネットユーザーの属性情報、コンテンツ閲覧履歴、検索履歴、アクセス元履歴などのオンライン行動履歴及び会員データ等をセグメント化して、DSP事業者等に当該データを提供する事業者のこと。 |
12. |
ユニークブラウザー |
WEBサイトのアクセス数を計測する指標のひとつ。1ユニークブラウザー(UB)とは、ある一定期間内にWEBサイトにアクセスした、重複のないブラウザー数のこと。 |
13. |
ダイレクト・レスポンス広告 |
広告閲覧ユーザーからの直接的な反応を得ることを目的としており、主に顕在顧客を獲得する手段としての広告。「Logicad」の場合、通信販売や金融、デジタルコンテンツ、旅行、不動産等の商材を扱う広告主に対して、リターゲティング広告等の提供により、広告主の広告効果改善に貢献している。 |
14. |
リターゲティング広告 |
広告主の媒体を訪れたことのあるユーザーに限定して、再訪を促すような広告を配信すること。広告主の媒体に一度でも訪れことのあるユーザーは商品やサービスに対して比較的関心が高く、未訪問のユーザーと比較して広告効果の向上が期待される傾向にある。 |
15. |
ブランディング広告 |
企業や商品・サービスのブランド向上を目的とした広告で、レスポンス広告と対になる用語。従来はテレビCM、新聞、雑誌などのマスメディアが中心に使われており、ブランドに関する情報をユーザーに伝え、認知や好意的なイメージを獲得することを目的としている。 |
5.事業系統図
以上の内容を事業系統図に示すと、次のとおりであります。
(注)親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社とは、当社グループサービスのその他において取引を行っており、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が保有するポータルサイト「So-net」の広告枠の企画及び仕入販売を行っております。
お知らせ