事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 当社グループは、業務遂行や事業活動に直接又は間接的に影響を与える可能性のある不確実な事象をリスクと定義しており、そのリスク管理を行う組織としてリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会では、具体的なリスクを想定、分類し、有事の際の迅速かつ適切な情報伝達と緊急体制を整備し、リスク管理に関する事項を取締役会に報告を行っております。

 このような中で、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクの内容と対応を外部環境及び内部環境の観点から記載をしております。なお、文中の将来に関する主要なリスクは、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく、現時点で予期できないリスクの影響を受ける可能性があります。

 

(外部環境)

① 自然災害等によるリスク

  台風、地震、洪水等の自然災害、火災等その他事故、及び新型感染症の発生等に起因し、当社グループ事業拠点及び取引先の被災や稼働率低下等が生じることにより、当社グループの生産、販売活動に重大な影響を与える可能性があります。

  これに対して、当社グループは平時から各拠点において自然災害等に関するハザードマップ、リスクサーベイ等の結果よりリスクを把握し、対策、備蓄品の準備、防災訓練等を実施しております。また本部(リスク管理委員会)、各拠点が緊密に連携して危機管理体制をさらに強化すべく努めております。

 

 新型コロナウイルスの影響について

  2020年1月より、社長執行役員を本部長とする対策本部主導で感染防止対策のベストプラクティスをグループ内に素早く展開することにより、事業への影響を最小限度に抑えております。なお、2022年3月期にはワクチン職域接種をグループ主要拠点で進め、社員、家族、その他関係者の感染リスク低減に努めました。

 

(経営成績への影響について)

  当連結会計年度(2022年3月期)の業績においては、各国での感染防止対策費用及び工場での稼働損失などによる営業損益への影響が約32億円ありました。なお、新型コロナウイルスの感染が長期化した場合、当社グループの経営成績にさらに影響を及ぼす可能性があります。

 

(財政状態への影響について)

  各国金融当局による、新型コロナウイルス対応のために導入した積極的な金融政策の転換に向けた動きも見られますが、現時点においては、当社の資金繰り及び財務の安定性に大きな影響を与える可能性は限定的と認識しております。ただし、金融市場が大きく混乱した場合、資金調達コストの上昇や新規の資金調達へ影響を与える可能性があります。新型感染症拡大の影響は予測が困難なため、短期的には新たな投資活動の抑制や、安定的な資金調達に努めてまいります。

 

(生産活動への影響について)

  感染が拡大し、各国政府の要請等により事業活動及び行動の制限が強化された場合、工場の稼働停止等、当社グループの生産、販売活動に重大な影響を与える可能性があります。

 

 

 

 

(サプライチェーンへの影響について)

  調達については、当社グループの生産拠点では政府による操業停止指示のあった中国、マレーシア、フィリピン等の資材調達先で操業再開の時期に差が見られました。現時点で原材料等の調達に大きな問題はないものの、今後の感染状況によっては、価格の高騰や入手困難等の影響が顕在化する恐れがあります。物流については、各国の移動規制が物流面にも大きな影響を与え、船便及び航空便の減便やリードタイム延長により、当社グループにおける工場の操業及び顧客向けの出荷に影響を与えました。

  当社グループでは、事業継続計画(BCP)の観点から、調達先の地域の見直しや複数社からの調達(マルチソース化)、基幹部品のさらなる内製化、物流ルートの見直し等、サプライチェーンの見直しを継続中です。

 

② 海外進出に潜在するリスク

  当社グループは世界27カ国に96製造拠点、87営業拠点を有しており、予期しない法律もしくは規制の変更、大規模な労働争議、テロ、戦争又はその他の要因による社会的混乱といったリスクが内在している地域も含まれております。

  この対応として危機管理マニュアルを海外拠点において整備し、不測の事態への備えを強化するとともに、所在国、地域の関係当局とも緊密に連携をはかり、緊急事態発生時における会社や従業員の安全確保に努めております。また、所在地への社会貢献活動を積極的に実施していくこと等を通じて、関係当局のみならず、地元の住民からも地域社会に根差した企業として認知されるように努めております。

  多角的な事業ポートフォリオとグローバル生産拠点が相互に補完し合うことで、事業環境が変化しても収益を下支えする「リスク分散体制」を確立しております。

 

 ロシア・ウクライナ情勢の影響について

  ロシア・ウクライナ情勢の影響については、売上及び債権回収の状況、仕入及び支払いの状況、物流の状況、経理財務の状況等、多方面に渡って国内外の担当者による状況分析及びその報告を日次で行っており、その分析、報告を基に、状況の変化に対する対応の決定について、トップマネジメントが即座に対応できる体制を構築しております。

  当社グループはロシアにおいて事業拠点を有しており、また欧州販売子会社からロシア及びウクライナ向けに販売も行っておりますが、その事業規模は当社グループ連結売上高の約0.3%であり、当社グループの業績への大きな影響はありません。

  今後は、ロシアのウクライナ侵攻による原材料の高騰、ガスの供給減、国際的なサプライチェーンの混乱等が懸念されますが、情勢の変化については、引き続き状況を注視してまいります。

 

③ 為替変動によるリスク

  当社グループは、海外の売上高比率及び生産高比率が高く、予期できない急激な為替変動により経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。このため、将来の急激な為替リスク低減のための一定のルールに基づき為替予約等によるリスクヘッジを行っております。

 

 

④ 急激な市場環境の変化と低価格競争によるリスク

  PC及び周辺機器、情報通信機器、家電、自動車、航空機部品を中心とする当社グループ製品の主要市場は、国内外において競争が非常に激しく需要の大きな変動によるリスクがあります。急激な需要の縮小や海外製の低価格製品との価格競争は、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

  このため当社グループでは、「コア事業の強化」、「多角化でニッチ(8本槍)」、「相合によるシナジー創出」の経営戦略の下、販売先の集中リスクをできるだけ回避し、信用面で懸念ある取引先には保全活動を交渉するなど、債権管理を強化するとともに、価格競争にとらわれないオンリーワンの付加価値の高い製品づくりに注力することで市場環境及び低価格競争へのリスク対応を行っております。

 

⑤ 原材料費、物流費等のコスト高に対するリスク

  当社グループは、仕入先からさまざまな原材料等の調達と物流業者に委託して製品の保管、運送を行っており、仕入先及び物流業者の被災やパンデミック、倒産、キャパシティの縮小、ストライキ、事故、不法行為、地域及び国際紛争等の不可抗力(フォースマジュール)により供給が途絶え、当社グループの生産、販売活動に重大な影響を与える可能性があります。特にロシア・ウクライナをめぐる情勢は、中長期的な視点においては、エネルギーや原材料などの供給不安からサプライチェーンへの影響が懸念されます。

  当社グループは、リスク対策の調達・物流部門規程を策定し仕入先及び物流業者の分散と集約化を適宜組み合わせ、安定的なサプライチェーンの確保、リスクの低減に努めております。またサプライヤーとの健全なパートナーシップを築くため「資材調達基本方針」を定めサプライヤーに対して継続的な取引が可能であること、当社グループの製品含有化学物質に関する要領及び基準などを遵守できること、「ミネベアミツミグループCSR調達ガイドライン」に賛同できることなど当社グループの資材調達への考えに賛同いただくことを確認の上、新規に取引を行っております。

 

⑥ 知的財産権に関する紛争、模倣品(コピー商品)の氾濫に対するリスク

  当社グループは、当社グループの製品について第三者より知的財産権侵害の訴訟を提起されるリスクがあります。また、当社グループの製品の模倣品が流通することで、売上への影響、当社のブランド又は信用が損なわれるリスクがあります。

  これらのリスクに対し知的財産権侵害訴訟リスク低減のため、開発、設計時の他社知的財産権調査及び問題となる知的財産権への対応を行っています。また当社商標を税関登録し模倣品の監視体制をとるとともに、新規開発品について積極的に知的財産権を取得しています。また上記の対応にあたっては、特許等委員会にて適切な管理、運営をはかっております。

 

⑦ 重要な訴訟等に対するリスク

  当社グループは、国内及び海外で広範な事業活動を展開する中で、将来、顧客、消費者、サプライヤー、競合会社、政府などとの間で、契約違反、不法行為などに関する重大な紛争、訴訟が発生する可能性があります。

  重大な紛争、訴訟の発生を未然に防止するために、「法務部への連絡相談に係るガイドライン」を定め、法的な検討の要求される経営上の重要事項や契約書については、事前に国内及び海外の法務部門に連絡相談するよう義務付けています。また重大な紛争、訴訟が発生した場合には、法務部門と顧問弁護士が中心となり、関係する社内各部署と連携し、紛争、訴訟の適正かつ迅速な解決を目指して活動を行っております。しかしながら将来、重要な訴訟等が提起された場合には経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 環境関連法令等に対するリスク

  当社グループは、世界各地域においてさまざまな環境関連法令の適用を受けております。当社グループはこれらの規制に細心の注意を払いながら事業を行っておりますが、万一環境汚染が発生し又は発生のおそれが判明した場合には、当社グループに損失が生じる可能性があります。

  このため「ミネベアミツミグループ環境方針」の下、環境マネジメント体制(環境マネジメント委員会)を設け環境管理責任者を配し、厳格な環境汚染防止活動を平時より推進しリスクへの対応を行っております。

  また、脱炭素社会に向けた政策的措置により生産コストが上昇し、原材料の転換等が必要となる可能性があります。

  このため、このような政策的動向を注視し、TCFD等への取り組みにより気候変動関連のリスクと機会への対応をはかり、脱炭素社会に相応しいビジネスモデルへの転換を先取りしてまいります。

 

⑨ M&A、アライアンスに対するリスク

  当社グループは、M&Aとアライアンスを最重要施策の一つと位置付け推進しておりますが、市場環境の変化等に起因し、さらにアライアンスにおいては相手先との戦略の不一致等が発現し、当初想定した効果を生まないリスクが存在します。このようなリスクへの対応として当社グループは、M&Aにおいては人材と組織の融合、アライアンスにおいては知見の相互活用を重視し、シナジーの創出をはかっております。しかしながら、事業環境の変化により買収企業やアライアンス事業において想定以上の収益性の下振れや財務内容の悪化が発生した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(内部環境)

① コンプライアンスに関するリスク

  当社グループは、世界各地域においてさまざまな事業活動を展開しており、各地域の多種多様な法令、規則の適用を受けているため、将来にわたって法令違反等が発生する可能性、また法規制や当局の法令解釈が変更になることにより法規制等の遵守が困難になり又は遵守のための費用が増加する可能性があります。

  当社グループでは、労働、安全衛生、環境保全、倫理的経営について「ミネベアミツミグループ行動規範」を定め、さらに全ての役員、従業員が遵守すべき具体的な基準として「ミネベアミツミグループ役員・従業員行動指針」を定めています。また、その徹底をはかるため、コンプライアンス委員会を設置し、当社グループの法令遵守体制が適切に運営されているか検証を行う体制が構築されております。実務面では「ミネベアミツミグループ役員・従業員行動指針」に定められた主管部署が業務上の法令遵守を担当し、内部監査室が監査を行い、内部統制面では内部統制推進室が主に財務報告の信頼性を確保するなど、グループ全体としての法令遵守の有効性を高め、さらに内部通報制度を整備することでコンプライアンスリスクの低減に努めております。

 

 

② 品質問題によるリスク

  当社グループの製品は、一般市場及び多くの産業分野で高精度を要する部分(自動車、航空機、医療機器等人命に関わる製品)に使用されており、その社会的責任を認識し高い品質保証体制を確立することが求められます。同時に原材料、部品、副資材の選定及び、使用用途を熟慮した設計、開発等を行うことで「環境、健康、安心、安全」を顧客に提供する使命(期待)を担っております。万が一製品に欠陥が存在し、市場における重大な事故や顧客の生産停止あるいはリコール等の事態が発生した場合、多大な費用の発生や社会的信用の失墜だけではなく、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性が考えられます。

  当社グループでは、「ミネベアミツミグループ品質方針」を基に「社会的責任」を十分に認識し下記対策を行っております。

・品質問題から得られた教訓への対応(未然防止、再発防止等)を徹底

・設計段階での調査と確認、サプライチェーンにおける管理体制強化

・各種法規制、顧客要求事項の周知と遵守を徹底

・全社横断の会議体や現場監査等を通して情報共有と施策の展開

 

③ 情報セキュリティによるリスク

  当社グループは、事業活動の中で多くの重要情報や個人情報を入手することがあり、当社グループでは情報セキュリティの方針を定め、情報の外部への流失及び目的外の流用等が起こらないよう運用しておりますが、予期せぬ事態により流出する可能性があります。このような事態が生じた場合、その対応のために多額の費用が発生するとともに、社会的信用が低下するリスクがあります。

  このため、当社グループでは情報セキュリティ体制を強化する目的からサイバーセキュリティ対策に取り組むための専任組織としてセキュリティ推進室を新たに設置しました。

  セキュリティ推進室長は当社のCISO: Chief Information Security Officerとして、セキュリティ対策の改善、強化策の立案及びその推進、サイバーインシデントへの対応、そして、社内のセキュリティ教育を担います。さらに、情報セキュリティ規程の策定並びに情報セキュリティ委員会を設置し、情報セキュリティ体制が適切に運営されているか検証を行う体制を構築しております。また情報セキュリティ教育並びに理解度テストを励行し、機器の紛失、盗難、不注意等による情報流出の防止に努めております。

  上記に加え、コンピュータウイルスやマルウェア等の侵入、不正アクセス等のサーバー攻撃やシステム侵害による運用停止や情報漏洩への対策として業務で使用するネットワーク機器、パソコン、サーバー等については、安定稼働の確認が取れた直近のバージョンを適用しセキュリティホール等の問題に対応するとともに、アンチウイルス、マルウェア対策ソフトに加えて、AIを活用した24時間365日の情報セキュリティ対策システムを導入し、適正に運用しております。

 

④ 研究開発に対するリスク

  当社グループは、新製品を継続的に市場投入し、将来の売上高、利益の目標達成に貢献できるよう基礎研究、要素技術開発、製品開発及び生産工程開発を含む研究開発活動を行っております。しかしながら、想定に反して研究開発の成果物が適時創出できない場合、あるいは競合他社が当社の研究開発の成果物を凌駕するもので対抗してきた場合、将来の売上高、利益の目標達成ができず、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

  研究開発の成果創出には不確実性が伴いますが、これを想定の範囲内に収めるべく、研究開発プロジェクトの進捗、費用については、「研究開発管理規程」等に則り、効果的かつ効率的な管理を行っております。

 

 

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