文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1.経営方針
当社は、「素材再生企業として新しい産業を創出し、社会の持続的発展に寄与することを目指す」という企業理念のもと、これまで廃棄されていた生産物を再生させる事(REFINE)で、従来とは逆の流れ(INVERSE)の事業を創造します。
2.経営環境
当社グループを取り巻く環境としては、 少子化に伴う労働人口の減少による人手不足、海外における通商問題の動向や米国の政策動向、またその影響等不確実性があり、引き続き注視すべき状況が続くものと考えられます。とくに、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は収束の見通しが立たず、その影響による経済活動の停滞も今後の回復状況が見通せない状況となっており、2021年に延期された東京オリンピックもその開催が実現するかどうか予断を許さない中で、当社グループの事業領域に関わる市場においては、不動産・建築市場への影響が懸念されるところとなっております。
このような環境の中、昨今の廃プラ処理問題、海洋ゴミ問題への社会的な関心の高まりは当社グループにとっては追い風であり、これらの課題解決は当社グループの事業領域そのものであります。社会の課題をRefineすることで価値を生み出す、すなわち廃棄物のリサイクルという枠にとらわれることなく社会的な課題の解決によって価値を生む、低価値・マイナス価値のものをRefineすることで新たな価値を創り出すことに取り組んで行きたいと考えております。環境問題などの社会的課題は“ビジネスの力”によって解決することで持続可能となるという信念のもと、新しい資源を生み出すことで結果として社会貢献することを目指してまいります。
3.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後ますます競争激化が予想される中、廃棄物リサイクル先進企業として業界をリードしていくために、当社グループとしては以下の内容を優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として認識しております。
(1)再生樹脂販売製造事業にかかる課題について
a.使用済みカーペットタイルの安定的確保について
再生樹脂製造販売事業において、再生樹脂生産量は建設系産業廃棄物である使用済みカーペットタイルの調達量に依存しております。ゆえに再生樹脂を安定的に生産するためには、使用済みカーペットタイルの安定的な調達ルートの確保が必要となります。具体的な施策として、既存取引先からの搬入数量の増加を図るための営業提案を行うとともに新規取引先開拓を図ってまいります。
b.販売数量の拡大について
グリーン購入法の特定調達品目やエコマークの基準改定の影響から、各カーペットタイルメーカーからの当社グループ製品に対する引き合いが増えているものと認識しております。当社グループとしては、今後も当社グループ製品に対する引き合いが引き続き増加すると想定しており、増加した需要に対応できるよう、生産能力を増強し、販売数量の拡大を図ってまいります。
c.販売価格の向上について
環境対応製品の市場拡大に伴い、当社グループの製品に対する需要は拡大しており、当社グループの製品の販売価格向上を目指す環境が整ってきていると認識しております。当社グループでは、更なる当社製品の品質改善を行うことで当社グループの製品の価値を高めつつ、この環境を活かして、収益性の更なる向上を図ってまいります。
d.コスト競争力の強化について
今後競争の激化も予想される中、当社グループとしては以下のようなコスト削減策を講じてまいります。
① 回収した使用済みカーペットタイルのうち廃棄処分品を減少することによる歩留りの向上及び生産ライン稼働率の向上を図ります。
② 生産工程の効率化による人件費の圧縮等による原価低減を図ります。
③ 産業廃棄物処理事業と協業して使用済みカーペットタイルの撤去から再生樹脂製造までの一貫実施を拡大することで、使用済みカーペットタイルの選別作業の削減とこれに伴う原価低減を図ります。
④ 再生樹脂製造販売事業で使用する生産設備及びプロセスの多くが当社独自の仕様であり、設備導入及び本番運用において、予期せぬトラブルや故障が起こる可能性があります。突発的な設備トラブルに係るリスクを最低限に抑えるため、日常的に生産設備の保守・メインテナンスに努めるとともに、設備補修技術の蓄積も行ってまいります。
e.新規事業領域への進出について
当社では廃棄物の再資源化のための基礎技術として機械的処理(切削・粉砕等)による分離技術をベースにカーペットタイルのリサイクル事業を拡大してきましたが、新たに開発した低コストな高純度分離技術や混合圧縮成形技術により新規事業領域への進出による成長を見込んでおります。
高純度分離技術に関しては、自動車エアバッグの基布や使用済み漁網から再生ナイロン樹脂を再資源化することを実現する画期的な技術となります。
また、混合圧縮成形技術に関しては、微粉体形状の原料を低コストで圧縮成形することにより、鉄鋼メーカーで使用されている製鋼副資材の製造を実現いたしました。
これらの新技術により、カーペットタイルリサイクル事業に加えてナイロンリサイクル事業、製鋼副資材製造事業に新規参入することとなり、当社の事業領域が建設業界に加えて、自動車業界、鉄鋼業界へと拡大し、持続的な成長に向けた事業基盤の強化が実現しました。
また、これまで培った廃棄物の再資源化に関する基礎技術、生産技術、マーケティングノウハウなどを、コンサルティングや生産/処理設備の販売、ライセンス供与などを通じて、顧客に価値提供をしていくソリューション事業を開始しました。当該事業を通じて今後も継続し新規事業領域への進出を図ってまいります。
(2)産業廃棄物処理事業にかかる課題について
a.人材確保について
株式会社ジーエムエスで行っている産業廃棄物処理事業については、労働集約的な側面が強く今後の成長のためには十分な人材確保が必要となります。一方で当該事業については解体・仕分け業務の中で危険を伴う作業も多く存在し、人員の採用が困難な側面もございます。当社グループでは労働環境の改善並びに安全管理に努めることで働きやすい環境を提供し、十分な人材確保ができるように努力してまいります。
b.処理能力の拡大について
産業廃棄物処理事業の収益は、受け入れた廃棄物の体積によって収入が変動します。そのため、当該事業を進捗させるためには、十分な処理能力を確保するための処理施設の設置が必要となります。当社グループでは、上述のとおり再生樹脂製造販売事業の拡大のためにも将来的には産業廃棄物の回収拠点を全国に拡大し、処理能力の拡大に努めることを検討してまいります。
(3)当社グループ事業共通の課題
a.強固な財務基盤の構築について
当社グループ事業を安定的に運営し事業規模拡大を図る上では、財務基盤の強化は不可欠と認識しております。今後利益剰余金の積み増しを図ることで財務基盤を強化するとともに、借入条件並びに借入残高を適時適切に見直すことで金利コストの削減に努めたいと考えております。
b.コンプライアンス体制の強化について
当社グループの主要業務のひとつである産業廃棄物処理事業は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき許認可を得て事業を行っております。ゆえに同法規定に則り事業を遂行することはもちろんのこと、その他事業活動における法令、企業倫理、社内規程の遵守を確保するため、当社グループの役員及び従業員にコンプライアンスの重要性について周知徹底を図ってまいります。
c.組織体制・人材の強化等について
当社グループとして事業拡大に対応をするため、直近では組織として事業部制を導入し、各従業員に対して人事制度の刷新を行いました。 また、 新型コロナウィルス感染症の影響により、テレワーク(在宅勤務)の活用、Web会議や社内チャットツールの利用促進等の対策により、働き方改革を実施しています。
今後も内部管理体制の更なる強化が重要課題になることを認識し、社員研修・教育制度の充実、人事制度の適切な運用に取り組むことで、将来、当社グループの核となる優秀な人材の確保・育成を図るとともに、事業をより効率的かつ安定的に運営していくため、適宜、組織体制の最適化を図ってまいります。
d.内部統制の整備について
当社グループは、2020年6月期事業年度末日において、適切な経理・決算業務のための必要かつ十分な専門知識を有した社内における人材が不足しており、適切な決算資料や開示書類の作成及び会社内部での検証を行うことができず、当事業年度末の財務諸表及び連結財務諸表に関して会計監査人からも内部統制の不備を指摘されました。当社は、財務報告の信頼性を確保するための内部統制の整備及び運用の重要性を十分に認識しており、経理部門に必要かつ十分な知識を有する人員の確保を行い、当該不備を早急に解消し、適切な内部統制を整備し運用してまいります。
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