当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の感染者数が増減を繰り返し、社会生活・経済活動が様々な影響を受ける状況が続きました。また、部品・原材料の不足、急激な円安の進行やウクライナ情勢等に起因する物価の高騰も懸念され、経済環境は不透明な状況で推移いたしました。
一方、当社の需要と関係の深い住宅業界におきましては、グリーン住宅ポイント制度の延長、住宅ローン控除及び住宅取得等資金にかかる贈与税非課税措置の延長等の政府政策もあり、全国の新設住宅着工戸数は、2021年4月~2022年3月までの累計で86万5千戸(前年比6.6%増)となりました(参照:e-Stat 政府統計の総合窓口「建築着工統計調査」)。先行きにつきましては、新型コロナウイルスの感染再拡大及び「ウッドショック」と呼ばれる住宅木材の価格高騰並びに供給不足の影響等により、依然不透明な状況で推移することが懸念されます。
このような経済状況の中、当社グループは中期経営計画「SANEI V70 ~創業70周年に向けて~」を策定、株主価値の増大に向け、適正な利益を確保し着実な成長を図ることを中長期的な目標とし、活動を行いました。
営業面では、前期に引き続き、新型コロナウイルス対策として、センサー水栓などの非接触型水栓や操作する時に触る面積の小さいレバータイプの水栓の販売強化に努めました。また、ホームセンターや大手EC取引先を中心に、消費者のニーズをつかむ製品提案として、ウルトラファインバブル製品や高機能シャワー製品などの販売強化にも注力いたしました。
研究・開発面では、コロナ禍における非接触のニーズに応えるため、音声で水の出し止めを操作する「AQUVOI」や手元のリモコンで水の出し止めを操作する「AQUEASE」の製品改良を行い、電子制御技術の更なる深化を図りました。また、ウルトラファインバブルシャワーなど高機能シャワーの水制御技術を研究し、節水効果と浴び心地を両立した製品開発を行いました。
生産面では、新型コロナウイルスにより世界的にサプライチェーンが不安定となる中、生産拠点である岐阜工場、鴫野工場、大連工場(大連三栄水栓有限公司)と連結子会社となった株式会社水生活製作所が連携を強化することで、安定した生産体制を築きました。また、主要原材料が高騰する中、生産設備投資による自動化や内製化など柔軟な生産体制により、徹底したコストダウンを図りました。
製品面では、デザインが好評なブランド水栓「cye」シリーズと「yori SUTTO」シリーズに、主に非住宅市場に向けた製品バリエーションを追加しました。また、コロナ禍での生活意識の変化に対応し、センサー水栓やワイヤレススイッチなど非接触需要に対応するラインナップを拡充するとともに、玄関などに手軽に設置できる手洗いユニット「ANY PLUS」の販売を開始しました。さらには、育成が早いことで知られる「竹」を資源と捉え、ものづくりに生かした洗面・手洗い用の水栓「いちりん」を発売しました。本体部品にメッキをしていないため、環境負荷が低く、リサイクルし易い設計の製品です。
これらの結果、当社グループの当連結会計年度における連結業績につきましては、売上高は229億99百万円(前期比3.7%増)となりました。利益面につきましては、生産性向上によるコストダウンや経費削減等、収益性向上に取り組みましたが、当社の主要原材料である銅合金等の長期にわたる価格上昇に伴う仕入価格の高騰、円安傾向にある為替レートや物価の上昇など、コスト面で非常に厳しい状況が続いており、営業利益は14億77百万円(前期比8.4%減)、経常利益は14億92百万円(前期比6.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は9億99百万円(前期比0.1%減)となりました。
当社グループは、株主価値の最大化のために、グループ各社の収益性を高め、着実な成長を図ることが重要と考えることから、売上高、経常利益率及びROEを指標としております。当社グループの当連結会計年度における経常利益率は6.5%(前期比0.7ポイント減)、ROEは 9.2 %(前期比1.2ポイント減)となっております。厳しい環境ではありますが、引き続き株主価値の最大化を目指してまいります。
② 財政状態の状況
当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度末に比べ30億8百万円増加し、224億67百万円となりました。うち、22億88百万円は株式会社水生活製作所及び美山鋳造株式会社を新規連結したことによるものです。
流動資産は前連結会計年度末に比べ20億4百万円増加(うち、新規連結分は13億88百万円増加)し、149億25百万円となりました。これは主に、現金及び預金が6億35百万円増加(同、4億42百万円増加)、商品及び製品が5億46百万円増加(同、1億46百万円増加)、原材料及び貯蔵品が6億45百万円増加(同、3億78百万円増加)したことによります。固定資産は前連結会計年度末に比べ10億3百万円増加(同、8億99百万円増加)し、75億42百万円となりました。これは、有形固定資産が6億35百万円増加(同、7億75百万円増加)、投資その他の資産が3億6百万円増加(同、77百万円増加)したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ15億56百万円増加(うち、新規連結分は16億37百万円増加)し、105億15百万円となりました。これは主に、電子記録債務が1億31百万円増加(同、増減なし)、短期借入金が8億76百万円増加(同、7億86百万円増加)、長期借入金が2億16百万円増加(同、3億72百万円増加)したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ14億52百万円増加(うち、新規連結分は6億51百万円増加)し、119億52百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益9億99百万円によるものです。この結果、自己資本比率は50.3%となりました。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ4億69百万円増加し、21億86百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、8億97百万円の収入(前年同期比94百万円の収入減)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益14億78百万円、売上債権の減少額4億62百万円、棚卸資産の増加額7億20百万円によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、3億95百万円の支出(前年同期比1億75百万円の支出減)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出2億57百万円、関係会社株式の取得による支出1億20百万円によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、3億11百万円の支出(前年同期は3億90百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1億94百万円、配当金の支払額2億6百万円によるものです。
当社グループは、単一セグメントです。当連結会計年度の生産実績、販売実績は次のとおりであります。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当社グループは、大部分の品目につき見込み生産を行っておりますので、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の財政状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載されているとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える大きな要因としては、経済動向、為替及び金利の動向、原材料及び物流費の高騰、製品の欠陥及び事故災害、等があります。
経済動向については、新規住宅着工件数の減少が予測され、厳しい業界内競争が続いていると認識しております。一方でリフォーム市場や非住宅市場(主にホテル・オフィスビル・商業施設)は成長が予測されており、当社は同市場をターゲットに、高付加価値製品の開発・拡販や水まわりにおける住空間全体をトータルに提案できるメーカーへ展開し、着実な成長を目指しております。
為替及び金利の動向については、米中関係および東アジア地域の経済動向の不確実性により、先行き不透明な状況が続いていると認識しております。当社では、為替リスクを回避するため中国における子会社との取引は円建取引を原則としております。金利動向は、主に固定金利により調達しており、金利変動による影響は比較的少ないものと考えております。
原材料及び物流費の高騰については、価格上昇に対する販売価格への転嫁に取り組むことや、原価低減および物流体制の見直しを推進し、更なるコスト削減を図っていきます。
製品の欠陥及び事故災害については、継続的な生産工程における改善活動、品質管理・保証体制の一層の充実、安全・安定運転に万全を期すことにより、経営に重要な影響を与えるような事態の抑制に努めてまいります。
なお、経営成績については、以下の通りです。
(売上高)
当社グループの当連結会計年度における売上高は、コロナ後の生活スタイルの変化による非接触型水栓の需要が堅調に推移したこと、高機能商材などの新製品が好調だったこと、住宅着工戸数の回復により需要が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ 8億17百万円増加 し、 229億99百万円 (前期比 3.7%増 )となりました。
(売上原価、売上総利益)
当社グループの当連結会計年度における売上原価は、前連結会計年度に比べ 9億26百万円増加 し、 159億61百万円 (前期比 6.2%増 )となりました。これは主に、主要原材料である銅合金等の長期にわたる価格上昇に伴い、材料費・仕入価格が高騰したことによるものです。この結果、当社グループの当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度に比べ 1億9百万円減少 し、 70億38百万円 (前期比 1.5%減 )となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当社グループの当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ 25百万円増加 し、 55億61百万円 (前期比 0.5%増 )となりました。人材投資による人件費の増加がありましたが、経費削減等の効果もあり、全体としては概ね横ばいとなりました。この結果、当社グループの当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ、 1億34百万円減少 し、 14億77百万円 (前期比 8.4%減 )となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当社グループの当連結会計年度における営業外収益は、前連結会計年度に比べ 29百万円増加 し、 72百万円 となりました。これは主に、持分法による投資損益を計上したことによります。また、営業外費用は前連結会計年度に比べ 4百万円減少 し、 57百万円 となりました。これは主に、前期に上場関連費用があったことと、当期に為替差損を計上したことによります。この結果、当社グループの当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ 1億円減少 し、 14億92百万円 (前期比 6.3%減 )となりました。
(特別損益、法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)
当社グループの当連結会計年度における特別利益は、前連結会計年度に比べ 36百万円減少 し、 1百万円 となりました。これは主に、前期に投資有価証券売却益を計上していたことによります。特別損失は、前連結会計年度に比べ 6百万円増加 し、 16百万円 となりました。また、法人税等は、前連結会計年度に比べ 1億42百万円減少 し、 4億78百万円 となりました。この結果、当社グループの当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ 0百万円減少 し、 9億99百万円 (前期比 0.1%減 )となりました。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載されているとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
(資本需要)
当社グループの事業活動における運転資金需要について、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料費及び人件費等)、受注維持拡大のための販売費、製品開発力の維持強化及び新規事業立ち上げに資するための研究開発費等によるものです。投資活動については生産性の向上等を目的とした設備投資によるものです。
今後において、必要な設備投資や研究開発投資を継続していく予定であります。今後の資金需要も見据えて、最新の市場環境や受注動向も勘案し、資産の圧縮及び投資案件の選別を行っていく予定であります。
(財務政策)
当社グループの運転資金、設備資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について金融機関からの借入により資金調達を行っております。
運転資金に関しては、手許資金(利益等の内部留保金)を勘案の上、不足が生じる場合には短期借入金による調達で賄っております。設備資金に関しては、手許資金、長期借入金による調達を基本としております。
ただし、設備資金の不足が生じる期間が短期間である場合には、短期借入金による調達で賄っております。
事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、発行費用等の調達コスト、既存借入金の償還時期等を勘案し調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大による事業への影響については、現在のところ軽微であります。しかしながら、今後の事業に対する影響につきましては、引き続き注視していく必要があるものと考えております。
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