課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

 三菱電機は創立100周年を契機に改定した企業理念体系を、経営の基本方針として活動しています。「たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献する」という三菱電機グループの企業理念は、社会における私たちの存在意義そのものです。この企業理念の下、三菱電機グループは「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点によるバランス経営に加えて、「事業を通じた社会課題の解決」という原点に立ち、サステナビリティの実現を経営の根幹に位置づけています。これにより、企業価値の持続的向上を図り、社会・顧客・株主・従業員をはじめとしたステークホルダーへの責任を果たしてまいります。

 

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(2) 経営環境及び対処すべき課題

 世界経済の先行きは、引き続き回復基調を見込んでいるものの、新型コロナウイルス感染症の変異株の拡大等の不確実性が継続する中、ウクライナをめぐる国際情勢を受けた供給制約や資源価格の高騰の加速に伴う各国でのインフレ率の上昇等を背景とした景気減速もあり、成長の鈍化が見込まれます。

 かかる中、三菱電機グループは、グループ内外の知見の融合と共創により、進化した統合ソリューションを提供する「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」へ変革し、多様化する社会課題の解決に貢献してまいります。持続的成長に向けては、当社の事業を特性別に分類し、強弱をつけて経営資源を投入していく事業ポートフォリオ戦略の強化による収益力向上を図るべく、重点成長事業と位置付ける「FA制御システム」「空調冷熱システム」「ビルシステム」「電動化/ADAS*1」「パワーデバイス」の5つの事業に対し経営資源を戦略的に投入し、収益力や成長性の高い事業へのリソースシフトを進めています。あわせて、社会構造や顧客価値の変化に対応したオープンイノベーションの推進、新分野・新技術の取り込み、シナジーの追求等による新事業の創出や「データ連携・活用型」を主体としたソリューション事業の拡大を推進してまいります。これらの実現に向けて、中長期視点での事業戦略を構築・推進するビジネスエリア(BA)オーナーを配置する新たな経営体制を構築いたしました。これにより、全社的視点から傘下の事業本部におけるM&Aや事業再編などの加速を促すとともに、新たな事業創出や技術・事業分野の強化、戦略的リソースシフトを推進してまいります。これまで以上に事業を通じた社会課題解決を加速・推進しながら、企業価値を最大化してまいります。かかる中、三菱電機グループは、多様化する社会課題に対し、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4つの領域において、当社の強いコアコンポーネントに、豊富なフィールドナレッジ、先進的デジタル技術を掛け合わせ、当社ならではの統合ソリューションを提供していくことで、「持続可能な地球環境と安心・安全・快適な社会の実現」をはじめとする価値創出をより一層推進してまいります。

 

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 また、日本・欧米・中国における事業競争力を強化するとともに、インド等の成長市場における需要獲得に注力すべく、製品・技術等の補完や新地域・新市場での販売網・サービス網の確保などにも取り組んでまいります。あわせて、資本コストを意識した経営を進めていく中で、事業の継続的な新陳代謝を通じた開発投資や設備投資などを含む経営資源の最適な配分、「ものづくり力」の強化に資する開発・生産力の強化、開発設計段階からの品質作り込み、データとデジタル技術を活用した、経営管理の高度化及び間接部門における業務効率化も含む生産性の向上、人材構造適正化及び最適配置、更なる財務体質の改善等に引き続き取り組むとともに、事業別資産効率指標として導入した三菱電機版ROIC*2の更なる浸透を図り、中長期視点で、総合的な事業効率性と資本効率の向上を目指してまいります。

 さらには、足元での素材・物流費の高騰、半導体・電子部品の調達難による部材調達環境の悪化に加え、脱炭素化や自動運転等の新たな市場ニーズの高まり等、事業環境が大きく変化している中、特に車両電動化関連製品をはじめとする自動車機器事業においては、継続的に営業損失を計上しており、引き続き不確実性の高い事業環境が見込まれることから、これら変化に耐えうる強固な収益基盤を構築してまいります。

 これら施策を通じ、中期経営計画における2025年度財務目標の「連結売上高5兆円」「営業利益率10%」「ROE10%」「キャッシュ・ジェネレーション3.4兆円/5年」を達成すべく、更なる価値の創出に取り組んでまいります。創出したキャッシュ(3.4兆円/5年)については、成長投資を最優先として重点成長事業を中心に2.8兆円を振り向けつつ、利益成長を通じた株主還元についても更に強化して0.6兆円を目標とするキャピタル・アロケーション方針としています。

 なお、セグメント別の営業利益率は次のとおりです。報告セグメントの区分はBAオーナーを配置する新たな経営体制への移行に伴い、2022年4月1日より変更しています。当連結会計年度の従来のセグメントと新たなセグメントに組み替えた双方の営業利益率を示しています。

 

<営業利益率のセグメント別内訳>

従来のセグメント

2021年度

実績

 

2022年度以降の

新たなセグメント

2021年度

実績

(セグメント

組み替え後)

中期経営計画

2025年度目標

重電システム

5.0%

 

インフラ

4.4%

7%

産業メカトロニクス

6.6%

 

インダストリー・

モビリティ

6.5%

11%

情報通信システム

4.2%

 

ライフ

5.5%

11%

電子デバイス

7.0%

 

ビジネス

プラットフォーム

6.9%

10%

家庭電器

6.2%

 

 

 

 

 

*2022年度におけるビジネスエリアと事業本部の関係は以下のとおりです。

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 かかる三菱電機グループの取り組みの中で、「環境」については、「脱炭素社会」の実現を重要な経営課題と位置づけ、環境経営ビジョンを策定しています。創立100周年の2021年を目標年として2007年に策定した「環境ビジョン2021」においては、製品使用時におけるCO2排出量の30%削減(2000年度比)と、グループ全体での製品生産時のCO2排出総量の30%削減(1990年度比*3)という目標を達成しました。2021年度からは、「環境ビジョン2050」に基づき、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロを目指し、三菱電機グループの工場・オフィスからの温室効果ガス排出量の2030年度50%以上削減(2013年度比)を中間目標に設定して取り組みを一層強化するとともに、社会全体の脱炭素化に貢献する事業を育成し、「脱炭素社会」の実現に貢献してまいります。また、TCFD*4の提言に基づいた気候変動に係るリスクと機会の開示に向けた取り組みを継続してまいります。

 「倫理・遵法」については、経営の最優先課題として近年発生した製品・サービス品質、労務、情報セキュリティーの問題を厳粛に受け止め、再発防止に向けた各種取り組みを進めています。三菱電機グループのコンプライアンス・モットーである“Always Act With Integrity”(いかなるときも「誠実さ」を貫く)に基づき、コンプライアンス方針の再徹底、内部統制の強化、教育を核としたコンプライアンス活動による一層の意識浸透にグループ全体で真摯に取り組んでまいります。

 特に一連の品質不適切行為に関しては、2021年7月に社外弁護士を委員長として設置した調査委員会に調査を委嘱し、当社国内全従業員に対するアンケート調査等で得られた内容について客観的データ等の突合による整合性確認、当該拠点関係者や役員に対するフォレンジック調査及び関係者へのヒアリング調査を継続しています。当社としても、全製作所等の早期調査完了に向け、引き続き調査委員会の調査に最大限の協力をしてまいります。また、これらの調査を通じて、一連の品質不適切行為の直接の原因4項目(①「手続き」による品質保証概念の欠如、②品質部門の脆弱性、③ミドルマネジメント層の疲弊、④本社と現場の距離)とその背景となる組織風土上の問題3項目(⑤拠点単位の内向きな組織風土、⑥独立性の高い事業本部制、⑦経営陣の本気度)については複数の製作所で課題となっていることが具体的な事例をもって示されています。これら課題に対処するため、再発防止を含む信頼回復に向けた3つの改革(品質風土、組織風土、ガバナンス)を深化・発展させながら、個々の現場に即した対策を推進してまいります。品質風土改革においては、①牽制機能の再構築、②技術力・リソース課題への対策、③品質コンプライアンス意識の再醸成に向け、2022年4月に外部から招聘したCQO(Chief Quality Officer)の下、品質改革推進本部を中心に当社全拠点・全グループ会社を通じて、共通施策を実行しています。組織風土改革においては、2022年3月に全社変革プロジェクト「チーム創生」が策定した「骨太の方針」を実行フェーズに移し、活動を進展・進化させていくとともに、「人事制度の刷新」に向け各種施策を実行していくことで、2025年度を目安に、新しい文化が定着し、繋がりあい、自走する組織への変革の定着を図ってまいります。ガバナンス改革においては、2021年10月に設置した、外部専門家で構成されるガバナンスレビュー委員会による提言も踏まえ、経営監督機能の強化、内部統制システムの検証やリスクマネジメント体制の強化に向けた取り組み等を進めてまいります。

 労務問題に対しては、3つの改革(品質風土、組織風土、ガバナンス)とあわせて、外部専門家による第三者検証を踏まえた「三菱電機 職場風土改革プログラム」を推進することで、全従業員が心身の健康を維持し、安心していきいきと働ける職場環境の実現にグループを挙げて、引き続き取り組んでまいります。

 セキュリティー対策については、過去に発生した不正アクセス事案を踏まえ、情報セキュリティー基盤強化に向けた活動を推進し、高度化・巧妙化する最新の攻撃パターンへの対策を強化してまいります。

 あわせて、コーポレートガバナンス・コードへの適切な対応を図るなど、「コーポレート・ガバナンス」の継続的な向上に取り組むとともに、適時適切な情報開示に努め、社会・顧客・株主・取引先、及び共に働く従業員とのより高い信頼関係の確立に一層努めてまいります。

 三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。

 

 

*1 ADAS:Advanced Driver Assistance System/先進運転支援システム

*2 三菱電機版ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・運転資本等)に基づいて算出。

*3 削減目標の基準年度:当社単独1990年、国内関係会社2000年、海外関係会社2005年

*4 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請により設置された、民間主導による気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース

 

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