以下の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等には将来に関する記述が含まれています。こうした記述は現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定に基づくものであり、2「事業等のリスク」などに記載された事項等によって、当社グループの実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況がこうした将来の記述と異なる可能性があります。
(1) 会社の経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等
当社グループはグローバル自動車市場の成長とともに歩んできました。しかし、半世紀以上に渡って成長してきた世界の自動車市場は、2018年頃から調整局面に入り、停滞の兆しを見せています。更に、全産業を横断しての環境負荷低減は近年グローバル・イシューとなり、それに伴って自動車市場にもCASE※1革命の波が押し寄せています。日本の自動車メーカーの世界進出に乗じて、自動車内燃機関の部品加工・組み立てにより規模を拡大してきたわれわれ自動車部品メーカーも、方針を見直す必要に迫られています。計画的な需要と供給の見通しが立てやすい世の中は、先行き不透明なVUCA (Volatility, Uncertainty, Complexity, and Ambiguity)※2 な社会に移行しています。一方で不確定性とリスクの高いウィズ・コロナ、アフター・コロナの世界では、新たな機会、社会のニーズが生まれ始めています。
このような経営環境の中、当社グループは、2021年5月に2021年度から2030年度にかけて以下を骨子とする中期経営方針を策定し、公表いたしました。
① 既存事業の深化
存続する自動車市場において、圧倒的な高収益・高品質基盤を確立する
② サーマル・ソリューション事業の拡大
サーマル・マネジメントのソリューションにおいて世界のトップ・プレーヤーとなり環境負荷低減に貢献する
③ 次世代コア事業の創出
自動車事業に囚われない新事業を創出する、地域経済に貢献する新たな事業を創出する
1939年の創業以来、安全要求の厳しい重要保安製品を、技術力と品質保証力、リーダーシップとチームワークを持って、お客様に提供し続けてきました。マーケット・インの問題解決能力、ステークホルダーに寄り添った安心の創出こそが、当社の強みです。われわれは次の30年間もこの強みを活かし、“第3の創業”とも言える大きな事業変革に果敢にチャレンジし、コロナ・ショックの後に来たるべき新しい世界において、さらなる成長を実現させていきます。
※1: CASE = Connected (つながる), Autonomous (自律走行), Shared (共有), Electric (電動) の略語
※2: VUCA = Volatility (変動性), Uncertainty (不確実性), Complexity (複雑性), Ambiguity (曖昧性) の略語
(2) 経営戦略等
上述した中期経営方針のもと経営戦略を以下の3つの施策にまとめ、実行スピードを上げて取り組みます。
① 既存事業の深化
新型コロナウイルス感染症の拡大と半導体不足の問題に伴う影響が懸念されますが、中長期的には世界の新車販売は中国及びアジアの成長によって増加基調を辿り、電動化の進展の拡大など変革期にありますが、当社の自動車用ブレーキ配管、燃料や冷却の配管、シートベルトなどの安全製品は次の10年間も一定の市場規模が存続すると見込んでおります。コロナ・ショックの対策で実行した構造改革により手に入れた収益体質を、更にレベルアップさせていきます。鍵となるのはDX、信頼性工学です。自社生産工程とサプライチェーンの状況をリアルタイムで完全に『視える化』し、一段上の高収益体質、高品質生産体制を確立します。
② サーマル・ソリューション事業
当社は数十年に渡って、自動車用の熱交換器、冷媒配管を開発・販売・生産し、その実績が評価され、当社の冷却水用樹脂配管製品が、国内自動車メーカーの最新型BEVに採用されました。またBEV向け製品の他にも当社の冷却配管システムがスーパー・コンピュータ『富岳』にも採用されたことを機に自動車分野の枠を超えて注目を集めており、高い冷却性能を必要とし水冷下が進むハイ・パフォーマンス・コンピューター向けに、問い合わせや受注実績が増えてきています。
自動車の電動化に伴い、モーターやバッテリー、インバーターやPCUの市場が拡大します。これらのEVコンポーネントは、どれも高性能な冷却機能を必要とします。また、今後更に市場が拡大すると見込まれるデータセンターや通信機器にも、最適な冷却効率が求められます。われわれは配管から熱交換器まで一括して最適設計・生産ができる強みを活かし、新たな成長の柱として優先的に投資活動を進め、サーマル・ソリューション事業の拡大を狙います。
③ 新事業の創出
当社グループは、コロナ・ショックの次に生まれる新たな社会的課題とニーズを見据えています。そのために過去10年間、研究開発活動とCVC投資を続けて参りました。バッテリー開発プロジェクトへの参画や熱エネルギー変換材料の開発、地域創生につながるモビリティーサービスなどにも着手しています。また先進的な技術を持つスタートアップ企業にも日頃から積極的に投資し、コロナ渦においても手は緩めず、2022年3月には独自のサービスと意匠性の高いデザインを強みとするEV用充電機器及びIoTサービスの企画・開発・販売を行うスタートアップ企業の㈱プラゴ社への投資を行いました。
テクノロジーで社会の課題を解決する事業展開として多様な領域で研究開発活動を推進し、将来の成長への布石を打っていく方針です。事業領域を問わず、地域貢献・環境負荷低減に貢献するテクノロジーに対しては継続して基礎研究・投資を続けていきます。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、安定的な収益力の確保とグループ全体の業績向上のため、連結ベースの売上高、営業利益、経常利益、売上営業利益率及び自己資本利益率等の経営指標の拡充を目標としております。
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