(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の国内外の経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と縮小を繰り返しつつも正常化に向けて動きだしましたが、資源・原材料価格の上昇、供給制約、物流逼迫による物価上昇がひろがりました。米国をはじめとする多くの国々で、インフレが意識され、金利引上げなど金融引締めの議論が活発となる中、引続き金融緩和を継続する日本との金融政策の方向性の違いから円安が進む状況となりました。加えて、2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻により、石油、天然ガスの価格が高騰するなど世界経済に大きな影響を与え始めています。
この様な状況下、3ヶ年の中期経営計画の最終年度を迎えた当連結会計年度は、連結売上高388億46百万円(前期比2.6%増)、連結営業利益20億53百万円(前期比10.8%減)となりました。連結経常利益は22億74百万円(前期比23.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益16億49百万円(前期比20.8%減)となりました。
3ヶ年の中期経営計画の連結売上高380億円、連結営業利益30億円に対して、売上高の計画は達成できましたが、利益面では計画にとどかない結果となりました。また当連結会計年度の業績予想の売上高390億円、営業利益23億円に対して、売上高は若干の未達ではありますが、どちらも業績予想にとどかない結果となりました。
主力事業であるアスファルトプラント関連事業は、主要顧客である大手道路会社の組織再編が進められている中、需要は旺盛ながら案件進捗の一時的な鈍化の影響が売上および受注にみられましたが、コンクリートプラント関連事業はコンクリート価格が比較的高い水準で安定推移していること等を受け、ユーザーの設備投資需要が旺盛で売上高は増加しました。また、モバイルプラント事業、防水板事業等の新規事業も堅調に推移しました。一方で損益面では、鋼材をはじめとした原材料費の大幅な上昇を、外注費の圧縮と生産性の改善により吸収し粗利益率はほぼ前年並みとなりましたが、タイ現地法人の事業立上げの費用負担や研究開発費を始めとした一般販売管理費の増加により、業績予想数値を下回る結果となりました。
また、5つの長期基本方針である①「『国内収益基盤の強化』営業・サービス・技術・製造の全部門のレベルアップにより製品力向上で収益性向上(営業利益率10%)」、②「『海外売上の確立』世界最高レベルの日工製品をASEANに浸透させるために、メーカーとしての新たな海外拠点の構築(海外売上高を現状の45億円から倍増の90億円に)」、③「『新規事業(含むM&A)の推進』新規事業拡大に経営資源を投入し、産業機械、建設機械分野において新たな製品の柱を育成(新規事業で売上高100億円を創出)」、④「『働き方改革の実践』業務効率を改善し労働生産性の大幅な向上(事務集中化、IoT、AIの活用)」、⑤「『ROEをKPIに』時価総額500億円以上、ROE8%以上を目指す。また配当性向を60%以上とし株主還元も強化」につきましてはその目標達成に向けて着実に施策を講じております。
なおセグメント別の概況は以下のとおりであります。
<アスファルトプラント関連事業>
アスファルトプラント関連事業の売上高は、製品の販売を中心に案件進捗の一時的な鈍化の影響を受け前期比5.9%減の183億28百万円となりました。受注残高も案件進捗鈍化の影響を受け、前期比6.2%減の77億25百万円となっています。
<コンクリートプラント関連事業>
コンクリートプラント関連事業の売上高は、ユーザーの強い設備投資需要を受け製品の販売もメンテナンス事業も増加し、前期比17.7%増の108億39百万円となりました。受注残高も大幅に増加し、前期比27.7%増の57億55百万円となっています。
<環境及び搬送関連事業>
比較的、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けていた環境及び搬送関連事業の売上高は回復し、前期比26.3%増の30億18百万円となりました。受注残高はほぼ横這いで、前期比0.8%減の6億31百万円となっています。
<その他事業>
その他事業の売上高は、モバイル事業、防水板事業等の売上高が増加した一方、仮設機材事業等の売上高が減少し、前期比2.0%減の66億60百万円となりました。受注残高は、前期比142.3%増の23億77百万円となっています。
なお、受注残高には当連結会計年度末から連結の範囲に含めている宇部興機株式会社の受注残高14億84百万円を含みます。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は123億89百万円(前期124億44百万円)となり、前連結会計年度に比べ54百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、22億24百万円の収入となりました。(前期27億84百万円の収入)
これは、税金等調整前当期純利益が25億99百万円、減価償却費7億45百万円、売上債権の減少による収入16億53百万円があったものの、投資有価証券売却及び評価益3億25百万円の計上、棚卸資産の増加による支出が15億83百万円、仕入債務の減少による支出が28百万円、法人税等の支払額が10億2百万円あったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、21億65百万円の支出となりました。(前期18億67百万円の支出)
これは、投資有価証券の売却及び償還による収入が7億54百万円あったものの、有形及び無形固定資産の取得による支出が16億97百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が7億33百万円あったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2億82百万円の支出となりました。(前期11億29百万円の支出)
これは、長期借入れによる収入が10億99百万円あったものの、配当金の支払額が12億60百万円あったことによります。
③生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
アスファルトプラント関連事業(百万円) |
19,475 |
122.72 |
コンクリートプラント関連事業(百万円) |
10,827 |
111.14 |
環境及び搬送関連事業(百万円) |
3,010 |
126.66 |
報告セグメント計(百万円) |
33,313 |
119.02 |
その他(百万円) |
4,904 |
101.12 |
合計(百万円) |
38,218 |
116.38 |
(注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
ロ.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
アスファルトプラント関連事業 |
18,180 |
89.65 |
7,725 |
93.80 |
コンクリートプラント関連事業 |
12,086 |
121.33 |
5,755 |
127.65 |
環境及び搬送関連事業 |
3,014 |
104.84 |
631 |
99.30 |
報告セグメント計 |
33,281 |
100.50 |
14,112 |
105.47 |
その他 |
6,572 |
95.33 |
2,377 |
242.29 |
合計 |
39,853 |
99.61 |
16,490 |
114.82 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
ハ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
アスファルトプラント関連事業(百万円) |
18,328 |
94.15 |
コンクリートプラント関連事業(百万円) |
10,839 |
117.66 |
環境及び搬送関連事業(百万円) |
3,018 |
126.26 |
報告セグメント計(百万円) |
32,186 |
103.59 |
その他(百万円) |
6,660 |
98.00 |
合計(百万円) |
38,846 |
102.59 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績
2020年度実績、2021年度計画・実績値は次のとおりであります。
※AP=アスファルトプラント、BP=バッチャープラント(コンクリートプラント)
(売上高)
売上高は、前連結会計年度に比べ2.6%増の388億46百万円となりました。
国内のアスファルトプラント関連事業につきましては、案件進捗の一時的な鈍化の影響を受け、プラント製品、メンテナンスの売上高がそれぞれ前年比24.5%の減少、6.0%の減少となりました。海外においては、新型コロナウイルス感染症の影響から回復、台湾をはじめとする輸出が前年比235.3%の増加、中国では大型プラント需要増等により売上高が前年比9.1%の増加をしたこと等から、売上高は前年比27.1%の増加となりました。この結果、当事業の売上高は前年比5.9%減の183億28百万円となり、計画値の200億円を下回りました。
コンクリートプラント関連事業につきましては、ユーザーの強い設備投資需要を受け、プラント製品、メンテナンスの売上高がそれぞれ前年比29.5%の増加、4.8%の増加となりました。この結果、当事業の売上高は前年比17.7%増の108億39百万円となり、計画値である96億円を上回りました。
環境及び搬送関連事業につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復もあり、環境製品売上高は前年比219.4%の増加、搬送事業売上高は前年比6.4%の増加となりました。この結果、当事業の売上高は前年比26.3%増の30億18百万円となり、計画値である24億円を上回りました。
その他の事業につきましては、モバイルプラント製品売上高が前年比35.3%の増加、防水板製品売上高が前年比12.0%の増加となる一方、鋼材の高騰により仮設レンタル会社等の購買意欲の減少により仮設機材製品売上高が前年比12.0%の減少となる等した結果、当事業の売上高は前年比2.0%減の66億60百万円となり、計画値の70億円を下回りました。
(売上原価)
売上原価は、前連結会計年度と比べ6億70百万円増加し283億46百万円となりましたが、鋼材をはじめとした原材料費の上昇を、外注費の圧縮と生産性の改善により吸収し、売上原価率は0.1ptの減少となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ5億58百万円増加し84億47百万円となりました。
これは主として、タイ現地法人の事業立上げの費用や子会社株式取得関連費用の発生、試験研究費、給料及び手当、事務費(派遣料等)、旅費交通費、それぞれの増加によるものであります。
(営業利益)
連結営業利益は、前期比10.8%減の20億53百万円となりました。これは主として、販売費及び一般管理費が増加したことによるものであります。売上高営業利益率は、前期比0.8pt減少し5.3%となりました。これは主に、販管比率の上昇によるものであります。
(営業外収益、営業外費用)
営業外収益は、前連結会計年度と比べ4億65百万円減少し3億35百万円となりました。これは主として、受取配当金の減少等によるものであります。営業外費用は、前連結会計年度と比べ15百万円減少し1億14百万円となりました。これは主として、損害賠償金の減少、支払利息の増加、解体撤去費用の発生によるものであります。
(特別利益、特別損失)
特別利益は、前連結会計年度と比べ1億73百万円増加し3億26百万円となりました。これは投資有価証券売却益が増加したことによるものです。特別損失は、前連結会計年度と比べ79百万円減少し0百万円となりました。これは主として、投資有価証券売却損の減少によるものであります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、上記の結果、前連結会計年度に比べ4億33百万円減少し16億49百万円となりました。
(ROE)
当社はROEをKPIとしております。当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度に比べ1.6pt減少し5.2%となり、計画値の5.4%を下回りました。これは、アスファルトプラント関連事業の営業利益が計画比未達に終わったこととタイ現地法人の事業立上げの費用負担や研究開発費を始めとした一般販売管理費が増加したことによるものです。対処すべき課題にも挙げていますが、アスファルトプラントにおける高い国内シェアを活かしたメンテナンスサービス事業での新たな商品開発、事後的メンテナンスから予防保全的メンテナンスへのビジネスモデルの変革、カーボンニュートラル・CO2削減に貢献できる新製品開発、機能向上と現地工程短縮化に寄与するユニット製品の拡販などによる収益性向上と製造原価低減に取組んでまいります。
ロ.財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、341億27百万円となり、前連結会計年度末に比較して17億46百万円増加いたしました。主な要因は、仕掛品の27億33百万円、原材料及び貯蔵品の2億25百万円、電子記録債権の1億16百万円のそれぞれ増加、受取手形及び売掛金の10億92百万円、商品及び製品の5億3百万円のそれぞれ減少によるものです。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、179億51百万円となり、前連結会計年度末と比較して16億35百万円増加いたしました。主な要因は、建物及び構築物の13億87百万円、土地の3億71百万円、機械装置及び運搬具の1億77百万円のそれぞれ増加、建設仮勘定の4億84百万円の減少によるものです。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、157億74百万円となり、前連結会計年度末に比較して13億55百万円増加いたしました。主な要因は、契約負債の14億72百万円(前連結会計年度においては前受金)、支払手形及び買掛金の5億40百万円のそれぞれ増加、電子記録債務の1億46百万円、未払金の1億円のそれぞれ減少によるものです。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、42億54百万円となり、前連結会計年度末に比較して14億27百万円増加いたしました。主な要因は、長期借入金の12億79百万円、退職給付に係る負債の1億31百万円のそれぞれ増加によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、320億50百万円となり、前連結会計年度末に比較して5億98百万円増加いたしました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の16億49百万円の計上による増加、為替換算調整勘定の2億96百万円の増加、剰余金の配当12億60百万円の支払いによる減少、その他有価証券評価差額金の1億39百万円の減少であります。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の64.5%から61.5%になりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度に比べ54百万円減少し、123億89百万円となりました。なお、詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社の主な資金需要は、原材料等の購入費用等の製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用のための運転資金及び設備投資資金であります。資本の財源は、主として営業活動により得られた資金であります。
今後の財務戦略としましては、貸借対照表に眠っている資産をさらに現金化します。具体的には、政策投資株の売却と、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善を推進してまいります。
政策投資株の売却につきましては、事業上の影響がない取引先の株式は原則すべて売却の方針で進めてまいります。株主還元については、2022年3月期までの前中期経営計画期間においては配当性向60%を基準にしてまいりました。2023年3月期からの中期経営計画期間においても引続き同60%以上といたします。
CCCの改善は、プラントの受注時に前受金を原則受領することとして、また手形サイトも120日を超えるものを無くすことで達成可能と考えております。
引き続き、将来にむけての成長投資は積極的に進めますが、現在の利益剰余金の水準も高い水準にあることから、成長投資と株主還元の強化を共に進めてまいります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の数値、報告期間における収益・費用の数値に与える要因は色々ありますが、継続した会計基準で評価を行っております。見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて、合理的と考えられる基準に基づき作成しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。
また、当連結会計年度で行った見積り及び判断・評価については、新型コロナウイルス感染拡大の影響はありません。
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