(1)経営方針
人間と物があらゆる情報とつながり始めたこの世界において、高機能汎用技術である半導体レーザ技術の有用性はますます高まってきております。当社は「人の可能性を照らせ。」という経営理念のもとに、世界の人々の生活を安全で豊かなものにし、幸福と平和に貢献する企業を目指すことを経営方針としております。
経営方針に基づく重点施策として下記の5点を掲げております。
● 業界をリードする新製品の開発と安定量産化
● 納期遵守による顧客満足度の向上
● 顧客要求を充足する信頼性の確立
● 製品検査レベルでの品質向上
● 従業員の継続的スキル向上
当社の属する「半導体レーザ」業界の経営環境は、世界的にもニーズが高まり光通信・インターコネクト、ディスプレイ、バイオセンサ、スマートフォン顔認証、自動運転レーダ、精密加工、プリンタ、照明等、順調に市場は伸長しております。その市場の中でシェアを獲得するために以下のような経営戦略を立案し、推進しております。
自社内においては半導体レーザの最も要となるデバイス設計、結晶成長と完成品の評価のみを行い、それ以外の工程は協力会社の生産ラインにて行っております。このため、生産設備保有による固定費や資金流出が抑えられるとともに、需要の変動に柔軟に対応した生産を行うことが可能となり、低コストで顧客満足度の高い生産体制を実現しております。
532nmから1064nm、1310nmまでの幅広い波長領域をカバーする製品をラインナップしております。これにより、通信機器、精密加工装置、生命科学機器、計測センサ機器、ディスプレイ機器等の多様なアプリケーションに対応する製品を開発、量産することが可能となっております。
光通信とインターコネクトに用いられる波長1300nmにおいて、量子ドットレーザの量産技術を有しております。この量子ドットは、高温度動作(200℃以上)、温度安定動作(-40℃から125℃)、極低ノイズ特性(既存光通信デバイスと比較して)によって、シリコンフォトニクス光源として適しており、シリコンフォトニクスによる高速光デバイスの超小型化・低消費電力化が期待されます。現時点で、世界のシリコンフォトニクスベンダー各社とシリコン融合量子ドットレーザの共同開発を進めており、光コネクタ、チップ間インターコネクトへの適用が検討されております。また、シリコンフォトニクスと量子ドットデバイスを組合せてロボティクス、セキュリティ、自動運転用のLiDAR用光源の共同開発も行っております。
5G時代の到来で世界規模のデータ量増加とそれに伴う消費電力の増加が見込まれ、世界のデータ総量は2018年33ZBが2025年175ZB、消費電力は2016年1,170TWhが2030年42,300TWhと予測されていることが、シリコンフォトニクスが求められる背景です。(IDC「Worldwide Global DataSphere IoT Device and Data Forecast」、国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響」より抜粋)
「人の可能性を照らせ。」を具現化するため、従来の部品事業にとどまらず、半導体レーザの可能性を具現化する消費者向け製品事業を展開しております。そのひとつが、網膜走査型レーザアイウェアであります。この装置は人間の水晶体のピント調整能力に依らず、またピント調整位置に依らず、鮮明な画像を網膜に描画できる、フリーフォーカスと拡張現実という画期的な特徴を有しております。現在、民生用、医療用網膜走査型レーザアイウェアの生産販売を開始しており、2022年度には様々な使用シーンに向けた3つの新しいレーザ網膜投影機器の上市を目指します。そのうちの1つである「MEOCHECK」は、自身の見え方やその変化を手軽に把握する事ができる全く新しいデバイスです。これまでのハード販売に加え、ソフトウエアを含めたソリューションとして市場に訴求してまいります。今後も世の中に光の可能性を提案する製品開発を行ってまいります。
網膜走査型レーザアイウェアのピント合わせ不要という画期的な特徴を眼科医療機器に展開し、ロービジョンの方の生活の質の向上と就学、就業機会を実現する視覚型ロービジョン支援機と、眼疾患の早期発見が可能な新しい検眼機を目指して製品開発を進めております。視覚型ロービジョン支援機では、日本における医療機器としての臨床試験は2018年10月に終了し、2019年2月に製造販売承認申請を行い、2020年1月に国内医療機器製造販売承認を取得、2021年3月に網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA® メディカル」を販売開始しました。また、フルカラー眼底撮影装置や、見え方と眼底画像の関係を一台の装置で同時に簡便に検査できる新しい検眼機を、医療機器メーカと受託型で共同開発しています。
網膜走査型レーザアイウェアの民生品展開は、網膜走査技術の市場認知と普及、製品低コスト化の両面で医療機器への波及効果が期待できるとともに、民生品自体も作業支援やエンターテインメント等の分野において大きな潜在需要を見込んでおります。
企業価値を継続的に向上させるためには利益の確保が重要であることから、当社は売上高総利益率を最も重要な経営指標として採用しております。現時点では数値目標を定めておりませんが、今後、業界動向及び当社の業績の推移、特にレーザアイウェア事業の立ち上がり等を勘案し、早期に数値目標を決定する予定です。事業別の指標としては、レーザデバイス事業は認定顧客数の毎年20%増加とし、レーザアイウェア事業は累計販売10万台・年間生産5万台と定めております。
当社の成長エンジンである網膜走査型レーザアイウェア事業を進めていく中で、民生用「RETISSA® DisplayⅡ」においては販売代理店とEコマースサイトを通した国内外販路の拡充、開発締結先と連携したユーザビリティ向上と低コスト化を進めます。
国内販売につきましては、盲学校や展示会でのデモンストレーションに加え、当事者が所属する団体など様々な体験会を通じ、製品自体に実際に触れていただくことで当事者及びその家族への認知拡大を図り、さらにSNS等を通じて積極的に発信してまいります。また当事者が購入しやすい環境作りを行うべく地方自治体の日常生活用具助成金給付事業への登録申請活動を進めており、そのスピードを加速してまいります。
米国向けにはEコマースサイトを刷新し、お客様がネットで簡単に購入できる体制を整えました。今後は購入希望者が見たい情報(動画)を簡単に得られ、購入に直結できるよう拡販活動を行ってまいります。
中国については、コロナによるロックダウンにより活動が停滞しておりますが、解除され次第、これまでの代理店に加え、新たな代理店とともに拡販を行ってまいります。
韓国につきましては、韓国向け製品を出荷しました。補助金対象として認められるよう代理店と協力して活動を推進してまいります。
医療用「RETISSA®メディカル」においては医療業界提携先と連携した眼科医会への浸透を図るため、医師向け説明文書を整備し、眼科医への展開をスムーズに行ってまいります。
②検眼機及び検眼サービスの製品化・事業化
レーザ網膜投影技術を活用した新しい検眼機及びサービスのスキームについて、提携先と上市に向けて原理検証・試作、サービス体制の構築を進め、事業化の道筋を明確にしてまいります。
加工、センサ領域では、既存製品の受注継続と拡大、新規品開発と製品化、高付加価値モジュールの製品化を進め、年率25%の安定的な事業成長を図ります。通信、LiDAR向けシリコンフォトニクス用量子ドットレーザについては、国内外の顧客からの受託開発と低コスト量産化を進め、2024年3月期以降の本格量産への準備を行い、量子ドットレーザ事業の強化を図ってまいります。
市場・業界・顧客分析、及び、分析に基づく戦略的営業活動をさらに充実させるとともに、従来の定期的な顧客訪問、展示会の有効活用、国内外代理店との密な連携、企業パイプラインの強化と複線化、ウェブサイトの充実、Eコマースサイト活用を継続して、売上増大と利益確保を図ります。また、製品開発、研究開発基盤とマーケティングを連動させ、新製品開発力の強化を図ってまいります。
チップ作製、モジュールアッセンブリ、レーザアイウェア生産提携先と、将来ビジョン、年間計画、各案件のスケジュール連携、結果のフィードバック、定期的な訪問、打合せ等を行い、より一層の関係強化を図ってまいります。
高品質、高性能な製品を市場に供給し顧客満足度を継続して向上できるようISOに準拠した製品開発を行っていきます。また、顧客の性能、品質、価格、納期へのご要求に常に耳を傾け、開発・生産・営業が一体となりスピーディーに対応できる体制の継続的改善を行っていきます。
開示書類の早期作成、業務プロセスの改善、内部管理体制の強化を継続的に推進するとともに、株主とのコミュニケーションを強化し、株主満足度の高いIR体制を構築してまいります。
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