(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(以下で別に定める場合を除き、当社、連結子会社及び持分法適用会社をいいます。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2018年4月1日~2019年3月31日)における世界経済は、総じて底堅く推移しましたが、米中の貿易戦争の激化などが世界経済を下押しし、景気の不確実性が増大いたしました。
こうした環境の中で、当社グループの主な供給先である半導体業界においては、上期前半は半導体の旺盛な需要を背景に総じて活況でした。しかしながら上期後半より、スマートフォン市場の減退や世界景気の減速懸念、メモリーの価格下落及び米中貿易戦争の懸念による先行きの不透明感から、半導体メーカーにおいては投資の先送りなど、投資の決定が遅れるという状況が続き、景況感は大きく悪化いたしました。
一方、自動車業界に関しては、自動車の高機能化による電子制御装置の増加や、電気自動車・ハイブリッド自動車の増加により、車載用センサー、インバーターなどの車載用半導体需要の拡大が継続いたしました。
当社においては、一般半導体向けはスマートフォン市場の減速、米中貿易戦争の激化等により、設備投資判断の先送りの影響が第3四半期に入り顕著となりました。その結果、WLP(ウェハーレベルパッケージ)用コンプレッションモールド装置を含め先端向け装置や車載向け半導体製造装置の受注は前年同期と比べ増加しましたが、第3四半期以降は一般半導体向けの落ち込みが大きく、通期の受注実績では前年度と比較し若干の増加に留まりました。
また、売上は上期の納期遅れによる影響に加え、第4四半期に入り、顧客から翌期(2019年4月以降)への納期スライドなどの要求の影響により売上が遅延し、前期比で大幅に下回る結果となりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ516百万円増加し、 11,566 百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,372百万円増加し、 8,600 百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ855百万円減少し、 2,965 百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は9,192百万円(前期比27.4%減)、営業損失は673百万円(前期は営業利益292百万円)、経常損失は681百万円(前期は経常利益248百万円)親会社株主に帰属する当期純損失は733百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益46百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(電子部品組立装置)
電子部品組立装置の受注環境は、車載向け装置は車載用センサーやインバーター等の車載用半導体の需要拡大とともに、国内外とも引続き順調な動きとなりました。一方、一般半導体向けは第3四半期に入り特に中国市場をはじめ受注環境が急激に悪化し、顧客の投資判断の先送り等が発生しました。このため、通期の受注実績は前期比では若干の増加に留まりました。
また、売上は、上期に発生した一部部材の調達難や設計のボトルネックの発生等による納期遅れの影響と、第4四半期に入り、海外の顧客から大型装置を中心に利益率の高い案件の翌期(2019年4月以降)への納期スライドの要求があり、売上及び利益ともに前期を大幅に下回りました。
この結果、売上高は7,536百万円(前期比30.8%減)、セグメント損失は1百万円(前期はセグメント利益884百万円)となりました。
(電子部品)
車載向け製品が好調に推移して売上は増加しました。電子部品を製造していたタイ子会社の閉鎖により、赤字幅は縮小いたしました。
この結果、売上高は1,171百万円(前期比2.2%増)、セグメント損失は68百万円(前期はセグメント損失99百万円)となりました。
(その他)
その他は、リード加工金型及びリードフレーム生産用金型の販売であります。リードフレームを使用する半導体の設備投資につきましてはマーケットが限られております。車載向けの受注が好調に推移しましたが、電子部品組立装置同様に、一般半導体向けのリード加工金型の受注が第3四半期以降大幅に悪化しました。また、新規開発製品が多かったことにより利益率は悪化しました。
この結果、売上高は484百万円(前期比22.7%減)、セグメント利益は27百万円(前期比66.1%減)となりました。
なお、地域別の売上状況は次のとおりであります。
(日本)
自動車の高機能化による電子制御装置の増加や、電気自動車・ハイブリッド自動車の増加により、車載用センサー、インバーターなどの車載用半導体向けの装置、部品が順調に推移いたしました。
この結果、売上高は4,547百万円(前期比6.7%増)となり、国内の売上構成比は前期比15.9ポイント増加して49.5%となりました。
(アジア)
台湾および中国市場を中心にスマートフォン向けなど携帯情報端末向けの半導体の増産及び新規パッケージの生産に伴い先端パッケージ用WLP(ウェハーレベルパッケージ)の設備投資を見込んでおりましたが、メモリーを中心として一般半導体の不振や米中貿易戦争の影響により、投資判断の先送りなどの動きが顕著になりました。
この結果、売上高は4,395百万円(前期比40.0%減)となり、アジア向けの売上構成比は前期比10.0ポイント減少し47.8%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、資金という。)は、前連結会計年度末と比較して369百万円減少し、当連結会計年度末には1,828百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
資金は732百万円の減少(前期は41百万円の増加)となりました。これは主にたな卸資産の増加及び税金等調整前当期純損失の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
資金は659百万円の減少(前期は294百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
資金は1,028百万円の増加(前期は148百万円の減少)となりました。これは主に短期借入金及び長期借入金の増加によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子部品組立装置(千円) |
7,043,510 |
111.0 |
電子部品(千円) |
1,154,627 |
105.6 |
その他(千円) |
449,634 |
74.6 |
合計(千円) |
8,647,773 |
107.5 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
電子部品組立装置 |
8,588,991 |
102.5 |
4,798,710 |
126.8 |
電子部品 |
1,184,536 |
101.9 |
143,632 |
109.9 |
その他 |
551,734 |
84.0 |
232,343 |
140.7 |
合計 |
10,325,262 |
101.3 |
5,174,686 |
126.8 |
(注)金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子部品組立装置(千円) |
7,536,185 |
69.2 |
電子部品(千円) |
1,171,614 |
102.2 |
その他(千円) |
484,574 |
77.3 |
合計(千円) |
9,192,374 |
72.6 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する販売割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
CHANG WAH ELECTROMATERIALS INCORPORATION |
1,334,998 |
10.5 |
699,351 |
7.6 |
3.金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当社連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。 この連結財務諸表の作成 には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積もりについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表及び財務諸表の作成方法について」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当社グループの当連結会計年度の経営成績等
(経営成績の分析)
1)売上高及び営業損益
売上高は、電子部品組立装置において、上期に発生した一部部材の調達難や設計のボトルネックの発生等による納期遅れの影響と、第4四半期に入り、海外の顧客から大型装置を中心に利益率の高い案件の翌期(2019年4月以降)への納期スライドの要求があり、売上及び利益ともに前期を大幅に下回りました。一方、電子部品においては、車載向け製品が好調に推移し、電子部品を製造していたタイ子会社の閉鎖により、赤字幅は縮小いたしました。この結果、売上高は9,192百万円(前期比27.4%減)となりました。
利益面では、電子部品組立装置では前述のとおり利益率の高い大型装置を中心に、翌期(2019年4月以降)に納期がスライドした影響及び新規開発製品のコストが嵩んだことによる影響を受けました。結果、 売上原価は 7,518 百万円(前期比24.8%減)となりました。また、売上総利益は、 1,673 百万円(前期比37.3%減)となり、売上高総利益率は2.9ポイント減少し、18.2%となりました。
販売費及び一般管理費は 2,346 百万円(前期比1.2%減)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は6.7ポイント増加して25.5%となりました。営業損失は 673 百万円(前期は営業利益292百万円)となりました。
2)営業外損益及び経常損益
営業外収益は、円安に伴う為替差益や受取賃貸料などにより80百万円(前期比28.1%増)となりました。営業外費用は、主に支払利息等により88百万円(前期比17.1%減)となりました。結果、経常損失は681百万円(前期は経常利益248百万円)となりました。
3)特別損益及び親会社株主に帰属する当期純損益
特別利益は、固定資産売却益を45百万円計上し75百万円(前期比1.6%減)となりました。一方、特別損失は46百万円(前期比78.6%減)となりました。結果、親会社株主に帰属する当期純損失は733百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益46百万円)となりました。
(財政状態の分析)
1)流動資産
当連結会計年度末における流動資産合計は、8,263百万円(前期末は8,161百万円)となり、前連結会計年度末と比較して101百万円増加いたしました。これは主にたな卸資産の増加によるものであります。
2)固定資産
当連結会計年度末における固定資産合計は、3,302百万円(前期末は2,888百万円)となり、前連結会計年度末と比較して414百万円増加いたしました。これは主に建設仮勘定の増加によるものであります。
3)流動負債
当連結会計年度末における流動負債合計は、7,008百万円(前期末は5,840百万円)となり、前連結会計年度末と比較して1,167百万円増加いたしました。これは主に前受金及び短期借入金の増加によるものであります。
4)固定負債
当連結会計年度末における固定負債合計は、1,592百万円(前期末は1,388百万円)となり、前連結会計年度末と比較して204百万円増加いたしました。これは主に長期借入金の増加によるものであります。
5)純資産
当連結会計年度末における純資産合計は、2,965百万円(前期末は3,821百万円)となり、前連結会計年度末と比較して855百万円減少いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純損失の計上による利益剰余金の減少によるものであります。
なお、これらの要因により、自己資本比率は25.6%(前期は34.6%)となりました。
(キャッシュ・フローの分析)
既述、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
b.当社グループの資本の財源及び資金の流動性
1)契約債務
2019 年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
短期借入金 |
3,740 |
3,740 |
- |
- |
- |
長期借入金 |
972 |
270 |
539 |
161 |
- |
リース債務 |
274 |
69 |
121 |
61 |
20 |
2)財務政策
当社グループは、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、原則として運転資金については短期借入金で、生産設備などの長期資金は、長期借入金で調達しております。
2019 年3月31日現在、長期借入金の残高は 972 百万円であります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2018年4月に、2018年度から2020年度の3年間を対象として「中期経営計画」を策定いたしました。この中期経営計画において利益体質への転換を目指し、前中期経営計画と同様に売上高営業利益率を主要な経営指標とし、同目標8.0%の達成を目標として事業戦略の骨子を組立てるとともに、諸施策を実施してまいります。
|
2019年度 |
2020年度 |
売上高(百万円) |
13,300 |
15,000 |
営業利益(百万円) |
800 |
1,200 |
売上高営業利益率(%) |
6.0 |
8.0 |
d.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照下さい。
e.セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの経営成績に関しましては、既述、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
1)事業環境の分析
当社グループを取り巻く事業環境は、一般半導体に関してはスマートフォン市場の減退やメモリーの供給過剰による価格の下落、および米中貿易摩擦の激化により調整局面にあります。一方、自動車向けの車載市場に関しては現時点では大きな落ち込みはありません。しかしながら、米中貿易摩擦の影響は半導体以外の業界にも波及が大きく、景気の先行きに不透明感が強まっております。
米中の貿易摩擦が早く落ち着くことが前提となりますが、中期的には一般半導体はIoT、キャッシュレス決済等の急速な普及に伴い、5Gネットワークの普及、中継基地の増加、端末の高スペック化など、高速通信、高速処理、記憶媒体へのニーズが一層高まるものと予想されます。一方、自動車向けの車載市場に関しても車載向けセンサーやパワー半導体をはじめとする電子部品市場が拡大し、需要先は日本・欧州から中国・アジア地域に拡大するものと考えます。
2)セグメントごとの戦略
(電子部品組立装置)
市場においては、以前にも増して短納期かつ低価格が求められるようになっており、品質を維持・向上させながらも、より「早く」かつ「安く」つくることが競争力を維持するために不可欠となっております。当社グループでは、トータルリードタイムの短縮、総コスト低減、及び品質管理・保証体制の強化により、生産性及び品質の大幅向上を図ってまいります。 製品別では、当社グループの柱である金型技術を強みに再構築するとともに、主力のWLP装置及びトランスファー装置の更なる進化に向けた取組み、及び車載ビジネスの更なる拡大により、強みを強化し継続的な成長へと繋げていきます。
また、市場別では、成長が著しく大きな市場である中国圏におけるビジネスの拡大、自動車の電動化等により成長が著しい車載ビジネスの拡大及びワールドワイドな展開を図ってまいります。
(電子部品)
赤字が続く電子部品事業に関しては人員の削減、不振の子会社の閉鎖等を実施しましたが、今後の黒字化に向けて以下の施策を実施してまいります。好調な車載向け部品事業に関しては、更なる市場の獲得を図るために自動車品質国際規格「IATF16949」を2019年3月に取得しました。また、新規事業分野に関しては半導体部品製造で培った精密プレスに関する金型設計技術・量産技術及び電子部品製造装置で培ったインサート成型技術を機軸として、次世代部品ビジネスに開発から関わることにより、付加価値の高い部品ビシネスを拡大いたします。また、工程の見直し、先進の自動化設備の導入等により、リードタイムの短縮と更なる品質の向上、コストダウンを図ってまいります。
(その他)
その他につきましては、リード加工金型及びリードフレーム用金型の販売であります。販売用の金型は主に関連会社であるコパル・ヤマダ株式会社(以下同社)より仕入れております。同社は当社グループの他のセグメント事業と非常に関連性が高いことから、さらに事業における協力関係を強め、同社と当社グループの事業拡大を図ってまいります。
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