業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度(2021年8月1日~2022年7月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の定着化に伴い、行動制限の緩和など経済活動正常化への動きが見られたことで、緩やかに回復の兆しが見られたものの、感染症の急激な再拡大などもあり、景気の先行きは不透明な状況が続いております。

当社グループにおいては新型コロナウイルス感染症拡大や、ロシア・ウクライナ情勢による業績への大きな影響はないものの、今後、経済に与える影響がさらに長期化、深刻化した場合は、広告主の減少などによる広告市場の縮小や、個人住民税及び所得税の減少によるふるさと納税市場の縮小、さらには営業活動の制限などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは「“ひとの未来”に貢献する事業を創造し続ける」というグループビジョンの下、「コンシューマ事業」と「インターネット広告事業」の2つのセグメントによって構成されております。コンシューマ事業の主力であるふるさと納税事業の市場については、2021年度のふるさと納税受入額は、前年度比約1.2倍の8,302億円、受入件数も前年度比約1.3倍の4,447万件と引き続き拡大をしております。また、ふるさと納税の控除適用者数(ふるさと納税を実際に行い住民税控除適用された人数)も前年度比約1.3倍の740.8万人と増加しており ※1 、「地方創生の実現」という本来の趣旨に沿った制度として広く浸透しつつあります。

また、インターネット広告事業の主たる事業領域である国内インターネット広告市場における2021年のインターネット広告費は、前年比121.4%の2兆7,052億円と社会のデジタル化加速が追い風となり、堅調に成長を続けております。中でも、インターネット広告媒体費は、新型コロナウイルス感染症の影響による消費の低迷と広告出稿が減少した前年からの反動で、前年比122.8%の2兆1,571億円と伸長しており、特に動画広告需要の高まりが顕著となりました ※2 。2022年のインターネット広告媒体費は全体で前年比115.0%、2兆4,811億円になると予測 ※3 されており、さらなる市場の成長が期待されております。

このような事業環境の下、当社グループは、インターネットマーケティング企業として、祖業であるインターネット広告(アドネットワーク)事業で培ったテクノロジーとマーケティングノウハウを多角的に活用し、新たな市場の開拓と成長事業分野への投資を推し進め、さらなる企業価値の向上に努めております。

地域活性化などの社会課題を解決する機能を持つふるさと納税事業においては、「ふるなび」ブランドの認知度向上とプロモーション活動を推進し、取引自治体を増やすと共に、自治体との共創による飲食や宿泊など、独自企画の体験型返礼品を強化してまいりました。インターネット広告事業では、アドネットワーク事業において収益構造の改善を進め、安定的な収益の確保に努めると共に、重点領域であるメディアソリューション事業やアプリ運営事業の成長を推進し、ヘルステック分野のSimple App Studio株式会社を2021年10月に子会社化するなど、メディア関連事業の拡大に努めております。

さらに、当社グループは、中長期的な視点でサステナビリティ経営に取り組むことで社会からの期待に応えるため、当連結会計年度より独立社外取締役諮問委員会を設置し議論の深化を図り、ガバナンスに関する取り組みを強化しております。また、サステナビリティ基本方針を策定し、環境・気候変動問題をはじめとする社会課題の解決に向けた取り組みについてもより一層充実させて適時に開示しております。2021年12月には、「ふるさと納税地方創生協働ラボ」を設立し、コロナ禍で疲弊する東京都のひとり親家庭延べ約6,400世帯に、約32トンのお米を送付するなど、産官学協働でふるさと納税を活用した社会課題解決に取り組んでおります。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は、13,933百万円(前年同期比120.2%)営業利益は3,793百万円(同112.2%)経常利益は3,839百万円(同114.0%)親会社株主に帰属する当期純利益は2,678百万円(同116.5%)となりました。

なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下、「収益認識会計基準」という。)等を適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。当該会計基準等の適用については、「収益認識に関する会計基準」第84項に定める原則的な取扱いに従って、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用しているため、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。

 

※1 出典:総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果」、2022年7月29日公表

なお、ふるさと納税受入額等の実績は、住民税の計算期間と異なり、自治体の事業年度(4月1日~翌年3月31日)の状況を集計したものであります。

※2 出典:株式会社電通「2021年 日本の広告費」、2022年2月24日発表

※3 出典:株式会社CARTA COMMUNICATIONS/株式会社D2C/株式会社電通/株式会社電通デジタル「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」、2022年3月9日発表

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

なお、各セグメント別の売上高は、セグメント間の内部売上高及び振替高を含む数値を記載しております。

また、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、当連結会計年度の期首に全社費用の配賦方法を見直しております。以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後の配賦方法に組み替えた数値と比較して記載しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。

 

(コンシューマ事業)

コンシューマ事業では、ふるさと納税事業「ふるなび」及び周辺事業としてトラベル事業、レストランPR事業並びにポイントサービス事業を展開しております。主力事業であるふるさと納税事業「ふるなび」は、制度の認知拡大や巣ごもり需要を受けた市場成長に加え、契約自治体数や掲載返礼品数の増加、TVCMの放映やWEB広告を活用した新規会員獲得施策及び、リピーターへの需要想起施策を強化したことで、会員数、寄附件数共に増加し、持続的、安定的な成長を続けております。また、飲食や宿泊などの体験型独自返礼品の契約自治体数も順調に拡大しており、加えて、2021年12月より再生可能エネルギー由来の電気を利用した場合の電気代の支払いに利用できる電力返礼品の取り扱いを開始いたしました。さらに、キャッシュレス決済に使える各種ポイントサービスなどへ交換可能な「ふるなびコイン」の交換先を拡充するなど、さらなる顧客利便性の向上を図っております。

これらの結果、当連結会計年度のセグメント売上高は9,916百万円(前年同期比128.6%)、セグメント利益は2,495百万円(同126.4%)と大幅な増収増益となりました。

 

(インターネット広告事業)

インターネット広告事業では、アドネットワーク事業、アフィリエイト事業、メディアソリューション事業、広告代理店事業(サイバーコンサルタント社)、アプリ運営事業(オーテ社及びSimple App Studio社)等を展開しております。成長強化領域であるメディアソリューション事業では、Googleプラットフォームの仕様変更等の影響を受けたものの、過去最高のパートナー数を記録するなど、堅調に推移しております。アプリ運営事業では、コロナ禍における緊急事態宣言等の行動規制解除以降、アプリの接触機会の減少などによる成長鈍化傾向が見られましたが、新たなタイトルの上市によるリピーター獲得で、成長の再加速を目指しております。

これらの結果、当連結会計年度のセグメント売上高は4,065百万円(前年同期比103.3%)と増収、セグメント利益は1,415百万円(同97.6%)なりました。

 

②財政状態

当連結会計年度末における総資産は18,193百万円(前連結会計年度末比798百万円の減少)となりました。これは、主に現金及び預金が1,153百万円減少したものの、流動資産のその他が295百万円増加したことによるものであります。

負債は4,787百万円 (同514百万円の増加)となりました。これは、主に預り金が565百万円増加したことによるものであります。

純資産は13,406百万円(同1,313百万円の減少)となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上により2,678百万円増加したものの、配当金の支払いにより2,150百万円、自己株式の取得により1,999百万円減少したことによるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)の残高は、前連結会計年度末より1,153百万円減少し、残高は14,268百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は3,225百万円(前連結会計年度は3,959百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益3,842百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は234百万円(前連結会計年度は83百万円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出60百万円及び投資有価証券の取得による支出108百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は4,144百万円(前連結会計年度は817百万円の支出)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出1,999百万円及び配当金の支払額2,148百万円よるものであります。

 

④生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

コンシューマ事業

9,916

128.6

インターネット広告事業

4,016

103.4

合計

13,933

120.2

 

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度における販売実績の著しい変動の要因は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は総販売実績

   の100分の10未満であるため記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響の仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。

そのほか、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、上記「(1)経営成績等の状況の概要  ① 経営成績の状況 ② 財政状態」をご参照ください。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「2  事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況については、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

当社グループは、今後も更なる収益基盤の安定化及び持続的な成長を図るために、収益源の多様化を実現する必要があると考えており、自社による新規事業の創出及び拡大のみならず、業務提携、M&A等の新たな事業・サービスへの提携・投資に積極的に取り組んでいく方針であります。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金及び制作費の支払等並びに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費です。また、当社グループ及び当社グループのサービスの知名度を向上させ、新規ユーザーの獲得とユーザーエンゲージメント強化のための広告宣伝費及び、事業開発とシステム開発に係る人件費であります。投資を目的とした資金需要は、主に業務提携、M&A等の新たな事業・サービスへの提携・投資及び設備投資等によるものであります。これらの資金需要は自己資金でまかなうことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施致します。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループが重視している経営指標のうち、中長期的な資本効率として設定しましたROEにつきまして、当連結会計年度は19.1%となりました。今後も目標の15%に対して業績の向上と併せて資本効率についても注視し、事業基盤の維持及び持続的な成長のために必要な株主資本の水準を保持しつつ、業績の動向を踏まえた安定的な配当の実施及び柔軟な自己株式の取得により、株主還元を着実に充実させてまいる所存でございます。

 

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