(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績、及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるグローバル経済は、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した影響により、消費や投資の落ち込みが継続し依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような事業環境の下、当社グループは、ホームAV事業売却の方針を一旦変更し、2020年7月31日付「グループ再編(子会社との吸収合併及び会社分割(新設分割)による子会社設立)及び定款の一部変更(商号変更他)に関するお知らせ」のとおり、固定費の削減を実現し、営業債務の支払い遅延が解消され、従来から強みのあったビジネスに注力できれば、利益を確保できる体制が整ったホームAV事業を中核事業化し、OEM事業、その他事業のさらなる成長を目的として、これらの事業を分社化し、資本調達や株式の一部売却など将来的な資本提携等に向け、外部との協議・交渉を進めることといたしました。
そして、デット・エクイティ・スワップや包括的株式発行プログラム(“ STEP ”)による資本増強に加え、株主総会決議の承認をもって EVO FUND を割当予定先として株式の有利発行や議決権のない種類株式の発行等により2021 年3月末までに債務超過を解消し上場廃止を回避することを目指してまいりました。
しかし、第 11 回新株予約権及び第 12 回新株予約権の行使について、 EVO FUND として、最終的にその行使をしない判断をされ、2021 年3月 31 日 付「 2021 年3月期通期連結業績予想の公表及び純資産の状況並びに営業外費用及び特別損失計上見込みに関するお知らせ」にて公表しましたとおり、債務超過を解消することができない見通しとなり、東京証券取引所ジャスダック市場の上場廃止基準に抵触する見込みとなりました。
AV事業においては、国内ホームオーディオ市場が縮小傾向にある中、堅調に推移している住宅向けインストールビジネスの販売を強化してまいりました。また、Klipsch社のスピーカーシステムに加えイヤホン等取扱商品も拡充し輸入オーディオ事業としても好調に推移、市場からも高い評価を得ております。こうした高付加価値商品を積極的に展開し、収益性の改善に努めてまいりました。
米国においては新型コロナウイルス感染症の影響により在宅時間が長くなったことから、ホームシアターシステムの需要が増加傾向にあります。米国市場での流通・販売面での体制強化のため、VOXX International Corporationの子会社である11 Trading Company LLCと米国における販売代理店契約を締結、VOXX社が有する営業力と販売網の広さによりAVレシーバーの販売も好調に推移しております。また、オセアニア地域においてはカスタムインストールビジネス強化のためControl4 APAC Pty Ltd. と Integra ブランドの製品販売代理店契約締結、販売を進めてまいります。
デジタルライフ事業においては、高付加価値のワイヤレスイヤホンに加えて人気アニメやファッションブランドとのコラボ製品が堅調に推移いたしました。日本国内では、販売代理店として海外ブランド商品の取り扱いを進めており、Klipsch社のワイヤレスイヤホンに加え同社ブランド初のスポーツタイプの完全ワイヤレスイヤホンを発売、事業の強化に結び付いております。また、カスタムインイヤーモニターのラインナップも拡充し、高付加価値提案を進めてまいりました。
さらに、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークが急速に広がりを見せている中で、オンライン会議等で簡単に円滑なコミュニケーションを取ることができる “RAYZ Rally”のラインナップ展開、ワイヤレスネックスピーカー等を含めたテレワーク需要への対応強化を図ってまいりました。
OEM事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響による世界的な自動車市場の低迷により、当社の車載スピーカー事業も影響を受けましたが、生産、販売活動も順次回復し顧客からの需要も戻りはじめ新型コロナウイルスと共存しつつ操業を確保しております。そして、成長軌道へ向け生産能率や直行率の改善などによる原価低減、及び販路拡大に向けた活動を積極的に進め、新規受注獲得にも積極的に取り組んでまいりました。また、様々な形での活用が期待される加振器「Vibtone(ビブトーン)」においても、用途に応じた提案により新規市場創出、受注の拡大に向けた営業活動に尽力してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は前年同期比 59.3%減収 の 8,873百万円 となりました。営業損益につきましては前年同期比 1,428百万円改善 の 3,918百万円の営業損失 となり、経常損益は前年同期比 1,351百万円改善 の 4,317百万円の経常損失 となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損益につきましては 、 前年同期比 4,011百万円改善 して 5,869百万円 の 親会社株主に帰属する当期純損失となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
AV事業
AV事業における売上高は、日本国内では住宅メーカー向けのインストールビジネスをはじめとした高付加価値商品に注力したものの、主力のマレーシア工場は新型コロナウイルス感染症の影響を受け限定的な稼働が続きました。その後は、新型コロナウイルス感染症予防対策を行いながら生産活動を再開しております。しかしながら営業債務の支払い遅延が継続したことで、一部取引先から取引条件の見直しを要請され部品調達等への影響により生産を縮小・停止せざるを得ず顧客の要望に対して充足されない状況が続いたことから、販売機会を損失し売上が減少、前年同期比70.2%減収の3,458百万円となりました。
損益につきましては、人員削減及び役職ポスト数の見直しによる組織のスリム化、拠点集約などの合理化策を実行に移した結果、固定費は大幅に減少したものの、売上高減少に伴う売上総利益の減少により、前年同期比 193百万円改善 の 1,406百万円のセグメント損失 となりました。
デジタルライフ事業
デジタルライフ事業における売上高は、日本国内を中心に高付加価値のワイヤレスイヤホンに加え、人気アニメやサマンサタバサ、FULL-BKブランドとのコラボ製品も堅調な販売となりました。日本国内において代理店販売を開始したKlipsch社のワイヤレスイヤホンも新商品導入も含め好調に推移いたしました。また、カスタムインイヤーモニターの商品の拡充を行い、最先端の当社のマグネシウムドライバーを用いたモデルは、ミュージシャンやお客様から高い評価をいただいております。しかしながら、AV事業と同様に新型コロナウイルス感染症による生産委託工場の操業ダウンによる生産減少の影響や、営業債務の支払い遅延が継続したことで、一部取引先から取引条件の見直しを要請されており、生産を縮小・停止せざるを得ない状況に陥ったことから、販売機会損失による売上減少が発生し、前年同期比54.2%減収の1,660百万円となりました。
損益につきましては、売上高減少により売上総利益は減少したものの、高付加価値製品の販売に注力し、採算性を追求した結果、前年同期比 422百万円改善 の 479百万円のセグメント損失 となりました。
OEM 事業
OEM事業における売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響により世界的に自動車市場が低迷、それに伴い受注減少、工場の操業にも影響を受け売上高も減少し、前年同期比 42.9%減収 の 3,753百万円 となりました。
損益につきましては、人員の削減などにより固定費が減少したものの、新型コロナウイルス感染症の影響による売上高の減少に伴い売上総利益は減少し、前年同期比407百万円悪化の674百万円のセグメント損失となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「キャッシュ」)の残高は、前連結会計年度末残高に比べ248百万円減少の 470百万円 となりました。当期に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期における営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比2,284百万円悪化の 4,386百万円の減少 となりました。 これは主に、税金等調整前当期純損失6,103百万円による減少と、貸倒引当金の増加1,556百万円による増加等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期における投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比573百万円改善の 932百万円の増加 となりました。 これは主に、有形固定資産の売却による収入571百万円及び関係会社株式の売却による収入184百万円増加と、長期貸付金の回収による収入100百万円増加等によるもの であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期における財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期比2,193百万円改善の 3,202百万円の増加 となりました。 これは主に、株式の発行による増加3,217百万円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
前年同期比(%) |
AV事業(百万円) |
2,312 |
△73.2 |
OEM事業(百万円) |
2,563 |
△19.2 |
合計(百万円) |
4,876 |
△58.7 |
(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
(注2) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(注3) 資金不足の影響に加え、AV事業においては半導体を中心とした部品のひっ迫により、前年から大きく仕入金額が減少しました。
b.受注状況
当社グループは見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
AV事業(百万円) |
3,458 |
△70.2 |
|
デジタルライフ事業(百万円) |
1,660 |
△54.2 |
|
OEM事業(百万円) |
3,753 |
△42.9 |
|
合計(百万円) |
8,873 |
△59.3 |
(注1) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(注2) 主な相手先の販売実績及び当期販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注3) 資金不足の影響により十分な生産・仕入ができなかったことにより、前年から大きく販売実績が減少しました。
なお、前連結会計年度における11 Trading Company LLC及び当連結会計年度におけるAqipa GmbH、ONKYO U.S.A. CORPORATIONについては、総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
11 Trading Company LLC |
- |
- |
1,527 |
17.2 |
Aqipa GmbH |
4,243 |
19.5 |
- |
- |
ONKYO U.S.A. CORPORATION |
3,738 |
17.1 |
- |
- |
(注4) 上記の金額には、消費税は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日時点において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成にあたっての重要な会計方針については、「 「第5 経理の状況 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成は経営者による会計方針の選択及び適用、並びに資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とし、経営者は過去の実績等を勘案して合理的な見積りを行っておりますが、これらの見積りには不確実性が存在するため、見積りと異なる結果になる可能性があります。
会計上の見積りが必要となる項目のうち、特に当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与える可能性があると認識している主な項目は以下のとおりです。
a.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。顧客の財政状態の悪化等の状況変化により、回収可能性に関する見積りを変更する必要が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
b.固定資産の減損
当社グループは、営業活動から生じる損益が継続してマイナスとなっていることから、減損の兆候を共有資産を含む全社単位で検討し、帳簿価額と回収可能価額との差額を減損損失として計上しております。減損損失の計上額は、当社グループの翌連結会計年度以降の経営成績などに左右されるため、翌連結会計年度において、さらなる減損損失の計上が必要となる可能性があります。
c.事業構造改善引当金
当社グループは、一部国内拠点の売却に伴い発生する費用を、事業構造改善引当金として計上しております。これら費用については、業者等から見積り書を入手するなどにより合理的に費用の見積りを行っておりますが、実際の費用の発生は見積りと異なる可能性があり、当該費用が追加計上される可能性があります。
d. 投資有価証券の減損処理
当社グループは、投資有価証券を保有しています。保有する有価証券につき、投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損処理を行っています。市況悪化または投資先の業績不振等により、さらなる減損処理が必要となる可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(以下、「当期」)における売上高は、 全世界的なホームオーディオ市場の縮小や、新型コロナウイルス感染症の影響により、マレーシアや中国等の生産工場の操業が停止した影響 、さらに 営業債務の支払い遅延が継続したことで、一部取引先から取引条件の見直しを要請されており、生産を縮小・停止をせざるを得ない状況に陥ったことから、 前年同期比 59.3%減収 の 8,873百万円 となりました。営業損益につきましては、 構造改革や 、欧 州子会社の事業譲渡による販売効率向上、インド合弁会社の生産移管が進んだことに伴う生産コストの改善があったものの、売上高減少による売上総利益の減少が響き、 前年同期比 1,428百万円改善 の 3,918百万円の営業損失 となりました。
③営業外損益及び経常損益
当連結会計年度における営業外収益は、為替差益93百万円等により 247百万円 となりました。また、営業外費用は、主に持分法による投資損失307百万円、金融関連等の支払手数料 266百万円 、及び支払利息 58百万円 等を計上した結果、 647百万円 となりました。以上により、経常損益は 4,317百万円の損失 となり、前年同期比 1,351百万円の改善 となりました。
④特別損益及び親会社株主に帰属する当期純損益
当連結会計年度における特別利益は、固定資産売却益276百万円等により355百万円の特別利益となりました。一方、特別損失は、 貸倒引当金繰入額1,726百万円、臨時損失218百万円、減損損失107百万円 等を計上した結果、 2,173百万円 となりました。
また、法人税、住民税及び事業税△36百万円及び非支配株主に帰属する当期純損失 180百万円 等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損益は 5,869百万円の損失 となり、前年同期比 4,011百万円の改善 となりました。
⑤ネットデット
当社グループは、有利子負債から現金及び現金同等物を控除したネットデットをゼロとすることを経営指標としております。当期におけるネットデットは、前年同期比641百万円減少の219百万円となりました。これは、主に有利子負債の減少によるものであります。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資産、負債及び純資産の状況
当期末における総資産は、3,574百万円減少の6,214百万円となりました。これは、現金及び預金の減少248百万円、受取手形及び売掛金の減少126百万円、たな卸資産の減少449百万円、未収入金の減少646百万円、貸倒引当金の増加による減少1,556百万円及び投資有価証券の売却による減少232百万円等によるものであります。
負債の金額は、 4,584百万円減少 の 8,560百万円 となりました。これは、支払手形及び買掛金 の減少2,688百万円 、 短期借入金の減少749百万円、 未払金 の減少853百万円 及び長期借入金の減少145百万円等によるものであります。
純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純損失の計上等による利益剰余金 の減少5,869百万円 、 新株式発行等による資本金及び資本剰余金の増加6 ,936百万円等により、前年同期比 1,010百万円増加 の 2,345百万円 の債務超過となり、自己資本比率は △39.5% となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末残高に比べ248百万円減少の 470百万円 となりました。
これは主に、 税金等調整前当期純損失及び売上債権の減少 により営業活動によるキャッシュ・フローが 4,386百万円減少 しましたが、有形固定資産売却による収入 や関係会社株式 の売却等により投資活動によるキャッシュ・フローが 932百万円増加 したことに加え、 株式の発行によ り財務活動によるキャッシュ・フローが 3,202百万円の増加 となったことによるものであります。
③ 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、製造委託先からの商品の仕入、製品製造のための材料、部品等の購入及び労務費などの製造費用と、販売費及び一般管理費等の営業費用の運転資金
及び
設備投資
で
あります。
④ 財務政策
運転資金及び設備投資は、自己資金及びエクイティファイナンス又は金融機関からの借入により資金 調達を行っております。
(5) 経営者の問題認識と今後の方針について
事業ポートフォリオの見直しにより、ホームAV事業譲渡や残存する事業においても協業先やスポンサーを継続して探すとともに、経営資源の最適化によって、設計・生産・販売プロセスを常に適正な体制に刷新し続け、構造改革やスリム化によるコスト削減を早期に実現し、小規模でも確実に収入を確保できる体制を構築していくことが課題であると認識しております。
当社は経営理念(ビジョン)として「VALUE CREATION」を掲げております。創業以来、人類の共
通語ともいえる音楽の理想的な再生装置の開発を目指してきました。そういった長年のものづくりで培ってきた技術やノウハウに “新しい何かを加えること(+Something NEW)” で、新たな価値提案を行い、驚きと感動を提供していくことを目標とし、下記の「経営方針」の達成に向けて真剣な取り組みを続けてまいります。こうした技術及び姿勢を、今後ますますの発展が見込まれるデジタルライフ事業及びOEM事業に活かすことでさらに伸長させてまいります。
① 世界の市場で最高水準の品質と性能を維持し、心の琴線に触れる商品・サービスを提供し続けます。
② 環境との共生、調和をスローガンとし、広く社会から信頼される企業活動を行います。
③ グループ全体で経営効率の向上を図り、利益を創出することで、企業価値の向上に努めます。
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