課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社グループは、音楽用途の電子機器の開発と販売によって、世界の共通語である音楽の市場拡大と発展に貢献することを目指します。また、「音」と「音楽」に特化したブランドイメージをアピールすることで、楽器を演奏するユーザーのみならず、コンシューマ・エレクトロニクス(家電)市場、あるいはプロシューマ(業務)用機器市場を開拓していくことで成長を図ってまいります。そのためには、常に先端技術を応用して独自性のある製品を開発し、組織のオーバーヘッドを抑えて意思決定のスピードを上げ、ファブレス体制を維持して生産や在庫のフレキシビリティを保ち、グローバルな人材活用によってマーケティング力を強化し、変化する市場に適応しながら100年続くブランドを構築してまいります。また、適正で安定した利益還元によって株主の期待に応えると共に、技術革新に対する投資を積極的に行い、将来のリスクに備えた内部留保を確保します。さらに、コンプライアンス、透明性、環境への配慮を重視することで企業の社会的責任を果たしてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、持続的な成長と適正な利益の確保のための指標として売上高及び営業利益を、また、資金の効率的な運用を実現するための指標として株主資本利益率(ROE)を、重要な指標と考えております。

 

(3) 経営環境

当社グループが属する音楽用電子機器業界におきましては、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、実店舗での販売が減少したものの、eコマースが大きく伸張し、また、自宅での使用に適した楽器や関連機器への需要が増加いたしました。リモートワークやステイホームの浸透はライフスタイルの変化をもたらしており、この状況はいわゆるアフターコロナ後も継続すると考えております。一方、世界的な半導体部品の供給不足による生産の遅延及び物流網の混乱が継続しており、2022年度については販売機会損失の発生・物流コストの上昇が利益にマイナスの影響を与えると見込んでおります。なお、新型コロナウイルス感染症については現在の状況が2022年末頃まで継続し、半導体部品の供給不足による生産遅延については2022年12月期の上期は現在の状況が継続するものの、下期以降徐々に回復していくと考えております。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、中長期的な経営目標として、当社製品のターゲットユーザーを楽器の演奏をするミュージシャンに限定せず、広く創造活動をするクリエーターと位置づけることにより、製品カテゴリーを拡げることで成長シナリオを描いております。一方で、ハンディオーディオレコーダー、マルチエフェクターやハンディビデオレコーダーといった既存の製品カテゴリーにつきましても、引き続き新製品を投入し、持続的な成長を目指してまいります。すなわち、製品カテゴリーを入れ替えていくのではなく、実績ある従来製品で安定した事業基盤を確保しつつ、新たな製品カテゴリーを加えていく、という経営戦略を掲げております。

また、2021年1月に株式会社フックアップを子会社化したことにより、音楽用電子機器のディストリビューション・ビジネスを営む基盤が、日米欧に揃いました。ズームブランドの成長に加えて、第二の収益の柱として育成してまいります。M&Aを含めた成長のために必要な投資については、継続的に実施していく予定であります。

当社は、上記方針を踏まえ、2021年度から2023年度までの中期経営計画「第3次中期経営計画 2021-2023」を策定しております。当該中期経営計画において、2023年度の数値目標を、売上高150億円、営業利益12億円と定めました。なお、当社グループは現在拡大期にあり、将来投資に備えた内部留保維持の必要が高いことに鑑みて、ROEを指標として重視するものの、目標設定することは見送っております。

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当面は不透明な外的要因が続くことを前提に、安定的、持続的に事業を拡大するため、下記のような課題に優先的に取り組んでまいります。

① 半導体不足への対応

コロナ禍におけるステイホーム需要、その後のリベンジ消費などに起因する世界的な半導体不足の影響により、当社製品の需要に対して生産可能な数量が大幅に不足する事態となっております。また、この需給のアンバランスに便乗した原材料の値上げも相次いでおります。当社としては、ある程度のコストアップと利益率の低下を受け入れ、消費者の需要に応えることを最優先にこの問題に取り組んでまいります。

② 工場立地の分散

いわゆるトランプ関税は、米国の政権が変わってからも依然として継続しており、米国と中国の政治的・経済的対立が続く限り廃止される見込みがありません。当社製品の場合、課税されない一部の製品カテゴリーを除いて25%のタリフ(追加関税)が課せられており、そのまま卸売価格に反映させると製品が市場で競争力を失うため、米国子会社の利益を削って卸売価格を維持しています。製品の競争力を維持しながら利益を確保するためには、第三国で生産するしか選択の余地がありませんが、当社はファブレス経営を標榜していることから、生産委託先との緊密な協業が必須であります。生産委託先もこのままでは受注が漸減してしまうという危機感を共有しており、今後数年の間には、非課税の製品は中国で継続生産し、課税対象の製品は第三国での生産に移行する方針であります。

③ フックアップ決算業務の迅速化

2021年1月に連結子会社化した株式会社フックアップは、会計年度が異なること及び会計システムの運用や人員不足が原因で、連結決算への反映に時間差が生じております。会計基準上の問題とはならないものの、正確かつ適時な情報開示を行う観点から、これを是正し、会計専任者の採用、会計システムの再構築、会計年度の変更などを行い、当社グループ連結財務諸表への遅延のない反映を行う方針であります。
④ 知的財産の保護

事業の根幹をなすブランド価値が損なわれる事態、すなわち知的財産としての商標権が侵害されている状況は、決して容認できません。この問題には妥協せず、毅然とした態度で臨む所存であります。一方で、特許の取得までには至らないものの、知恵を絞って生み出した当社独自の工夫を、あからさまに真似たジェネリック商品も市場で散見されております。音楽用電子機器業界が、各社横並びのロボット掃除機市場の如くならないよう、何らかの施策を講じる方針であります。

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