課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、

①常に研究開発に励み、独自の技術を駆使することによって社会と環境に貢献し、顧客とともに栄える会社

②誠意(信)と協調(和)を基本とし、各自の個性を尊重し合いながら、全力を発揮出来る楽しい会社

③国際的視野にたち、自らの向上にチャレンジするインテリジェントな会社

④いたずらにスケールメリットを求めず、適正利潤により全社員の生活向上と、福祉の充実を図れる会社

を経営理念とし、企業ニーズに最適な水処理ソリューションを提供してまいります。

 

(2)経営環境

当社グループは、超純水製造装置の設計・施工・販売とそのメンテナンス及び消耗品の販売を主たる業務としており、その対象は半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)をはじめとする電子部品関連、医薬品、化学・化学薬品、食品等多岐にわたっております。その中でも、最も高い純度の水処理が要求される分野を主要な事業ターゲットとしており、特に半導体分野において世界を牽引する企業との取引関係が重要な事業基盤となっております。

 

(3)経営戦略及び目標とする経営指標

当社グループは、アジアにおける半導体・FPD・製薬工場向け純水・超純水装置のプロミネントカンパニーを目指すことを中長期的な目標に掲げており、この目標を達成するために、国内・韓国・中国・台湾を中心とするアジアでの競争力強化と受注拡大に注力してまいります。迅速かつきめ細かな対応による差別化を図り、環境等に対するニーズを的確に捉え、

①国内:半導体・製薬関連装置の積極受注及びメンテナンス拡大による安定収益の確保

②韓国:最先端半導体投資の確実な受注と投資再開が見込まれるFPD市場への対応

③中国台湾:半導体関連企業を中心に採算性を重視した受注活動への注力

④製薬業界へのUF膜法による注射用水製造装置の提案・受注活動強化

⑤コストダウン、経費削減の取り組み継続

に取り組み、事業展開を図ってまいります。

また、当社グループは収益性を示す連結売上高営業利益率を重要な経営指標と位置付け、当該指標の継続的な向上により企業価値増大を図ってまいります。2022年3月期における連結売上高営業利益率は13.9%となっておりますが、コスト低減、経費削減とともに新規市場開拓、周辺事業拡大及び高付加価値商品の拡販等による更なる向上を目指してまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループを取り巻く経営環境を展望すると、主力製品である超純水製造装置は、国内では製薬・半導体関連企業の堅調な投資が見込まれ、海外では韓国・中国・台湾を中心に半導体・FPD関連企業の工場新設が継続する見通しですが、採算については受注競争の激化により大型装置の採算性低下が避けられない状況となっております。

このような経営環境の下、当社グループは水処理の研究開発及び技術力の向上に積極的に取り組むことにより、半導体及びFPDを中心とする世界の最先端産業の発展・向上に貢献するとともに、超純水分野で培った技術をベースに環境負荷低減に貢献する製品開発を更に強化すること、並びに超純水技術を製薬向け注射用水・精製水製造装置などに応用し、健康支援の一端に寄与することで、中期経営目標の達成に向けた事業活動をグループ一丸となって推進しております。

これを実現させるための当社グループの課題といたしましては、①営業力の強化、②受注採算の改善及び為替リスクの回避、③継続的な研究開発による他社との差別化及び新商品の市場投入、④優秀な人材の確保と育成、⑤水処理事業領域の拡大が重要な経営課題と認識しております。

なお、新型コロナウイルス感染症拡大と長期化により、景気の先行きは予断を許さない状況となっております。当社グループといたしましては、進行中の案件に関しては感染症拡大に最大限の注意を払いながら工事を続行する等、現時点で中断や延期等の情報は無く、大きな影響は見られておりません。しかしながら、先行き不透明な状況でもあることから、今後の事業環境の推移を注視し、開示すべき事象が発生した場合には、速やかにお知らせいたします。

 

(5)具体的な取り組みの状況等

① 営業力の強化

水質の維持及びトラブル発生時の迅速な対応など顧客ニーズの的確な把握ときめ細かな対応を通じ、競争力の高い販売先を確保していくため、国内外において必要に応じ新たな拠点展開を図っております。

この観点から、超純水製造装置の納入場所の近接地域への進出が営業強化には不可欠であるとの認識に基づき、国内では顧客企業の近隣地域に拠点を設置し、受注活動を展開するとともに海外においては、韓国に株式会社野村マイクロ・サイエンス コリア、中国に上海野村水処理工程有限公司、アメリカに野村マイクロ・サイエンス USA Ltd.,Co、台湾に野村微科學工程股份有限公司をそれぞれ設置し、受注活動を展開しております。

また、国内におきましては、プラスチック製配管材料の販売強化を図る目的でアグループラスチック株式会社を設立しております。

② 受注採算の改善及び為替リスクの回避

当社グループの海外売上高比率が概ね60%という状況の中、極力円建てでの受注をすることと併せ、海外拠点展開と並行して現地企業からの原材料の調達比率を引き上げ、コストダウンを図る等更なる受注採算の改善及び為替リスクの回避に取り組んでおります。

 

③ 継続的な研究開発による他社との差別化及び新商品の市場投入

「超純水の更なる高度化」、「環境規制への対応」、「省エネ」等、多様化・高度化する顧客ニーズに迅速かつ的確に対応するため、民間企業・大学等との共同研究に積極的に取り組んでおり、将来展望のある新製品の開発並びに超純水製造装置以外の製品等の市場投入を図っております。

 

④ 優秀な人材の確保と育成

従来から実施している大学の研究機関への派遣研修制度を継続するほか、エンジニア及び研究開発部門の採用を中心に展開しており、2022年度は9名の新卒者を採用いたしました。

 

⑤ 水処理事業領域の拡大

長年当社が培った超純水製造技術を活用しつつ、他社との協業等により、半導体・FPD関連企業以外の工場排水処理や、従来の当社のマーケットとは異なる領域での受注確保に取り組んでおります。

 

■TCFDへの対応

 当社は、超純水製造装置をはじめとする水処理装置の設計・施工・販売を通してお客様に様々な価値を提供しており、設立以来、“最高純度の水”を追求しながら常に地球環境の保全を意識した事業展開を行ってまいりました。超純水製造装置における構成機器の機能向上により高効率化や省エネルギー化を進めるとともに、半導体の製造工程における化学薬品の使用量削減を図った機能水製造装置や、製薬業界向けにエネルギー効率の高いUF膜法を採用した注射用水製造装置などを早い時期から提案してきたのも当社の環境意識によるものであります。

 当社は、気候変動への対応を含めた地球環境への取組みを重要な経営課題のひとつと認識し、2005年には、事業活動を通して持続可能な社会の実現に貢献することを目的として「環境基本方針」を策定し、サプライチェーンの皆様の協力のもと環境負荷の低減に繋がるグリーン調達などに取り組んでおります。また、2021年には、より積極的にサステナビリティを巡る取組みを行うことを目的として「サステナビリティ基本方針」を策定し、マテリアリティの一つとして「環境問題への取組み」を掲げ、気候変動への対応を含めた地球環境の保全に向けた取組みを適切なガバナンスのもと体系的に行うこととしました。今後は、TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示を行うことで、さらに温室効果ガスの排出削減を進め、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

 

<ガバナンス>

 当社は、代表取締役社長執行役員(以下、「社長」という。)がサステナビリティを巡る取組み全体の責任者として、当社のサステナビリティ経営における主導的な役割を担っております。

 社長は、常勤の取締役などで構成されるサステナビリティ委員会を諮問機関として設置し、自ら委員長に就任しております。サステナビリティ委員会においては、委員が毎年度におけるサステナビリティを巡る取組みについて審議を行い、委員長である社長に対して答申するとともに、取組みの状況・結果についてレビューを行い、必要に応じて取組みの見直しを審議します。また、気候変動に対する取組みについては、気候関連のリスク及び機会の評価を行い、その評価に基づく必要な対応策について審議のうえ、戦略に反映しております。

 

 サステナビリティ委員会における審議を経たサステナビリティを巡る取組みは、社長を中心に全社的な取組みとして社内へ周知のうえ実行されるとともに、気候変動に対する取組みについては戦略の実行として進められ、これらの取組みの状況については定期的に取締役会へ報告を行うこととしております。当該報告を受けた取締役会は、 気候変動に対する取組みを含むサステナビリティを巡る取組みに対して適切に評価・監督を行うとともに、必要に応じて助言を行います。

 当社は、このように「サステナビリティ基本方針」のもと、社長を責任者として、気候変動に対する取組みを含めたサステナビリティを巡る取組み全体を推進しており、サステナビリティを巡る取組みの状況・結果についてはサステナビリティ委員会が評価し、必要に応じて取組みの見直しを行う体制を構築しております。そして、サステナビリティを巡る取組みの状況・結果、並びにこの体制の有効性を取締役会が適切に評価・監督を行うことで、実効性を確保しております。

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<戦略>

 当社は、国際エネルギー機関(IEA)のSTEPS(公表政策シナリオ)・SDS(持続可能な開発シナリオ)や国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のRCP2.6(2℃シナリオ)・RCP8.5(4℃シナリオ)などに基づき、2030年及び2050年における当社の事業遂行上のリスクと機会並びに財務的な影響の分析・評価を行うとともに、以下のとおり気候変動への対応策の検討を実施しました。

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 当社は、シナリオ分析において、「既存製品/サービスの低炭素オプションへの置換」、「環境意識の高い企業の増加による消費行動の変化」に起因する従来型製品の売上の減少(リスク)による財務的な影響度が非常に大きくなるものと評価した結果、当社が製造する水処理装置を通して温室効果ガスの排出を抑制し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することが最重要課題であるとの認識に至りました。また、この最重要課題に適切に対応することが機会である「R&Dとイノベーションを通じた低炭素型製品/サービスの開発、それらに伴う販売の拡大」にも繋がるものと考え、対応策の一部については、当社中期経営計画(HiPES-2023)における営業戦略に反映しております。

 なお、シナリオ分析においては、以下の表に示す政府機関及び研究機関で開示されているシナリオなどを参照して、重要度の評価及び財務影響の分析を実施しております。

 

 ■ IEA 『World Energy Outlook 2020』(2020年)

   ・ STEPS(公表政策シナリオ) / ・ SDS(持続可能な開発シナリオ)

 ■ IPCC 『AR5』

   ・ RCP2.6(2℃シナリオ) / ・ RCP8.5(4℃シナリオ)

 ■ 厚生労働省 『医薬品・医療機器産業実態調査』(2019年)

 ■ 一般社団法人 日本半導体製造装置協会 『半導体・FPD製造装置需要予測』(2021年)

 ■ 中小企業庁 『中小企業白書』(2019年版)

 

<リスク管理>

 当社は、将来における気候上昇のシナリオとして、2℃と4℃の気温帯を想定し、2030年及び2050年におけるシナリオ分析を実施しております。具体的には、当社のサプライチェーンを念頭に、当社全体、及び当社各プロセスにおいて想定しうるリスクを特定し、2℃と4℃シナリオでどのような財務影響が起こるのかを想定し、重要度の評価をしました。

 特定された気候変動に関するリスクに対しては、社長を中心としてリスクの回避、軽減、移転、受け入れ、コントロールに関する方針の策定や対応策の立案を行い、サステナビリティ委員会での審議を経たうえで、気候変動に関するリスクマネジメントを行います。また、サステナビリティ委員会における審議の状況、並びに気候変動に関するリスクへの対応策の実施状況及びその結果については、社長より取締役会へ報告が行われるとともに、取締役会が適切に評価・監督を行います。

 

<指標と目標>

 当社は、シナリオ分析の結果、当社が手掛ける水処理装置を通して温室効果ガスの排出を抑制することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することが重要であると認識し、対応策の一部については、中期経営計画(HiPES-2023)における営業戦略に反映しております。具体的には、蒸留法による装置に代えて環境配慮型の装置であるUF膜法による注射用水製造装置を積極的に提案し、販売を増加させていくとともに、超純水製造装置の省エネルギー技術を発展させることでも温室効果ガスの排出量の削減を図ってまいります。

 加えて、低炭素型製品の開発や低炭素貢献技術の開発などに対して積極的に投資を行うことで、新たな環境配慮型製品を生み出し、温室効果ガス排出量の削減に貢献していきたいと考えております。

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 なお、当社は、上記目標とは別に、「サステナビリティ基本方針」で定めるマテリアリティのひとつ「環境問題への取組み」の一環として、モーダルシフト(トラック・内航船輸送から鉄道輸送への移行)の推進、再生可能エネルギーの生産・利用(太陽光パネルの設置等)、社用車としてガソリン車からエコロジーカー(EV・HV等)への転換の推進などにより、Scope1、Scope2においても温室効果ガスの排出削減に取り組んでまいります。

 

 

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