事業等のリスク

 

2 【事業等のリスク】

[リスク管理体制]

リスクを把握し事前に対応すること、またリスクが顕在化した場合、その影響を最小限にとどめ業務の早期復旧を図ることを目的として、リスク管理委員会を設置しています。同委員会は、取締役を委員長に部長職以上で構成され、グループリスク管理体制の整備や教育、情報の収集などを行うとともに、当社及びグループ各社のリスク評価を行い情報を共有し、その管理・低減に努めております。また、コンプライアンス委員会をはじめとする各種委員会を設置し、グループ全体のリスクを総合的にマネジメントする体制を構築しております。

 

〈リスク管理体制図〉


 

[個別のリスク]

当社グループの経営成績、株価及び財務状況に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとして以下のとおり認識し、その発生の回避を図るとともに、発生した場合の影響を最小限にとどめるよう対処してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(各事業におけるリスク)

①家庭用機器事業について

家庭用ミシンは、ネット通販の浸透から価格競争が進み、国内外で低価格化の傾向が見られます。また、コロナ禍における巣ごもり生活が、新たにミシンを始めるきっかけにもなっており、お手頃価格な初心者向けミシンの伸長も見られます。一方で、北米や欧州、大洋州においては、趣味を楽しむための道具として機能面で充実した高価格帯ミシンの需要も伸びております。

当社グループとしては、主力である中・高価格帯ミシンの販促に取り組み、当社ミシンの性能や品質の高さをアピールするとともに、お客様にソーイングの楽しみなどの付加価値を提供することで、潜在需要の掘り起こしと市場全体の活性化に繋がるものと考えており、安易な価格競争は当社の事業戦略とは相反するものであります。

しかしながら、想定以上に市場に低価格ミシンが浸透した場合、戦略に沿った展開が進まず、販売計画から大きく乖離する可能性があります。

海外においては、それぞれの国や地域により事業環境は異なり、ソーイングの文化が根付く北米や欧州では中・高価格帯を中心に需要が見込まれる一方で、ネット通販の台頭などにより普及モデルの増加も同時に進行しております。新興国市場では生活必需品として普及モデルの価格帯で成長が見込まれます。こうした市場環境や消費者のライフスタイルの変化への対応が遅れ、顧客ニーズに対応した商品やサービスの提供ができずに売上や利益が減少する可能性があります。

国内においては、コロナ禍の巣ごもり需要を契機にミシンのある生活が一定程度浸透しておりますが、海外と比べるとその勢いは落ち着きも見せています。当社ではミシン文化の浸透・定着のため、展示会やミシン教室、SNSでの情報発信等を通じ当社製品を積極的にアピールしておりますが、再び市場が停滞傾向に転じ、売上や利益に影響が出る可能性があります。

コロナ禍における物流遅延や部品不足の影響は、ロシア・ウクライナ情勢により一層悪化しております。こうしたサプライチェーンの混乱が想定以上に長期化した場合、生産や供給が滞り、売上や利益が減少する可能性があります。

 

②産業機器事業について

当社の産業機器事業は、ミシンで培った技術を応用した高性能な製品を開発・販売し、工場の自動化が進むとともに、当社事業の第2の柱として着実に成長を続けてまいりました。

しかしながら、米中貿易摩擦に端を発した設備投資抑制の動きが卓上ロボット・サーボプレスの販売苦戦に繋がっております。足元では改善も見られるものの、コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢により、部品調達難や原材料の価格高騰が続いており、先行きは不透明です。このような状況が継続した場合、生産や供給に支障をきたし、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

他方で、製造業の高度化を目指す中国製造2025(中国)やIndustry4.0(ドイツ)、デジタル革新やイノベーションを最大限活用して新たな社会を実現するsociety5.0(日本)などにおいて、情報通信ネットワークの技術革新による工場のオートメーション化、コンピュータ化が急速に進んでおり、世界的な潮流になっております。また、「脱炭素社会」を目指す動きが世界で加速する中、自動車関連では100年に1度と呼ばれる大変革期を迎えております。足元ではコロナ禍やロシア・ウクライナ情勢の影響はあるものの、長期的な視点に立てば、産業構造の変化に伴い産業機器市場は今後増々拡大していくものと見込まれます。このような産業構造の変化への対応が遅れた場合にはお客様のニーズに対応した製品・サービスを提供できず、販売機会を逸するなど、売上や利益に影響を与える可能性があります。

当社はこれまで世界の工場が集まる中国市場を主力市場と位置付け、主に自動車関連企業を中心に販売を伸ばしてきました。こうした重要市場への販売活動に一層注力しながらも、メキシコや東南アジアなど、有望市場の開拓を進めるとともに、新エネルギー、環境・エコ、医療関係など幅広い業種へ裾野を広げ、リスク分散を図ってまいります。

 

(各事業共通のリスク)

①為替変動がもたらす影響について

当社グループでは、家庭用機器事業及び産業機器事業における海外市場での積極的な営業展開により、連結売上高に占める海外売上高比率が70%前後で推移しております。そのため為替先物予約ならびに当社・子会社間のネッティング決済によって為替リスクを軽減しておりますが、海外売上高の大部分を占める取引を外貨建てで行っておりますので、為替変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②仕入れコストの上昇について

当社グループでは、日本、台湾、タイに生産拠点を構え、世界市場の需要動向に応じた効率的な生産を行っており、グローバルな視点からの部品の調達により、仕入れコストの安定ならびに低減を図っております。また、当社生産管理本部が国内、海外の生産拠点を統括管理し、グループ全体で、仕入れコストへの影響を最小限に抑える努力を続けておりますが、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック(樹脂)など原材料費の上昇により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③カントリーリスクについて

当社グループでは、生産及び販売活動を行っている各国におきまして、政治体制の変化、法規制の変更、政治・経済の変動、地震・台風等の自然災害、戦争・テロ等が発生し、事業活動の継続が困難になるなどの場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④品質管理について

当社グループの製品に関しては長年に亘る製造ノウハウを有しております。また、PL(製造物責任)委員会を設置し、製品に関する安全性等について毎月審議するとともに、当社品質保証部を中心に当社グループ全体の品質保証活動の推進をしており、当社及び国内外の関係会社において生産するミシン、産業機器などに対する品質監査と品質状況の把握に努めております。万一、重大な品質問題が発生した場合、リコール費用の発生やブランドイメージの低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤法規制等について

当社グループは業務の適正化、財務情報の信頼性を確保するとともに、関連法規・定款等を遵守する経営を行うべく、内部統制の充実に向けた管理体制を確立しております。しかしながら、関連法規や規制を遵守できない事象が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥市場環境について

営業活動を展開するうえで競合他社との競争は避けられませんが、そのような状況に応えるべく開発・製造・販売が一体となって商品・サービスの品質向上に努めております。しかしながら、競争が激化するなど、市場環境が大きく変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦個人情報の管理について

当社グループでは、「個人情報保護方針」及び「個人情報管理規定」等を策定し、個人情報管理委員会を設置するなど、個人情報保護法に基づく社内管理体制を確立しておりますが、万一、顧客情報をはじめ大量の個人情報が漏洩した場合は、当社グループの信用のみならず業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧金利変動について

当社グループの有利子負債には、金利変動の影響を受けるものがあり、金利上昇による金利負担の増加が当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨固定資産の減損について

当社グループが所有する有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産等について減損処理が必要となった場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩繰延税金資産について

当社グループは、繰延税金資産について適正な金額を計上しておりますが、将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合、あるいは制度面の変更等があった場合には繰延税金資産が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪退職給付債務について

当社グループは、退職給付債務について数理計算上で設定される割引率等の前提条件に基づき適正な金額を算定しておりますが、この前提条件が大きく変化した場合における退職給付債務の増加が、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫借入金にかかる財務制限条項について

当社借入金の一部について、財務制限条項を付されているものがあり、抵触しますと金融機関から当該借入金の期限の利益喪失請求が行われる可能性があります。

 

⑬事業再編等について

当社グループは、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行うことがありますが、かかる事業再編が当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭自然災害について

当社グループの工場などにおいて、万一大きな自然災害などが発生した場合には、工場設備の被災や原材料調達などサプライチェーンの障害に伴う生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(その他のリスク)

 新型コロナウイルス感染症について

新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループに影響を及ぼす可能性があるリスクには、以下のようなものがあります。但し、これら全てのリスクを網羅したものではなく、記載した事項の他にも予見しがたいリスクが存在します。

なお、当社グループは、国内における感染拡大初期の段階で、事業継続計画(BCP)に準拠し、速やかに新型コロナウイルス感染対策本部を設置いたしました。対策本部では、各部門、各子会社の状況を把握するとともに、各国政府や地方自治体の要請に基づき、対応等について迅速な意思決定を行っております。具体的には、在宅勤務や時差出勤等の継続、感染状況に応じた大規模会議の縮小や出張・訪問の自粛等の対策を講じております。また、あらゆる販売チャネルを通じた商品の提供やサプライチェーンの分散化により、事業への影響を最小限に抑えるよう努めております。

 

・営業活動に関するリスク

当社事業に関するリスクについては(各事業におけるリスク)をご参照ください。

 

・部品調達や生産、出荷へのリスク

製品生産に係る原材料や部品の調達等につきましては、原則として複数の取引先を確保しておりますが、一部の原材料等につきましては、特定の地域や取引先に依存しているものもあります。これらにつきましては、補完体制を講じておりますが、物流の停滞・混乱によって、必要な部品の調達に影響を受けるリスクがあります。また、生産、出荷の工程でも人員配備において感染防止の体制を採っていることから、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化、深刻化した場合、製品及びサービスの提供に支障をきたすリスクがあります。

 

・研究開発に関するリスク

研究開発部門におきましても、感染防止の観点から在宅勤務を取り入れるとともに、ネットワーク環境等の充実を図ることで、可能な限り社内と同程度の開発環境を構築できるよう努めておりますが、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化、深刻化した場合、開発スケジュールへの影響が懸念され、新たな製品の発売やサービスの提供に支障をきたすリスクがあります。

 

・従業員の感染発症による事業継続のリスク

当社グループでは、感染防止の観点から、在宅勤務や時差出勤を継続するとともに、感染状況に応じて出張・訪問の自粛等の対策を講じております。取引先の皆さまとはリモートでの関わりが定着しつつある一方で、円滑な取引やサービスの提供において対面の重要性も見直されており、直接的な接触が憚られることで、取引関係への影響が懸念されます。加えて従業員が感染し、社内で感染が広まるなどした場合は、操業の一時的停止を含め、事業活動継続への影響が生じるリスクがあります。

 

・財務活動に関するリスク

感染症拡大の影響により、取引先の財務状況が悪化するなどし、売上の消失や債権回収が滞ることによって、当社グループの財務状況に影響が及ぶリスクがあります。これについては、当社グループでは現状、現預金等手元資金は十分確保できており、また資金調達についてもシンジケーション方式のコミットメントラインを設定していることから、流動性のリスクは限定的と考えております。

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