業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討

①当社グループの経営成績の実績及び見通し

2021年度実績

 2021年度は、「変化対応力の最大発揮」と「変革の加速」を方針に掲げ、事業運営をスタートしました。当社グループを取り巻く事業環境は、中華圏・アジア・米州を中心としたデジタル業界の旺盛な需要が継続したことに加えて、地球環境保護への社会的な要請を背景としたカーボンニュートラルや脱プラスチック関連投資も拡大し、総じて好調に推移しました。また、コロナ禍により、慢性疾患の重症化予防の重要性が消費者に再認識されて、家庭用医療機器の需要が拡大しました。一方で、第2四半期以降に顕在化したサプライチェーンの混乱が継続する中で、第4四半期でのロシア・ウクライナ情勢の悪化や上海ロックダウンなど、当社グループを取り巻く事業環境は、さまざまな要因により不確実性が継続する1年となりました。

 このような事業環境の中で、制御機器事業では、拡大する半導体、電気自動車、二次電池、食品包装機械などの設備投資需要に応えるため、ソリューション提案力の強化を継続し、部材確保や増産にも取り組みました。ヘルスケア事業では、グローバルで血圧計需要が拡大する中、薬局チャネルやオンラインチャネルでのプロモーションを強化するとともに、部材確保や物流改善に取り組みました。

 これらの結果、売上高は7,629億円(前期比16.4%増)、営業利益は893億円(同43.0%増)、売上総利益率は前期比でほぼ横ばいの45.5%(同0.1ポイント減)となりました。これまで培ってきた強い収益構造に、売上高の伸びが掛け算で効いてきた結果、営業利益は前期比で大きく増加し、過去最高となりました。

 

2022年度見通し

 SF 1st Stageの1年目である2022年度は、「新たな価値創造へのギアチェンジ」を方針に掲げました。これまで培ってきた資産を活用し、成長を加速するとともに、将来の成長に向けた投資を着実に実行していきます。製品供給制約の継続、インフレの進行、世界秩序が混乱する中でも、変化対応力を発揮し、グローバルで総じて旺盛な需要を捉えることで注力事業を中心に成長を目指します。また、長期ビジョン「SF2030」・中期経営計画を成功に導くために、価値創造のあり方を、もう一段高いステージへとギアチェンジし、進化させていきます。2022年2月に発表したJMDC社との資本業務提携は、ヘルスケア事業においてデータベース基盤に立脚した「健康増進・重症化予防ソリューション」のビジネスを展開していくことを狙いとしています。今後は、データを基軸としたサービスビジネスの事業構想・価値開発・事業運営をJMDC社と進めるとともに、得たナレッジを制御機器事業、社会システム事業へ展開することで、当社グループのデータドリブンのビジネスを加速させていきます。

 当社グループは、2022年度から長期ビジョン「SF2030」および最初の中期経営計画(SF 1st Stage)をスタートしています。これまでに培ってきた顧客資産をベースに、新たに表出する事業機会を捉えてソリューションを提供するとともに、将来の成長に向けた投資を着実に実行します。アフターコロナに向けて社会・経済システムへの転換が加速する中、中長期的視点でビジネスモデル変革と新事業創出に取り組み、持続的な成長を実現します。

 2022年度の事業環境は、地政学リスクの拡大、サプライチェーン混乱、インフレ加速、コロナ禍再拡大に伴う都市ロックダウンの影響など、不確実性が継続する一方で、当社グループがアドレスする領域では、グローバルで総じて、好調な需要が継続すると見ています。具体的には、DX機器の普及、生産地分散の進行、地球環境保護に対する社会的な要請の高まりなどにより、半導体製造、電気自動車、脱プラスチック対応、再生可能エネルギー関連などでの設備投資需要が拡大し、また、高齢化の進行や健康意識の高まりにより血圧計などの健康機器への需要が引き続き堅調に推移すると見ています。

 当社グループは、このような不確実性が高い事業環境を踏まえ、全社業績変動リスク(売上高100億円減・営業利益40億円減)を織り込みながらも、培ってきた変化対応力を発揮し続け、社会の変化がもたらす事業機会を着実に捉えた力強い成長を実現します。また、長期ビジョン「SF2030」の新たな価値創造に向けて、制御機器事業やヘルスケア事業を中心とした成長投資を積極的に実行します。

 これらの結果、2022年度は、売上高は8,500億円(当期比11.4%増)、営業利益930億円(同4.1%増)、売上総利益率は過去最高の45.6%(同0.1ポイント増)を計画しています。2期連続で増収増益となり、営業利益は過去最高を更新する見通しです。

 

 

<売上高・営業利益・売上総利益率の推移>

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   (注)2019年度に車載事業を非継続事業に分類したことに伴い、2017年度および2018年度の売上高、営業利益は非継続

      事業を除いた継続事業の数値に組み替えて表示しています

 

 

②各事業セグメントの実績及び見通し

a.インダストリアルオートメーションビジネス(制御機器事業、IAB)

2021年度における事業環境認識と価値創造の取組み

 製造業を取り巻く環境は、大きな変革期の真只中にあります。それは、製品の高度化や地産地消、個作りなどに代表される「作るモノ」「作り方」「作る場所」「作るヒト」の変化と、AI、IoTやロボティクスに代表される技術革新、シーズの変化です。オムロンは、この変化をいち早く捉え、製造現場が直面する課題をイノベーションで解決するべく「i-Automation!」を提唱し、近未来のモノづくりを目指してきました。

 i-Automation!は、「integrated(制御進化)」、「intelligent(知能化)」、「interactive(ヒトと機械の新しい協調)」という3つのイノベーション(innovation)により構成されています。この3つの“i”をキーワードに、20万点以上に及ぶ商品ラインナップと、ソフトウェアやサービスを擦り合わせて200を超える革新的な制御アプリケーション(以下、アプリケーション)を創出し、多くのお客様の製造現場のイノベーションに貢献してきました。「制御進化」では、熟練技能者の高齢化や後継者不足といった課題に着目し、“匠の技”を再現するアプリケーションを生み出してきました。例えば、二次電池の製造工程では、フィルム状製品の高速・高精度の巻き取りやシート状製品の超高精度の積層を可能にしました。「知能化」では、AI・画像処理技術を活用し、自らが学習しヒトの五感を超える機械や不良品を作らないモノづくりを実現しています。「ヒトと機械の新しい協調」では、自律型モバイルロボットや協調ロボットでヒトと機械の持ち味を引き出し、相互に協力し合う新しいオートメーションを実現しました。

 お客様の課題解決を促進するインフラや人財も拡充してきました。最新のアプリケーションを使って製造現場の装置や生産ラインを実機モデルにより再現する「オートメーションセンタ(ATC)」は、37拠点にまで拡充しました。ATCは、お客様とともにモノづくり課題の解決策を検証・実証する共創拠点として年間何千人ものお客様に来場いただいています。また、オムロンの制御技術・商品に精通し生産現場を熟知するセールスエンジニア(SE)も増強し、お客様固有の課題に応じたアプリケーションや新たな解決策を提案する技術コンサルテーション力を強化してきました。現在、1,000名を超えるSEがお客様の製造現場で新たなモノづくり課題の解決にチャレンジしています。

 

2021年度業績と2022年度見通し

 2021年度は、製造業の設備投資需要はグローバル全エリアにおいて拡大しました。デジタル業界においては、中華圏・アジア・米州を中心に半導体や二次電池の設備投資需要が好調に推移し、日本の装置メーカーにおける需要も増加しました。また、自動車業界では、電気自動車に関連する設備投資需要が引き続き増加しました。さらに、食品・日用品業界においても、包装機械などの需要が堅調に推移しました。これまで強化してきたソリューション提案型営業で、これらの需要の高まりを的確に捉える一方で、増産対応などに取り組んだ結果、売上高は前期比で大きく増加し、過去最高となりました。売上高の大幅な増加などにより、営業利益は前期比で大きく増加し、過去最高となりました。この結果、2021年度の売上高は、4,326億円(前期比24.9%増)、営業利益は、781億円(前期比32.8%増)となりました。

 2022年度は、半導体・電子部品の設備投資需要は、DXの進行によって堅調が継続すると見ています。食品や医療関連の設備投資需要は、脱プラスチックや安全・安心・省人化の取組みによって、拡大が継続すると見ています。また、カーボンニュートラルに対応した設備投資も進むことから、製造業全般に、グローバルで旺盛な需要が継続すると見ています。現地営業・SE人財の活用強化と革新的な制御アプリケーションの創出・提供の加速によって、これらの需要を的確に捉え、売上高は当期比で大幅な増加を見込みます。売上高の増加や生産性の向上により、営業利益は当期比で大幅な増加を見込みます。この結果、2022年度の売上高は、4,830億円(当期比15.5%増)、営業利益は、900億円(当期比18.0%増)となる見通しです。

<制御機器事業の売上高・営業利益・売上総利益率の推移>

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 (注)経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。

 これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。

 

b.ヘルスケアビジネス(ヘルスケア事業、HCB)

2021年度における事業環境認識と価値創造の取組み

 コロナ禍の世界的な広がりにより、人々の意識や生活様式、社会インフラなど、大きな変化がグローバルに起こり、今ではそれらが「ニューノーマル」として人々の日常生活の中に浸透してきています。オムロンは、ニューノーマルの1つである「検温ニーズ」の高まりに応えるため、各地の生産工場で増産体制を強化し、商品供給量の拡大や安定供給に努めました。

 一方、コロナ禍は、通院による感染リスクの拡大やコロナ患者の増加による医療関係者の負荷増大など、新たな課題を生み出しました。特に、継続的な治療が必要な高血圧や糖尿病など慢性疾患患者は、新型コロナウイルスの罹患による重症化リスクが高いと言われており、通院控えによる重症化が新たな課題として顕著になりました。

 これらの新たな社会変化は、オムロンが2015年より循環器疾患事業の事業ビジョンに掲げ、取り組んでいる「脳卒中や心不全などの脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」の実現の重要性をさらに高めています。ゼロイベント実現には、脳・心血管疾患の主な要因である高血圧等の早期発見・早期治療により、適切な血圧コントロールが必要です。この事業ビジョンの実現に向け、医療認証を取得した腕時計サイズのウェアラブル血圧計を北米・日本・欧州で発売しました。また、血圧測定と同時に家庭で心電図を記録できる心電計付き上腕血圧計を北米でリリースしました。オムロンのチャレンジは、グローバルに遠隔診療サービスへの取組みへとその領域を広げています。2020年9月に北米で遠隔患者モニタリングサービス「バイタルサイト(VitalSight)」をスタートし、2021年4月に英国で高血圧患者向け遠隔診療サービス「ハイパーテンション プラス(Hypertension Plus)」の提供を開始しています。

 SDGsや環境対応などサステナビリティへの関心がグローバルで高まっています。オムロンは、事業を通じて世界中の人々の健康に貢献するとともに、紙パッケージ導入によるプラスチック削減、パッケージ小型化による紙資源保護、カーボンニュートラルの製造ライン導入検討など環境に優しいものづくりに取り組んでいます。また、太陽光発電の利用など環境に優しいオフィスづくりも積極的におこない、サステナビリティの取組みを推進しています。

 オムロンは、これからも革新的デバイスを世界中の人たちに届け、また、個人に最適な遠隔診療サービスの創出やAIを活用した血圧管理方法の技術確立、脳・心血管疾病予兆解析アルゴリズムの開発など、新しい分野にもチャレンジしていきます。

 

2021年度業績と2022年度見通し

 2021年度は、血圧計の需要は、コロナ禍による慢性疾患の重症化予防に対する意識の高まりを背景に、グローバルで拡大が継続しました。ネブライザーの需要は、患者の通院機会の増加に伴って回復基調で推移しました。前期において急増した体温計の需要は、反動で減少しました。上期にはコロナ禍影響による工場操業制限や、第3四半期以降にはサプライチェーン混乱があったものの、製品の設計変更や輸送ルートの切り替えなどを迅速に実施し、旺盛な需要を着実に捉えた結果、売上高は前期比で増加しました。固定費抑制や付加価値向上に取り組みましたが、部材価格や物流費の高騰により、営業利益は前期比で減少しました。この結果、2021年度の売上高は、1,329億円(前期比7.9%増)、営業利益は、185億円(前期比9.9%減)となりました。

 2022年度は、慢性疾患の重症化予防に対する意識が高まり、血圧計の旺盛な需要が継続すると見ています。また、外出移動規制の緩和に伴って患者の通院機会が増加し、ネブライザーの需要が拡大すると見ています。伸長するオンラインチャネルでの販売強化などによって、これらの需要に的確に捉え、売上高は当期比で増加を見込みます。部材価格や物流費の高騰の影響が継続するものの、売上高の増加に加え、付加価値向上の取組みなどにより、営業利益は当期比で増加を見込みます。この結果、2022年度の売上高は、1,540億円(当期比15.9%増)、営業利益は、200億円(当期比7.9%増)となる見通しです。

 

<ヘルスケア事業の売上高・営業利益・売上総利益率の推移>

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c.ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(社会システム事業、SSB)

2021年度における事業環境認識と価値創造の取組み

 社会システム事業では、労働力不足を解決すべき社会的課題と捉え、さまざまなソリューションで暮らしの不都合の解消に取り組みました。また、さらなる社会的課題の解決と持続的成長に向けて、2018年にUPS事業、2020年に環境事業を統合し、住宅や流通、情報インフラ、自治体、製造業など新たな市場へのアクセスと提供価値を備えてきました。

 次の10年を見据え、私たちが捉えた解決すべき社会的課題は「環境(カーボンニュートラル)」、「レジリエント」、「省力化」の3つです。CO2総排出量の増加や気候変動の加速、少子高齢化の加速による労働力不足といった社会的課題は深刻化し、私たちの生活にもさまざまな不都合や不安が生じます。企業各社では事業運営の効率化や省力化が進められると同時に、事業継続や環境配慮への対応が求められるなど経営課題は複雑化していきます。オムロンは、顧客のニーズに応えることに加え、プロアクティブに社会の変化を捉えて、これからの安心・安全・快適な社会の将来像を描き、これまでに培ってきたノウハウを活かしたソーシャルオートメーションで次世代の社会システムの実現を目指します。

 エネルギー領域においては、カーボンニュートラルの達成に向けて、従来からの再生可能エネルギー普及の取組みはもちろんのこと、今後は各家庭・施設単位から地域(エリア)単位でエネルギー需給の最適制御を行う「エリアエネルギーマネジメント」の実現に取り組んでいきます。それぞれのエネルギーをつなぎ電力を融通し合うことで、災害時の電力確保といった地域単位のエネルギー利用最大化とカーボンニュートラルの達成に貢献します。

 また、生活に必要なインフラを支えるさまざまな業種において、労働力不足が深刻化し、サービスを維持しながら運営を効率化することが課題となっています。従来、オムロンは、機器・システムの導入やシステムの安定稼働のための保守サービスを提供し、お客様の現場課題の解決と社会システムの維持に貢献してきました。今後は、システム導入や保守業務を通じて蓄積してきた現場知見を集約し、機器・システムの遠隔監視・運用や業務プロセス最適化にいたる包括的なサポート「マネジメントサービス」を提供することで、業務の省力化と運用の強靭化に貢献します。

 

2021年度業績と2022年度見通し

 2021年度は、エネルギーソリューション事業では、カーボンニュートラルや防災・減災の需要の高まりに対して、部品の確保に取り組み、蓄電システムの売上高は大きく拡大しました。駅務システム事業では、長引くコロナ禍の影響を受けて、主要顧客の投資抑制が継続しました。これらの結果、売上高は前期比で減少しました。売上高減少の影響を受けましたが、固定費抑制や付加価値向上に取り組み、営業利益は前期比で大きく増加しました。この結果、2021年度の売上高は、877億円(前期比8.3%減)、営業利益は、65億円(前期比14.3%増)となりました。

 2022年度は、駅務システム事業では、長引くコロナ禍の影響を受けて、主要顧客の投資抑制が継続すると見ています。エネルギーソリューション事業では、カーボンニュートラルや防災・減災ニーズの高まりによって、蓄電システムなどの需要の拡大が継続すると見ています。これらの需要に迅速に対応して、製品とサービスを組み合わせたソリューションを提供することによって、売上高は当期比で増加を見込みます。仕入製品コスト高騰の影響が継続するものの、売上高の増加や収益構造強化の取組みにより、営業利益は当期比で増加を見込みます。この結果、2022年度の売上高は、920億円(当期比4.9%増)、営業利益は、65億円(当期比0.0%増)となる見通しです。

 

<社会システム事業の売上高・営業利益・売上総利益率の推移>

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 (注)環境事業のSSBへの移管により、2020年度より「その他」の事業セグメントを「SSB」の事業セグメントに含めて開示しています。

    これに伴い、2018年度および2019年度を新管理区分に組み替えて表示しています。

 

d.デバイス&モジュールソリューションズビジネス(電子部品事業、DMB)

2021年度における事業環境認識と価値創造の取組み

 近年、社会・顧客・競合は大きく変化しています。顧客は、社会の変化と技術革新に対応できるパートナーを求めるようになっています。部品のコモディティ化が進み、新興国を中心とした競合も増えつつあります。このような市場環境の中で、オムロンは顧客のレイヤーで起きている課題を、高い品質と技術対応力で解決し続けていきます。

 電子部品事業では、自らの力で持続的な成長を続けていくための土台作りとして、構造改革と品質強化、顧客のニーズに合わせた高付加価値のモジュール開発など価値提供に取り組んできました。構造改革では、生産の最適化を軸に生産拠点を11拠点から7拠点に見直し、グローバルで部品を安定して供給できる体制を整えました。部品の需要に合わせた生産体制の構築により、設備稼働率を向上させ、生産の効率化を実現しました。品質強化においては、ものづくりにおける開発・設計段階から生産・完成に至るまでのすべてのプロセスにおいて、「検証(ベリフィケーション)」と「妥当性確認(バリデーション)」の視点からの評価を徹底しました。品質基盤を進化させ、顧客製品の安全性を担保する部品の品質レベルをより高めてきました。また、自走的な成長エンジンを土台に、技術革新や環境対応で急速に進む「製品のスマート化」や「電源のバッテリー化や直流化」といったトレンド、変化する顧客のニーズを捉え、デバイスとモジュールを創出してきました。コロナ禍においては、パソコン周辺機器や電動工具の需要増加、高まる非接触のニーズをいち早く捉えて、関連機器向けの増産や顧客ニーズに応える新商品を創出しました。

 現在、社会全体のデジタル化が加速し、電源のバッテリー化、5Gインフラ普及に向けた半導体や電子部品の需要は一段と高まっています。電子部品に求められる機能はライフスタイルの多様化や環境変化により変わっていく中で、オムロンが顧客製品の価値を高める機会は大きく増えていきます。変化の兆しを確実に捉え、開発スピードを加速し、新商品をタイムリーに生み出します。事業の基盤を支えるリレー、成長を牽引するスイッチやセンサーをグローバルに提供することで、人々の暮らしと社会の発展にこれからも貢献していきます。

 少子高齢化による人手不足や、地球温暖化をはじめとして解決すべき社会的課題は深刻化しています。脱炭素社会の実現につながるEV化や地球上のすべての人が安心・安全に暮らせる通信インフラ、それらを実現する部品に求められる機能は高まっています。電子部品事業では、コアとなる「微細加工技術」と「組み合わせ技術」で、課題を解決するソリューションを確かなカタチにして、顧客にとって必要不可欠なキーデバイスを提供し続けていきます。

 

2021年度業績と2022年度見通し

 2021年度は、民生業界向け部品は、家電や住宅設備、電動工具などの注力業界を中心に需要が堅調に増加しました。自動車向け部品は、コロナ禍の影響や顧客での半導体不足による生産調整の影響を受けたものの、需要が緩やかに回復しました。これらの需要を的確に捉え、増産などの製品供給量確保にも着実に対応した結果、売上高は前期比で大きく増加しました。原材料価格や物流費の高騰の影響を受けたものの、売上高の大幅な増加に加えて、付加価値向上の取組みや構造改革の成果により、営業利益は前期比で大きく増加しました。この結果、2021年度の売上高は、1,064億円(前期比23.7%増)、営業利益は、82億円(前期比178.2%増)となりました。

 2022年度は、民生向けの需要は、コロナ禍からの回復に伴い、拡大が継続すると見ています。自動車向けの需要は、電動化ニーズの高まりにより、好調に推移すると見ています。高周波リレーの業界展開の加速や、DC機器向けリレーの顧客基盤の拡大と新アプリケーションの創出などによって、これらの拡大する需要を着実に取り込み、売上高は当期比で増加を見込みます。原材料価格や物流費の高騰の影響が継続するものの、付加価値向上の取組みの成果などにより、営業利益は当期比で増加を見込みます。この結果、2022年度の売上高は、1,280億円(当期比5.8%増)、営業利益は、105億円(当期比4.1%増)となる見通しです。

 

<電子部品事業の売上高・営業利益・売上総利益率の推移>

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 (注)経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。

 これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。

 

(2) 財政状態、キャッシュ・フローの状況・分析・検討

①財政状態

 当年度末の資産の部は、好調な売上による営業債権の増加や部材確保による在庫の増加により前年度末に比べ1,103億円増加したことにより9,306億円となりました。また、負債の部は、外部借入を実施したことや、仕入債務、未払費用が増加したことにより、前年度末に比べ516億円増加の、2,627億円となりました。

純資産の部は当社株主に帰属する当期純利益を計上する一方、自己株式の取得の実行などにより、前年度末に比べ 586億円増加して、6,680億円となりました。

 以上により、株主資本比率は71.5%となり、強固な財務基盤が維持されています。当年度末現在の手元現預金は1,555億円を保有しており、加えて金融機関との間で 300億円のコミットメントライン契約を締結しています。また、格付け機関から長期発行体格付けとして「安定的」の高格付けを獲得しており、高い資金調達力を維持しています。グローバルで金融機関との良好な関係を維持しながら、資金流動性と調達力を確保しています。

 なお、重要な財務指標であるROE(株主資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)は当社グループの想定資本コストを上回る水準を維持しています。当年度末は当社グループが目標とするROIC水準10%を下回る9.6%となりましたが、一方で当年度末の手元現預金の対月商月数は、金融機関からの一時借入の影響もあり、2.5ヶ月と平時の目安としている1ヶ月~2ヶ月を上回っています。さらなる企業価値向上のためには、蓄積されたキャッシュと今後生み出すキャッシュを既存事業の強化と新たな成長機会に再投資し、成長を加速することが必要と認識しています。引き続き、経営資本の適正配分により、将来キャッシュ・フローの創出能力と資本効率を高めて企業価値向上を実現し、株主の皆さまの期待に応えてまいります。

 当社グループでは、VG2020期間を通じて実行した変化対応力の強化や事業ポートフォリオの組み替え、さらにはサステナビリティ課題への取組みなどにより、株価の安定や資本コストの低減が見られます。これらを考慮し、2021年度以降の想定資本コストは、5.5%と設定しました。引き続きROICの改善と資本コストの低減により企業価値の向上につとめます。

 

 

2021年3月末

2022年3月末

増減

資産合計(資産の部合計)

8,204 億円

9,306 億円

+1,103 億円

負債の部合計

2,110 億円

2,627 億円

+516 億円

株主資本

6,069 億円

6,652 億円

+584 億円

非支配持分

25 億円

27 億円

+2 億円

純資産の部合計

6,094 億円

6,680 億円

+586 億円

負債及び純資産合計

8,204 億円

9,306 億円

+1,103 億円

 

  <ROIC>                    <ROE>

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    (注)車載事業売却影響除くROIC、ROEは、当期純利益から車載事業売却益を控除して計算したものです。

 

  <株主資本、株主資本比率>

 

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②キャッシュ・フローの状況

キャッシュアロケーションの方針と状況

 当社グループでは、SF 1st Stageにおけるキャッシュアロケーションポリシーと株主還元方針について、以下のとおりとしました。

 

<キャッシュアロケーションポリシー>

(ⅰ)長期ビジョン「SF2030」の実現による企業価値の最大化を目指し、中長期視点で新たな価値を創造するための投資を優先します。SF 1st Stageにおいては、社会的課題の解決やソーシャルニーズ創造のための人財や研究開発などへの投資、増産やDXなどの設備投資、M&A&A(買収・合併・提携)などの成長投資に加えて、脱炭素・環境負荷低減やバリューチェーンにおける人権尊重などのサステナビリティへの取組みに対する投資を優先します。その上で、安定的・継続的な株主還元を実行していきます。

 

(ⅱ)これら価値創造のための投資や株主還元の原資は内部留保や持続的に創出する営業キャッシュ・フローを基本とし、必要に応じて適切な資金調達手段を講じて充当します。なお、金融情勢によらず資金調達を可能とするため、引き続き財務健全性の維持に努めます。

 

<株主還元方針>

(ⅰ)中長期視点での価値創造に必要な投資を優先した上で、毎年の配当金については、「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準とします。そのうえで、過去の配当実績も勘案して、安定的、継続的な株主還元に努めます。

 

(ⅱ)上記の投資と利益配分を実施したうえで、さらに長期にわたり留保された余剰資金については、機動的に自己株式の買入れなどを行い、株主の皆さまに還元していきます。

 

 VG2020の最終中期経営計画期間(2017年度~2020年度)および2021年度の営業キャッシュ・フローは、稼ぐ力の強化と運転資金の効率的な運営により、着実に増加しました。さらに、車載事業の事業譲渡収入もあり、営業キャッシュ・フローと合わせて、大幅なキャッシュ・インとなりました。一方で、注力するIAB(制御機器事業)、HCB(ヘルスケア事業)を中心に、将来の成長に向けた設備投資やM&A投資などの戦略的な投資を実行しています。特に2021年度は、JMDC社との資本業務提携を行い同社の株式の33.0%を1,119億円で取得しました。また、株主還元については、安定的な配当を継続するとともに資本効率を考慮した機動的な自己株式取得を実施しました。引き続き、将来の成長のための投資を実行して、資本コストを上回るリターンに結びつけることで企業価値を高め、株主の皆さまの期待に応えてまいります。

 

<キャッシュ・フローの推移>

 

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(注)1 為替レートの影響は除いて表示しています。

   2 投資キャッシュ・フローについては、事業売却・買収等による影響を分けて表示しています。

     事業売却・買収等による収入・支出には、連結キャッシュ・フロー計算書の「事業売却(現金流出額との純額)」

     「事業買収(現金取得額との純額)」および 「関連会社に対する投資の減少(△増加)」が含まれています。

 

 

2021年度のキャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度は前年度のウィズ・コロナの環境からの事業環境改善による売上回復により、売上債権や棚卸資産等の運転資金が増加し、当期純利益の計上はあるものの674億円の収入(前期比264億円の収入減)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 将来の成長に向け生産能力の増強などの設備投資を実行しました。また、医療統計データサービスの分野でJMDC社との資本業務提携を行い同社の株式の33.0%を1,119億円で取得しました。以上により、投資活動によるキャッシュ・フローは、1,502億円の支出(前期比1,354億円の支出増)となりました。

 なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除したフリーキャッシュ・フローは827億円の支出(前期比1,618億円の収入減)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 配当金の支払いや自己株式の取得の一方でサプライチェーンの更なる混乱や地政学リスクの顕在化等、不測の事態への備えとして金融機関からの一時借入を実施したことなどにより、296億円の支出(前期比93億円の支出増)となりました。

 

 以上の他、為替による増減の結果、当期末における現金及び現金同等物残高は、前年度末から953億円減少し、1,555億円となりました。

 

 

2021年3月期

2022年3月期

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

938 億円

674 億円

△264 億円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△148 億円

△1,502 億円

△1,354 億円

フリーキャッシュ・フロー

790 億円

△827 億円

△1,618 億円

財務活動によるキャッシュ・フロー

△204 億円

△296 億円

△93 億円

 

 

2022年度の財政、キャッシュ・フローの見通し

 次年度(2022年度)においては、長期ビジョン「SF2030」の成長につながる設備投資・投融資を積極的に実施します。特に設備投資は全社グループのITシステム刷新を行うなど、当期比191億円の増加を見込んでいます。

財務活動では、金融情勢を鑑みながらグループ全体の効率的な資金配置を行い、柔軟な調達・運用を実施してまいります。

 なお、重要な財務指標であるROE(株主資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)は当社株主に帰属する当期純利益の増加などによりいずれも当期比で改善を見込んでいます。

 

<次期の財政状態に関連する指標>

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<次期のキャッシュ・フロー関連項目>

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       (注)資本的支出は、連結キャッシュ・フロー計算書記載の金額

 

 

資金調達、資本政策の方針

 当社グループは、成長投資の実行と安定的な事業運営を行うため、資本効率を高めつつ、事業運営に必要な流動性と多様な調達手段を確保することを基本方針としています。そのための資金調達を含む資本政策については、以下の基本方針としています。

 

(ⅰ)株主価値を維持向上するために、投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)の目標水準を考慮した経営を行います。また、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢によらず資金調達が可能な高格付けを維持できる自己資本比率を目標とします。

 

(ⅱ)支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策については、取締役会において、上記の目標とする投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)等への影響を十分に考慮した上で合理的な判断を行います。

 

(ⅲ)大規模な希釈化をもたらす資本調達を実施する場合には、資金使途の内容と回収計画を取締役会において十分に審議のうえ決議するとともに、投資家・株主への説明を行います。

 

<格付情報>

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<社債情報>

 現在発行している社債はありません。

 

 

(参考)ROIC経営への取組み
 当社グループはROICを重要な経営指標としています。全社一丸となってこの指標を持続的に向上させるため、「ROIC経営」を社内に広く浸透させています。2022年度からスタートする長期ビジョン「SF2030」においても、ROIC経営を推進し、今後も飛躍的な成長を実現していきます。

 事業特性が異なる複数の事業部門を持つ当社グループにとって、ROICは各事業部門を公平に評価できる最適な指標です。営業利益の額や率などを指標とした場合、事業特性の違いや事業規模の大小で評価に差が出ますが、投下資本に対する利益を測るROICであれば、公平に評価することができます。独自の事業ポートフォリオを展開していく当社グループにとって、ROICは欠かすことができない指標です。当社グループのROIC経営は、「ROIC逆ツリー展開」、「ポートフォリオマネジメント」の2つで構成しています。

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<ROIC逆ツリー展開>

 ROIC逆ツリー展開により、事業戦略を起点にROICを各部門のKPIに分解して落とし込むことで、現場レベルでのROIC向上を可能にしています。ROICを単純に分解した「ROS」、「投下資本回転率」といった指標では、現場レベルの業務に直接関係しないことから、部門の担当者はROICを向上させるための取組みをイメージすることができません。例えば、ROICを自動化率や設備回転率といった製造部門のKPIにまで分解していくことで、初めて部門の担当者の目標とROIC向上の取組みが直接つながります。現場レベルで全社一丸となりROICを向上させているのが、当社グループの強みです。

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<ポートフォリオマネジメント>

 全社を約60の事業ユニットに分解し、ROICと売上高成長率の2軸で経済価値を評価するポートフォリオマネジメントを行っています。これにより新規参入、成長加速、構造改革、事業撤退などの経営判断を適切かつ迅速に行い、全社の価値向上をドライブしています。

 また、限られた資源を最適に配分するために、「経済価値評価」だけではなく、「市場価値評価」も行っています。それにより、各事業ユニットの成長ポテンシャルを見極められ、より最適な資源配分を可能にしています。

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(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当連結財務諸表は米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示および報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積もりや仮定を用いており、実際の結果はこれらの見積もりと異なる場合があります。長期性資産の減損、のれんおよび非償却性の無形資産の減損、および繰延税金資産の回収可能性等については、コロナ禍が及ぼす影響等を考慮して見積もりおよび判断を行っています。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 Ⅰ 重要な会計方針の概要 F 会計処理基準」に記載していますが、当社の経営戦略および連結財務諸表に与える影響から重要性があると考えられるものは以下のとおりです。

 

戦略投資等にかかるのれん等の評価

 当社は将来に向けた成長力強化の一環として積極的な戦略投資を行っています。

 IABにおいては、モノ作り現場の課題に対して、“i-Automation!”で革新を起こすアプリケーションを強化することを目的として、2015年にモーションコントローラーメーカーであるDelta Tau Systems, Inc. およびロボットメーカーであるAdept Technology, Inc.を、2017年にコードリーダーメーカーであるMicroscan Systems, Inc.をいずれも米国にて取得しました。

 当期末連結貸借対照表において、IABについて、主にこれら一連の戦略投資に起因して株式取得時に識別したのれん37,459百万円を計上しています。

 HCBにおいては、ブラジルにおける事業拡大を目的として、ブラジルのネブライザーメーカーであるNS Industria de Aparelhos Medicos LTDA.社株式の取得時に識別したのれんについて前期末時点において3,143百万円計上しておりましたが、ブラジル国内の事業環境の変化を受け、当期に減損損失を計上しました。HCBについて、当期末連結貸借対照表において、その他の株式取得時に識別したのれんを2,144 百万円計上しています。また脳・心血管疾患の重症化を防ぎ、治療をサポートする事業での協業を目的として、米国を中心に心疾患の診断と治療の支援サービスおよび商品を提供するAliveCor,Inc.へ2020年2月に出資を行いました。

 長期ビジョン「SF2030」ではデータを基軸とした価値創造への収益構造転換が重要になると考えており、その先駆けとして、2022年2月に医療データサービス会社であるJMDC社との資本業務提携のために同社株式の取得を行いました。

 

 当社では、投資管理プロセスを策定しており、買収案件の投資回収状況やのれん減損テストの結果、買収事業の進捗と今後の計画については年に1回、取締役会へ報告しています。

 

 

①のれん評価

 当社は、のれんの評価について、のれんの償却は行わず、少なくとも年に1回又は減損の兆候が識別された場合に減損テストを実施しています。

 IABにおいて取得した事業ののれんについては取得した事業が“i-Automation!”戦略と一体となってシナジー効果が創出されることから、シナジー効果の享受が期待される、検査装置事業を除いたIABをのれんの報告単位として決定しています。

 HCBにおいて、NS Industria de Aparelhos Medicos LTDA.社の株式取得により識別したのれんについては、事業買収によるシナジー効果の享受が期待されるHCBの南米地域事業を報告単位として決定しています。

 減損テストの実施に当たっては、当該報告単位の公正価値をディスカウント・キャッシュ・フロー法により算出し、対応する帳簿価額と比較して評価を行っています。公正価値は経営者により承認された事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しています。事業計画は、マクロ経済状況、市場成長率、利益率、設備計画等の仮定を用いて策定し、事業計画予測期間以後のキャッシュ・フローは、各事業の所在国のインフレ率で永続的に成長するものと仮定して算出しています。

 加重平均資本コストは、リスクフリーレート、所在国の経済や市場の状況を反映させるためのリスクプレミアム、インフレ率、負債コスト、類似企業の決定、類似企業に対してプレミアムもしくはディスカウントが適用されるべきかの決定等、多くの見積りを使用して算出しています。当年度の減損判定で使用した割引率は8.9%から12.0%の範囲です。

 当年度の減損判定においては、HCBの南米事業においてブラジル国内の急速なインフレ進行を踏まえた事業環境、およびブラジルレアル安の影響等を勘案した今後の事業計画に基づいた公正価値再評価の結果、公正価値が帳簿価額を下回ったため、のれんの減損損失を認識しました。それ以外の報告単位については、公正価値が帳簿価額を超過していたため、のれんの減損損失は認識しておりません。

 

②関連会社に対する投資の評価

 当年度末連結貸借対照表に計上されている関連会社に対する投資及び貸付金124,691百万円には、ヘルスケア事業のAliveCor,Inc.社に対する持分法による投資9,642百万円が含まれており、純資産に対する当社の持分相当額を上回る8,172百万円は、主に持分法適用開始時に識別したのれん相当額によるものです。

 当社は、関連会社に対する投資について、投資先の超過収益力に基づく公正価値評価を行い、その価値の下落が一時的とは認められない場合には、持分の簿価が当該関連会社の公正価値の当社持分を超過した分について持分法損失を認識しています。同社についてはスタートアップ企業であるため将来事業計画の達成可能性の不確実性やのれん相当額の重要性を鑑み当該公正価値をのれんの評価と同じ方法で算出した結果、公正価値が投資簿価を上回ることから、評価損失の計上は不要と判断しています。当年度の公正価値の算出にあたっては将来事業計画の期間ごとの達成可能性の評価に応じ、割引率を12.5%から22.5%の範囲で使用しています。

 また、関連会社に対する投資及び貸付金にはJMDC社に対する当社持分1,122億円が含まれております。当該投資には取得時に認識するべきのれんが含まれておりますが、取得原価配分の手続きは2022年度中に完了する見込みです。同社株式については、当年度末での市場価格による公正価値評価において持分法損失を認識するべき一時的でない価値の下落は発生しておりません。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

 当年度におけるセグメントごとの販売実績は、「(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討」に記載のとおりです。なお、当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額で示すことはしていません。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しています。

 

 

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