(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を経過的な取扱いに従って当連結会計年度の期首から適用しております。収益認識会計基準等の適用が財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)及び(セグメント情報等) セグメント情報 2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、その他の項目の金額の算定方法」をご参照ください。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期におきましては、新型コロナウイルスの感染拡大と減少が繰り返される中、ワクチン接種の広がりとともに、一定程度の感染リスクを許容しつつ、経済活動を正常化させる動きが各国で強まり、国内外で経済は回復傾向が続きました。一方で、世界的な物流遅延や部品不足は依然として解消されず、さらにはロシア・ウクライナ情勢の影響でエネルギー・資源価格が一層高騰するなど、多くの懸念材料が残っております。国内においても、食品や公共料金の値上げなどの相次ぐ物価上昇が家計を直撃しており、個人消費の停滞など、景気の下振れリスクの高まりが懸念されております。
このような環境下、当社グループは当期創業100周年を迎え、好調だった前期の業績水準の保持を見据えながら、中期経営計画(JANOME 2021 Navigation for the Future)の最終年度として、巣ごもり消費を契機に裾野を広げた家庭用ミシンの更なる販売拡大と、産業機器事業の収益安定化に向けて継続的に取り組んでまいりました。こうした中、為替レートが円安に推移したことが業績にプラスに作用した一方で、部品価格の高騰や部品調達難などにより生産・供給面でマイナスの影響を受けました。
この結果、当社グループの当期の売上高は42,916百万円(前期比923百万円減)、営業利益は3,659百万円(前期比1,271百万円減)、経常利益は3,824百万円(前期比1,207百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,549百万円(前期比1,396百万円減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・家庭用機器事業
家庭用機器事業におきましては、依然としてコロナ禍における物流網の混乱から供給面の制約は受けたものの、海外においては、前期の巣ごもり需要をきっかけにミシンの創造性という価値が再評価されており、北米では中・高価格帯機種を中心に年間を通して販売を伸ばしました。また、欧州や大洋州、アジアなど幅広い地域でも堅調に推移いたしました。ロシア・ウクライナ情勢に関しましては、有力市場ではありますが、その発生の時期もあり、当期におけるミシン事業への影響は限定的なものとなりました。
国内ミシン市場においては、ソーイング文化の普及と発展を目指し、各種展示会への出展・協賛をはじめ、SNSでの継続した情報発信など、積極的な需要喚起を行ってまいりました。こうした活動により、当社企画のワークショップではこれまで関心の低い傾向にあった若年層の参加も多く見られ、客層の広がりに繋がっております。しかしながら、実績としては前年からの反動を受けた形となりました。
その結果、海外・国内ミシンの販売台数は160万台(前期比24万台減)、家庭用機器事業全体の売上高は34,265百万円(前期比2,017百万円減)、営業利益は3,413百万円(前期比1,571百万円減)となりました。
・産業機器事業
産業機器事業におきましては、顧客ニーズに対応した新製品を投入しラインナップの拡充を図るとともに、オンラインを含め国内外で展示会に出展するなど、産業用ロボット業界におけるジャノメブランドの確立に向け取り組んでまいりました。こうした中、経済活動の本格化を背景に企業の設備投資環境の改善も追い風となり、卓上ロボットは前期に比べ90台増加し、2,111台となり、サーボプレスは前期に比べ112台増加し、1,017台となるなど、販売は回復傾向が続きました。他方で、半導体をはじめとした部品不足により生産面での影響は依然として残り、営業損失からの脱却には至りませんでした。
また、ダイカスト鋳造関連事業におきましては、自動車業界を中心とした産業用ロボット市場の回復に伴い、引き続き受注が好調に推移し、グループ全体の利益に寄与いたしました。
この結果、産業機器事業全体の売上高は5,761百万円(前期比966百万円増)、営業損失は119百万円(前期は311百万円の営業損失)となりました。
・IT関連事業
ITソフトウェア開発や情報処理サービス、システム運用管理の受託等を行うIT関連事業においては、引き続き在宅勤務などの感染対策を講じながらも、リモート環境での迅速な意思疎通や品質管理の徹底により生産性の維持向上に努めたことで、主力のソフト開発事業を中心に好調に推移いたしました。また、企業におけるデジタル経営志向の強まりから、IT投資が活発化するなど、市場環境の回復も追い風となりました。
この結果、売上高は2,252百万円(前期比151百万円増)、営業利益は331百万円(前期比98百万円増)と増収増益となり、過去最高の営業利益を計上いたしました。
2020年3月期から2022年3月期を対象とした中期経営計画「JANOME 2021 Navigation for the Future」における中期目標(KPI)とその実績は以下のとおりです。
中期経営計画初年度である2020年3月期は、ミシン市場の停滞や米中貿易摩擦による設備投資環境の悪化から、家庭用機器事業と産業機器事業ともに苦戦を強いられました。翌年度の2021年3月期は、新型コロナウイルスのパンデミックにより、事業活動が大きく制限されるなど、これまでに経験のない状況となりましたが、巣ごもり生活を契機としたミシン需要の急拡大とともに、当社業績も大きく向上し、KPIも軒並み目標値を達成するに至りました。
そして最終年度にあたる2022年3月期は、コロナ禍での活動制限に緩和の動きも見られる中、前期に販売を伸ばしたミシンについては、人々の生活を豊かにするアイテムとして浸透し、引き続き堅調な推移を見せました。産業機器事業においては営業損失が続いたものの、自動車関連を中心に引き合いが増加し、損失幅は縮小いたしました。他方で、両事業において物流網の混乱や部品不足、価格高騰などの影響により生産・供給面で制約を受けるなど、業績の下振れ要因となりました。
こうしたマイナスな影響も大きく受けたものの、好調だった前期の流れを維持すべく、中期経営計画に基づく施策の実行とコロナ禍での活動に臨機応変に対応したことで、一定の業績水準を確保することができ、最終年度においても各種数値目標を達成することができました。
新中期経営計画「Reborn 2024」においては、営業利益率10.4%、ROE10%以上を目標としております。不透明な経営環境にあっても、持続的に成長できる会社を目指し、基本方針に沿って取り組みを進めてまいります。
③ 財政状態
当社グループにおける財政状態の概況は次の通りであります。
当社グループの当連結会計年度末の総資産は、54,572百万円(前期比897百万円増)となりました。
資産の部では、流動資産が棚卸資産の増加、現金及び預金の減少等により、27,771百万円(前期比755百万円増)となりました。固定資産は繰延税金資産の増加、有形及び無形固定資産の減価償却、土地の減少等により26,800百万円(前期比142百万円増)となりました。
負債の部では、短期借入金の減少等により、21,144百万円(前期比2,213百万円減)となりました。
純資産の部(非支配株主持分を含む)は、利益剰余金の増加等により、33,428百万円(前期比3,111百万円増)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末から2,947百万円減少し、7,037百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上、減価償却費の計上、棚卸資産の増加、仕入債務の減少等により219百万円の資金の増加となりました。(前期は6,475百万円の資金の増加)
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入894百万円、製造子会社の機械設備や新機種に係る金型等の有形固定資産の取得による支出775百万円等により、150百万円の資金の増加となりました。(前期は648百万円の資金の減少)
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減額の減少、配当金の支払等により3,368百万円の資金の減少となりました。(前期は3,161百万円の資金の減少)
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は製造価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
当社グループの生産は、主として見込み生産によっているため、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産および負債または損益の状況に影響を与えるような会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積もり特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
⑦ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは、安定した財務基盤を確保した上で、有利子負債を効果的に活用し、資本構成のバランスを図ることで、財務の健全性と資本効率の向上の両立を図ることを財務戦略としています。自己資本比率50%を目標とし、資本の健全性を維持するとともに、銀行借入を有効に利用することで資本コストの低減を進め、ROEの向上を目指します。
主な資金需要には、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用と売掛債権の回収までを繋ぐ運転資金や、生産能力・機能の維持・拡大を目的とする設備投資があります。また、新製品や新技術開発のための研究開発費も挙げられます。事業活動により得られた資金は、これらの運転資金の圧縮や生産性向上をもたらす設備投資、更には主力事業である家庭用機器事業と産業機器事業を市場競争力強化に導く研究開発に再投入いたします。
適正な手元現預金の水準につきましては、概ね月商の1.5ヶ月相当としております。これは、可能な限り資金活用の効率化を図ったものですが、当社は主力金融機関によるシンジケーション方式のコミットメントライン(総額120億円)を設定しており、緊急の資金需要が発生した場合も機動的な資金調達が可能なことから、流動性の確保については対処されております。現在、新規の資金調達は、短期資金の銀行融資のみとしておりますが、今後、これとは別に、大型の事業案件などのまとまった資金需要が発生した場合には、株式発行による調達や社債発行などの直接金融による市場からの長期資金調達も含め、資本構成や資本コストへの影響を踏まえて検討してまいります。
株主還元につきましては、2017年3月期決算期の再開以降実施しております配当を、安定的に継続していく方針です。中長期的な目標としては、自社株買いなども含め、総合的に検討しつつ、総還元性向30%を目安としております。なお、本質的な株主還元は、総資本を効率的かつ有効に活用することで事業の成長を図り、企業価値の向上、時価総額の増大を目指すことであると考えております。
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