当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要、これらに関する経営者の視点による認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)における世界の経済は、新型コロナウイルス感染症の動向に影響されながらも全体的には回復傾向で推移してまいりましたが、年度後半に発生したロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって、エネルギーや食糧価格などを中心としたインフレーションの進行や対ロシアへの経済制裁の影響など、経済への減速懸念が強まっております。
当社グループの主力市場である電子産業分野は、半導体の供給不足や地政学上のリスクなどへの対応も踏まえた世界的なサプライチェーン再構築の動きによって、各国で大型の半導体関連の設備投資が相次ぐなど活発な状況が続いております。一方で、原材料の供給不足や感染拡大による経済活動の制限などの影響によって、物流を含めたサプライチェーンに混乱がみられており、一般産業分野なども含めて一部の顧客では設備の建設や納入のスケジュール、生産活動などに影響が生じておりますが、全般的には回復基調で推移いたしました。また電力・上下水分野は国内における設備の更新需要やソリューション案件などを中心に堅調な推移が続いております。
このような状況の下、当社グループは国内・台湾・中国において半導体関連の大型プロジェクトの受注・納入活動に注力するとともに、新たに米国において大型の半導体プロジェクトを受注するなど、事業展開の拡大に積極的に取り組んでまいりました。また増加した受注案件に対応するため、米国における現地法人の設立やベトナムでのグローバルエンジニアリングセンターの立ち上げなど納入体制の強化を進めるとともに、次世代の超純水システムや新たな分離精製技術の強化を目指した開発センターの増設、エンジニアリングを始めとする各種業務のデジタル化・効率化などに取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度は、受注高135,698百万円(前連結会計年度比43.5%増)、売上高112,069百万円(同11.4%増)、営業利益10,850百万円(同13.3%増)、経常利益11,545百万円(同16.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益9,210百万円(同30.2%増)となり、繰越受注残高は86,417百万円(同39.7%増)となりました。受注高・売上高及び各利益とも期初の計画及び業績予想を上回り、いずれも過去最高となる水準を達成いたしました。経常利益につきましては、年度末に向けて急速に進行した円安の影響で為替差益を計上したこと、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、不動産の売却による特別利益を計上したことが影響しております。また翌年度以降の売上のベースとなる繰越受注残高についても、国内外で相次ぐ大型プロジェクトの受注によって高い水準の残高を確保しております。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
■受注高
受注高は前連結会計年度比52.3%増となる116,116百万円となりました。主力市場である電子産業分野において、国内や台湾の主要顧客から大型半導体工場の水処理設備を受注したことに加え、中国でも車載用の半導体やパワー半導体、メモリーなどの活発な設備投資を背景に、新たな顧客からの受注獲得により展開地域を拡大し、米国においても大型の半導体プロジェクトの受注に成功するなど、世界的に活発な状況が続いております。また、一般産業分野、電力・上下水分野においても設備の改造・更新案件や各種のメンテナンスサービスなど国内市場を中心に堅調な推移が続いております。
■売上高
売上高は前連結会計年度比12.5%増となる92,723百万円となりました。原材料の供給不足や物流の遅延などサプライチェーンの混乱によって、一部の案件で工程の見直しが生じているものの、全般的には順調に工事が進捗しており、電子産業分野を中心に売上高が増加いたしました。一般産業分野においては、コロナ禍の影響による大型投資の減少や電子産業分野へのリソース集中などによって大型プラントの売上が減少したものの、ソリューション事業は国内を中心に堅調に推移しております。また電力・上下水分野は前年度以前に受注した上下水関連の大型案件の売上が計上されたことなどから前年度を上回る結果となりました。
■営業利益
営業利益は前連結会計年度比7.3%増となる9,087百万円となりました。半導体関連の大型プロジェクトなど売上高に占めるプラント案件の比率が上がったことや、人件費などを中心に販管費が増加したことなどによって営業利益率は若干低下しておりますが、電子産業分野及び電力・上下水分野の売上高の増加や、一般産業分野の採算性改善などの効果によって増益を確保し、前年度を上回る結果となりました。
■受注高・売上高
受注高は前連結会計年度比6.8%増となる19,581百万円、売上高は同6.2%増となる19,346百万円となりました。水処理薬品事業において、電子産業分野向けの売上が好調に推移したことに加え、標準型水処理機器・フィルタ事業において医療機関・研究機関向けの小型純水装置の販売が前年の落ち込みから回復し、新たに上市した小型超純水装置「ピューリックμ(ミュー)」の販売が順調にスタートするなど売上が増加いたしました。また、食品事業においては外食市場などに向けた製品の販売が回復したものの、家庭用食品市場に向けた製品が減少するなど、ほぼ前年度並の結果となりました。
■営業利益
営業利益は前連結会計年度比58.4%増となる1,763百万円となりました。水処理薬品事業及び標準型水処理機器・フィルタ事業の売上高が拡大したことに加え、比較的利益率の高い製品群の売上が拡大したことや原価改善の取組みなどによって利益率が改善し、前年度を上回る結果になりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記の金額は販売価格をもって表示しております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
3 当連結会計年度のソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ15,495百万円増加し、130,506百万円となりました。
流動資産は、主に現金及び預金の増加のほか、第4四半期連結会計期間の売上高の増加に伴う契約資産の増加、水処理加工受託用設備の建設に伴う仕掛品の増加や、その一部が完成したことによるリース投資資産の増加などによって前連結会計年度末に比べ13,159百万円増加し、102,862百万円となりました。
固定資産は、開発センター新実験棟の建設などの影響で建物や建設仮勘定が増加し、前連結会計年度末から2,335百万円増加し、27,644百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ6,847百万円増加し、54,501百万円となりました。
流動負債は、営業キャッシュ・フローがプラスに転じたことに加え、長期借入金への転換によって短期借入金が減少した一方で、工事案件や水処理加工受託用設備に係る資材等の仕入れの拡大によって仕入債務が増加したことで、前連結会計年度末に比べ2,322百万円増加し、43,072百万円となりました。
固定負債は、主に水処理加工受託用設備の建設に係る資金を長期借入金として6,000百万円調達したことで前連結会計年度末から4,524百万円増加し、11,429百万円となりました。なお、当連結会計年度末における借入金合計は前連結会計年度末に比べ377百万円減少し、15,628百万円となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ8,647百万円増加し、76,004百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金7,716百万円の増加によるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
水処理エンジニアリング事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ15,182百万円増加し、107,150百万円となりました。これは主に、現金及び預金、契約資産、リース投資資産及び建物や建設仮勘定などの有形固定資産の増加によるものであります。
機能商品事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ348百万円増加し、17,763百万円となりました。これは主に現金及び預金、建設仮勘定などの増加によるものであります。
当社グループにおける資金の配分方針については、次のとおりであります。
成長投資については、新たな中期経営計画において策定した重点分野に対して経営資源を重点的に配分していく方針であります。いずれの重点分野も戦略の実現には研究開発の強化が必須であるため、連結売上高の2.5%を目途に技術研究費を増加させ、重点分野に集中的に資金を配分する方針であります。設備投資についても同様に重点分野へ集中的に資金の配分を行ってまいります。
株主還元についても、重要な経営課題の一つとして考えており、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針とした上で、収益の状況を勘案した利益配分に努めることとしております。
また、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期の運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資や長期の運転資金は金融機関からの長期借入を基本としております。
これらの資金の配分方針や資金の源泉についての考え方については、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化している状況においても基本的な方針に変更はありません。当連結会計年度においても、電子産業分野の拡大や新規の水処理加工受託向け設備の製作によって資金需要が増加しておりますが、今後もこの傾向は継続すると見込んでおります。なお、当連結会計年度末現在においては、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当社グループの資金繰りの状況に重大な影響は顕在化しておりませんが、今後「2 事業等のリスク」に記載したようなリスクが顕在化した場合は、当社グループの資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7,394百万円増加し、当連結会計年度末には20,198百万円となりました。活動ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
当社グループは、水処理エンジニアリング事業が売上高の82.7%を占めており、同事業のキャッシュ・フローの状況によってグループ全体のキャッシュ・フローが大きく変動します。中でもプラント事業においては長期にわたる大型プラント建設工事を行っており、それらの工事代金の回収時期、原材料・外注費等の支払時期などによって営業活動によるキャッシュ・フローが大きく増減することがあります。また、設備を自らが設置・所有し、顧客にサービスを提供する水処理加工受託業務においては、設備の製作から資金の回収までが長期にわたるため設備の製作時においては支出が先行する傾向にあります。
当連結会計年度における営業活動によって得られた資金は、10,787百万円となりました(前連結会計年度は4,582百万円の支出)。国内外における大型プラント工事案件や水処理加工受託用設備の製作によって支出が先行している状況ではあるものの、税金等調整前当期純利益を12,696百万円計上したことに加え、国内の大型案件で大口の売掛金を回収したことでプラスの営業キャッシュ・フローとなりました。
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ259百万円増加し、1,520百万円となりました。当社不動産の売却に伴う収入があったものの、主に開発センター新実験棟の建設を中心に設備投資を増加させたため支出が増加しております。設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」をご参照ください。
当連結会計年度における財務活動によって支出された資金は、2,586百万円となりました(前連結会計年度は4,927百万円の収入)。水処理加工受託用設備の建設資金を賄うために当社が長期借入金6,000百万円を調達しておりますが、営業キャッシュ・フローがプラスに転じたことによって短期借入金の返済が進んだことに加え、継続的な増配の実施により配当金の支払額が増加いたしました。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。
なお、以下の見積りを行うにあたり、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 追加情報 (新型コロナウイルス感染症の影響について)」に記載のとおり、翌年度の連結財務諸表への影響は限定的なものに留まると仮定した上で、以下の見積りを行っております。
(特に重要な会計上の見積り)
水処理エンジニアリングリング事業における大型案件は当社グループの売上高に占める割合が大きく、その収益認識の基礎となる工事原価総額の見積りが業績に与える影響は非常に大きいと認識しており、特に大型の案件では作業内容の特定やその原価の見積りに高い不確実性が伴います。また、工事着手後に生じる資材価格の変動や作業内容の変更などを適時・適切に工事原価へ反映する必要があることに加えて、工事原価総額の見積りは工事損失引当金の金額にも影響することなどから当社は、工事契約に係る会計処理を特に重要な会計上の見積りに該当すると考えております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
(その他の重要な会計上の見積り)
棚卸資産の評価は、原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)によっております。営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難であるため、過去の実績から見積った年数及び割合を基に規則的に簿価を切り下げております。実際の正味売却価額が切下げ後の簿価と比べて大きく異なる場合は、棚卸資産の期末残高が過小もしくは過大になるほか、売上原価に影響を及ぼします。
完了した請負工事に係る瑕疵担保等に備えるため、将来の保証見込額を製品保証引当金として計上しております。見積りには、個別に見積可能なものについては、その見積額を計上しておりますが、多くの請負工事は個別の見積りが困難であるため、主に過去2年間の実績を基礎に見積りを行っております。しかし、想定を上回る重大な瑕疵や事故等の品質問題が発生した場合は、将来の業績が変動します。
当社グループは、固定資産の減損の兆候判定、認識及び測定にあたり、将来の事業計画を基礎とした各資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りを行っております。その将来キャッシュ・フローの見積りを修正した場合には、評価の結果が変わり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額等を考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合や予期しない変化などが生じた場合は、回収可能性の評価の見直しを行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
当社グループの退職給付債務及び費用は、死亡率、退職率、昇給率や給与の変更及び割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されています。
割引率は、日本の国債の利回りを基に、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用して算出しております。また、長期期待運用収益率については、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより設定しております。
これらの前提条件の見積りは合理的であると判断しておりますが、割引率の低下が数理計算上の退職給付債務の増加をもたらす可能性があるなど、主要な前提条件が実際の結果と異なった場合、退職給付債務及び費用が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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