業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

前連結会計年度より報告セグメントに不動産賃貸事業を新たに追加し、建設コンサルタント事業を営む単一セグメントから変更しています。

① 財政状態の状況

当連結会計年度の財政状態は、総資産は前連結会計年度末に比べて4億69百万円減少し、89億34百万円となりました。これは主に、現金及び預金が2億45百万円減少したことによるものです。

負債は前連結会計年度末に比べて12億83百万円減少し、28億94百万円となりました。これは主に、業務未払金が1億31百万円、未成業務受入金が2億40百万円、未払法人税等が46百万円、未払消費税等が1億65百万円、長期借入金が6億54百万円それぞれ減少したことによるものです。

純資産は前連結会計年度末に比べて8億14百万円増加し、60億39百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加7億68百万円によるものです。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、ワクチン接種の広がりを受けて新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らぎ、経済活動には回復の兆しが見られたものの、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化による資源価格の急騰や供給リスクに加え、新型コロナウイルスの新たな変異株による感染再拡大など、依然として先行きに不透明感が残る状況となりました。

当社グループの属する建設コンサルタント業界は、国土強靭化対策など国や自治体の公共投資規模の持続を受け、引き続き堅調な市場環境となりました。特に、頻発・激甚化する気象災害や巨大地震災害に備えた防災・減災事業、深刻化する橋梁・道路等の老朽化対策事業、安全・安心なまちづくりに向けた事業など、様々な社会課題への技術的ニーズが益々高まっています。

このような状況の中で、当社グループは3か年の最終年次を迎えた中期経営計画「Co-Creation(共創)22」に基づき、グループ内および外部企業・団体との連携により、基本戦略である「次世代事業の創出と業務/市場/顧客の多様化」、「多様な人材の雇用と強化」、「DXによる生産性向上」の施策の実現に向けて事業活動を推進しました。

国内事業では、国土強靭化対策を踏まえた防災関連業務やインフラ老朽化対策業務において堅調に受注が拡大しており、加えて得意とする交通分野でも大規模交通調査を各地域で複数受注しました。また、これらの業務成果に対して、国土交通省4地方整備局(九州、中国、四国、東北)において優良業務、優秀技術者の局長表彰を多数受賞しました。

海外事業では、多くの国々で渡航制限が緩和され、アフリカのサブサハラ地域村落における給水や衛生課題の整理・解析を行うなど、水資源・防災分野で堅調な受注状況となっています。

新規戦略分野では、国土交通省「令和4年度PPP協定パートナー」に選定される等、PFI事業関連業務が順調に拡大しています。また、橋梁下部工基礎の「洗掘モニタリングシステム」、逃げ遅れゼロを目指す「AI水位予測による防災システム」、国土交通省の「3D都市モデル」、データ駆動型都市マネジメント事業などDX関連の各種新商品・新事業を開発し、顧客拡大に向け事業展開を図っています。

また、今期よりサスティナビリティ推進委員会を組成し、グループ全体のSDGs活動を強化しており、北九州市「響灘ビオトープ」による生物多様性保全の取り組みや、グリーンインフラ、持続的なまちづくりに関する新事業開発を継続的に推進しています。経営管理面では、DX施策推進の一環として、グループ全体の会計・財務・総務データ全体を統合する基幹システムを構築し、業務の効率化・高度化を促進しました。

以上の結果、当連結会計年度は、国内の公共事業が堅調だったことを受けて、受注高は88億65百万円、売上高は85億46百万円となりました。

損益面では、売上の堅調な増加によって、経常利益は11億61百万円(前期は9億39百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は、7億80百万円(同3億72百万円)となりました。

なお、当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020 年3月31 日)等を適用しています。そのため、前年同期比等は、参考値として記載しています。

 

 

 

セグメントごとの業績は、次のとおりです。

(建設コンサルタント事業)

建設コンサルタント事業の具体的戦略としては、現在比較優位にある既存事業分野において、異業種企業なども含む様々な連携により一層の強化を図っていきます。また、DX施策を推進し業務の効率化を図るとともに、AIやICT活用により多様な新規事業の創出を目指しています。

事業会社毎の概況としては、主要子会社である株式会社福山コンサルタントでは、モビリティ形成事業、スマートコミュニティ事業の市場展開を目的とした新会社「Fracti合同会社」を設立するなどDX関連業務に取り組んでいます。社会インフラ、防災事業では、最新の建設技術を一般公開する建設技術公開「EE東北'22」にて、下部工基礎の洗掘モニタリングシステム、逃げ遅れゼロを目指す水防災システム、人流ビッグデータ可視化ツールを出展するなど、技術の開発を進めております。環境、都市・地域再生事業では、国土交通省より「令和4年度PPP協定パートナー(個別相談タイプ)」に選定されました。また、PPPプロジェクトにおいて、東洋大学学位論文審査会より「社会的インパクトの最大化を促すPPP審査指標設定手法の研究として、「優秀論文賞」を受賞しました。

四国を拠点とする株式会社環境防災では、地元徳島県下での受注が堅調に推移しており、さらに戦略的な展開を強化している愛媛地域において、2022年7月に愛媛事業所を松山支店に改名し防災関連分野の顧客基盤強化を図っています。

開発途上国向けの防災、水資源開発業務を主力とする株式会社地球システム科学は、各国の新型コロナウイルス感染症の影響による海外渡航制限緩和に伴い、現地でのコンサルタント業務を消化できる体制を再構築できる環境になってきています。プロジェクト業務として実施したアフリカのサブサハラ地域における「井戸データベースの構築」において様々なデータの統合・整理・解析を行うなど、水・防災分野を中心に積極的な受注を進めています。

株式会社エコプラン研究所では、SDGs活動を推進しており、その一環として、収穫したホップを使用した新たな取組として、環境に配慮したシャンプー・トリートメント「HIBIKI FRESH HOPS 若松エール」の企画・開発など新規事業開発に取り組んでいます。

以上の結果、売上高は85億39百万円(前期は81億81百万円)、損益面では、営業利益は10億94百万円(同8億81百万円)となりました。

なお、当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020 年3月31日)等を適用しています。そのため、前年同期比等は、参考値として記載しています。

 

当社グループは、「中期経営計画」に掲げる目標達成に向けて、事業分野の拡大と海外展開の加速化を進めており、当連結会計年度より建設コンサルタント事業における事業分野の見直しを実施しています。なお、前連結会計年度と比較した事業分野別の売上高は次のとおりです。

 

事業分野

前連結会計年度

当連結会計年度

前年比(%)

 

金額(千円)

比率(%)

金額(千円)

比率(%)

モビリティ形成事業

2,763,262

33.8

2,823,132

33.1

2.2

環境、都市・地域創生事業

1,514,848

18.5

1,726,739

20.2

14.0

社会インフラ、防災事業

3,903,441

47.7

3,989,450

46.7

2.2

合計

8,181,551

100.0

8,539,323

100.0

4.4

 

 

 

建設コンサルタント事業における当連結会計期間の国内・海外での販売実績は以下のとおりです。

 

事業分野

前連結会計年度

当連結会計年度

前年比(%)

 

金額(千円)

比率(%)

金額(千円)

比率(%)

国内

7,725,681

94.4

7,891,704

92.4

2.1

海外

455,870

5.6

647,618

7.6

42.1

合計

8,181,551

100.0

8,539,323

100.0

4.4

 

 

(不動産賃貸事業)

不動産賃貸事業については、事務所用物件の取得により、当社と取得時の賃貸人との間で賃貸借契約を締結していることから賃貸収入が発生しています。その結果、売上高は93百万円(前連結会計年度は52百万円)、うち外部顧客への売上高は7百万円(前連結会計年度は7百万円)、セグメント営業利益は61百万円(前連結会計年度は13百万円)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金および現金同等物(以下「資金」という)は、19億57百万円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は6億48百万円(前連結会計年度は14億72百万円の獲得)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益12億37百万円、売上債権の減少額2億19百万円、法人税等の支払額4億63百万円などによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は1億43百万円(前連結会計年度は3億33百万円の使用)となりました。

これは主に、生産施設整備による建物並びにOA機器等の有形固定資産の取得による支出1億74百万円などによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は7億50百万円(前連結会計年度は8億44百万円の使用)となりました。

これは主に、長期借入金の返済による支出6億54百万円、配当金の支払額94百万円などによるものです。

 

④ 受注及び販売の状況

1) 受注の状況

当連結会計年度における受注状況は次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2021年7月1日

至  2022年6月30日)

受注高

金額(千円)

前年比(%)

建設コンサルタント事業

8,865,952

2.9

不動産賃貸事業

合計

8,865,952

2.9

 

 

(注)1 当連結会計年度における建設コンサルタント事業の分野別の受注実績は、次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2021年7月1日

至  2022年6月30日)

受注高

金額(千円)

前年比(%)

モビリティ形成事業

3,065,301

15.9

環境、都市・地域創生事業

1,592,601

△6.7

社会インフラ、防災事業

4,208,050

△1.4

合計

8,865,952

2.9

 

 

(注)2 当連結会計年度における建設コンサルタント事業の国内・海外での受注状況は次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2021年7月1日

至  2022年6月30日)

受注高

金額(千円)

前年比(%)

国内

7,039,698

△1.6

海外

1,826,254

24.7

合計

8,865,952

2.9

 

 

 

2) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2021年7月1日

至  2022年6月30日)

売上高

金額(千円)

前年比(%)

建設コンサルタント事業

8,539,323

4.4

不動産賃貸事業

7,653

0.2

合計

8,546,976

4.4

 

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。

(注)2 当連結会計年度における建設コンサルタント業界の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2020年7月1日

至  2021年6月30日)

当連結会計年度

(自  2021年7月1日

至  2022年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

国土交通省

2,486,715

30.3

3,073,035

36.0

 

 

(注)3 当連結会計年度における建設コンサルタント事業の分野別の販売実績は、次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2021年7月1日

至  2022年6月30日)

売上高

金額(千円)

前年比(%)

モビリティ形成事業

2,823,132

2.2

環境、都市・地域創生事業

1,726,739

14.0

社会インフラ、防災事業

3,989,450

2.2

合計

8,539,323

4.4

 

 

(注)4 当連結会計年度における建設コンサルタント事業の国内・海外での販売実績は次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2021年7月1日

至  2022年6月30日)

売上高

金額(千円)

前年比(%)

国内

7,891,704

2.1

海外

647,618

42.1

合計

8,539,323

4.4

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年6月30日)現在において、当社が判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われており、資産・負債の状況を反映しています。これらの見積りおよび仮定については、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、これらの見積りおよび仮定には不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りとは異なることがあります。

当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に重要なものは以下のとおりです。

1) 受注損失引当金

当社グループは、受注業務に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末の未成業務のうち、損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることができる業務については損失見込額を計上しています。想定外の事象の発生等により、当初の想定損失見込額より多額となる場合は、実際の損失見積額と異なる可能性があります。

2) 繰延税金資産

当社グループは、連結貸借対照表上の資産・負債の計上額と課税所得の計算上の資産・負債との一時差異に関して法定実効税率を用いて繰延税金資産および繰延税金負債を計上しています。また、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際しては、将来の課税所得を十分に検討し、合理的に見積っていますが、将来の課税所得が予想を下回った場合は、繰延税金資産の修正が必要となる可能性があります。

3) のれんの減損

当社グループは、のれんについて、その効果の発現する期間を見積り、その期間で均等償却しています。資産性については、子会社の業績および事業計画等をもとに検討し、判断していますが、将来において経営環境の悪化等により収益が当初の想定を下回る場合は、のれんの減損処理を行う可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は85億46百万円と前連結会計年度と比べ3億57百万円増加しました。これは主に、防災関連業務やインフラ老朽化対策業務、さらに交通分野での大規模交通調査等の売上高の増加によるものです。

売上総利益は28億10百万円と前連結会計年度と比べ3億47百万円増加しました。これは主に、外注費や間接経費のコスト縮減によるものです。売上高に対する売上総利益率は32.9%となり、前連結会計年度と比べ2.9ポイント増加しました。

販売費及び一般管理費は16億54百万円と前連結会計年度と比べ86百万円増加しました。売上高に対する販売費及び一般管理費率は19.4%となり、前連結会計年度と比べ0.3ポイント増加しました。

営業利益は11億55百万円と前連結会計年度と比べ2億60百万円増加しました。売上高に対する営業利益率は13.5%となり、前連結会計年度と比べ2.6ポイント増加しました。

営業外収益は21百万円と前連結会計年度と比べ43百万円減少しました。また、営業外費用は15百万円と前連結会計年度と比べ5百万円減少しました。

経常利益は11億61百万円と前連結会計年度と比べ2億22百万円増加しました。売上高に対する経常利益率は13.6%と前連結会計年度と比べ2.2ポイント増加しました。

特別利益は、発注者向けに納品が完了した業務成果品に対し、その後に設計図面等に補修の必要が生じた場合に備えた建設コンサルタント損害賠償責任保険の受取保険金として76百万円を計上しました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7億80百万円となり、前連結会計年度と比べ4億8百万円増加しました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益、売上高、営業利益、経常利益はすべて過去最高を更新しました。

なお、当連結会計年度末の総資産が89億34百万円と前事業年度と比べ4億69百万円減少しましたが、自己資本比率が67.6%と前連結会計年度末と比べ12.0ポイント上昇し、当社グループは引き続き健全な財政状態であると認識しています。

 

 ③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資やM&A等によるものです。

事業の運転資金及び設備投資資金は、自己資金及び金融機関からの借入金を基本方針としています。なお、当連結会計年度末における長期借入金残高(1年以内返済予定を含む)は13億円となりましたが、その目的は前述の設備投資および株式取得によるものであり、すべて金融機関から調達しました。

 

 ④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループにおける前中期経営計画の最終年度である当連結会計年度においては、連結売上高85億46百万円、営業利益は11億55百万円、経常利益11億61百万円、親会社株主に帰属する当期純利益7億80百万円、営業利益率13.5%、ROE13.8%となりました。

新たな経営計画として、2022年7月に新中期経営計画(全体計画期間6年間で対象期間は2022年7月から2028年6月)を策定しました。新規中期経営計画でも、経営計画の骨格は変更することなく、市場動向に併せて常に経営戦略や戦術を再定義(Redefinition)しながら、売上高成長率5%以上、売上高営業利益率10%以上、ROE10%以上の継続達成に努めていきます。

 

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