当社グループは、技術の育成・強化を目的に中長期的視野に立った技術戦略を定め、研究開発を実行しています。自社の強み、コア技術として進化させ続けている「センシング&コントロール+Think」技術を技術戦略の核として、全社的視点から当社のコーポレート研究所である技術・知財本部が基盤的な技術開発を担い、各事業部門がその応用技術開発や商品開発を実施しています。主力事業である制御機器事業をはじめ、ヘルスケア事業、社会システム事業に重点的に研究開発費を割当て、製品開発およびものづくり技術の強化を実施しています。
当期の取組みとしては、ロボット技術、AI技術、センシング技術、パワーエレクトロニクス技術などの自社コア技術の継続的な高度化に加えて、学会等での社外発信を積極的に行い、「2021年度 システム制御情報学会 産業技術賞」を受賞いたしました。また、研究子会社であるオムロン サイニックエックスでは、世界最先端のロボット技術、AI技術の研究開発に取り組み、主要な国際会議でも論文が採択されています。
知的財産活動においては、技術者の特許に対するスキル向上のための社内研修を、コロナ禍においてもオンラインを活用して全技術者向けに実施すると共に、発明褒賞制度や知財表彰制度を活用することで、技術者の知財活動に対するモチベーションを向上させ、全社的に知財活動の底上げを図っています。また、モノ視点からコト視点への事業変化によって発明者の裾野が拡大していることから、技術者のみならず企画部門やプロダクトマネージャーも対象に、顧客課題・社会課題を解決するコトビジネスの発明創出も推進しています。併せて、知財を経営・事業へ積極的に生かすべく、事業や研究開発と連動させた知財戦略を策定・実行し、質・量の両側面で特許創出力を向上してきました。これらの活動の成果により、クラリベイト・アナリティクス社が知財動向の分析をもとに世界の革新企業/機関トップ100を選定する「Clarivate Top 100グローバル・イノベーター」に2017年から6年連続で選出されました。
グループ全体の研究開発に関する費用の総額は、前連結会計年度は431億84百万円、当連結会計年度は442億77百万円です。なお、研究開発費については、技術・知財本部で行っている技術開発費用52億24百万円が含まれています。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
金額(百万円) |
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インダストリアルオートメーションビジネス |
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ヘルスケアビジネス |
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ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス |
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デバイス&モジュールソリューションズビジネス |
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本社他 |
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合計 |
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(1) インダストリアルオートメーションビジネス(制御機器事業)
当セグメントは、製造業における省人化、安全性の向上、新工法による歩留りの改善に関して、様々な要素技術や生産技術を開発し、新商品や、商品を組合せた制御アプリケーションを通じて価値提供をおこなっています。
省人化については、制御コントローラーとロボットコントローラーを一体化した統合コントローラーを活用し、生産設備の全ての動作を再現できる統合シミュレータを開発し、遠隔地からロボットを含む生産設備全体を監視することを可能としました。これによりWith/Postコロナにおいて技術者が国や地域を超えて移動することなく、生産設備の調整、立上げを行うことが可能となりました。加えて、ロボットとロボットハンド、周辺機器を同時にOne Controllerで制御することで、人にしかできなかったフレキシブルケーブル挿入等の複雑な組立作業の自働化を実現しました。
安全性の向上では、国際規格に定められた8種の安全機能に対応したサーボモーターを開発し、生産現場における安全性と生産性の両立を実現可能としました。
新工法による歩留りの改善では、自由度ステージ制御により微細なマイクロLEDチップの超高精度の貼り合わせの新工法の技術を創出し、デジタルデバイス業界をはじめとする製造現場で歩留り向上を実現しました。
(2) ヘルスケアビジネス(ヘルスケア事業)
当セグメントは、マーケティング部門と研究開発部門が一体となり、パーソナライズ医療の実現に向けて、真のユーザーニーズの把握・創出に努め、一層の開発スピードアップを目指しています。また研究開発部門は、一人ひとりの健康ですこやかな生活の実現に向け、脳・心血管疾患の発症ゼロを目指す「循環器事業」、喘息・COPD患者の重症化ゼロを目指す「呼吸器事業」、慢性痛による日常の活動制限ゼロを目指す「ペインマネジメント事業」の3事業領域において新しい価値を提供できる新商品の創出を目指しています。
当期の主な開発テーマとして、循環器事業においては、血圧、脈拍、心電計測技術を搭載した心機能低下を捉える新たな血圧計の開発を進め、遠隔診療サービスに向けたシステムの開発にも取り組んでいます。
呼吸器事業においては、喘息やCOPDの患者を対象に、発作の予兆や症状を計測する機器の開発に取り組んでいます。ペインマネジメント事業においては、新たな鎮痛技術を搭載した低周波治療器の開発に取り組んでいます。
(3) ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(社会システム事業)
当セグメントは、太陽光発電用パワーコンディショナー、蓄電システム、自動改札機や券売機などの駅務システム、交通管制システム、決済システム、UPSなどのネットワーク保護といった、多岐にわたる端末・システムに対するお客様のニーズに応える商品開発に取り組んでいます。
エネルギーソリューション事業では、再生可能エネルギーへの一層の関心の高まりに応えるため、蓄電システムおよび太陽光発電用パワーコンディショナーを中心に高効率化や小型軽量化などの技術開発並びに発電した電力の自家消費ニーズに応える商品創出などに継続して取り組んでいます。
駅務システム事業、交通管制システム事業においては駅や道路など、公共の場における利用者の安心・安全・快適に貢献する商品として、AI技術・IoT技術を組み込んだ人や車の動きを検知するセンサー・システムの開発に取り組んでいます。
また、近年、社会課題となっている労働人口減少に対し、社会インフラにおける労働生産性を向上させる技術が求められる中、データサイエンス分野の技術力強化を進めています。
(4) デバイス&モジュールソリューションズビジネス(電子部品事業)
当セグメントは、エレクトロメカニカルコンポ商品(リレー、スイッチ、コネクタ)および顔認証等の組込画像ソフト技術、光技術、MEMS技術などを用いたセンシングコンポ商品、更にはモジュール化技術による高機能化を強みにお客様のニーズに応える新製品開発に取り組んでいます。
リレー技術において、従来の発熱対策であったヒートシンクなど放熱機構の簡素化による小型化軽量化や基盤の温度上昇を抑制し、機器の長寿命化に寄与すべく、業界トップクラスの超低接触抵抗値を実現し、従来の一般的な高容量リレーに比べ通電時の温度上昇を低くしました。また同程度の電流容量のコンタクタと比べ本体を低背化した高容量リレーを発売しました。
太陽光など再生可能エネルギーによる発電設備ではエネルギー変換の高効率化と共に更なる高容量化大電流化が進むことで機器の発熱によるエネルギーロス対策が社会的課題であり、機器が発熱する要因のひとつである機器内部の基板に搭載されているリレーの低接触抵抗による低発熱化の研究を進めており、太陽光発電システムのパワーコンディショナーや電源設備、関連機器の発熱課題を解決し、再生可能エネルギーの普及を促進し、脱炭素社会の実現に貢献します。
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