課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

当社は2019年度に「10年後に日工グループがありたい姿(ビジョン)」を描いたうえで、長期(10年)の基本方針を策定しました。この方針の達成に向けて、3年ごとの中期経営計画を作成しています。

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①長期基本方針について

長期の基本方針は、(1)国内収益基盤の強化、(2)海外売上の確立、(3)新規事業(含むM&A)の推進、(4)働き方改革の実践、(5)ROEをKPIにかかげる、が骨子となります。これら5つの方針を軸にして、コーポレートガバナンスの強化、透明性の高い活力ある企業運営を展開してまいります。

 

②長期(10年)基本方針 5つのポイント

長期計画の前提となる当社を取り巻く事業環境につきましては、当社グループに関係の深い建設関連業界は今まで民間建設投資が大幅に増加するなど総じて堅調に推移してきました。今後も2021年度に始まりました防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などを背景に好調に推移していくと思われます。しかし、長期的にはこうしたプロジェクトも一服が見込まれます。このため、当社では既存事業における収益基盤強化と成長余地が大きい海外売上の確立、カーボン・ニュートラルに向けた製品開発への取組、既存プラントにおけるメンテナンスのサブスクリプションなどの新しいビジネスモデルへの取組、さらには新規分野を伸ばすことが中期経営計画の達成に必要と考えております。

 

これらを踏まえて、長期経営計画での基本方針は以下となります。

 

 イ. 国内の収益基盤の強化は全部門のレベルアップにより製品力を向上させて、現状一桁の国内売上高営業利益率を10%にする。

 ロ. 海外売上の確立は実績を積み上げているタイ、インドネシアにおいて攻め方を変えて強化する。

 ハ. 新規事業の推進はM&Aだけでなく現在取り組んでいる新規事業に対して経営資源を投入、柱とすべく10年後に100億円の売上を創出する。

 ニ. 働き方改革の実践は当社製品でお客様の働き方改革に貢献できるような製品を展開し、当社においては労働生産性を高めて余力を作り、新規領域に投入する。

 ホ. 以上の結果として、10年後に時価総額500億円以上、ROEで8%以上を目指す。また配当性向を60%以上とし、株主還元も強化する。

 

③長期目標を達成するに当たっての経営者の認識

長期経営目標を達成するにあたり、当社の価値創造プロセス(=ビジネスモデル)との関連性を示しつつ、コアとなる4つの技術、すなわち混練、加熱、制御、搬送で参入障壁の高い独自技術(=競争力の源泉)をより強化させることが重要と考えております。これらは強固な財務基盤や顧客ニーズに応える研究・開発体制、ソリューションパートナーとしての顧客企業からの信頼、調達先とのパートナーシップ、代理店・協力工事店との協働に支えられています。

 

国内のアスファルトプラント(AP)関連事業は、顧客の8割が大手舗装会社で固定化しており、アスファルト合材製造量も4,000万トンをやや下回った水準が続くと考えられます。当面の国内需要は、1980年代に製造されたAPの更新需要に支えられた高原横這いの状況が続くと予想されますが、中長期的には成長余地が大きい海外事業の拡大が不可欠と見ています。国内の当社APシェアは7割程度(国内メーカーは他1社)ですが、リサイクル合材をメインに差別化したVPシリーズの拡販、カーボン・ニュートラルに向けた製品開発への取組、慢性的な人手不足を抱える顧客への遠隔化・自動化による工場運営のサポートサービス、などのビジネスモデル刷新を進めてまいります。海外は主力の中国に加えて、現地法人を設立、工場を新設したタイを起点としたASEANの顧客基盤の拡大を目指します。

 

国内のコンクリートプラント(BP)関連事業は、生コンクリートの工場数が2015年末の3,396箇所から2021年末には3,175箇所へ減少、中期的にも工場数の減少が予想されます。市場は成熟化しており、競合2社と静態シェアが拮抗した状況にあります。当社の強みである自社製操作盤による最適なプラントの保守運用、運営状況の把握による生コン工場のトータル管理やプラントの標準化を推進することが、シェアアップと収益確保に寄与するものと考えています。加えて、プラントの集約化に伴う遠隔地域での需要や災害復興など向けにモバイルBPの拡販をおこない、地場ゼネコンに向けても新しい需要の創出をおこないます。

 

また、世界的に気候変動リスクへの対応が叫ばれる中、日工グループの事業内容は社会や環境課題と深い関係があります。現在稼働する国内アスファルト合材工場全体から排出されるCO2は年間約130万トンであり、日本の年間CO2排出量10億トンの0.13%に相当します。日工グループは2050年にCO2排出量実質ゼロを目指すことを経営方針として明確に打ち出しており、プラント製造時に自社で排出するCO2だけではなく、販売先の日工製プラントが稼働時に排出するCO2を含めてカーボン・ニュートラルを達成できるよう顧客企業様と緊密に連携していきます。

 

最後に株主様からお預かりした資金を最大限活用して、その期待に応えるため、資本コストを全社で共有し、それを上回るリターンを上げることも重視いたします。この結果として、2029年度末には株式の時価総額500億円以上、ROE8%以上をKPIとして目指します。また成長投資と株主還元を同時に強化し、配当性向60%を継続致します。これらが中長期の企業価値向上に欠かせないと考えております。

 

< 日工のビジネスモデル >

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(2)中期経営計画のセグメント別見通し

当連結会計年度を最終年度とする前中期経営計画(2019~2021年度)は、売上高が計画を上回り規模の拡大を図ることが出来ましたが、利益項目は計画未達に終わりました。受注から売上計上までの納期が長いAP事業を中心に、鋼材をはじめとする世界的な原材料、購入品の値上がりが採算に影響しました。また、比較的利益率の高い搬送事業は新型コロナの影響による営業制限が響き、売上高が計画を下回った影響を受けました。

そのような状況で2030年に向けた体制・プロセス・制度を構築する期間として、中期経営計画(2022~2024年度)の活動方針を作成しました。

 

中期経営計画である2022年度から2024年度における各セグメントの財務目標は次のとおりです。

 

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※AP=アスファルトプラント、BP=バッチャープラント(コンクリートプラント)

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①アスファルトプラント関連事業の収益性向上

 国内の既存事業における市場は、原油の高騰による原価上昇により収益悪化が著しく、更なる省エネ化を熱望される状況にあり、脱炭素化への取り組みにおいても2030年CO2排出量半減達成に向けての環境対応装置の開発に大きな期待が寄せられています。引き続き、新製品の市場投入を行い、脱炭素化オリジナルの製品の比重を上げることで収益性を改善してまいります。さらに、新型アスファルトプラントのシリーズ化を進め、ユーザーニーズを組みこんだ新製品比率を上げ、効率の良い設計、製造を行うことにより製品原価を低減し収益を向上させてまいります。

 

②コンクリートプラント関連事業の国内シェア拡大

 生コン出荷量の減少傾向により、生コン工場が減少する中、コンクリートプラントのトップメーカーとして更なるシェアを拡大するため、生コン工場におけるトータル管理、プラント支援センター、モバイルプラントの拡販、プレキャストの高い要求水準を満たす製品開発による差別化を図ってまいります。

 また、『グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト』にも積極的に参画してまいります。

 

③メンテナンス事業のビジネスモデル変革

 アスファルトプラントやコンクリートプラント関連事業の国内売上高のうち、約6割を占めるメンテナンス事業のビジネスモデル変革は収益性を改善する上で必要不可欠と認識しております。

 土木、建設業界の人手不足や熟練工不足の問題は深刻な課題であり、お客様の課題解決のためにもメンテナンス事業のビジネスモデル変革に取り組んでおります。

 具体的には、2021年度よりIoTプラットホームと過去のメンテナンス実績によるシステム管理に加え、定期的なプラント検診(点検)とメンテナンスをセットとした新しいメンテナンスサービスプラン契約を開始しました。

 事後保全から予防保全に大きく変革を進め、メンテナンスの効率向上とお客様の営業機会損失の低減を図り、より高い信頼を獲得し収益向上を進めてまいります。

 

④海外事業領域の開拓

 現在の海外事業は中国での売上高が大半を占めており、米中関係悪化や新型コロナウイルスの影響により不安定な状況が予想されますものの、中国国内のインフラ投資は総じて旺盛と見ております。中国市場に加え、更なる海外市場領域の拡大を図るため、当社の中古機が多く利用されているタイに現地法人Nikko Asia(Thailand)Co.,Ltd.(プラント販売・メンテナンス会社)、Nikko NilKhosol Co.,Ltd. (製造会社)を2020年に設立し、その工場が2022年に完成いたしました。本格的な現地生産がスタートすることで、今後はタイを中心に、ASEAN各国へのアスファルトプラントとパーツ販売、メンテナンスサービスなどさまざまなバリューチェーンへビジネスをひろげてまいります。

 

⑤新規発展領域の拡充

  国内砕石プラントの多くが更新時期を迎えており、定置式に替わり自走式破砕機の需要が増加しています。そうした需要拡大への対応として、取扱い製品の拡充、販売力とサービス体制の強化、管理及びバックアップ体制の構築、東京モバイルセンターの製品在庫の充実やパーツセンター機能の強化を進め、更なる事業規模拡大に取り組んでまいります。

 また、当社グループ全社をあげて取り組んでおります防災関連製品事業として、近年の気候変動による水害防止製品である防水板の需要が依然増加傾向にあり、関東・関西の2拠点で生産体制を強化しております。加えて、仮設用自在階段の避難路への展開、超軽量ショベル・スコップの新発売など、更なる製品拡充を目指してまいります。

 

⑥環境負荷低減への取り組み

 「脱炭素社会」を目指す取り組みとして、これまで燃焼効率を高めることによるアスファルトプラントの省エネ化を行ってまいりました。今後は合材工場運営における材料の搬入から合材の運搬にも脱炭素化の取り組みを拡大してまいります。

 主な取り組みとして道路舗装材であるアスファルト合材の製造におけるCO2の削減(カーボンニュートラル燃料、エレクトロヒート等)、アスファルト合材の搬送方法の革新による輸送効率の向上、アスファルトプラントで排出されたCO2の回収、生コンへのCO2吸着技術(CCU)、など従来の事業範囲にとらわれず多方面のパートナーとの協働も積極的に行い、より早い時期での社会実装を目指してまいります。

 カーボンニュートラルな代替燃料を使用するアスファルトプラントをさらに拡販することにより、地球温暖化の要因となるCO2削減に根本から取り組んでまいります。

 また、コンクリートプラント関連事業においては、CO2を直接生コンへ吸着する技術利用や、環境負荷の高い建設現場から戻ってくる「戻りコン」、製造過程で発生する「残コン」などへCO2を吸着後、処理・活用する製品の普及に努めてまいります。

 そして、リサイクルへの取り組みとして、アスファルトプラント、コンクリートプラントで培った技術を展開し、各種資源のリサイクルを促進する装置も提供しております。

 具体的には、廃石膏ボードを加熱、焼成し、半水石膏や無水石膏などの石膏材料として再生する設備や、スマートフォン等普及により大量発生している使用済み充電式電池から再生金属原料を取り出すリサイクル設備における一次熱処理装置など環境負荷低減には欠かせない資源リサイクルへも積極的に取り組んでまいります。

 

⑦成長投資と株主還元

 前中計期間中は、タイ工場建設、企業買収、生産性改善を目的とした機械設備などの固定資産への投資を積極的に行い、今後の成長に向けての基礎固めを行ってまいりましたが、今後は人的資本の充実に向けて積極的な投資を行っていきたいと考えております。株主還元に関しましては、前中計期間中同様、配当性向60%以上を継続いたします。

 

 

 以上の対処すべき課題を踏まえた上で、目標とする経営指標の推移は以下となります。中期経営計画ではROEをKPIに設定し、2029年度にROE8%以上を目指します。

 

中期経営計画の数値計画

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※計画=中期経営計画

※2019年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行いました。2019年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり配当金を算出しております。

 

(4)新型コロナウイルス感染拡大の影響

 新型コロナウイルス感染拡大による影響も少しずつ回復に向かいつつあり、国内の建設業界全般についてはあまり直接的な影響を受けることなく堅調に推移し、今後についても影響度合いは少ないものと予想しています。海外事業において現地での新型コロナウイルスの感染拡大により、社会活動が制限されるなどした場合に営業活動が困難となる可能性があります。特に当グループが拠点を置く中国、タイ、台湾で感染拡大となった場合には、直接的影響を受け、当社グループの経営成績、財政状況に影響を及ぼす可能性がありますが、現在において顕在化した重要な影響はありません。

 また、社員に感染者や濃厚接触者が出た場合、当社は、受注製品ごとに設計を行い、それからモノづくりを行うという流れであるため、特に技術部門で感染者が出た場合、一定期間、設計作業が止まることになり、顧客への納期対応で大きな支障が出る可能性があります。

 

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