※当社グループは当連結会計年度(2021年1月1日から2021年12月31日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値をIFRSに組み替えて比較分析を行っています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(単位:百万円)
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響長期化による不透明感は残るものの、ワクチン接種の普及等により持ち直しの動きが続きました。日本経済においては、大都市圏を中心に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が実施されるなど一部で経済活動が抑制されましたが、需要は緩やかに増加し、設備投資は持ち直しの動きがみられました。
当社グループの主要市場である石油・ガス市場においては、原油価格が新型コロナウイルス感染症拡大前の水準まで回復し、一部で案件に動きがみられました。半導体市場においては需要が高い水準で推移し、顧客の設備投資は拡大基調が続きました。建築設備市場は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復がみられました。また、日本の国土強靭化関連の公共投資については引き続き堅調に推移しました。
このような環境下、当連結会計年度における受注高は、風水力事業では新型コロナウイルス感染症拡大の影響により世界経済が停滞した昨年と比較して中国を中心に需要回復が進み、前期を上回りました。環境プラント事業では廃棄物処理施設の大型案件を複数受注したことで受注高は前期を大きく上回りました。精密・電子事業では5GやAI、データセンターなど旺盛な半導体需要により半導体メーカの設備投資が拡大したことに加え、世界的な部品の供給不足を背景に顧客の前倒し発注の動きが継続したことなどによって受注高は好調に推移しました。売上収益は、高い受注水準により全ての事業において前期を上回りました。
利益面では、営業利益は風水力事業の継続的な収益性改善や精密・電子事業の増収、円安の影響等により大幅な改善となりました。原材料価格や物流費の上昇、部品不足の長期化が広範囲でサプライチェーンへの影響を及ぼしているものの、販売価格への転嫁や原価低減施策の実施、サプライチェーンマネジメントの強化等により業績影響の最小化に努めました。
これらの結果、当連結会計年度における受注高は7,714億83百万円(前期比50.9%増)、売上収益は6,032億13百万円(前期比15.5%増)、営業利益は613億72百万円(前期比63.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は436億16百万円(前期比80.0%増)となり、いずれの項目においても過去最高額を更新しました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
受注高は前期から536億46百万円増の3,548億10百万円、売上収益は237億61百万円増の3,369億80百万円、営業利益は49億92百万円増の247億93百万円で、受注高、営業利益は過去最高額を更新しました。
ポンプ事業では増収増益で、主に建築設備市場向けの標準ポンプ事業ではグローバルで需要回復がみられました。また2021年4月に買収したトルコのポンプメーカもクロスセルなどの効果で業績貢献しました。石油・ガス市場向けカスタムポンプ事業では、中国での石油化学プラント向けの新設案件ほか中東での大型案件などを受注しました。ポンプ事業の営業利益は、増収に加え、カスタムポンプ事業での継続的な収益改善施策によって対前期比で増益となりました。
コンプレッサ・タービン事業では、受注は1,000億円を超え、製品、サービス&サポートともに前期を上回りました。製品事業では中国ほか中東やインドで客先の投資案件に動きがみられ、サービス&サポートでは新型コロナウイルス感染症対策として実施されていた移動制限の緩和が進みサービス&サポートの需要が増加しました。売上収益は、期初の受注残減少により製品事業で減少しましたが、営業利益は製品の選択受注や原価低減など収益性の改善によって増益となりました。
冷熱事業では中国市場での受注高・売上収益は堅調に推移しましたが、原材料価格高騰や国内市場でのサービス&サポート需要の伸び悩みなどによって増収減益となりました。
受注高は前期から675億83百万円増の1,294億96百万円、売上収益は44億5百万円増の718億24百万円、営業利益は12億37百万円減の56億32百万円となりました。受注高はごみ処理施設の大型案件を複数受注したとことにより前期比で大きく上回りました。売上収益はEPC工事案件の工事進捗により増加しましたが、利益面ではオペレーション&メンテナンス売上比率の減少、及び一部のEPC工事案件の採算性が悪化したことなどにより収益性が低下しました。このほか、ケミカルリサイクル技術の実証化に向けた研究開発などにより関連費用が増加し、固定費増加の一要因となりました。
※EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設
受注高は前期から1,387億44百万円増の2,854億1百万円、売上収益は524億39百万円増の1,927億91百万円、営業利益は164億8百万円増の280億35百万円でいずれも過去最高額を更新しました。半導体市場において、顧客全般での設備投資の状況は引き続き高い水準で推移し、納期の長期化を懸念した顧客からの早期発注の動きが増加しました。その結果、受注高、売上収益は製品、サービス&サポートともに大きく伸長しました。営業利益は、需要の拡大に対応した人件費や外注費ほかドライ真空ポンプの自動化工場関連固定費が増加しましたが、増収に加え、ドライ真空ポンプの自動化工場本格稼働の効果やCMPの改造など好採算案件の売上増加によって大幅な増益となりました。
《セグメント別の事業環境と事業概況》
生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて棚卸資産が197億35百万円、現金及び現金同等物が159億44百万円、のれん及び無形資産が117億54百万円増加したことなどにより、749億64百万円増加し、7,197億36百万円となりました。
セグメントごとでは、風水力事業は3,609億86百万円(336億88百万円増)、環境プラント事業は550億62百万円(10億51百万円増)、精密・電子事業は1,811億40百万円(290億44百万円増)、その他は347億33百万円(13億48百万円増)となりました。
当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて営業債務及びその他の債務が198億56百万円、社債、借入金及びリース負債が136億95百万円、契約負債が97億15百万円増加したことなどにより、501億86百万円増加し、3,980億80百万円となりました。
当連結会計年度末における資本は、自己株式を200億10百万円取得し、配当金を104億55百万円支払った一方、親会社の所有者に帰属する当期利益436億16百万円を計上し、在外営業活動体の換算差額が59億26百万円増加したことなどにより、前年度末に比べて247億78百万円増加し、3,216億55百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分は3,123億10百万円で、親会社所有者帰属持分比率は43.4%となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは堅調な営業利益に支えられ、728億58百万円の収入超過(前期比40億10百万円の収入増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出257億55百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出103億75百万円などにより、313億61百万円の支出超過(前期比21億61百万円の支出増加)となりました。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、414億97百万円の収入超過(前期比18億49百万円の収入増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及び長期借入金が純額で75億81百万円増加した一方、自己株式の取得による支出200億99百万円、配当金の支払い104億55百万円などにより、294億89百万円の支出超過(前期比150億99百万円の支出増加)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から159億44百万円増加し、1,364億88百万円となりました。
当社グループは、企業価値向上のために適宜適切なタイミングで経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としており、強固な財務体質と高い資本効率をともに兼ね備えることが重要だと考えています。
親会社所有者帰属持分は信用格付として維持すべき水準と考える『シングルAフラット(※)』となり、現在の事業推進に必要十分な状態となっています。従って、現在の当社の財務の状態においては、売上債権、棚卸資産を圧縮し、創出された資金を厳選した成長投資に振り向け固定資産を増強する一方、資本効率を高めるために親会社所有者帰属持分を一定水準に抑制していきます。
(※)格付投資情報センター(R&I)による格付
当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金として、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.4~0.6(IFRS)を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。
また、現金・預金等の水準(手元流動性)については、連結売上収益の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、代替流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。
代替流動性
当座貸越契約 50億円
コミットメントライン契約 800億円
いずれの契約においても、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。
詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、以下のとおりです。
なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。
また、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、百万円未満を切捨てて記載しています。
前連結会計年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
当連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
前連結会計年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
(連結の範囲の変更)
EBARA MACHINERY INDIA PRIVATE LIMITED、株式会社むさしのEサービス、株式会社イー・シー・イー他23社を連結の範囲に含めています。また、新たに設立した株式会社さくEサービス他4社 を連結の範囲に含めています。
(会計方針の変更)
(収益認識に関する会計基準等の適用)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2018年3月30日。以下「収益認識会計基準」という。)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2018年3月30日)が2018年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することとしました。
この結果、当連結会計年度の売上高が4,805百万円増加し、売上原価は2,895百万円増加し、販売費及び一般管理費は516百万円減少し、営業利益及び経常利益、並びに税金等調整前当期純利益がそれぞれ2,425百万円増加しています。また、利益剰余金の当期首残高は4,473百万円減少しています。なお、当連結会計年度の1株当たり純資産額は29.31円減少し、1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益が、それぞれ17.62円及び17.55円増加しています。
(表示方法の変更)
前連結会計年度において、「流動負債」の「その他」に含めていました「前受金」は、金額的重要性が増したため、当連結会計年度より独立掲記しています。この表示方法の変更を反映させるため、前連結会計年度の連結財務諸表の組替えを行っています。この結果、前連結会計年度の連結貸借対照表において、「流動負債」の「その他」に表示していた58,547百万円は、「前受金」17,160百万円、「その他」41,386百万円として組み替えています。
当連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
(連結の範囲の変更)
Çiğli Su Teknolojileri A.Ş.を買収したことにより、同社及び同社の子会社であるVansan Makina Sanayi ve Ticaret A.Ş.とVansan Makina Montaj ve Pazarlama A.Ş.を新たに連結の範囲に含めています。また、新たに設立した荏原環境工程(中国)有限公司他3社 を連結の範囲に含めています。
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、次のとおりです。
前連結会計年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 42.初度適用」に記載のとおりです。
当連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
(リース)
日本基準では借手としてのリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていました。IFRSでは借手としてのリースについて当該分類を行わず、短期リース及び原資産が少額であるリースを除くすべてのリースについて「有形固定資産」に含まれている使用権資産並びに流動負債及び非流動負債の「社債、借入金及びリース負債」を認識しています。この結果、IFRSでは日本基準に比べて「有形固定資産」が18,128百万円、「社債、借入金及びリース負債」が17,935百万円増加しています。
(のれんの償却)
日本基準では、のれんは20年以内の合理的な償却期間を設定し定額法により償却していました。IFRSでは、のれんは償却を行わず、毎年同時期及び減損の兆候を識別した時はその都度、減損テストを実施しています。この結果、IFRSでは日本基準に比べて「販売費及び一般管理費」が414百万円減少しています。
(資本性金融商品)
日本基準では、投資有価証券に係る売却損益、投資有価証券評価損を純損益に計上していました。IFRSでは、資本性金融商品をIFRS第9号に基づきその他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品に分類しており、投資を処分した場合、もしくは公正価値が著しく低下した場合にその他の資本の構成要素から利益剰余金に振り替えています。この結果、IFRSでは日本基準に比べて「税引前利益」が1,057百万円増加しています。
(退職給付に係る費用)
日本基準では、確定給付制度による退職給付について、勤務費用、利息費用及び期待運用収益を純損益として認識していました。また、当該制度から生じた数理計算上の差異及び過去勤務費用のうち費用処理されない部分については、その他の包括利益累計額として認識し、その後、将来の一定期間にわたり純損益として認識していました。一方、IFRSでは、確定給付制度による退職後給付について、当期勤務費用及び過去勤務費用は純損益として認識し、純利息費用は確定給付負債(資産)の純額に割引率を乗じた金額を純損益として認識しています。この結果、IFRSでは日本基準に比べて「売上原価」が373百万円、「販売費及び一般管理費」が517百万円増加しています。
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