文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、常に高品質で価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献するべく、法令等遵守のもと、各ステークホルダーの皆様と健全で良好な関係を維持しつつ、適正で効率的な経営に努めております。
また、当社グループは外部環境の変化に対応した強固な収益体質の構築を目指し、効率的な経営、生産効率の向上、研究・開発体制及び販売・サービス体制の強化等を行ってまいります。
当社グループは、「企業価値の向上」を経営方針の一つに揚げており、株主・従業員を含む全てのステークホルダーとのより一層良好な関係を構築し、企業価値を高める為、収益構造の改善と企業体質の強化に努めてまいります。
なお、2022年5月13日に公表した2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画「Reborn 2024」において営業利益率10.4%、自己資本純利益率(ROE)10%以上を中期目標としております。
(3)経営環境
①全般
世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大により依然として深刻な影響を受けておりますが、ワクチン接種の浸透や、感染の中心が重症化リスクの低い変異株であることから、一定の感染者を許容しつつ、経済活動の正常化に向けた規制緩和の動きが強まっています。他方で、ロシア・ウクライナ情勢は、世界経済の先行きを一層不透明なものにしており、新たな懸念材料であります。
国別に見ますと、米国では公共交通機関におけるマスク着用義務を解除するなど、規制緩和に向けた動きを加速させています。こうした中、堅調な個人消費に支えられ、経済は回復傾向にありますが、ロシア・ウクライナ情勢に起因する資源価格等の高騰により高い水準のインフレが続き、これに伴う金融引き締めの動きから、景気減速への懸念も出ております。欧州においては、ほぼ全ての規制解除を掲げた英国を中心に、ウィズコロナに向けた動きが加速している一方で、原油・天然ガスなどのロシアへの依存度が高いことから、エネルギーを中心に物価高が加速しております。日本国内においては、3年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークを迎えるなど、経済活動の正常化に向けて動き出しました。しかしながら、コロナ禍での物流遅延や部品不足の常態化、更にはロシア・ウクライナ情勢により資源高が続くなど、家計にも影響を及ぼしております。新興国に目を向けますと、ブラジルでは感染動向の改善とともに景気も底打ち感がみられます。ロシアでは各国からの経済制裁を受け製造業を中心に大きな打撃を受けております。また世界の企業が同国での事業撤退を進めるなど、孤立状態が続き、経済環境は厳しい状況です。中国ではゼロコロナ政策による影響で、消費や企業活動が停滞し、景気は急減速しています。
今後の先行きについては、新型コロナウイルスに関しては、ワクチン接種の浸透と各国で行動制限が緩和されていくことで、日常生活を取り戻す動きが加速するものと考えられます。これに伴い、コロナ禍で浸透してきた人々の新しい生活様式と消費行動の変化も徐々に元に戻るものと思われますが、感染症収束後もコロナ禍を経験した社会の行動変容として一定割合で定着していくものと考えております。一方で、コロナ禍による物流遅延や部品不足、更にはロシア・ウクライナ情勢に起因するエネルギー・資源価格の高騰は、消費行動や企業活動への影響が大きく、一部では長期化の様相も見せており、依然として予断を許さない状況です。
②家庭用機器事業
近年の家庭用ミシンの市場環境は、ミシンユーザーの減少やネット通販の伸長による低価格化の進行など、厳しい状態にありましたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、マスク不足を背景に手作りマスクへの関心が高まったことなどを契機にミシンの需要が急増いたしました。その後、マスク不足の解消とともに、需要は落ち着くことも予想されましたが、コロナ禍の長期化もあり、家での過ごし方としてミシンを楽しむ方が増加し、需要は一定の水準を維持しております。これは、コロナ禍で様々な制約を受ける中、人々の生活を豊かにするものとしてのミシンの価値を再評価いただけているものと考えております。
他方で、感染拡大下においては、展示会や各種イベントを中止せざるを得ない状況となるなど、お客様との交流機会が激減いたしました。今後、ウィズコロナ、ポストコロナを見据え、ウェブサイトやSNSを通じた情報発信等、お客様とのコミュニケーションの多様化に一層取り組んでいくことで、国内外におけるソーイング文化の深化・浸透、潜在需要のさらなる掘り起こしに繋がるものと考えております。
国内においては、ミシン専門店以外のネット通販、量販店など豊富な販売チャネルを活用した積極的な販売活動を行うとともに、直営販売における充実したアフターサービスなど当社の強みを最大限に活かすことで、国内シェアNo.1の堅持に寄与するものと考えております。さらに東南アジアや中南米などの新興国へは普及モデルのミシンの販売余地は大いに残されているものと考えております。重要市場である北米・欧州では、高機能・高性能な高付加価値製品の販売が堅調な一方で、コロナ禍でエントリーモデルの販売も伸長しております。これは、他地域に比べミシン文化が浸透している同市場においてもなお、さらなる市場拡大が見込めることの現れと見ており、新たなミシンユーザーの獲得に向けて取り組みの余地は大いに残されているものと考えております。
また、ミシンは家庭にある唯一の生産財とも呼ばれ、手づくりによるリメイクやリユースなどエシカル消費にも繋がり、製品そのものがサステナブルでエコに貢献できるものと認識しております。こうした環境への貢献度が消費行動に直結する時代において、ミシンの持つサステナビリティを訴求していくことで、特にこれまでミシンに馴染みのなかった若い世代を中心に裾野の拡大が期待できます。
③産業機器事業
日本産業機械工業会の発表によれば、2021年度の産業機械受注額は、前年度比98.4%の4兆9,494億円と前年度を下回ったものの、コロナ禍でサプライチェーンに混乱が見られた中、堅調に推移いたしました。
当社産業機器事業におきましては、コロナ禍において設備投資を手控える傾向が続いたことにより苦戦を強いられておりましたが、景気回復とともに設備投資環境も好転し、引き合いは増加しつつあります。他方で、半導体をはじめとした世界的な部品不足により生産面で制約を受けており、情勢の回復には時間がかかるものと見込まれます。
足元では不透明感も残るものの、中長期的に見れば市場は拡大していくと考えております。特に国内を含めた先進国を中心に「脱炭素社会」を目指す動きが加速している中、主力市場である自動車業界は、電気自動車や自動運転の開発が進むなど大きな変革期を迎えており、今後、様々なビジネスチャンスの機会が増えてくるものと思われます。また、製造業におけるグローバル競争の激化や慢性的な人手不足から工場の自動化ニーズが高まっており、今後中小企業にも波及していくと見られ、これらに積極的なアプローチをかけることで、新規顧客の開拓にも繋がると考えております。
当社産業機器事業におきましては、これまで当社の第2の柱として着実に成果を上げてまいりましたが、外部環境の変化による煽りを受け、営業損失が続いております。これは、足元の市場環境が改善しつつある中、コロナ禍の部品調達難が重石となっていることも原因の一つではありますが、中国市場や自動車関連など特定の市場・業界への依存度が高いことも影響していると考えております。中期経営計画に基づき、これまでの重要市場への販売拡大にも注力しながら、新規顧客開拓を一層推し進め、新エネルギー、環境・エコ、医療関係など幅広い業種にアプローチを行っていくことで、外部環境に左右されない盤石な販売網が構築できるものと考えております。また、部品不足に対しては部品の社内加工化を推進するとともに、強固なサプライチェーンを構築していくことで、生産の安定化に繋がるものと考えております。
④IT関連事業
情報サービス産業におきましては、IoT、AIなどの「デジタルトランスフォーメーション(DX)」による「第4次産業革命」が徐々に社会に浸透してきております。これにより、企業などの生産者側からは、これまでの財やサービスの生産・提供の在り方が大きく変化し、生産の効率性が飛躍的に向上する可能性が指摘されており、かつその対象領域も広がりを見せることが期待されています。企業における競争力強化や生産性の向上のためのIT投資は引き続き堅調に推移している一方で、人材不足が顕在化しており、技術者の増強と育成が重要な社会的課題となっております。
その中で当社グループは、「課題解決型パートナー」としての対応を強化しております。システムインテグレーションでは、様々な業務のシステム構築を行ってきた経験をもとに、システム・ソフトウェア構築を支援しており、アウトソーシングでは、システム運用・監視・機器管理や情報処理業務に付帯するデータエントリー業務、オフライン業務全般をトータルでサポートしています。これら経営戦略・方策の下、新規顧客獲得、品質管理の徹底、人財育成などを実施し、収益基盤の安定・強化を進めるとともに、これまで培った知見を活かし、グループ全体のDXも推進してまいります。
当社グループは、持続的に成長する企業集団を目指しております。短期的に会社の規模や売上高の増大を求めるのではなく、商品とサービスのご提供を通じて社会・文化の向上への貢献に堅実に取り組みながら、そこで得られた利益が次の成長に繋がるような持続的成長企業となることが目指すべき目標であり、また課題であると考えております。企業が成長するための要素は様々ですが、当社の強みは創業以来培ってきた「信用」であり、またこれを支えているのは当社製品の品質への評価であると考えています。引き続き、これに満足することなく、品質の維持・向上に努めてまいります。
①サステナビリティ・ガバナンス経営の推進
当社グループは、持続的企業価値の向上を目指しており、この「持続的(=サステナブル)」は、当社の事業経営・ビジネスモデルが持続可能とすることを指すのは勿論ですが、同時に当社が存在し活動する基盤となる社会・環境・経済が持続可能であることは、その前提であると考えております。
当社グループはこれまでも、ESGの重要性を鑑み持続可能な社会の実現に貢献することが、企業の社会的責任であるとの認識の下、ESGのそれぞれの視点に立った事業活動を通じ、SDGsの各目標のうち持続的成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を選定しその達成に取り組んでまいりました。引き続きこの姿勢は堅持しつつ、単に社会や環境に対し負荷を与えないような事業活動を目指すことに止まらず、広く持続可能な社会や環境に貢献するためにできることは何か、という課題に使命感を持って向き合い、自社の持続的企業価値の向上と一体的に取り組んでまいります。
・サステナビリティ推進委員会
当社は、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値向上の両立に向けて、グループ全体でサステナブル経営を一層推進し、企業の社会的責任である社会・環境問題をはじめとしたサステナビリティを巡る様々な課題への取り組みを加速させるため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。
同委員会は、代表取締役社長を委員長に社内横断的メンバーで構成され、当社サステナビリティに関する重要事項を審議し、課題に対する取り組みとその進捗状況を管理・評価しております。また、議長には社外取締役を置き、客観的視点から活発な議論を促しております。
②中期経営計画
当社は、2022年度から2024年度までの3ヵ年を対象とした新しい中期経営計画「Reborn 2024」を策定しました。前中期経営計画「JANOME 2021 Navigation for the Future」では「新生ジャノメ」への飛躍を掲げて、創業100周年の2021年を一通過点として永続して成長するジャノメを目指し、基本方針の下、その達成に向け様々な施策を実施してまいりました。こうした中、コロナ禍で事業活動に制限を強いられる一方で、家庭用ミシンの需要が急拡大するなど、想定外の環境変化を受けたものの、需要に対する供給体制の強化を図るとともに、在宅勤務の導入やオンラインを活用した営業活動を行いながら事業継続に努めるなど、迅速且つ臨機応変な対応により、思い描いた成果は達成できました。
新中期経営計画は、前期に創業100周年を迎え、社名を「株式会社ジャノメ」に改め、財務体質も一定の改善が図られたことを受け、新生ジャノメとして「企業価値向上」に向けた新たなステップ(通過点)という思いを込めて「Reborn 2024」としました。基本方針として、①持続的な成長に向けてサステナブル経営を推進する。②ジャノメのDNAすなわち柔軟性とチャレンジ精神、製品への誇りをしっかりと受け継ぎ進化させる。③ジャノメの持つ資源を最大限活用する。の3点を掲げ、これからの100年に向けた持続可能な成長を目指してまいります。
③家庭用機器事業
家庭用ミシンの市場としては、北米、欧州を重要市場と位置付けて、特に高付加価値製品を当社の強みとし、売上拡大を図っております。その他の市場におきましても、その市場ごとのニーズを的確につかみ、サービス・サポート体制の強化とブランドの浸透により普及に努めております。国内市場におきましても、多様なチャネルを通じてお客様のご要望に応え、トップシェアの確立を図ります。
コロナ禍では、巣ごもり生活を契機に人々の暮らしを豊かにするアイテムとして、ミシンの価値が再認識され、国内外で販売を伸ばしました。この潮流を一過性のものとせず、引き続きミシンの価値を訴求し、より多くのお客様にものづくりの楽しさ、ミシンの魅力を知っていただくため、更なる市場の活性化を図り、マーケティングの強化を行うなどして、ミシンファンの維持・拡大に繋げてまいります。
コロナ禍においてミシン市場は裾野を広げたものの、足元の経営環境は不透明感が高まっております。特にロシア・ウクライナ情勢は長期化の様相も見せており、当社業績への影響拡大も懸念されます。当社グループは、北米や欧州などの重要地域をはじめ、アジア・中東・大洋州など世界各国で販売しておりますが、今後のカントリーリスクも踏まえ、未開拓市場や有望市場の開拓を進め、リスク分散を図ってまいります。
④産業機器事業
産業機器事業は、ロボット及びサーボプレスを主たる事業商品として、ミシン事業に次ぐ第二の事業分野と位置付けております。ロボットは、ねじ締めや塗布をはじめとする多様な用途に対応し、工場の様々な工程で活用されており、サーボプレスは、その動力がサーボモーターであることから、他のプレス機にはない高機能・高精度や環境優位性を実現し、これも様々な場面でご使用いただいております。
市場規模は、用途の広がりにつれて拡大が期待できますが、これを具現化するために、技術力、開発力の強化を行い、特に有望市場や未開拓市場でのサービス・販売拠点の拡充を図りつつ、新しい用途の可能性に繋がる提案型営業を進めてまいります。
このコロナ禍におきましては、半導体をはじめ、部品調達が困難な状況が続いております。サプライチェーンの分散化・多様化を図り柔軟に対応しておりますが、一部で生産に影響が出ております。今後は一部構成部品の社内加工化を推進するなど、更なるリスク低減に努めてまいります。また、ロシア・ウクライナ情勢の影響で一段と高騰する原材料の価格上昇分につきましては、機能・品質の向上を図りながら、製品の付加価値を高め、適正価格の見直しを行うなどして対応してまいります。
眼前には様々な懸念が飛び交うものの、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や、主力市場である自動車産業はEV化が進むなど過渡期を迎えており、中長期視点では市場の拡大が見込まれます。既存分野に捉われず、医療やインフラなどの新規開拓に向けて積極的にアプローチをかけながら、産業機器事業の早期回復を図ってまいります。
⑤IT関連事業
当社は、社内のコンピュータシステム導入による電算処理のノウハウを活かし外部に提供できるよう、1970年にグループ会社である㈱蛇の目電算センター(現㈱ジャノメクレディア)を設立いたしました。それから50年以上、目まぐるしく変化し続けるIT業界において自らも進化しながら時代に対応し、お客様に確かな技術とサポートをお届けしてまいりました。その結果、当社の主要事業セグメントとなる程の成長を遂げました。
現在のジャノメクレディアの強みは自社運用型サーバを基幹とするシステム構築・管理です。一方で企業ではクラウド型サーバの導入が進む中、DX化の急激な波が押し寄せるなど、IT企業に求められるスキルも変化及び多様化してきております。IT企業として更なる成長を目指すためには、時代に必要とされる技術を先読みし、これらの分野の経験を積む必要があります。現状を好機と捉え、まずは当社グループ内でDX化のためのシステム構築経験を蓄え、そのノウハウを強みとして外部へ向けて提供し、更なる収益増、及び事業安定化を図ります。
⑥研究開発・生産体制
当社は、国産初のミシンメーカーとして創業して以来、技術の改良を重ね、革新的機能の開発には常に先進的役割を果たしてまいりました。また、産業機器分野には、ミシンメーカーとして培った技術を応用・発展するなどして、高機能・高性能の商品開発を実現し、市場に送り出してまいりました。
「品質のジャノメ」として、世界のお客様に高い評価をいただいておりますが、今後はより高品質で耐久性に優れた商品を開発・生産し「品質のジャノメ」としての評価を確立し、信頼あるものづくりを行ってまいります。また、市場のニーズを的確に捉えた魅力ある商品をスピーディーにご提供してまいります。さらには、適地適産化や部品の社内加工化を念頭に、原価低減・生産性向上を推し進め、機動的な生産体制を構築するとともに、社会的要請が高まる環境に配慮した製品の開発や製造工程における環境負荷低減にも一層取り組んでまいります。
⑦働き方改革・ダイバーシティ&インクルージョン
当社では、働く全ての社員が社業の発展に向けて主体的・意欲的に取り組むことで、企業競争力や労働生産性を向上させ、それと同時に私生活も充実して過ごせるようにすることが目指すべき働き方であると考えております。当社は、業務での取り組み方や勤務態勢の見直し、時間外労働の縮小、年次有給休暇の積極的取得を一層進め、これらにより労働生産性を向上させ、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ってまいります。
ダイバーシティ&インクルージョンでは、女性・外国人・中途採用者・障害者などの多様なバックグラウンドを持つ人財の積極的な登用を進めてまいります。そしてそれらの人財が働きがいを持って能力を発揮し、自らのアイデンティティが組織の成果達成に効果的に機能しているという実感を伴うよう、一体感を醸成してまいります。従来にない文化や価値観、考え方、新しい発想を尊重し、時に健全なコンフリクトも厭わずに取り入れていくことで、革新的なイノベーションの創出に繋げてまいります。
・女性活躍の推進
当社は、2020年に「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」を策定し、「2025年までに、本社の女性管理職を20%にする」ことを目標として掲げております。
また、「社内向け女性活躍推進サイト」を立ち上げ、当社女性従業員の声として、管理職の立場や仕事と育児の両立について掲載するなど、女性従業員のキャリア形成を支援しております。
・人権尊重
当社は、人権問題への取り組みは企業の果たすべき社会的責任であるという自覚に立ち、社内組織「人権啓発推進委員会」を設置・運営し、差別のない人権を尊ぶ明るい職場を作り上げるために、人権啓発研修の積極的な推進を図り、従業員一人ひとりの人権意識の向上に取り組んでおります。その一環として、外部講師を招いての人権啓発研修会の開催や、「人権は自分たちの身近にあること」を気軽に学べる機会として人権啓発DVD上映会を開催しております。また、毎年12月の人権週間に合わせて、従業員やその家族から人権啓発標語を募集し、社内入選作品は外部団体に応募するなど、人権意識を広く浸透させる取り組みを行っております。
さらに、東京人権啓発企業連絡会等の人権問題に取り組む企業連に加盟し、人権尊重の企業文化としての定着を目指し、企業の立場から社会啓発に繋がる活動に参画しています。
・人財育成
当社では、価値ある商品とサービスの提供を通じて社会に貢献するためには、「人」が最も大切な基幹であるとの認識のもと、管理職を含めた全ての従業員の教育に継続して取り組んでおります。
階層別教育の一環として、入社3年目の従業員を対象に、これまでの仕事経験を振り返り、自律的キャリア開発の重要性を認識することで自己の強みや能力を明確にし、今後の方向性を決定することを目的として、「入社3年目研修」を実施しております。
その他、自己啓発を促進する取り組みとして、希望者にはオンライン英会話研修や通信教育講座、eラーニングなどを行っております。
当社の教育研修プログラムは当社ウェブサイト(https://www.janome.co.jp/recruit/careerpath/)をご参照ください。
(5)気候変動への取り組みとTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応
当社グループは社会の一員として、温室効果ガスの排出削減をはじめ、環境問題に積極的に取り組んでまいります。2021年11月に気候変動に関する情報開示に向けたプロジェクトチームを発足させ、本格的な検討を開始いたしました。2022年4月に設置したサステナビリティ推進委員会では、重要課題の一つとしてこの課題を大きく取り上げており、同委員会が中心となって、当社グループの気候変動に係るリスクと機会を評価し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示の充実に向けて取り組んでおります。
①ガバナンス
当社は、経営の意思決定において、サステナビリティの観点を取り入れ、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値向上の両立を目指しております。
気候変動をはじめとする環境問題に対しては、代表取締役社長を委員長に社内横断的メンバーで構成されたサステナビリティ推進委員会が当社グループの環境活動全般を統括いたします。
サステナビリティ推進委員会は、定期的に開催し、気候変動に係る重要事項の審議および課題・目標ならびに施策の決定とその実践の評価・推進等を担います。また、執行部門の目線だけでなく、客観的視点から当社サステナビリティに関する様々な重要テーマを審議していくため、議長には社外取締役を置きます。
さらに、課題対応所轄部署として、経営企画室、総務部、環境管理推進室が中心となり、各事業部門やグループ子会社における気候変動課題への対応を適宜フォローし、サステナビリティ推進委員会において課題に対する進捗状況を評価します。
サステナビリティ推進委員会における審議内容は年2回以上取締役会に報告し、取締役会は、同報告を受けグループ全体の環境活動を監督するとともに、気候変動に係る重要な方針等を決定し、経営計画をはじめとする事業戦略に組み込むなど、グループ全体で取り組みます。
②リスク管理
当社は、全社レベルのリスク管理体制において、リスク管理委員会を設置し、各事業部門やグループ子会社からの報告またはヒアリングにより、年2回、グループ全体のリスク・機会の把握と適切な対応を審議し、取締役会に報告します。
気候変動に関連するリスク・機会は、サステナビリティ推進委員会においても共有され、重要度や具体的対応策について審議・決定し、その内容を取締役会に報告します。
取締役会は、リスク管理委員会およびサステナビリティ推進委員会より、気候変動に関連するリスク管理の状況等について報告を受け、監督します。
③戦略
当社は、TCFD提言に基づき、2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定したシナリオ分析を実施し、気候変動が当社事業ならびにバリューチェーンにもたらすリスクと機会を特定し、財務影響等について検証いたしました。
シナリオ分析の結果、4℃シナリオでは、脱炭素が推進されず、異常気象の激甚化をはじめ自然災害が増加し、それに伴う設備への被害やサプライチェーンへの影響など、物理的なリスクへの対応が重要であることを確認いたしました。一方で、2℃シナリオにおいては、炭素税やプラスチック規制をはじめとした政策・法規制によるコストの増加など、生産・調達の面で影響が大きいことが分かりました。また、脱炭素社会が進むことで、環境配慮製品への置き換え需要の増加や消費行動の変化による低炭素素材、省電力化、部材の共用化など環境にやさしい製品のニーズの高まりなどが機会であることを確認いたしました。
④指標・目標
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、気候変動により様々な影響を受けることが予想されます。こうした影響を最小限に抑え事業を安定的に継続していくことはもとより、当社は社会を構成する一員として、環境問題の解決に向けて積極的に取り組むべき社会的使命があると考えております。
こうした考えのもと、気候変動への取り組みの一歩として、2020年度における当社事業活動等に伴うCO2排出量についてGHGプロトコルに基づき算定を行った結果、Scope1,2,3において168,181トンとなりました。対象範囲は、Scope1,2が当社および連結子会社で、Scope3は当社となります。
今後は、算出した数値等も踏まえ、CO2排出量の具体的な削減目標やその達成に向けた施策などについて、サステナビリティ推進委員会を中心に協議・決定してまいります。
当社グループは、より一層環境に配慮した事業活動に取り組み、持続可能な社会の実現と会社の企業価値向上を図ってまいります。
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