課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営理念

当社グループは、以下の経営理念のもと、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現し、社会的使命と責任を果たし、「信頼される企業」であることを目指します。

<経営理念>

ITを通じて、三方笑顔(お客様の笑顔/社員の笑顔/世間の笑顔)を創造し、人類・社会の進歩発展に貢献します。

1.自己の良心をもって、信頼と安心を築き、三方笑顔を創造します。

2.早さを追求し、スピードあふれる行動をもって、三方笑顔を創造します。

3.新しいIT技術、斬新なサービスをもって、三方笑顔を創造します。

<アスタリスク人の宣言>

1.プロとしての熱意

2.徹底の徹底

3.土俵の真ん中で相撲をとる

4.時間軸を第一に

5.目的、ねらい、コンセプトの明確化

6.夢のある提案をし続け、固定客化

7.何事も「数値」をもって行動

8.常に明るく前向きで、楽しむことを工夫する

 

(2) 経営環境及び経営方針

インターネットによるビジネス革命、スマートデバイスの普及によるモバイル情報革命など、IT技術の変革、IoT(Internet of Thingsの略。モノに通信機能を搭載してインターネットに接続し、情報伝達をする仕組み)による業務改革が世界的に広がりを見せているなかで、当社はモバイルによるソリューションを徹底的に追求し、ハードウエアと、長年培ったソフトウエア技術の融合による新たなサービスを創造してまいります。
 その中でも、当社グループの主力製品はAsReaderシリーズになります。AsReaderシリーズは、iPhoneやAndroidといったスマートフォンに取り付ける、当社開発のバーコードやRFID読取装置・赤外線通信装置であります。
 当社グループは、伊藤忠紙パルプ株式会社との資本業務提携による営業体制の強化や、企業向けのスマートフォン販売促進を行っている国内携帯通信キャリア、スマートフォンメーカーとの協業を進め、当社グループの主力製品であるAsReaderシリーズの売上高拡大を目指し、さらなる成長を目指します。

 

  (3) 経営戦略

  当社グループは、次の経営戦略を軸としております。

  ① 既存主力事業の拡大

 当社グループの既存主力事業であるAsReader事業は、次に掲げるような経営環境の中、事業の拡大を見込んでおります。

   イ あらゆる業界でのニーズ

 AsReaderシリーズは、製造業界、物流業界、小売業界、自動販売機業界、医療業界、アパレル業界など、幅広い業界で導入いただいており、各業界への営業活動を行うことで今後も引き続き、幅広い業界での導入を見込んでおります。

   ロ 各種専用業務用端末から汎用性の高いスマートフォンへの転換

 専用コンピューターがパソコンに置き換わったように、ハンディターミナルのような既存の各種専用業務用端末(ハンディーターミナル、デジタルカメラ、トランシーバー、PDAなどの各種リーダー)が汎用性の高いスマートフォンに置き換わり、スマートフォン1台で様々な業務を行うことが可能となり、「スマートフォンで業務を行う」ことが主流になることで、スマートフォンに取り付けて使用する当社グループの製品の導入機会が増加すると見込んでおります。

 

    ハ スマートフォン法人利用台数の増加

 次のような理由から、法人利用の携帯通信端末がフィーチャーフォンからスマートフォンへ切り替わっていき、スマートフォン法人利用台数が増加することを見込んでおります。当該増加により、スマートフォンに取り付けて使用するAsReaderシリーズの導入機会が増加すると見込んでおります。

①国内携帯通信キャリアの動向

 当社は国内携帯通信キャリアと協業した営業を行っております。その中で、当社製品のような業務効率化ソリューションの提案とともに、法人へのスマートフォン販売に力を入れている傾向にあり、今後も国内携帯通信キャリアによる法人販売強化は続くものと見込んでおります。

②通信料金の低下傾向

  大手国内携帯通信キャリアのサブブランドなどの登場により、スマートフォンの通信料金を抑えることが可能な環境になりました。

ニ 経済産業省による宣言

 経済産業省が、2017年4月にコンビニ各社と「コンビニ電子タグ1,000億枚宣言」を発表し、2018年3月に一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会と「ドラッグストアスマート化宣言」を発表しており、RFID等を活用したサプライチェーンの効率化を推進する動きがあります。
 またRFタグの単価が高価であることがRFIDソリューションの導入時の障壁となっておりましたが、RFタグの普及に伴い単価が低下してきており、当社グループのRFID関連商品の販売を行いやすくなることを見込んでおります。

 

  ② 新製品の拡販

 当社グループが新たに開発・販売した、次の新製品の拡販を行ってまいります。

   イ セミセルフレジ

 「人検出・動体追跡」技術により、購買客が有人レジでの購買品登録後、複数設置された自動精算機のどれを選択しても、正しく精算することが可能になります。当該製品を導入することで、レジ係員の現金等の受け渡しといった負担が軽減され、動体追跡と精算データを紐付けることで、精算自動化の懸念点である不正精算(不払い)の抑止も可能にするソリューションです。

   ロ 画像認識安全監視システム「AsWatcher」

 画像認識技術で侵入禁止ゾーンを監視しておき、侵入禁止ゾーンに人が立ち入った場合に、警報を鳴らしたり、電灯を点滅させたりするセキュリティ対策製品になります。企業のセキュリティ強化に有効なソリューションです。

 

  ③ 営業力の強化

 当社グループは次の施策により、営業力の強化を見込んでおります。

   イ 伊藤忠紙パルプ株式会社との資本業務提携

 伊藤忠紙パルプ株式会社と資本業務提携を通じ、両社の持つ固有のノウハウを共有し、リソースを融合することで、顧客企業へのより広範なビジネスソリューションの創出・提供を行い、相互の事業発展とビジネスにおいてのIoT、自動認識の新しい価値づくりを進めております。

   ロ 国内携帯通信キャリアやスマートフォンメーカーとの協業

 企業向けのスマートフォン販売促進を行っている国内携帯通信キャリアやスマートフォンメーカーとの協業を進め、当社グループの主力製品であるAsReaderシリーズの販売拡大を進めております。

 

  ④ 海外展開

 海外におけるバーコードリーダー、RFIDリーダーの市場は国内よりも大きく、AsReaderシリーズの販売機会があると見込み、海外でのAsReaderシリーズ販売を目的とした連結子会社を米国(2015年1月)及び欧州(2018年2月)に設立し、現地法人による販売活動を行っております。

 米国については、病院、警察署、消防署、国際宇宙ステーション、牧場など、多くの場所でAsReaderシリーズの導入を行っております。米国では大型案件を獲得した後に他の業界でも話題となり、他の業界での案件獲得が進みやすくなる傾向にあります。2021年2月に飲料メーカーからの約17,500台の受注を獲得し、当該導入実績を機に、さらなる水平展開・案件獲得を目指してまいります。

 欧州については、現地法人設立後、代理店網の構築など基盤作りを進めてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により営業活動が停止状態にありました。徐々に客先訪問が可能になりつつありますが、基盤構築にはまだある程度の時間が必要と考えています。現在、欧州市場では、ラグジュアリーブランドでの商材管理や、アパレル向け、郵政関係、スーパーマーケット向け、自動車メーカーなどでの在庫管理案件の交渉を進めており、案件化に向けて取り組んでまいります。また、いくつかの代理店候補と取引条件の交渉を開始しております。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

  当社グループでは受注高を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としております。

 当社グループ製品に対する将来需要を表す尺度であり、将来業績の先行指標として機能し、今後の経営成績と強い関連性があります。将来業績にとって重要な指標であり、事業活動におきましても常に受注高を意識して行動し、当社グループの業績評価の指標としております。

 受注高=受注件数×受注単価であることを常に念頭に置き、「受注件数」をいかに増やし、「受注単価」をいかに上げるかを、営業活動の行動規範としております。また、これら構成要素を分析して、現状認識、課題確認、戦略立案に活用しております。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 製造に関する課題

 当社の主力製品であるAsReaderシリーズは、すべて海外の生産委託協力会社にEMS生産により製造委託をしております。このため、急な生産変更が困難であり、適宜適切な需要把握に基づく計画的な生産が必要になっております。また、世界経済情勢の変化に伴う為替変動のリスクが常に介在し、原価構造が悪化する可能性があります。

 

② 営業手法の転換

ハードとソフトを融合した事業展開を目指すことが、当社にとって総合力を発揮し、他社との優位性を活かす大きな武器と考えており、この融合による業務改革のソリューション提案、具体的には課題に即したシステムの構築や統合、ニーズに対応するアプリやハードの提供につなげることが事業基盤の強化につながります。統合したソリューションとして提案する課題解決ベンダーとして、既存のシステム開発会社やシステムコンサルタント、或いは自動認識機器メーカーといった従来のビジネス領域に対して、当社は全てを提供できるワンストップ課題解決ベンダーとしての展開を行っております。
 また当社はB to Bの領域で、高い専門性を活かして業務上の課題解決策を提供するため、エンドユーザーへの直接営業を主にしておりましたが、全国展開、グローバル展開を遂行する上での課題であった、営業網の脆弱さを強化する目的で、伊藤忠紙パルプ株式会社との資本業務提携や、名古屋営業所の開設、その他代理店網を構築し、広範囲な営業網を通じて、独自の自動認識ソリューションを全国の企業へとアプローチしてまいります。
 

③ グローバル市場の開拓と海外管理体制の強化

 当社の主力製品であるAsReaderシリーズの市場は、米国、欧州を中心に海外に大きく広がっていくと予想しております。事業拡大のためにはこの市場の攻略が不可欠であります。米国については、米国子会社でありますAsReader,Inc.が販売拠点となり、病院などの医療機関向けやイベント会社向け、米国海軍向け、警察署向け、牧場での家畜管理向け、飲料メーカー向けなどに販路を形成しております。欧州については、オランダにあります子会社AsReaderEurope B.V.が代理店開拓を行い販売網の構築を目指す他、当社からの人員派遣等も含めた総合的な対応を検討しております。アジア地域は、中国の大連市にある子会社の大連明日星科技有限公司を安定した販売拠点として確立する予定であり、引き続き、中国、台湾を中心にさらなる市場開拓を進めてまいります。
 今後、海外での安定した販売網を構築し、業務用自動認識機器需要のボリュームゾーンを狙うにあたり、エリア・マーケティングも必要になってまいります。そのポイントとしては①ターゲット市場の明確化②最適販路の設定③現地適合商品の開発が重要になります。特に、現地適合商品の開発は、欧米の巨大市場を攻略する際には重要であり、そのための開発体制の強化が必要不可欠であります。国ごとの品質基準の違いに対応した品質保証の体制構築や、それぞれの国の市場特性に合った、現地商品に対抗できる商品開発のための社内体制構築が課題であると考えております。課題の解決に向けて、海外における主要展示会に参加し、多方面のユーザーからの様々な要求や商品への要望及び機能的な訴求点を確認し、開発の指針としております。また、グローバル管理体制の構築が重要課題であり、現在、基幹システムや会計システム等の海外との連携による管理強化に取り組んでおります。

 

④ 新技術(自動認識技術)の深耕と新商品の上市

当社は常に顧客であるエンドユーザーのニーズを調査し、ニーズを満たす製品販売に向けた技術開発、商品開発を推進しており、その展開を拡大することにより収益を確保し、持続的な成長につなげてまいります。自動認識技術の深耕が将来のコアコンピタンス(企業の中核となる強み)になると考え、特許などの取得にも注力し、当該技術を用いた新商品の販売により、社会に新しい価値を提供してまいります。また、画像認識技術としては、人物認識やシンボル分析(バーコードやQRコード、その他記号の分析)などを中心に研究し、ロジカルなアルゴリズムに加え、AI(人工知能)での機械学習やディープラーニング(深層学習。人間が自然に行うタスクをコンピューターに学習させる機械学習の手法のひとつ)などの活用により、画像認識の精度を上げてきました。バーコードやRFIDで蓄積してきた画像認識技術とセンサー技術を融合することにより、自動認識を用いたDX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル技術による変容)が可能となります。新しい試みとしては、療養型病棟を想定した画像認識による人追跡(人検出・動体追跡)技術で入院患者の動線を捕捉し、徘徊を防止するシステムの構築など、セキュリティ面での当社技術の活用が期待されております。
 具体的な商品としては、当社開発の「人検出・動体追跡」技術により、購買客が有人レジでの購買品登録後、複数設置された自動精算機のどれを選択しても、正しく精算が可能になるというセミセルフレジを2020年11月に発表いたしました。レジ係員の現金等の受け渡しといった負担が大きく軽減され、動体追跡と精算データを紐付けることで、精算自動化の懸念点である不正精算(不払い)の抑止も可能にするソリューションです。小売業界、アパレル業界や医療業界をターゲット市場として導入を推進してまいります。

 

⑤ RFID市場での知名度の向上

当社がRFIDリーダー/ライターを発表した2014年7月から約8年が経過しましたが、市場における当社知名度はまだ高いとはいえない状況にあります。今後、既存製品について他社製品との差別化をさらに進め、またRFIDリーダーの使用により製商品の個品管理を可能にするアプリケーションAs Force(アズフォース)等をソリューション・ツールとして市場に投入、各種展示会出展やAsReader Conference(当社単独で開催しており、AsReaderの導入先活用事例や自動認識技術についての説明、最新のRFタグ情報の提供など、AsReader新製品情報や海外事例の説明等を行う発表会)の開催などを通じて、当社の強みのアピール、RFID市場における知名度の向上を図ってまいります。

 

⑥ 地域密着型営業活動の推進

当社は、地域に密着した個別営業による素早い顧客サービスが重要であると考えており、それらを徹底することとしています。その一環として、2020年11月に名古屋営業所を開設しておりますが、今後も、顧客満足度の向上と事業発展のため、順次、営業所を開設し、全国のお客様に満足していただける体制の構築を図ってまいります。

 

⑦ ストックビジネスの拡大

当社では、これまで都度提供されていたメンテナンスに関する年間保守契約について見直しを行い、顧客の細かなニーズに応えるべくAsReader Care Selectとしてサービスを開始し、新規契約を推進する他、既存システムにも連携して在庫管理やPOSレジを可能にするアプリケーションAsReader Apps(アズリーダーアップス)の拡大、及び顔認証技術であるAsReader One(アズリーダーワン)を用いたスマートロックアプリケーションAsReader GoMA(アズリーダーゴマッ)の月額課金によるサービスの開始など、ストックビジネスの構築、推進を図ってまいります。

 

 

⑧ 特許戦略の構築

 当社では、特許や技術ノウハウなどの知的財産は、重要な経営資源であるという認識のもと、知的財産戦略を定め、新規市場と新規顧客開拓のための知的財産マネジメントの充実を推進してまいります。
 権利化については、営業・開発・生産・管理が一体となった知的財産戦略活動により、知的財産権の出願、権利化などを推進し、知的財産権の積極的活用により、市場における優位性の確保を図ってまいります。また、第三者特許の侵害を防ぐための施策を定め、リスク回避に向けた取り組み、体制を構築しております。さらに、知的財産活動のレベル向上のため、顧問弁理士による特許勉強会なども実施しております。
 
(特許係争に関する注意事項)
 株式会社ファーストリテイリング(株式会社ユニクロと株式会社ジーユーを含む。)と係争中の特許(特許第
6469758号等)につきましては、一連の特許全てを株式会社NIPに譲渡しております。このため損害賠償やライセンスなどの判断についても、特許権者である株式会社NIPの交渉事項となります。
(当該係争の当社グループに与える影響)
 当該裁判の判決結果及び損害賠償やライセンス料における交渉等の進展があった場合でも、株式会社NIPと当社の特許譲渡契約において、当社に責任が及ぶものや当社が受領する対価はなく、今後の当社グループの経営成績への影響はございません。
 なお、当該特許は譲渡しましたが、当社は本件特許の実施許諾を株式会社NIPより受けており、商品やサービスの提供を継続することが可能ですが、株式会社NIPに対して特許使用料の支払いが必要となります。

 

⑨ 人材の確保

当社は少人数で効率的な組織運営を行ってまいりましたが、今後の事業規模の拡大を考えた場合、優秀な人材の確保を経営の重要課題としております。人材採用においては、当社の経営理念への共感、意欲、業務推進能力を兼ね備えた即戦力の中途採用や新卒者の定期採用を行ってまいります。

 

⑩ 内部管理体制の強化

当社は、現状、小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものになっております。今後、企業価値の継続的な増大を図るにあたっては、業務執行体制の充実を図り、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するような仕組みを強化・維持していくことが不可欠であると認識しております。そのため、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な運用、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底してまいります。

 

⑪ リスクマネジメントへの取り組み

近年、想定しない規模で自然災害や感染症等が発生しており、かかる環境下において事業継続計画(BCP)の重要性が増しております。大規模な自然災害が発生した場合でも、被害を最小限にとどめ、復旧までの時間を最小限におさえて業務を継続できるよう、業務インフラ、緊急時連絡体制、本社屋をはじめとする各設備の見直しを行ってまいります。また、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックの発生に際しては社会全体での取り組みが必要となりますが、当社としても、感染症の発生初期→感染拡大期→蔓延期→回復期を想定し、役員、従業員に向けて適切な対策を検討・実施してまいります。

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