三菱電機グループが当連結会計年度中にとった主な施策及び翌連結会計年度以降に向けての施策については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」などに記載のとおりですが、これらの施策の実施状況を踏まえた当連結会計年度に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は以下のとおりです。
(1) 業績概要
当連結会計年度の景気は、企業部門は米国、欧州、日本などにおいて総じて持ち直しが継続しました。個人消費は米国、欧州などでの持ち直しが継続しましたが、日本では、経済活動正常化に伴う持ち直しの動きはあったものの、新型コロナウイルス感染症の影響による下押しがみられました。中国では、輸出や生産は回復傾向が継続しましたが、個人消費を中心に持ち直しは緩やかになりました。また、素材価格・物流費の上昇や部材の需給逼迫の長期化などの動きがみられました。
かかる中、三菱電機グループは、これまでの事業競争力強化・経営体質強化に加え、持続的成長に向けた事業ポートフォリオ戦略の強化による収益力向上に、従来以上に軸足を置いて取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなりました。
<連結決算概要>
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
売上高 |
41,914億円 |
44,767億円 |
2,853億円増 |
営業利益 |
2,301億円 |
2,520億円 |
218億円増 |
税引前当期純利益 |
2,587億円 |
2,796億円 |
209億円増 |
親会社株主に帰属 する当期純利益 |
1,931億円 |
2,034億円 |
103億円増 |
①売上高
売上高は、重電システム部門や情報通信システム部門で減収となりましたが、産業メカトロニクス部門、家庭電器部門、電子デバイス部門などの増収により、前連結会計年度比2,853億円増加の4兆4,767億円となりました。産業メカトロニクス部門では、FAシステム事業はデジタル関連や脱炭素関連の設備投資を中心とした国内外での需要拡大を背景に増加し、自動車機器事業は電動車を中心とした市場の拡大に伴い増加しました。家庭電器部門では、国内向け空調機器は半導体部品の需給逼迫などにより減少しましたが、欧米を中心に空調機器の需要が堅調に推移し増加しました。電子デバイス部門では、パワー半導体の需要回復などにより増加しました。
<売上高における為替影響額>
|
前連結会計年度 期中平均レート |
当連結会計年度 期中平均レート |
当連結会計年度 売上高への影響額 |
連結合計 |
- |
- |
約1,350億円増 |
内、米ドル |
106円 |
113円 |
約340億円増 |
内、ユーロ |
124円 |
131円 |
約200億円増 |
内、人民元 |
15.7円 |
17.7円 |
約500億円増 |
②営業利益
営業利益は、重電システム部門や家庭電器部門などの減益はありましたが、産業メカトロニクス部門や電子デバイス部門などの増益により、前連結会計年度比218億円増加の2,520億円となりました。営業利益率は、売上高の増加などにより、前連結会計年度比0.1ポイント改善の5.6%となりました。
売上原価率は、為替円安影響に加え、売上高の増加に伴う操業度上昇などによる産業メカトロニクス部門の改善などはありましたが、素材価格上昇の影響などにより、前連結会計年度比0.2ポイントの改善に留まりました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比600億円増加しましたが、売上高比率は前連結会計年度比0.2ポイント改善しました。その他の損益は、土地売却益の減少などにより前連結会計年度比82億円減少し、売上高比率は前連結会計年度比0.3ポイント悪化しました。
③税引前当期純利益
税引前当期純利益は、営業利益の増加などにより、前連結会計年度比209億円増加の2,796億円、売上高比率は6.2%となりました。
④親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、税引前当期純利益の増加などにより、前連結会計年度比103億円増加の2,034億円、売上高比率は4.5%となりました。
なお、ROEは前連結会計年度比0.4ポイント悪化の7.1%となりました。
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです。
① 重電システム
社会インフラ事業の事業環境は、国内の公共事業における投資が堅調に推移しましたが、国内の発電関連の需要減少や、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた国内の鉄道各社の設備投資計画の見直しの動きがみられました。このような状況の中、同事業は、国内の電力・交通事業の減少がありましたが、国内の公共事業の増加などにより受注高は前連結会計年度並みとなりました。売上高は、国内の電力・交通事業の減少などにより前連結会計年度を下回りました。
ビルシステム事業の事業環境は、アジアの一部地域などで新型コロナウイルス感染症の影響による市況低迷からの回復の遅れがありましたが、中国などでは回復がみられました。このような状況の中、同事業は中国などを中心に増加し、受注高・売上高ともに前連結会計年度を上回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比97%の1兆2,381億円となりました。
営業利益は、売上高の減少や売上案件の変動などにより、前連結会計年度比467億円減少の621億円となりました。
② 産業メカトロニクス
FAシステム事業の事業環境は、半導体・電子部品・スマートフォンなどのデジタル関連分野やリチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野での設備投資を中心に、国内外で需要が拡大しました。このような状況の中、同事業は受注高・売上高ともに前連結会計年度を上回りました。
自動車機器事業の事業環境は、半導体部品の需給逼迫などの影響により国内、中国や欧米などでは新車販売台数が前連結会計年度を下回りましたが、電動車を中心とした市場の拡大に伴い電動化関連製品などの需要が増加しました。このような状況の中、同事業はモーター・インバーターなどの車両電動化関連製品や自動車用電装品の増加などにより、受注高・売上高ともに前連結会計年度を上回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比117%の1兆4,603億円となりました。
営業利益は、自動車機器事業は素材価格・物流費の上昇などにより減少しましたが、FAシステム事業は売上高の増加や円安の影響などにより増加しました。部門全体では前連結会計年度比562億円増加の968億円となりました。
③ 情報通信システム
情報システム・サービス事業の事業環境は、製造業向けを中心に延期されていたシステム開発案件の再開などがありましたが、ITインフラサービス事業などで大口案件の減少がありました。このような状況の中、同事業は、受注高は前連結会計年度を上回りましたが、売上高は前連結会計年度を下回りました。
電子システム事業は、受注高は防衛システム事業の大口案件の増加などにより前連結会計年度を上回りましたが、売上高は防衛システム事業の大口案件の減少などにより前連結会計年度を下回りました。
この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比93%の3,541億円となりました。
営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比17億円減少の147億円となりました。
④ 電子デバイス
電子デバイス事業の事業環境は、民生・産業・自動車向けのパワー半導体の需要が回復しました。このような状況の中、同事業は民生・産業・自動車向けのパワー半導体の増加などにより、受注高は前連結会計年度を上回り、売上高は前連結会計年度比118%の2,414億円となりました。
営業利益は、売上高の増加などにより、前連結会計年度比105億円増加の168億円となりました。
⑤ 家庭電器
家庭電器事業の事業環境は、半導体部品の需給逼迫の影響はありましたが、欧米を中心に、テレワークの定着などにより家庭用空調機器の需要が増加し、また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていた設備投資が回復し始めたことで業務用空調機器の緩やかな需要回復がありました。このような状況の中、同事業は、半導体部品の需給逼迫などにより国内向け空調機器は減少しましたが、欧米を中心とした空調機器の増加や円安の影響などにより、売上高は前連結会計年度比110%の1兆1,447億円となりました。
営業利益は、売上高の増加や円安の影響はありましたが、素材価格・物流費の上昇などにより、前連結会計年度比48億円減少の709億円となりました。
⑥ その他
売上高は、資材調達・物流の関係会社の増加などにより、前連結会計年度比112%の6,762億円となりました。
営業利益は、売上高の増加などにより、前連結会計年度比83億円増加の219億円となりました。
顧客の所在地別の売上高の状況は、次のとおりです。
① 日本
FAシステム事業などの増加はありましたが、家庭電器事業、社会インフラ事業などの減少により、前連結会計年度比96%の2兆3,324億円となりました。
② 北米
家庭電器事業などの増加により、前連結会計年度比122%の4,619億円となりました。
③ アジア
FAシステム事業、家庭電器事業などの増加により、前連結会計年度比120%の1兆1,149億円となりました。
アジアのうち中国については、FAシステム事業、家庭電器事業などの増加により、前連結会計年度比122%の5,888億円となりました。
④ 欧州
家庭電器事業などの増加により、前連結会計年度比126%の4,953億円となりました。
⑤ その他
その他の地域にはオセアニアなどが含まれており、前連結会計年度比114%の721億円となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
重電システム |
853,140 |
96 |
産業メカトロニクス |
1,322,942 |
116 |
情報通信システム |
268,202 |
92 |
電子デバイス |
206,910 |
125 |
家庭電器 |
839,658 |
110 |
その他 |
1,996 |
146 |
計 |
3,492,848 |
107 |
(注) 上記金額は、仕込製品については仕切予定価格、注文製品については受注価格で示しています。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
重電システム |
1,217,980 |
104 |
産業メカトロニクス |
1,666,328 |
127 |
情報通信システム |
398,578 |
105 |
電子デバイス |
347,004 |
154 |
(注) 1 「電子デバイス」の受注状況は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績概要 ④電子デバイス」に記載のとおり、民生・産業・自動車向けのパワー半導体の増加に伴い、前連結会計年度比154%の3,470億円となりました。
2 「家庭電器」「その他」については受注生産形態をとらない製品が多いため、受注規模を金額で示していません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
重電システム |
1,238,111 |
97 |
産業メカトロニクス |
1,460,368 |
117 |
情報通信システム |
354,128 |
93 |
電子デバイス |
241,405 |
118 |
家庭電器 |
1,144,788 |
110 |
その他 |
676,257 |
112 |
消去 |
△638,299 |
- |
計 |
4,476,758 |
107 |
(注) 各種類別セグメントの金額には、セグメント間の内部売上高(振替高)を含めて表示しています。
(3) 資産及び負債・資本の状況分析
総資産残高は、前連結会計年度末比3,100億円増加の5兆1,079億円となりました。棚卸資産が2,158億円、その他の非流動資産が1,004億円増加したことがその主な要因です。
棚卸資産の増加は、産業メカトロニクス部門や家庭電器部門での需要回復や半導体・電子部品の部材逼迫の影響などによるものです。その他の非流動資産の増加は株価上昇等に伴う退職給付に係る資産の増加などによるものです。
負債の部は、買入債務が598億円、未払費用が242億円それぞれ増加したことなどから、負債残高は前連結会計年度末比832億円増加の2兆105億円となりました。なお、リース負債を除く借入金・社債残高は前連結会計年度末比317億円減少の2,171億円、借入金比率は4.3%(前連結会計年度末比△0.9ポイント)となりました。
資本の部は、配当金の支払い857億円による減少等はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益2,034億円の計上及び為替円安等を背景としたその他の包括利益累計額727億円の増加等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比2,216億円増加の2兆9,759億円、親会社株主帰属持分比率は58.3%(前連結会計年度末比+0.9ポイント)となりました。
<財政状態計算書関連指標>
|
前連結会計年度末 |
当連結会計年度末 |
前連結会計年度末比 |
売掛債権回転率 |
3.55回転 |
3.63回転 |
0.08回転増 |
棚卸資産回転率 |
5.64回転 |
4.66回転 |
0.98回転減 |
借入金比率 |
5.2% |
4.3% |
0.9ポイント減 |
親会社株主帰属持分比率 |
57.4% |
58.3% |
0.9ポイント増 |
(注) 1 売掛債権回転率は、売上債権と契約資産の合計より算出しています。
2 借入金比率は、リース負債を除く借入金・社債残高より算出しています。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
①財務戦略に関する基本的な考え方
三菱電機グループは、健全な財務体質を維持するため、業績向上による資金収支の改善に加え、棚卸資産の縮減活動、売掛債権の回収促進といった資産の効率化、グループ内資金の更なる有効活用による資金の効率化に引き続き取り組んでまいります。
また、2025年度に向けた中期経営計画におけるキャピタル・アロケーション方針のもと、成長投資を最優先としつつ、利益成長を通じた株主還元強化を踏まえた資本政策の実行により、更なる資本効率の向上を図ってまいります。
なお、成長戦略を進めて行く中で、必要となります設備投資、研究開発、M&A等の資金につきましては、重点成長事業を中心とした営業活動において創出されたキャッシュ・フローを源泉に、自己資金の活用を図りつつ、必要に応じて金融機関等から機動的に資金調達を行ってまいります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが2,823億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが1,148億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは1,675億円の収入となりました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは2,413億円の支出となったことなどから、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比402億円減少の7,271億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益の増加はありましたが、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度比2,597億円の収入減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券等の売却収入の増加や、前連結会計年度に設備投資を一部抑制したことに伴う当連結会計年度の有形固定資産の取得の減少等により、前連結会計年度比616億円の支出減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得の増加や短期借入金の調達の減少等により、前連結会計年度比839億円の支出増加となりました。
③財源及び流動性
運転資金需要のうち主なものは、生産に必要な材料購入費の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものです。
短期運転資金は、自己資金と金融機関からの短期借入等により、設備投資や長期運転資金は、自己資金の活用を図りつつ金融機関からの長期借入及び社債により調達を行っています。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,271億円、社債、借入金及びリース負債残高は3,294億円です。社債、借入金及びリース負債の内訳は、短期借入金が749億円、社債及び長期借入金が1,422億円、リース負債が1,122億円です。
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
(5) 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成しています。これらの連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を使用する必要があります。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。当社の連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性のある主要な会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、依然として不確実性は残るものの、長期的に重要な影響はないと仮定し、「有形固定資産、のれん及び無形資産の回収可能価額」等の会計上の見積りを行っています。当社は、上記の仮定は期末日時点における最善の見積りであると判断していますが、想定以上に新型コロナウイルス感染症の影響が拡大した場合は連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性があります。
①一定の期間にわたり履行義務を充足する契約における見積総費用
重電システム部門及び情報通信システム部門における一定の要件を満たす特定の工事請負契約については、当該工事請負契約の当期末時点の進捗度に応じて収益を計上しています。進捗度は、当連結会計年度までの発生費用を工事完了までの見積総費用と比較することにより測定しています。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。
工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した工事請負契約の見積総費用を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループが認識する収益の金額に影響を与える可能性があります。
②引当金の認識及び測定
受注工事損失引当金は、重電システム部門及び情報通信システム部門における工事請負契約において、当該工事の見積総費用が請負受注金額を超える可能性が高く、かつ予想される損失額を合理的に見積もることができる場合に、将来の損失見込額を引当金として計上しています。当連結会計年度末における受注工事損失引当金の残高は、47,267百万円です。
見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。
工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。
経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した将来工事損失見込額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
製造上やその他の不具合に対し、製品の種類や販売地域及びその他の要因ごとに定められた期間又は一定の使用条件に応じて製品保証を行っており、期末日現在において将来の費用発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合に、製品保証引当金を計上しています。将来の発生費用は、主に過去の無償工事実績及び補修費用に関する現状に基づいて見積っています。当連結会計年度末における製品保証引当金の残高は、52,736百万円です。
経営者は、発生費用の見積り額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。
③有形固定資産の回収可能価額
有形固定資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。
資産又は資金生成単位の見積回収可能価額は、使用価値と売却費用控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いています。資産又は資金生成単位の帳簿価額が見積回収可能価額を超過する場合には、当期の純損益において減損損失を認識しています。
経営者は、使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フロー及び売却費用控除後の公正価値の見積りはいずれも妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によって見積りが変更となることにより資産又は資金生成単位の見積回収可能価額が変動し、結果として、将来において有形固定資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
また、当連結会計年度において、産業メカトロニクス部門に含まれる自動車機器事業における一部の国内製造拠点に関して、車両電動化関連製品の受注拡大に向けた先行投資負担、素材・物流費の高騰、半導体部品の需給逼迫による販売及び生産面での影響等により、継続的に営業損失を計上していることから、減損の兆候が認められており、減損損失の認識の要否の判断を行っています。当該製造拠点は有形固定資産50,241百万円及び無形資産等1,733百万円を有していますが、見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値として算定した使用価値により測定した回収可能価額が資産の帳簿価額を上回ったことから、減損損失を認識していません。将来キャッシュ・フローは経営者が作成した事業計画を基礎として作成しています。事業計画は、脱炭素化等の潮流を受けた車両電動化市場の拡大を見込んだ当社の車両電動化関連製品の受注拡大や、部材調達の最適化等に関する仮定に基づいています。
これらの前提条件を用いた見積りは、合理的であると判断していますが、翌連結会計年度において、経済環境の変化等により、見直しが必要となった場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
④のれん及び無形資産の回収可能価額
耐用年数を確定できる無形資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については少なくとも1年に一度、同時期に減損テストを実施しています。
重要なのれんは家庭電器部門に配分されたのれんであり、減損テストの回収可能価額は、主として経営者が承認した今後5年度分の事業計画及び成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額を現在価値に割り引いた使用価値で算定しています。割引率は、税引前の加重平均資本コストを基に算定しており、当連結会計年度における割引率は、9.2%です。成長率は、のれんが配分されている資金生成単位グループが属する市場の長期期待成長率を参考に算定しており、当連結会計年度における成長率は0.8%です。
経営者は、事業計画や成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額や割引率は妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によってキャッシュ・フローの見積り額や割引率が変更となることにより使用価値が変動し、結果として、将来においてのれん及び無形資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。
⑤繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産は期末日に見直し、税務便益が実現する可能性が高くない場合は、繰延税金資産の計上額を減額しています。
三菱電機グループは繰延税金資産の実現可能性の評価にあたり、繰延税金資産の一部又は全部が実現する可能性が実現しない可能性より高いかどうかを考慮しています。繰延税金資産の実現は、最終的には将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除が減算可能な期間における将来課税所得によって決定されます。その評価にあたり、予定される繰延税金負債の戻入、予測される将来課税所得及び税務戦略を考慮しています。
経営者は、当連結会計年度末の認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと考えていますが、繰延期間における将来の見積課税所得が減少した場合には、実現する可能性が高いと考えられる繰延税金資産は減少することとなります。
⑥確定給付制度債務の測定
三菱電機グループは、従業員を対象とする従業員非拠出制及び拠出制の確定給付型退職給付制度を採用しています。従業員の確定給付制度債務は、割引率、退職率、一時金選択率や死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき算定しています。確定給付制度債務の現在価値及び制度資産の公正価値の再測定による変動は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。
割引率は、将来の毎年度の給付支払見込日までの期間を基に割引期間を設定し、割引期間に対応した期末日時点の優良社債の市場利回りに基づき算定しており、当連結会計年度末の割引率は0.7%です。
経営者は、年金数理計算上の基礎率の算定は妥当なものと考えていますが、実績との差異又は基礎率自体の変更により、確定給付制度債務の金額に影響を与える可能性があります。
⑦金融商品の公正価値
三菱電機グループは、主に取引関係維持・強化を目的として保有している資本性金融商品をその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に指定しています。このうち非上場株式の公正価値については、投資先の純資産等に関する定量的な情報及び投資先の将来キャッシュ・フローに関する予想等を総合的に勘案して算定しています。
経営者は、公正価値の見積りは妥当なものと考えていますが、投資先の業績や将来キャッシュ・フロー等の見積りの前提条件が変動した場合は、三菱電機グループのその他の包括利益の金額に影響を与える可能性があります。
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